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担当者が自ら語る背景に広報PRの重要性。企業からではなく、人からのメッセージで共感を|味の素冷凍食品

販売50周年を迎えた味の素冷凍食品の「ギョーザ」。今年の春に販売開始された新商品「黒胡椒にんにく餃子」「シャキシャキやさい餃子」は発表後、さまざまなメディアに取り上げられ、話題になりました。

味の素冷凍食品の広報PRは、2年前に組織体制を見直し、戦略コミュニケーション部を立ち上げた頃からより強化されていきます。また、同社は代表や広報PR担当者だけでなく、製品戦略の担当者が自らの言葉で語る機会が多いのも特徴です。

味の素冷凍食品の広報PRが強化された背景、そして広報PR活動に取り組むうえでの考えを製品戦略部長の大竹さんと同社で5年間広報PRに携わる福原さんに伺いました。

味の素冷凍食品株式会社の最新のプレスリリースはこちら:味の素冷凍食品株式会社のプレスリリース

味の素冷凍食品株式会社 マーケティング本部 国内統括事業部 製品戦略部長

大竹 賢治(Kenji Ootake)

1998年大学を卒業後、同年味の素株式会社に入社。名古屋で5年間、東京で3年間、計8年間スーパーマーケット向けのリテール営業を担当後、事業部へ異動。この異動でマーケティングに携わるようになり、「クノール® カップスープ」「ピュアセレクト® マヨネーズ」のブランドマネジャー、新領域開発グループ長を歴任。その後、海外食品部、インドネシアでの新事業担当取締役を経て、2020年7月から味の素冷凍食品株式会社で現職。

味の素冷凍食品株式会社 マーケティング本部 戦略コミュニケーション部 企画・管理グループ

福原 怜子(Reiko Fukuhara)

2010年大学を卒業後、同年味の素冷凍食品株式会社に入社。家庭用冷凍食品の営業として大阪で4年間勤務。2014年、東京本社に異動となり広報PRの仕事をスタート。異動当初は社内広報として紙面・Webの社内報を担当。その後、お客さまを受け入れる工場見学の運営、ダイレクトコミュニケーションを必要とする業務を担うようになり、2017年から対外広報としてメディアの取材対応やプレスリリースの執筆を行い、2022年7月より現職。

企業からではなく、人からのメッセージで共感を

担当者自らがメッセージする文化

── 大竹さんはさまざまな場面でメディアに出演されていますが、広報からの依頼ですか?

大竹さん(以下、敬称略):取材についてはもちろん広報を通して依頼がきますが、そういう機会は自分で話をしようと思いますし、担当者が話す重要性はすごく感じますね。やはり企業のメッセージから、生身の人からのメッセージになった瞬間に信ぴょう性が増して、共感が生まれる、というのが私の考えです。

特に大きな企業からの発信。顔の見えないメッセージになった瞬間になんとなく良いことを言っていても無機質な共感性を感じづらいメッセージになってしまう。それが、人となったときに、共感し、受け止めやすくなる。人が自身のメッセージとして伝えていくという重要性、意味合いみたいなものがあると思いますね。

── 広報PRから打診する際、人選は相談していますか?

福原さん(以下、敬称略):特に相談はしていないです。深くテーマに関わった人が自身の言葉で語ってもらうのが一番だと思って人選しています。

私が以前、社内報を担当していた時の話ですが、新入社員の入社の決め手アンケートの1位は「社員が魅力的だから」が挙げられていて。また、制作会社や代理店の方に「ご本人の言葉で語るメッセージ性がいいですね」という声をよくいただいていたんです。自分たちの会社の魅力は人にあって、当事者の言葉で語るのが一番響くだろうと経験からも感じていました。

また、普段から距離が近くて、事業部内ではよく会話しています。製品をつくっている担当者のパーソナルなことも知っているため、「このテーマで記事を書きたい」「こういう内容を話してほしい」に対して、迷わずにぴったりな人が浮かんできますね。

味の素冷凍食品01

── 依頼をした際に「表に出たくないな」など懸念される方はいませんか?

福原:みなさん、お願いしたときは「全然いいですよ」って快諾してくれます。

大竹:製品づくりに携わるのはR&Dの人も生産管理の人もいますが、取材に対応するのは基本的に製品戦略部の各製品のマーケティング担当がやるんですね。マーケティング担当の役割は会社によって異なりますが、味の素グループのマーケティング担当はバリューチェーン全体に対しての指揮者、コンダクターという言い方をしていて、全体に対しての責任と権限を持ち全体をリードする役割なんです。全体をリードしていくときに「自分、口下手なので表に出たくないです」という人はそのポジションを任せようと思わないので、声がかかった際はみんな自身の言葉でメッセージしていると思いますよ。

製品担当者からのメッセージで社内外にファンが拡大

── 大竹さんが2022年6月4日放送ジョブチューン(TBS系)に出てかなり反響があったとお伺いしました。

福原:大竹さんのファンは増えましたよ、社内外ともに。

大竹:いえいえ、個人的には親戚や小学校の友人から連絡もらったくらいで。製品のファンは増えたと思いますね。毎月、製品に対するファンレターたくさんいただいていますがメディアに出た後は増えましたね。「一生懸命作っているんだということがわかった、安心して買える」と、恐らくこれまでご購入いただいていなかった方や「アレルギーを持つ人に寄り添った想いを知り本当に感謝している」とアレルギーをお持ちの方からも。

── ファンレターにはすべて目を通されていますか?

福原:はい。拝読させていただいて、すべてお返事させていただいています。

味の素冷凍食品02

── いただいたファンレターを一部紹介

『作った人たちの感激が何とも言えんかった』
作った人たちの感激が何とも言えんかった。仕事してそれができた時は嬉しくて、それがたまらんのと一緒じゃろうと思ってね。見ててドキドキして、私もドキドキして、向こうもドキドキして食べた人の顔見てたりしてたけれども。こんだけ込めてるんだから、一遍は食べてみようという気になった。(女性、80代)

『熱い想いや企業努力に感謝』
担当者様の涙に触れ、この商品開発に対する熱い想いや企業努力、アレルギーを持つ人に寄り添った想いを知り、こちらも本当に感謝の気持ちでいっぱいです。今後もずっと購入させていただきます。(女性、40代)

『本当に嬉しい気持ちでいっぱいです』
『やわらか若鶏から揚げ』のアレルギーについてお話しているのを拝見しました。涙を流して話している姿に私も涙が出ました。味の素さんがアレルギーのことを親身に考えてくださっていたなんて、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。(女性、20代)

『業界をリードする存在であって欲しい』
お客様アンケート事例を紹介する場面で、涙する社員に感銘を受けました。一人ひとりの声を大切にするという企業努力をおしまず、ますますの食品業界をリードする存在であってください。(男性、50代)

プレスリリースは読んだときの情景、共創を意識

── メッセージを伝えるうえで意識していることはありますか?

福原:私が大切にしているのは、文章や何か情報に接したときに情景が浮かぶか、ということですね。「おいしい冷凍餃子をご家庭にお届けします」というプレスリリースではなく、その先に餃子を囲んだ笑顔の食卓をそのプレスリリースを読んだ方は思い浮かべてくれるか。それが製品価値の共創と自身では解釈していて、情報を発信した先に生活者の方といかに物語を紡いでいけるかは意識していますね。

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ますます増していく広報PRの重要性

二年間で一気に加速した広報PR活動

── 広報PR活動に「本気で取り組もう」と変わったのはいつ頃ですか?

福原:本気で取り組んだのですか……。組織として戦略コミュニケーション部という広報体制を設けたのが2020年の7月。それまでは広報やPRの名のつく組織もなく、事業を横断する部署の中にあるグループのひとつとして活動していました。そう考えると、ターニングポイントはやはり二年前に「本腰入れてやってくぞ」と戦略コミュニケーション部をつくった頃かと思います。

── 「やるぞ」と決めたら早かったんですね。

大竹:そうですね。味の素グループは遡ると「うま味調味料は体に悪い」「蛇の粉からできている」など、言われもなく出所がわからない情報に悩まされたこともありました。しかし、それを広報的なアプローチでずっと解消に努めてきた歴史があります。うま味調味料は、「食欲を増進させて体に良い」ということを知ってもらったり、それをきっかけに病院で使用されるようになったり。味の素グループとしての広報PRに対する取り組みや会社として重要性を知っているというのが根底にあります。

15秒で表現できない、ちりばめられたこだわり伝える

── 大竹さんが考える広報PR活動を教えていただけますか?

大竹:製品ってちゃんとつくっていくと多くの人のさまざまなこだわりがちりばめられたものができるんです。味の素グループでは、他社の後追いはせず世の中に無い価値を生み出していくことを大切にしています。また、市場調査を丁寧に行い、世の中の生活者の方にとって不足しているものを製品にしています。その両方にこだわりや妥協を許さず、満足いく製品になるまで粘り強く製品づくりをしてきたものが詰め込まれていて。それを伝える努力はするものの、やはり限界はものすごくあると思っています。

15秒で「製品認知」と「なんとなく美味しそう」は伝えられたとしても、そこからこぼれ落ちてしまう製品の良さを伝えることができるのが広報PRだと思います。

例えば、40年前のスーパーに並んでいるものは今と比べると非常にシンプルなものが多いんですよね。ファンクショナルベネフィット(機能的な価値)を訴求すればよくて、「これまでの製品の4分の1の量で同じ機能を果たす」「粉状だったものが形状を変え、より機能が高くなる」など特に説明もなくわかりやすかったですよね。現在は新しい製品を出したとしても一年後には似た製品が並んでいて、40年前から現在に至るまでずっとこの競争は苛烈になっています。そして、これからはさらにでしょうね。

だからこそ、機能的な価値以外の良さを伝える重要性が高まっていると思っています。重要性はどんどん、どんどん増していっていて。最近ということじゃなくてそれこそ30、40年という時間軸の中で増していると思います。

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広報PRはテクニックから誠実へ

── 製品担当者がメッセージするうえで気をつけていることはありますか?

大竹:饒舌であったりする必要は、私はないと思うし、言葉の選び方が必ずしもアナウンサーみたいにきれいじゃなくても構わないと思っています。手前の製品づくりを誠実に行って、それを自ら語れば、何をどう話しても共感性のある話として受け取ってもらえる。それは、「私」ではなく、「製品戦略部のどのマーケティング担当」が話しても、共感性があるメッセージになると。

── 味の素冷凍食品の広報PR活動がうまくいっている秘訣はありますか?

大竹:生活者の方は世の中にあふれている多くの情報を得ていて、自分から情報を取りに行ったりもします。得られる情報に対して疑い深くなっていたり、メーカーからの情報に嘘があるとすぐバレて、逆にレピュテーションを落とすことも。情報を得られる環境の進化、それがずっと続いていて、今年は去年よりもより広報PRの重要性は増しているし、来年は今年より重要度は増しているだろうし。そういう過程の中にあるんだろうな、と思っています。

広報PRはテクニックだったりコミュニケーションのひとつだったり、新しいニューウェーブとしてもてはやされた時代でもあったと思います。しかし、今テクニックとして使おうとすると本質を伴っていないものは逆にそれがむしろマイナスになるという時代になっている。弊社のPRがうまくいっているのは、テクニックではなく、誠実に製品づくりに取り組み、そのままを伝えているからだと私は捉えていますね。

なので、メンバーが製品づくりに対する誠実さ全員が持つ組織、組織文化の醸成に心血を注いでいます。

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味の素冷凍食品に学ぶ、誠実さが第一の広報PR

生活者の声に応えるため、常に製品づくりに取り組んでいる味の素冷凍食品ですが、広報PR活動も生活者に向けた誠実さが第一に考えられています。

  • 製品づくりに誠実に取り組み、製品を一番知る担当者自らがメッセージ
  • 担当者自らのメッセージや広報PRの重要性の認知は文化として醸成
  • 読んだときに情景を思い浮かべてもらえるプレスリリースで物語の共創を意識

代表が変わったということで「何か変わる・変えることはありますか?」という問いには、「変化することを変えない」という回答でした。常にお客さまの声を反映し、変化を続ける誠実な製品づくり。そんな担当者からのメッセージは、多くのファンを魅了する要因のひとつでしょう。

今年の春に販売開始された新商品「黒胡椒にんにく餃子」「シャキシャキやさい餃子」もさまざまなメディアに取り上げられ話題になりましたが、秋は「黒豚大餃子」「海老大餃子」が新販売。おうち餃子の最高峰とのことで、食卓とメディアを賑わせてくれるのが楽しみです。

追加取材:使い込んだフライパンでも綺麗に焼けるギョーザの検証について

2023年5月中旬、ひとりの生活者のSNSが話題になりました。内容は、冷凍餃子の皮がすべてはがれ、誰でも綺麗にできるはずの羽根ができないというもの。このことをきっかけに、「使い込んだフライパンでも綺麗に焼けるギョーザの検証」を6月上旬に発表。顧客に対する向き合い方、商品に対する本気を感じます。

この検証について、同社戦略コミュニケーション部PRグループの方にお話を伺いしました。

──きっかけのTwitterに対する対応はどのように、どなたが、どのくらいの検討期間で決めたのでしょうか。

お客さまによる「ギョーザ」のフライパン張り付き投稿がTwitterで拡散されているのを、社内で確認し、弊社としてのアクションを検討。投稿の翌日にお客さまへリプライする形で対応をしています。

──「検証に向けたお願い」取り組みを進めた背景について教えてください。

誰でも綺麗に焼けるギョーザを目指している弊社としては、なぜこのような状態になったのかを確認するため、「フライパンを提供いただき、研究・開発に活用したい」と返信させていただきました。

現在、パッケージ裏面に記載のある調理方法として、フライパンにギョーザが張り付いてしまう場合は、「少量の油をひいてください」とご案内をしていますが、今回再検証を行った結果、新たに「弱火で10分蒸し焼きにする」ことで張り付きが改善されることがわかりました。このことから、もっと多くの生活者の皆さまのフライパンの実態を把握し、最適な調理条件の研究をする必要があると判断。お客さまからフライパンのご協力を募るという経緯に至りました。

──予想をはるかに上回るお申し出があったと思いますが、どのような思いでしょうか。

とても驚いています。たくさんのご理解とご協力、また手書きのメッセージもたくさんいただき感謝の気持ちでいっぱいです。

──どのような部署の方がどのくらいの期間で進めていこうとされていますか。

PRグループと研究所のメンバーを中心に検証を進めていく考えです。想定以上の数のフライパンをいただきましたので、工場や物流部門の協力も得ながら全社一丸となって取り組んでまいります。

当初のイメージでは1ヵ月後くらいにはご報告と考えていましたが、もう少し時間がかかると予想しております。経過報告は、あらためて発信させていただきたいと考えております。

──ありがとうございます。最後に、商品やお客さまとの向き合い方の誠実さが伝わりました。あらためてこの取り組みを通して実現したいことを教えてください。

当社商品はお客さまの声をいただきながら、「永久改良」という言葉を掲げ、商品開発を続けています。

「ギョーザ」も改良し続け今年で51年目を迎え、これまで、「おいしさ」はもちろん、生活者の皆さまの立場に立って、「調理性」「使い勝手の良さ」「パッケージの見やすさ」などさまざまな改良に取り組んできました。

今回のフライパンの検証もその取り組みのひとつで、生活者の方から気付きをいただきました。これからもお客さまに「感動」で「笑顔」をお届けできる商品を作っていくために、取り組んでいきます。

(撮影:近澤幸司)

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この記事のライター

丸花 由加里

丸花 由加里

PR TIMES MAGAZINE編集長。2021年、PR TIMESに入社し、「PR TIMES MAGAZINE」、ご利用企業向けのコミュニティイベント「PR TIMESカレッジ」の企画・運営を行う。2009年に新卒入社した大手インターネットサービス運営会社では法人営業、営業マネージャーとして9年半、その後オウンドメディアの立ち上げに参画。Webコンテンツの企画や調査設計に携わる。メディアリレーションズを主とした広報を経て、現職。

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