株式会社PR TIMESは、2025年10月21日に学びとつながりの広報・PR担当者向けコミュニティイベント「PR TIMESカレッジVol.10」を全国5都市およびオンラインで開催。第一部は、数々の人気番組を手がける放送作家や映像制作のプロ、ソマシュンスケ氏、西村隆志氏、澤井直人氏の3名を迎え、「“復活・共感・熱狂”を生む商品PR術」をテーマにしたセッションが行われました。
「無名なモノを語りたくなるモノに変えるには」「あえてズレている組み合わせが爆発を生む」など、3名が手がけてきた番組事例をもとに、広報PRにも活かせる企画づくりの視点とヒットを生み出す法則を紐解きます。
ブランドを育てるのは「共感×クオリティ×ゴール設定」
ソマさんと西村さんが立ち上げたのは、地方や郊外の小さな駅を巡り、地元の人々に聞き込みながら飲食店を訪ねるという企画。総再生回数約2億回、登録者数50万人を超える人気チャンネルに成長したこの企画に学ぶ「無名なモノを語りたくなるモノに変える」ポイントとは。
「泥臭さ」が共感を呼んだグルメ企画
きっかけは、ある芸人さんがスキャンダルで活動自粛したこと。才能を知る人たちからは、「このまま表舞台から消えるのは惜しい」という声も聞かれ、YouTubeチャンネルを始めることにしたそうです。
重視したのは「泥臭さ」。そのために、2つの限定ルールを設定しました。
- 高級店ではなく、地域に根付いた町中華や居酒屋のようなお店に限定
- 店側との事前の打ち合わせはなし。1日10キロほど歩いて聞き込みからの偶然の出会いに限定
グルメで有名な彼が、7時間近くかけて地元の味を探す姿が、視聴者の共感を呼び、信頼回復につながるのではないかと考えたそうです。
クオリティ重視で、初動の勢いに
泥臭いロケによる共感性を支えるもうひとつの柱として、映像のクオリティを重視したといいます。
新たなYouTube番組が増えている中で、撮影・編集・CG・音響の各分野にテレビ出身のプロフェッショナルを集結。本気でクオリティの高い番組を制作する体制を整えました。
その結果、配信から1週間ほどで映画監督や著名なクリエイター、芸人さんたちからの反響が。初速での話題づくりを設計していたことが功を奏した、「再起にかける覚悟」を表現すれば、一度落ちたブランドでも再び信頼を取り戻せる。そんな手応えを感じた瞬間だったそうです。
共感したくなるストーリーとゴール
こうしたアプローチは、ブランドの再構築や、商品・サービスの広報PRにも通じます。大切なのは、「共感したくなるストーリーとゴールをつくる」こと。
まず取り組んだのは、「得意分野であるグルメを通じて、再び評価を取り戻す」というゴールを明確にすることでした。
「売りたい理由」だけではなく、ストーリーやゴールを設定し、そこに向けて一緒に歩んでいく。そうしたストーリーやゴールがあるからこそ、共感を得られるのではないでしょうか。

「まだ知られていない魅力」をどう仕掛けるのか
広報PR活動をするうえで、「知られていない」は弱点に思われがちです。しかし、「仕掛け方次第で武器にできる」可能性に満ちているとトークセッションの中で語られました。
ニッチを主役に突破口をつくる
西村さんは人気お笑いコンビではなく、その「マネージャー」に焦点を当てたYouTube番組を企画。
マネージャーというニッチな存在と、ほかの番組で扱われていない「空白地帯」が強みとなったと振り返るこの企画は、登録者数が約2,000人の段階で61万回の再生を記録しました。
光の当たっていない領域を企画化する
澤井さんが担当されているタクシードライバーさんに「地元のおすすめ店」を紹介してもらうテレビ番組を、ご覧いただいた方も多いのではないでしょうか。当時、有名人の行きつけや定番の人気店を紹介するという型が多い中、「タクシー運転手」という独自性の高い視点を活かしました。
コロナ禍で外食に対する世の中の熱が高まっていた時期と重なり、特番の中でも最高クラスの視聴率を記録。その後レギュラー化され、ファンの間では「街歩きグルメの新たな情報収集ツール」のように機能し始めているそうです。
無名は弱点ではなく「語りの余白」になる
「無名は弱点ではなく『まだ誰も手をつけていない素材』という強みでもある」と話す西村さん。まだ知られておらず、語られていないからこそ、視聴者にとっては新鮮さがあり、文脈を自由に設計できるため、適切なタイミングや切り口を合わせることで、「語りたくなる対象」に変わり、結果として大きな反響を生むことが可能になるのだと説明しました。

意外な組み合わせで「語りたくなる」を創出
3人が共通して語るのは、「予定調和ではない少しズレた意外な組み合わせ」こそが人の心を動かすきっかけになるということ。異なるもの同士を組み合わせた時に生まれる「ちょっとした違和感」が、人の注意を引くスイッチになるとソマさん。ただし、単に奇をてらうのではなく、受け手が共感できる軸を持たせることが大切だと強調しました。
例えば、西村さんは情報番組での「温泉×遊園地」を組み合わせた別府市の取り組みに注目。一見ミスマッチでも、体験したくなる組み合わせには拡散力があると考え、オンエア後には狙い通り話題となりました。また、澤井さんが手がけたトーク番組では、意外な芸能人同士の組み合わせに徹底的にこだわったそう。その結果、ゲストの隠された素顔が引き出されて大きな反響を集めたそうです。
「ズレた組み合わせ」の例
- ウーロン茶×シャンパンタワー:健康的なイメージと非日常の融合によるイベント性の創出
- ボウリング×100ピッタリ:高得点ではなく「100点ちょうど」を狙うことで、幅広い参加者を巻き込む
- 扇風機×お化け屋敷:扇風機の冷風演出と、出口での最新家電を訴求する導線構築

【質疑応答】参加者からの質問に、ソマさん・西村さん・澤井さんが回答
ここからは、広報PR担当者から寄せられた質問への回答をご紹介します。当日は時間の関係で回答いただけなかった質問に対し、追加でお答えいただきました。
──ブランドを損なわずに商品をアピールしたいのですが、ブランディングに気を使いすぎてSNSで魅力的な発信ができていません。まず何から取り組むのが有効でしょうか。
ソマさん(以下、敬称略):まずは自社のブランドと「いちばん逆」にある単語を考えてみるのはどうでしょうか。対極にあるものを理解することで、ブランドの軸がはっきりするだけでなくアイデアも出しやすくなるはずです。そのうえで、SNSは最初の3秒が勝負だと思っていて、そこで何を見せるかをきちんと決めていくことが大切だと思います。
西村さん(以下、敬称略):みんなが思いつきそうな案をすべて紙に書き出したうえで、ベタなものから少しずらしたことをしてみるのもおすすめです。もちろん、あまりズレすぎていても商品の魅力が伝わらないので、僕は「少しずらす」ということを意識して企画を考えています。
澤井さん(以下、敬称略):SNSを始めても続かないケースというのは意外と多くあります。全員のモチベーションが同じ方向を向いていないと運用が止まってしまうので、まずは「自分たちは何を本当にやりたいのか」を話し合い、意思統一をすることも大切だと思います。
──食品会社でひとり広報をしています。ひとりでどのような広報PR活動ができるのでしょうか。
ソマ:「ひとり広報」は実は「味方になってもらいやすい」という強みもあると思うんですよ。例えばSNSのアカウントも「ひとりで運用している」ということが伝わるだけで、「中の人」を支えてあげたいと思う人は多いと思います。ですから、「ひとりしかいない」ことを積極的にオープンにして、応援してもらえるような形にするのも方法のひとつではないでしょうか。
西村:僕も放送作家としてひとりでやっていますが、普段から一番意識しているのは、テレビ業界以外の人に出会うということ。同業者と集まると、どうしても内向きの話になりがちですが、異なるジャンルの人たちと会って意見交換をすると大きな刺激になります。
広報PR活動も同じで、一見すると仕事にはつながらなさそうなジャンルの方ともコミュニケーションをとったほうが、新しい刺激になるはずです。「直接人に会いにいく」ということがポイントですね。
澤井:僕にとって「ひとり」は強み。ひとりだからこそ、いろいろな人とコラボレーションしていくことで、異なる魅力を見せていけると思います。まずは「仲間づくり」からスタートするのがいいと思いますが、SNSごとに見ている世代や特徴が異なるので、自社の特徴にマッチしたものを選んで発信していくのがおすすめです。
──「ズレた提案」をする際に、どのようにしてクライアントからOKをもらうのでしょうか。
ソマ:これは地道な理論武装と数を打つしかないのかなと思います。
西村:僕は逆に理論武装というよりも熱意で伝えるタイプ。「絶対にこれはおもしろいです!」と、言い方ひとつで通す感じです。なんとなくのプレゼンでは伝わらないので、自分が「絶対に当たる」と思ったら、本気で伝えるしかないのかなと。
──プレゼンの際には、突飛な案と無難な案の両方を発表するのでしょうか。
西村:僕は「少し受けそうなもの」「通りそうなもの」「ダメそうなもの」を、クライアントのタイプを想像しながらうまく順番を変えて提案しますが、自分がやりたいものはやはり熱量が高くなりますね。
──「無名×発見されていない魅力」というお話がありましたが、「自分だけが気づいている魅力」をどう世の中に届けていけばいいのでしょうか。
ソマ:独自の目のつけどころで見つけたものはオリジナリティがあるので、あとは「どのように共感させるのか」を考えていくことだと思います。
西村:「目のつけどころ」は自分を信用するしかないですよね。自分がおもしろいとおもったら、それが有名であれ無名であれ、疑わずに世に打ち出していくしかないと思います。
澤井:そうですね。自分が「おもしろい」と思うものを信じるということが大切なのかなと。
──「ちょっとズレている意外性のある組み合わせ」で、ズレすぎを防ぐコツはありますか。
ソマ:自分がズレすぎだと思っても、ほかの人にとってはそうでもないこともあるので、とりあえず、「ズレすぎているんですけど」と前置きをするようにしています。
西村:とにかく案をたくさん出して微調整していくことでしょうか。
澤井:僕たちも企画を出す際に、失敗して通らないものがほとんどなんです。でも、その通らないものから「ここがズレすぎているのか」ということがわかるようになってきたので、失敗することが実はすごく重要だと思っています。
──【追加質問】セミナーやイベント企画、プレスリリースなどを担当しております。3秒が大事とのことで、「タイトル」がまさにあてはまるかと思います。しっくりくるテーマが決まらず煮詰まったり、ChatGPTと延々と会話したり、という状況です。どれくらい時間をかけるべきか、どう抜け出すのかなど、お考えを伺いたいです。
ソマ:経験的にタイトルは考え始めた30分で出なかったら一回忘れて締め切り直前までほったらかすことをよくやります。個人的に最初のスタート時点が一番フレッシュに考えられると思うので、そこの脳の初速みたいなものを大切にしています。そこで無理なら、どこか頭の片隅に置いておくことはせず、最後のケツ合わせで考える。
キャッチコピーやタイトルなど、「短めの強いワード」を生む時は長時間考えればいいというものではないことを、ぼんやり理解しているので「制限時間を強制的に設けること」を大事にしています。ChatGPTに頼りたくなることもありますが、なかなか2025年11月現在では精度に欠けるので「最もイメージから遠い単語出して」とお願いするようにしてアイデア出しは手伝ってもらっています。
西村:僕もタイトルはめちゃくちゃ悩みますが、「時間」ではなく「出し方」を決めておくようにしています。まずは、自分でもベタだと思う案を全部出し切る。みんなが思いつくであろう言葉を、一回全部並べます。そのうえで、「一番ベタな案から少しだけずらす」という作業に切り替えます。
あとは、一度タイトルから離れて、「この企画って、誰に向けて、何を一言で言いたいんだっけ?」という「芯」をもう一度言葉にしてみる。それをやると、意外と解像度の高いタイトルが出てきたりします。
澤井:正解は自分の中では中々生まれにくく、難しいと思います。タイトルはわかりやすさと印象に残るキーワードが入っている方がいいのでそこを重視します。記憶してしまう言葉です。あとは3つくらいまで絞ってから信頼している数名に客観的な声をもらうのもおすすめします。
──【追加質問】代表が少し保守的な考えなのですが、意外性・面白さ・リスクの境界線など、皆さんが企画をする中でご自身の中で基準はありますか。また、企画を立てる時点でリスクはある程度排除する、もしくは企画が完成してから排除するのか、どのタイミングで検討されますか。
ソマ:「面白さ>意外性(=オリジナリティ)>>>>>>リスク」くらいの優劣で考えています。自分のアイデアで勝負していく以上、自分の信じた「面白さ」に一番価値をおきたいと思っています。それこそが武器であり、自分が経験で培ってきたものだと思うのでそこは大事にしたいと感じます。その次にアイデアが過去に類似性のあるものだったりすると難しいので、オリジナルなものであること=意外性と位置付けています。これまでに世に出ていない形のモノへのこだわりは持っておくという基準です。
この2つがハマる場合、リスクはある程度度外視して、一緒にプロジェクトをやっているメンバーに「リスクはどうですか」と客観的に判断してもらうようにしています。ひとまずリスクの優先度を下げて、発想にブレーキをかけないようにしています。
西村:まず、企画を出す段階ではあえてリスクをあまり考えないようにしています。最初から「怒られないラインどこかな?」を考え始めると、絶対に普通しか出てこないので。プレゼンするときは「通りそうな案」「ちょっと攻めた案」「かなり攻めた案」を用意して、相手のタイプを想像しながら順番を組みます。リスクを本格的に考えるのは、最終段階かもです。
澤井:保守的な人の価値観を変えるのは至難の業ですね。僕が大きく大事にしているのは「人を傷つけていないか?」「人がクスリと笑ってくれるか?」「人に話したくなるか?」「もう既にほかでやられていないか?」の4つです。そこをクリアしていれば突き進んでいいと思っています。
──【追加質問】「ズレた組み合わせ」のお話、自身の仕事で何ができるかな、と想像しながら伺っていました。泥水をすするような経験をされてこられたからこそだとは思いますが、発想力や想像力など、企画に活かされる力はどうやって鍛えたのでしょうか。
澤井:自分が闘うフィールドの教科書を勉強する。テレビで企画を考える人はテレビを観ていないと話にならないようにアウトプットする場所をとにかく勉強することで「型」が見えてきます。
ソマ:とにかく失敗を重ねたといえるくらい、会議の時などにアイデアをだしまくることです。そのためにさまざまなものからインプットしまくるしかないと思います。テレビ、YouTube、映画、音楽、絵画、あらゆる人の手によって作られているものを見て「自分が好きなモノ/心が動くもの」と「今日見たモノとの差分」を頭の中で考えてみるを習慣づけするとなんとなく自分の発想力や、想像力が育っている気がしてきます。結論、育っているかはわからないのですが。
お前はこれだけ色々見ているのだから大丈夫だと言えるくらい、言い聞かせるくらいひたすらインプット。そして失敗してもいいと思うほどアウトプットするといいと思います。
西村:実態はかなり泥臭くて、
- とにかくたくさん企画を出して
- めちゃくちゃボツをくらって
- 「どこがズレすぎていたのか」を後から振り返る
この繰り返しです。
あと、テレビ業界以外の人に会いにいくことはかなり意識しています。広告の人、メーカーの人、スタートアップの人……自分のフィールドとは関係なさそうな人たちの話を聞いていると、「この視点と、この商品を掛け合わせたらおもしろいかも」というズレの種みたいなものがどんどん貯まっていきます。発想力は、机の前だけで鍛えるというより、会った人の数だと思っています。
──【追加質問】「想定外の組み合わせで話題を生むスイッチ」について、意外性ある組み合わせ(予定調和ではなく)という点、個人としてよく理解できました。BtoBの事業やサービスだと、予定調和が正しいという概念も強く、どのように活かしていけばよいでしょうか。
ソマ:すごく同意です。このような時、自分たちなりの尖った意見に自信が持てる場合は
C案くらいで提案するのがいいと思います。
少し色が変わっているものの自分の用意したものに自信があるとします。その際、A案は「行儀のいい常識の範囲内」、B案は「少し攻めたもの」、C案は「自分の本命」というような形で少しハードルが下がった中で提案することで、少し聞き入れやすい土俵が整っているように思います。ただし、自己表現ではなく万人に受け入れられるサービスだったり商品である必要があるので、あまり攻めすぎたC案だと関係が悪化しかねません。C案を伝える際に、口頭で「ちなみに」や「ジャストアイデアなのですが」と前つけして提案するのもいいかもしれません。
西村:BtoBの世界は、「ちゃんとしてること」がまず前提として求められるので、いきなり大きくズラすと、ただの「ふざけた案」に見えがち。過去に、私も空気を読めず、たくさん失敗してきました。
なので、
- 見た目やトーンはちゃんとBtoB
- 小さな意外性。少しずらすことを意識
- 安心感は残しつつ、小さな意外性を入れる
くらいがBtoBでは一番ちょうどいい気がします。
澤井:予定調和の中で大きく変化させるのではなく、小さな変化を作ることで「GO」を押してもらうこともあります。まずは、「少し変えてみる」をやってみてもいいですね。
──【追加質問】伝統産業に携わっています。高齢化や事業承継など、直面している社会課題を広く知ってもらうためにSNSなども活用していますが、社会的メッセージ性のある製品の場合でも、この企画の考え方は応用可能でしょうか。
澤井:もちろん可能です。伝統産業こそ元のイメージが強い分、そこからのギャップを作りやすいと私は思います。ただ、伝統のしきたりに迷惑をかけないバランスのいいアイデアが大切になりますね。
ソマ:僕ももちろん問題ないと思います。これまでの先人の方たちが積み上げてきたからこそ、少し切り口を変えたりというのが「フリが効いてる分」効果的に効くのもあると思います。
例えばNHKの番組がおもいっきりふざけた時の方が「何かすごく面白く見える」というような感じです。
ただし、その場合はお客さまや、商品を届ける先の方より、まずはその伝統を積み重ねてきた人にしっかり説明をしてリスペクトをもっているからこそ「変化を作る」時には「ぶち壊すことへの理解を身内に求める慎重さは必要かもしれません。
西村:むしろ伝統産業こそ、今回の考え方と相性がいいと思っています。伝統や社会課題は、ちゃんと伝えようとするとどうしても「お説教」っぽくなりがち。そこで、「無名×発見されていない魅力」の発想が効いてくると思います。
例えば、「職人さんの手のアップだけを延々と見せる」みたいな、一見地味な部分を主役にするだけでも、伝統産業の「まだ語られていない魅力」が立ち上がってくる、かもです。
社会的メッセージを真正面から打ち出す前に、その入口をどうズラすか、という発想は応用できると思います。
──【追加質問】テレビ番組では視聴率、YouTubeでは再生回数が伸び悩むことがあると思います。その際、どのタイミングで軌道修正を計るのか、どのように判断するのかなど伺いたいです。
ソマ:コンセプトの見つめ直しと、最近出したものがそのコンセプトにあっているか、ひたすら検証・振り返りをするといいかもしれません。急に大きく変えても、過去作との物差しになりにくいので少し些細なところから変化を加えていくのがいいと思います。結果が出ていた時の「過去の自分に教えてもらう」という目線で振り返るようにするといいかもしれません。
澤井:テレビの場合、数字が悪いからすぐに企画をかえてしまおう!という番組が多いですが、やっていることが面白いと思っているなら数回はブラッシュアップを重ねて、試しなおしてみることも僕は大切だと思っています。視聴週間や定着もあるので。
西村: YouTubeの場合は、まずサムネとタイトルのパターンを変えてみる、といった軽めのチューニングを何回かやって、それでもダメなら構造から見直します。
テレビも同じで、いきなり企画を変えるのではなく 「どこがネックになっているのか」を冷静に分解してから、 「それでも無理なら変える」という判断かもです。
──【追加質問】YouTubeにはポジティブなコメントが並んでいますが、ネガティブなコメントがあった場合、どう受け止めていますか。
西村: コメントを全部真に受けるとメンタルがもたないので、それほど真剣に見ないですが「企画や構成に対する具体的な指摘」これはめちゃくちゃ参考にします。
特に、同じ指摘が続いたときは、「これはたぶんこちら側の課題だな」と認識して、スタッフ間で話し合います。
澤井:へこんでいても前に進めないので、僕も取り入れられるものは受け入れ、誹謗中傷は流す。それくらいシンプルでいいと思います。
ソマ:ポジティブなコメントは全部そのまま鵜呑みにして、ネガティブなコメントは理屈の通っているものを鏡として取り込み、その他の意見は「自分じゃないと受け止めてあげられないからいくらでも吐き出していいんだよ」的な菩薩的な気持ちになるようなスイッチを入れています(笑)。でも結局、うじうじ気にしちゃいますよね。その10倍は栄養になるコメントも多いので気にしない。気にしない。というところでしょうか。
──【追加質問】情報発信を前提としない担当部門から上がってくるネタを、彼らの考えに配慮しながら発信内容を練ることも多く、自由度は高くありません。社内、担当部門に広報PRへの興味・関心を持ってもらうためには、どのようなコミュニケーションをしたらよいと思いますか。
澤井:大きな企業のPR成功事例をパワーポイントとかにまとめて一回観てもらうことも大事かと思います。そういう実例や数字に弱い人がとても多いので。
西村:担当の方が、「主役になっている瞬間」を一度見せることかもしれません。
たとえば、「SNSの反応をちゃんと共有する」とか。「あなたの知見がこんなふうに届いていますよ」とちゃんと伝えること。すると、本人のほうから前のめりになってくれると思います。
一度「成功体験」を一緒に味わってもらうほうが早い気がします。
ソマ:まず担当外だから発信への圏外ではないので、まず「共通の課題」や「共通の目的」などを言語化するのがいいかもしれません。同じ社内なので味方・家族なのでフラットに、必ず何かを出さないといけない会議を設けるのでなく、雑談ベースから共通項を見つけ、一緒にやっていく道を模索していくのも一つの手だと思います。
「20分だけ会議しましょう」とよく自分は使うのですが、30分もないからしっかり目の会議でもないし、15分でもないから雑談の会議でもないので、個人的にはおすすめです。
──【追加質問】あらためて共感について伺いたいです。「共感を生みたい」というのはよく言われますが、そもそも何が共感なのかがわかりません。 共感ポイントの見つけ方を教えてほしいです。
ソマ:共感というと高尚な、感性の理解みたいなイメージがあるので、もう少しハードルを下げて「あるある」みたいな感じなところから見つけるといいかもしれません。
YouTubeで芸人さんのあるあるネタを探したりして「あ〜この状況わかる」とか誰しもが一度経験してきたこととかを「こう感じることってあるよね?」という目線で自分のビジネスの範囲でスケールとしていく。もし、質問者さんがサッカー部だったら「@@@な先輩ほど@@する」とかよくある光景を人に説明する時をイメージすると共感について考える最初の一歩になるかもしれません。
西村:また「共感」は、すごく大きな言葉で語られがちなんですけど、 僕の感覚ではもっと小さくて、「それ、俺も思ってた」「そこ気になるの、わかる」このどちらかが起こっている状態だと思っています。
なので、共感ポイントを探すときは、立派なストーリーよりも、生活の中の小さな気づきやモヤモヤを探しに行きます。
澤井:参考にならないかもしれませんが、僕は人はどうすれば共感するのか?飲み会とかで試したりします。子育てしている友人の前で子どもの共感する話をしたり、夫婦ケンカしている友人には夫婦の共感する話をしたり。日常に共感を試せる場所は転がっています。
──【追加質問】今回の登壇資料、大変わかりやすく、見やすい資料でした。資料づくりで意識されていることを教えてください。
澤井:言いたい文字を大きくするなど文字のサイズを一定にしない。あと、色は3色以上使わない。文字数は多すぎない読みやすい資料を心掛けています。
ソマ:何をおいてもテキスト文章が一番です。まず言語化とテキストか、パワポの資料ならP1はこのテキストで設計図を書いていくことが大事だと思います。装飾や、イラストを入れたりも大事ですが、作業時間の2割くらいで十分なので、最初は文字だけで資料などは完走させることが個人的に一番大事にしています。
フォントとか、文字の大きさとか、色とか迷いますがまずはスマホでも、なんでもいいので、テキストで構成を最後までつくっていくことが何より大事な気がします。
西村:企画書は、「相手の頭の中にイメージを立ち上げるツール」だと思って作っています。
- とにかくシンプルに
- 文字を詰め込みすぎず、「何を伝えたいのか」を優先する
細かい情報は口頭で補足できるので、資料はあくまで「一瞬見てわかるもの」にしておくと、プレゼンもしやすくなると思います。
まとめ:火を絶やさず継続することで成功をつかむ
PR TIMESカレッジVol.10の第一部では、テレビやYouTubeのコンテンツ制作の第一線で活躍するソマさん・西村さん・澤井さんの経験から、ブランドやコンテンツの価値を再構築するヒントが語られました。
印象的だったのが、「まだ知られていない魅力こそ、新しい価値の起点になり得る」ということ。ニッチな存在や空白地帯をあえて主役に据える発想、異なる要素を組み合わせた「少しズレた組み合わせ」から生まれる違和感が、語りたくなる文脈をつくり出す。そこには、有名・無名にとらわれず、自分の目のつけどころを信じる姿勢が共通しています。
また、「継続」ということも、3人が大切にされてきた要素のひとつです。打ち上げ花火的な広報PR施策の成功はそう多くはなく、試行錯誤しながらも火を絶やさないこと。そのような地道な広報PR活動が、ブランドの輪郭をより豊かにしていくはずです。
今回の学びが自社の広報PR活動に新しい視点をもたらし、次の一歩を形づくるきっかけになれば幸いです。
続いて第二部、X Corp. Japan株式会社の代表取締役松山さんによる講演レポートをお届けします。
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