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AI×SNSで変わる広報PR。GrokとXが示す新しいコミュニケーション設計とは|PR TIMESカレッジ Vol.10~第二部~

AIの進化が加速するなか、広報PR活動においても活用方法に注目が集まっています。生活者が情報を検索するよりも、AIの答えをもとに行動を選ぶ時代とも。企業やブランドは、どのように生活者とつながり、信頼を築いていけばよいのでしょうか。

株式会社PR TIMESは、2025年10月21日に学びとつながりの広報・PR担当者向けコミュニティイベント「PR TIMESカレッジVol.10」を全国5都市とオンラインで開催。第二部は、X Corp. Japan株式会社 代表取締役の松山歩氏が登壇し、「SNSの先にある新たな情報の生産と消費の未来」をテーマにお話いただきました。

いまや企業の広報PR活動において欠かせないツールのひとつであるSNS。AI時代における情報発信の新たな視点や、Xを活用した効果的なコミュニケーションのあり方についてなど、これからの情報発信に役立つヒントが満載です。

X Corp. Japan株式会社 代表取締役

松山 歩( Matsuyama Ayumu)

1999年東京大学工学部卒。1999年から2005年までは読売広告社にて営業を担当し、インターネット広告の提案活動を推進。2006年から2014年までは、日本マイクロソフトにて、広告事業部門の部長として主に広告会社様担当組織をリード。2014年にTwitter Japan入社後は広告主担当部門の部長として主に、消費財、通信業界等を担当。2019年からは執行役員、広告事業本部長として、国内大手広告主様担当部門をリードし、顧客中心主義の組織構築、業務運用体制の構築に従事。

「ゼロクリック時代」の情報発信で大切にすべき5つのこと

「ゼロクリック時代」では、AIからの回答がブランドの印象を左右する可能性が高くなっています。「AIの理解を踏まえた情報発信」が大切となる今、松山さんの講演で語られた広報PR担当者が押さえておきたい5つのポイントを紹介します。

  1. AIフレンドリーなコンテンツを作成すること
    AIで検索する人の多くは「評判・使い方・比較」など質問をします。そのため、それらに対応する見出しや回答をあらかじめ用意しておくことが効果的。さらに、オリジナルの統計データや調査結果を盛り込むことで独自性と信頼性が高まり、AIに正確に理解されやすくなります。

  2. ブランドの権威性とメンションを強化すること
    AIはレビュー情報を重視して評判を形成するため、一定数のレビューが蓄積されていることが信頼性の判断材料に。高権威メディアでの掲出を増やすだけでなく、顧客の評価やレビューを積極的に公開していくとよいでしょう。

  3. SNSでの発信を活性化すること
    ハッシュタグやスレッドを活用し、会話の流れの中で価値を伝えていくことも大切なポイントのひとつ。日々の発信で好意的なエンゲージメントを積み重ねることで、AIがブランドを正しく理解しやすくなります。

  4. 視覚的にも魅力的に表現すること
    比較表や図解など、多様なフォーマットを活用することも効果的。視覚素材はAIが理解しやすい情報として認識されやすく、学習効率も高くなるとされています。

  5. 測定と改善のサイクルを回すこと
    ブランドセンチメントや情報の正確性などをKPIに設定し、定期的にモニタリングすることで、AI上でのブランド理解を適切に保てます。
PR TIMESカレッジ Vol.10~第二部~01

Xの代表が語る効果的な情報発信とは

広報PR活動の重要な発信拠点として、多くの企業が利用するX。リアルタイム性や拡散性に加え、独自AI「Grok」がタイムラインのランキングや「本日のニュース」などの機能に組み込まれ、話題の投稿を自動的かつリアルタイムにまとめています。

そのため、X上でより効率的に情報発信をするためには、Grokの特徴を理解したうえで、「どのように語られ」「どのように会話が生まれるか」を設計することが大切です。

発話を促すコミュニケーション

AIが学習するうえでより重要になるのは、論文やオープンデータのような静的な情報に加えて生活者のリアルな感情や本音のデータ」だと話す松山さん。だからこそ、Xを使った情報を発信する際には、ポジティブな口コミや評判がX上に蓄積される状態をつくることが重要と説明します。

公式アカウントやキャンペーンの設計段階で「思わず話したくなる仕掛け」を用意し、「〜か(どうか)」と問いかけるコミュニケーションが有効とのこと。例えば、キャラクターアイスなら「全種類をコンプリートしたか」、生ジョッキタイプの缶ビールなら「本当に『生感』があったか」、掃除用品なら「新機能で快適になったか」など、受け取った側が語りたくなる問いかけ、つまり「発話を生む設計」が、欠かせない要素になっていくそうです。

X投稿で意識するポイント

Grokが投稿内容や反応を学習する中で、どのように投稿を届け、反応を生むかは、アルゴリズムの進化を踏まえ、戦略的に運用するポイントを見てみましょう。

  1. 高いエンゲージメントを誘うコンテンツをつくる
    Xではリプライやリポストといったエンゲージメントが最も重要な評価指標。投稿後1時間以内に10件以上のエンゲージメント獲得を目安に、コミュニケーションが生まれやすい投稿設計を意識することが有効です。

  2. 画像・動画などのメディアを活用する
    高品質の画像や短尺動画を添えることで、投稿の視認性が大きく向上します。ALTテキストの最適化はSEO的な観点でも有効。また、15秒以内の動画にキャプションで文脈を補足することでインプレッションが伸びる可能性があります。

  3. トレンドや関連トピックを取り入れる
    トレンドに関する投稿はスコアが上がりやすく、露出拡大につながります。リアルタイムで動くトレンドを確認し、ハッシュタグは2〜3個に留めるのがポイント。多すぎるとスパム扱いされるので気をつけましょう。ニッチコミュニティを狙ったメンションや話題設定も効果的です。

  4. 投稿のタイミングと一貫性を保つ
    情報の「鮮度」を重視するXでは、ユーザーがアクティブな時間帯への投稿が効果的。平日8〜11時・15〜20時が目安とされ、1日3〜5回の投稿頻度を継続することで、タイムライン上での存在感が安定します。

  5. アカウントの信頼性を高める
    投稿者の信頼性もとても重要なスコアのひとつ。フォロワーとのリプライや双方向コミュニケーションを重ね、関係性の質を高めることが信頼性スコアの向上につながり、結果的にインプレッション拡大にも寄与します。

Grokを使ったコミュニケーションの組み立て

Grokを使ってどのようにターゲット理解を深め、コミュニケーション戦略につなげていくのかを、具体例とともに紹介します。

  1. まずは市場の大きな流れを把握する
    Grokに「◯◯バーガー(具体的な商品名)のトレンドと背景を教えて」と質問します。例えば、秋の季節に合わせて毎年発売されるような商品の場合、その時期に合わせた商品展開が各社で広がっていること、家で食べる率が高いこと、さらには「家族でお月見を楽しむ」という文化的背景まで提示されました。トレンドの広がり方から文化的文脈までを横断的に把握することで、企画の土台となる全体像を整理することができます。

  2. 生活者像をリアルな声から深掘りする
    次に「◯◯バーガーの利用者について教えて」と質問すると、親子間のコミュニケーションが購入のきっかけになっているというようなインサイトが浮上。Grokはその根拠となる投稿も示します。こうした生活感のある声から、商品が家族の会話をつなぐ役割を果たしていることが見えてきました。

  3. ターゲットの解像度をさらに上げる
    さらに「思春期の子を持つ親」を深掘りすると、関連投稿の2〜3割が「10代の子どものリクエストがきっかけの購入」であることや、85%の親がそのリクエストを肯定的に捉えていることがわかることもありました。加えて、子どもが親に購入を頼む「おつかい」という行動を通じた親子の関係性が見えることもあります。

  4. インサイトをもとにキャンペーン案を生成
    得られたインサイトを踏まえて、Grokに「このテーマでキャンペーン案をつくって」と依頼すると、「#〇〇リクエストチャレンジ」というハッシュタグとともに、子どもの「買ってきて!」を秋のイベントとして楽しむ親子企画のコンセプトが提示されました。その提案に手を加えながら磨いていくことで、実際のコミュニケーション施策に発展させていきます。

  5. 表現づくりまで一貫してサポート
    Grokは企画だけでなく、親子のシーンを表現した画像生成などビジュアル制作にも活用できます。アイデアから表現まで一気通貫で設計できる点が大きな強みです。
PR TIMESカレッジ Vol.10~第二部~02

【質疑応答】参加者からの質問に、松山 歩さんが回答

ここからは、参加者から松山さんへ寄せられた質問への回答をご紹介します。当日は回答いただけなかった質問に対しても追加でお答えいただいています。

──AIに学習してもらうために、自社の情報を英語でも発信する必要はありますか。

必要ありません。Grokを含む最新のAIは多言語に対応しており、日本語のコンテンツだけでも十分に学習できます。国内市場が中心であれば、日本語での発信を充実させることが優先です。

──BtoB企業はXをどう活用すると効果的ですか。

XはBtoCの印象が強い一方で、利用者の多くはビジネスパーソンです。通勤時間や休憩時間に「ニュース」としてチェックされることも多く、App Storeでもニュースカテゴリに位置づけられています。

ただし、専門性の高い情報をそのまま投稿しても届きづらいことがあります。「ビジネス層がすき間時間で読みやすい柔らかい切り口」「思わず反応しやすい視点や小ネタ」などの工夫を加えることで、BtoB企業でもエンゲージメントが生まれやすくなるでしょう。

──AI生成コンテンツと人間のコンテンツを見分ける仕組みはありますか。

Xでは早い段階から、AIが大量に投稿する未来を見据えた対策を進めてきました。その一つが有料認証マークです。クレジットカードと紐づけることで、匿名AIアカウントの無制限な増殖を防ぎ、アカウント自体の「実在性」を担保しています。

コンテンツ単位での判別は難しいものの、まずは投稿者が人間なのかAIなのかを明確にし、利用者に判断材料を提供することを重視しています。

(追加回答)またXにおいては、AI生成かどうか判別が難しいものに対して「コミュニティノート」が追加されている場合もあります。コミュニティノートは誤解を招く可能性があるポストに対して協力者として認められたユーザーが、ポストに背景情報を追加できる機能です。画像や動画付きのポストに対して、「AIで作成されています」と証明付きでノートが付いているケースもよく見られます。

また投稿へのリプライでそのような会話がされている場合もあるため、ご参考にしていただければと思います。

──BtoBで参考になるXアカウントはありますか。

高度な技術や専門的なプロダクトであっても、つくり手のこだわりや裏側が見える投稿は多くのユーザーに響くのではないでしょうか。普段触れられない現場の空気や、開発者がどこに情熱を持っているのかが伝わるアカウントは、BtoBであっても興味を惹かれますね。

──SNS発信を特定の担当者に依存しないためには、どう仕組み化すればよいですか。

大切なのは、「キャラクター設定」「口調」「トンマナ」を丁寧に言語化し、マニュアル化することです。国や言語が違ってもアカウントの「人格」が一貫している企業は、ルールづくりと体制作りがしっかり整っていると思います。

話し方のスタイルや許容するユーモアの範囲、「そのブランドらしさ」の定義といった基準を明確に共有しておくことで、担当者が変わっても発信の質がぶれずに継続できるのではないでしょうか。

──【追加質問】Grok(AI)の現場や新しい可能性を勉強できました。Grokをどのように活用したら「PR TIMES」をより効果的に配信できると思いますか。

プレスリリースを作成する際には、実際に生活者の視点から、どの点をどのように表現すると注目されやすいか、共感を呼びやすいか、という点をGrokに聞いてみる、もしくは、書いたものを一度Grokに講評してもらう、というプロセスを入れてみてはいかがでしょうか。配信後に拡散を促進するためにも、生活者が何に響くのか、どのような切り口だと興味を持ちそうかなど、Grokで事前にリサーチすることをおすすめします。今Xで話題になっていることと関連性を高めることで、関心を持たれやすくなり、会話のきっかけにつながると思います。

──【追加質問】Grokによる顧客分析をしたいのですが、広告やインフルエンサーPRの内容は排除されますか。また、非公開アカウントの内容もAIに反映されていますか。

広告やPRの内容も学習対象になります。基本的にはすべてのポストを学習しています。

──【追加質問】Grokを使用しての画像生成は、効率を考えるとぜひ活用していきたいです。AI特有のAIっぽい画像が出来上がる印象がありますが、この点を克服するためのポイントはありますか。

Grok Imagineはさらに進化していき、よりリアルに、柔軟に、自由に表現が可能になると思います。別の考え方としては、あえてAIっぽさが残ってもよいのではと考えます。それよりも映像の中身自体で目を引き、興味を持ってもらうことが重要ではないかと考えます。

──【追加質問】企業や商品に関する誤った情報が拡散されている時、その情報が正しいデータとしてGrokに認識されてしまいますか。その際、どのように訂正するのが効果的ですか。

まず自社に対する誤っている情報が拡散されていることを見つけた場合は、自社アカウントから、訂正の投稿をすることが非常に重要です。自社アカウントからの情報が一次情報として重要視されますので、たとえ誤った情報が拡散していたとしても、カウンターファクトとして参照されることが多いです。よって打ち消すために非常に有効です。またコミュニティノートに書き込むことも重要です。コミュニティノートを書くことができるコントリビュータの権利の取得をぜひともおすすめいたします。

──【追加質問】Grokによって、UGCに沿ったキャンペーンが可能になっていると思います。AIによって、広報やPRの方法は大きく変わっていくと思いますか。

はい、大きく変わると考えております。AIがオーディエンスのことをより深く理解することで、より柔軟で的確なターゲティングが可能になりますし、ターゲットの関心に合わせた表現も可能になります。また業務の合理化や高度化にもAIは大いに活用されると期待しております。

──【追加質問】BtoB企業において、専門性が高くターゲットが限定される製品・サービスを扱う場合の潜在顧客との関係構築など、限られた業界内で成果を出すための具体的な活用方法や戦略があれば教えてください。

BtoB企業であっても、訴えかける相手の方は、常に会社に住んでいて仕事のことしか考えていない人ではなく、普通の生活を送られている方がほとんどだと考えられます。BtoBシーンを想定して、製品・サービスの特徴や魅力をお伝えすることは基本として、それに加えて、一般の方が興味を持ってくれるような、トピックや話題を意識的に取り入れることも重要だと考えられます。一般の方が驚くような社員の方にしかわからない製品・サービスを提供するための努力や裏側を見せてあげることで興味を喚起できるかもしれません。また専門的なことであっても、漫画やキャラクターを使用することで親しみやすく説明することができるでしょう。

──【追加質問】Xにおいて、ユーザー投稿やミームにどのくらいのスピード感で対応するのがよいのでしょうか。早ければ早いほどよいですか。

ミームに乗るのは早ければ早いほどよいと思います。瞬発力をもって投稿できるよう、ある程度はSNS運用チームに権限を移譲しておくことがとても重要と考えられます。

PR TIMESカレッジ Vol.10~第二部~03

まとめ:「どう語られるか」を軸に考えるAI時代の情報発信

AIが情報の入口となり、SNS上の会話がブランド理解に影響を与える時代。「どう語られるか」という視点で語られたAI時代の情報発信で大切なポイントは以下の通りです。

  • AIに正しく理解される「AIフレンドリーなコンテンツ」を整備する
  • 生活者のリアルな声や評判を蓄積し、ブランドの信頼性と権威性を高める
  • Xを中心としたSNSで会話を生み、エンゲージメントを育てるコミュニケーション設計を行う
  • 測定と改善のサイクルを回し、AI上でのブランド理解を継続的に最適化する

AI時代の情報発信は、テクノロジーを使いこなすだけでなく、生活者との関係をより丁寧に築いていく営みでもあります。今回の内容が、これからの広報PRを考えるうえでのひとつの視点として参考になれば幸いです。

続いて第三部、インタビュアーの塚原沙耶さんによる講演レポートをお届けします。

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この記事のライター

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『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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