サイボウズでは社員の多様性に応え、社員個々の理想の働き方を実現する人事制度を策定しています。また、2020年に次期取締役を社内公募によって募り、新卒1年目を含む計17名の立候補者を翌2021年の定時株主総会にて選出したことで話題となりました。社内公募での選出は極めて珍しく、新卒1年目の候補者が含まれているというのは異例でしょう。
働く時間と場所の制約を設けず副業可、独立可と、社員を自社内だけに留めることを推奨しない制度は2012年から開始。自由すぎる働き方制度はまさに「100人100通りの働き方」を体現しており、驚かされます。カフェで仕事をする社員にはドリンク代の補助を行うことも認められているなど、自由な働き方を推奨していることが感じられる事例も。
そのような自由な働き方制度をどのように策定し、現場の定着まで実現させてきたのかを伺いました。
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社内公募取締役の選出
成功の秘訣は時間をかけたコミュニケーション
西村:サイボウズさんが社内公募によって、新卒1年目を含む17名の取締役を実現させた背景を教えてください。
山見さん(以下、敬称略):いきなり「社内で取締役を募集します」と言い出したら、理解されないと思うんですよ。
取締役を決めるのって株主総会で株主さまの賛同を得て実現することなので、そこで「どういうことなんだ」とならないように事前にゆっくりコミュニケーションしていく必要があると思っていました。
そこを広報とIRコミュニケーションに携わっている身として、株主総会前にイベントを別途開催して取締役の社内公募についてじっくり説明する場を作ったり、新聞広告も出してそこでコミュニケーションしたり、オウンドメディアのサイボウズ式で取締役についての理解を深める記事を他のメンバーと一緒に企画しました。いろんな手段を使ってコミュニケーションして、理解をしていただく活動をしてきた成果だと思います。
西村:戦略を立てて計画していったということでしょうか。
山見:そうですね。私も含め多くが取締役って雲の上の存在だと思っていたんですよね。
世の中のほとんどの人は、取締役が何をしているのか知らないというのが現状だと思うんですよ。その中でいきなり「取締役を社内公募しました」と言っても、株主さまを含め、社外の多くの方々にとってどう受け取ってよいのかわからない、その点を忘れずに進めてきました。急ぐことなく、じっくり半年とか1年かけていろんな記事を出してコンテンツを出し、チャレンジと言えるくらい時間をかけたコミュニケーションを行いましたね。
株主の顔の見える化への挑戦
西村:株主へのアプローチで力を入れていることはありますか。
山見:まず、闇雲に株主さまを増やしたいとは思っていません。もちろん増えることは嬉しいですが、サイボウズに共感してくれる株主さまを増やすことに力を入れています。認知度を上げる施策というよりは、共感度を増すような施策ですね。
もともと株を保有するというのは「その会社のことを応援したい」というもの。「その会社の取り組みに共感するから、投資を通じてその会社を応援する・その会社の活動に携わる」これが本来の株投資のあり方だと思っています。サイボウズの理念や製品、日々の活動に共感していただき、「サイボウズのためだったら株主として何かちょっとアクションをしてみたいかも」と思ってくださる方を増やす。そのために理解を深めていただけるコミュニケーション活動やイベントを行っています。顔が見えたほうが距離が近くなり、コミュニケーションが図りやすいため、その点にも注力して「株主さまの顔の見える化」に取り組んでいます。
「100人100通りの働き方」
同じ価値観を持っている人はいない
西村:サイボウズさまでは、100人いたら100人分の働き方があると掲げていらっしゃいます。その考え方の背景を教えてください。
山見:100人100通りの働き方っていう考え方の根本はすでに多様なメンバーが集まっているという前提なんです。男、女とか日本国籍、アメリカ国籍とか関係なく、その一個人という時点で多様であり、誰も同じ価値観ではないと思っています。そのため、サイボウズではメンバー1人ひとりが違うことを前提と考えて、「100人いれば100通りの働き方があっていいんじゃない」という発想。時間や場所を選ばないそれぞれが望むような働き方を実現できるようにしています。
西村:難しいことはありますか。
山見:そうですね。働く時間も場所も100人100通りで自由なので、自身の希望する働き方を実現するためにチームや上司と調整をはかったり必要に応じて人事労務へ相談しなくてはならないです。そのように自分で自分の働き方を決め、そのために自ら行動を起こすといったある意味自立が求められる点は、難しいと言えるかもしれないですね。
すぐにやってみる。ダメだったらすぐにアップデート
山見:サイボウズのいいところだなと感じることは、トップダウンではないこと。今、流行っているから、この制度を導入しようというものではなく、現場が求めている声を形にしていくボトムアップの考え方です。スモールスタートですぐ挑戦してみるというマインドで、やってみてダメだったら改善してまた強くしていく、その繰り返しです。
これはある意味、IT企業特有の考え方なのかなと思います。製品ってアップデートが前提で作られていますからね。
西村:iPhoneのOSのように、アップデートによってどんどん便利になっていくということですか。
山見:そうです、そうです!本当にそんな感じで、サイボウズの制度や様々なルールも需要があれば検討してすぐにやってみて改善していく、そしてまた形にしています。難しい部分は多々ありますが、面白いと感じることの方が多いんですよ。
西村:IT業界では当たり前のアップデートの考え方が染み付いていない業界だったら難しいかなと思いましたが、どう思われますか。
山見:業界は特定できませんが、老舗企業や古くからの有名な大企業とかだと難しいのかもしれませんね。私個人の意見ですが「Made in Japanは完成されて全く欠陥がない」というイメージです。しかし、そのことは、「失敗は許されない」「完成したものに欠陥は許されない」のようなマインドをつくっていて、それが制度作りにも反映されている可能性があるのではないかと思っています。
毎月送別会からの脱却
西村:今でこそこんなに魅力的に見えるサイボウズさまですが、数年前までは毎月送別会のような状態だったと。それが、今は離職率がかなり低下していますよね。離職率低下につながった働きがいについて教えてください。
山見:先ほどの100人100通りの話につながりますが、「1人ひとりの個性を重んじる」「1人ひとりの幸福を追求していく」その姿勢につきますね。満足度が高まり、働きがいのある環境へと変化していったのかなと思っています。
しかし、それは今急にできたものではなく、毎月送別会時代から社員がどう働きたいかということを、社長の青野と副社長だった山田が1人ひとりにヒアリングして「こういう働き方をしたい」をかき集めて、「こういう解決ができるんじゃないか」「こういう制度があるんじゃないか」を1つ1つ実現させてきたと思っています。
何か特別なことではなく、1つ1つの積み重ねが今につながっている。
社長の青野もよく言っていますが、2、3年ですぐにできたものではなく、1つ1つ聞いては実現しての繰り返しを10年ぐらい積み重ねて、今の離職率や社員数、売上につながっている、と。
離職は「さよなら」じゃない、卒業
西村:離職率低下は定着が高まるのでいいことだと思いますが、今の風潮だとたくさんのことにチャレンジするという考え方もあると思います。人事では離職をどのようにお考えですか。
金子さん(以下、敬称略):どちらかというと、卒業だと捉えています。サイボウズとしての考え方は、卒業は個人の選択。辞めそうになるから無理やり引き止める、みたいなものは特にないかと思います。辞めるときには「私がサイボウズを辞める理由」というようなSNSを書いていたり、周囲も「さよなら」ではなく「いってらっしゃい」という雰囲気で、仲間の卒業を見送っています。
制度としても育自分休暇というのがあるんです。1度サイボウズを離れても、6年の間は受け入れるという制度。他の会社でスキルアップして、サイボウズに帰ってきてもっと活躍してもらう。この制度からも「さよなら」じゃないということが実感いただけるかと思います。
自分もサイボウズの一員なんだと感じることができるから働きやすい
西村:金子さんは2020年に中途として入社され「サイボウズではここが働きやすい」と感じたポイントはありますか。
金子:私の考えをすごく尊重してくれるところですね。例えば、仕事に特に問題がなければ、在宅がしたければ在宅でも構わないですし、出社したければふらっと出社できるというのがありますね。そのために、チームとのコミュニケーションはしっかりとっています。
また、強制的に何かさせられるということはなく、個性を大事にしてくれるところはすごく感じています。山見の話にもありましたが、ボトムアップの風土が醸成されていて、1人ひとりの声を拾い、文化や制度を作りあげている、この点は入社後すぐに感じました。
自由すぎる働き方の背景にあるもの
西村:カフェで業務したい社員から、カフェのドリンク代支給の要望があったという記事を拝見しました。なぜ、こちらは承認されたのでしょうか。
山見:あの時、私はまだ入社していませんでしたが、かなり議論されたそうです。その結果、サイボウズのために時間を割いて働いていること、サイボウズの理念「チームワークあふれる社会を創る」を目指した活動のひとつとして使っている時間ということから、カフェ代の補助支給に至りました。もちろん、一定の上限金額は設けていますがある程度の範囲内であれば可能です。
金子:業務時間もそうで、結局チームとして向かっている仕事で使った時間だったら労働時間として残業してもいいというのはありますね。サイボウズの場合はしっかり目的に沿っているならそれでいいんじゃないかというところには本当に驚きましたね。
働きがいのある会社ランキングにランクイン
何位だろうが社内の満足度が高ければそれが1番
西村:働きがいのある会社ランキングにランクインされた感想はいかがですか。
山見:いつもエントリーは私たち広報が行っていますが、自社の働きがいを客観的に評価してくださる機会って全くないので、GPTW(Great Place to Work)さまがこうして評価してくださって素直にありがたいという気持ちですね。
しかし、1位だったから、2位だったから会社として完璧ということはなく、また同様に1位だろうと2位だろうとランク外だろうとあまり関係ないとも思っています。常に社内のメンバー1人ひとりが今どう思ってるかを聞き、反映していくというマインドです。
西村:「ランク外だろうと」のところがとても響いてきました。
山見:これだけ働き方という点で注目いただき、それでランク外だった場合は自身でも衝撃を受けると思います。しかし、もしそうであっても、社内の満足度が高ければ1番。それがサイボウズの理念に沿っていると思っています。このランキングへの参加、今回いただいたような評価は、言い方を選ばずに言うと手段でしかないと考えています。
女性の社会進出について取り組んでいること
西村:では、「働きがいのある会社女性ランキング」について。こちらにもランクインされていますが、女性の社会進出というところで何か取り組まれていることはありますか。
山見:今、世の中の潮流ではあるので、もちろん嬉しいです。しかし、サイボウズとして女性・男性を意識しておらず、最初にお伝えした通り性別や国籍でその人を見ていません。カテゴライズすること自体が、多様性を失っているんじゃないかと考えています。
私、山見という人間が個性で、金子という人間が個性です。そのように考えているので、女性もしくは男性にこだわった取り組みを行ったり、女性のための制度は特にありません。カテゴリーはありませんが、1人ひとりが幸せに働けるように、働きがいを持って日々生きていけるように、必要な制度は取り入れていこうと引き続き議論は続けていますね。
カテゴリー分けはいらない
西村:意図して行っているのではなくて、1人ひとりのことを考えている中で女性の比率が多くなっているわけですね。
山見:まさにそうですね。今女性の取締役比率を高めようという世の中の動きもありますが、なるべくしてなった人が結果女性であればいいし、なるべくしてなった人が結果全員男性だったとしてもそれでいいと思っています。
西村:1人ひとりのことを考えているからこそできる考え方ですよね。
山見:そうですね。カテゴリー分けはいらないと思いますね。
西村:男女でカテゴライズしないのは賛成ですが、生理休暇制度など女性特有の制度に対して、男性からの不満は出たことありますか。
山見:そうですね、女性特有の制度がないので、男性からの不満はないかなと思います。生理研修を開催して、生理の理解を深める機会も設けてはいますが、生理だけが特別扱いされる必要はないと考えます。例えば、私は生理で休むケースもあれば、金子は生理はないけど頭痛を抱えているかもしれない。それも、もしかしたら2日に1回頭痛が発生して、業務に支障が出るほどで、時には休まなければいけない程度かもしれない。このように生理でなくても他の要因で、定期的に休暇が必要な人もいて、1人ひとり事情が異なります。ですので、生理でも生理でなくても、どんな理由であれ休む場合に「休みます」とチームに話して、各業務に支障が出ないようチーム内でコミュニケーションを取ることがまずは大切かなと思います。
チームで働くからこそ、チームで助け合う
金子:それこそ私は頭痛持ちで、群発頭痛といって季節の変わり目とかに本当に雷が落ちたぐらい頭が痛くなることがあります。チームにもオープンにしていて、タスクについても全て共有しているため、頭痛で休む際は「私が代わりにやっておきます」とチーム内で助けてもらっています。この、助け合いながら取り組む風土は、転職してきて感動したひとつですね。体を壊してまで働かなくていいという安心感を感じます。
山見:チームで働く意識が強いということと、体調が優れず効率が悪くなるのであれば、しっかり休んで復活したときにバリバリやるほうがいいという思いもあります。チームのためにという考え方になると、タスクの共有や割り振りの必要性をおのずと感じます。この点は、私もサイボウズに来てマインドチェンジできました。
短期的に見るのか、長期的に見るのか
西村:助け合うという人数の母体の力みたいなものも、正直あるのかなと思いました。規模が小さくても同じ働き方、無理しない働き方を実現できると思いますか。
山見:サイボウズは長期的に見て、そこまで無理して回すことが会社やその人の家族にとって幸せになるのかと考えるので、無理をするという判断にはならないと思いますね。
例えば、とある拠点を開設したいとなったとき、手が挙がらなければ開設自体を辞めます。ビジネス的なニーズがあっても、社員の意向がない限り遂行することはないですね。短期的にはビジネスチャンスを逃しているように見えますが、長期的には無理にその拠点に赴任させたことでモチベーションの低下や離職につながった場合の損失が大きいと考えています。
「働きがいのある」という文脈においての今後のビジョン
山見:引き続き100人いれば100通りの働き方があっていいという考えは変わらずに、この考えのもとにメンバーそれぞれが望むような働き方が実現できるように、現場の声やいろんな人の声を拾っていく仕組みにしていくっていう努力は引き続きしていくところです。
西村:サイボウズさんが10年後こうなっていたいというものはありますか。
山見:1番に思うのは、その時代や10年後のサイボウズの状況に応じて変化している組織であってほしいと思っています。もしかしたら100人100通りの働き方っていうのが10年後に意味のないものになっているのであれば、それに固執していたくないですね。社長の青野のポリシーのひとつは、会社の理念を石碑に刻まないこと。今の理念は「チームワークあふれる社会を創る」ですが、毎年毎年見直してアップデートして常に変化し続けられるような組織になってなければいけない、と常に言っています。
そのため、働きがいという文脈においても同様だと思っています。
オウンドメディア「サイボウズ式」について
オウンドメディアは応募者の理解促進につながる
西村:サイボウズ式で社内のことを発信していて、応募者の反応はいかがですか。
金子:非常に理解促進につながっているかなと思っております。人事的な面でメリットをお話ししますと書類選考の時です。
選考に、サイボウズ式の中で気になる記事を見つけてもらい、それに対するあなたの考察してみてください、という主旨の設問があります。例えば「サイボウズの製品や文化に関する記事やニュースで、あなたが最も関心を持ったものとその理由、およびそれに対するご自身の考察を教えてください。」というものです。
学生が読んで面白いと思うだけでなく、それに対して自分はどう感じるのか。実際に「過去の経験と通づるものがありこの記事に賛成」などの意見がありました。また、そういった方が入社してくださるので研修の時には「そんなに知っているの?!」と驚くことが多々あります。
主観と客観を分けてコンテンツを制作している
西村:サイボウズ式でさまざまなコンテンツがありますが、企画の進め方や重視していることはありますか。
山見:コンテンツは私が所属しているコーポレートブランディング部の編集チームが企画しています。まず重視してる点としては編集方針です。その編集方針がサイボウズ式の場合は、既存の価値観や考え方をアップデートすること、問い直す姿や考え方をメッセージしていくことが方針です。また、サイボウズ式の記事企画はチーム全員で行っています。まずは各メンバーが取り上げたい記事テーマや興味があるテーマについて考えます。そして、kintone上でイベントのアイデアを出し、ブレストをしていくんです。これをガシガシやって週に1回の編集会議でみんなでじっくり検討、その後、記事を企画化するかどうかを決定します。決定した後の取材や記事編集段階でもチーム全員でブラッシュアップしていきます。その記事の担当者は主観的に企画を意識する一方で、同じ編集部内の他のメンバーは客観的なフィードバックをできるように視点を分けています。主観と客観を分けたチームを活かしてより良い企画に仕上げていくというのが主な流れになっています。
ネタ探しの鍵はアナログ活動
西村:社内の活動を知る必要があると思いますが、そのコミュニケーションやネタ探しはどのようにしていますか。
山見:基本的に社内の情報がオープンなため、いくらでもネタは入ってくるんです。他社の広報の方と比べると、比較的いろんな部署が何をやっているか見えやすいと思いますね。実際に行っていることとしては、意外とアナログですが各部署で何となく気軽に話せるような人脈開拓をやっていて、1人ずつその部署についてコツコツと聞いたりしています。意外とこれが大事なんです。
また、ネタが多くピックアップが難しいというデメリットも感じています。そのため、本部長会や事業戦略会議に参加したり(誰でも参加可)議事録(全社公開)を追ったり、社内の有志が毎月発信してくれる「サイボウズダイジェスト」という直近の社内外の動きをまとめた動画などで、会社全体の動きや各部署の情報をキャッチアップし整理しています。
社員個人の発信が日常となるなかでの広報担当者の役割
全員が広報
西村:X(旧Twitter)でサイボウズさまの社員の方々をよく見かけますが、発信を推進しているのでしょうか。なぜ活発に行われているのか秘訣を教えてください。
山見:特に発信の促進は全くしてないんですよ。発信するもしないもSNSのアカウントが実名かどうかさえも自由で、広報としてはノータッチです。私もサイボウズに入社して、実名かつプロフィール欄にサイボウズの名前を入れて発信している、この文化にびっくりしました。
そして、広報の立場で言わせてもらうととてもありがたいですね。広報である私以上に社員のみんながサイボウズのことを発信してくれる。ある意味、全員広報だなって思っています。
西村:これは僕の想像なんですが、サイボウズさんから広報がなくなるのかなと。
山見:全員広報だと広報特化がなくなりそう、だと感じますよね。しかし、だからこそサイボウズの広報として、やらなければならないことも結構あるんです。みんなが自由に発信できるからこそ、その自由な発信のためのコンテンツやニュース性のあるネタを広報から生み出せるようにしています。また、社員がX(旧Twitter)をはじめSNSの発信を積極的に行ってくれているので、メディアに対しての広報活動には力を入れています。
公式X(旧Twitter)はあえてシンプルに
山見:サイボウズの公式X(旧Twitter)は広報が運営していますが、あえてとてもシンプルにしています。中の人感とかもゼロです。これも実は戦略があって、先ほどお伝えした通り社員が積極的に発信してくれるのでシンプルにしておくことで、引用リツイートをしやすいようにしているんです。コメントを付けて発信できるような基礎コンテンツ作りは、広報が責任を持ってやらなければならないと思っています。
西村:中の人の色を出させてX(旧Twitter)を運用するのが流行っていますが、サイボウズさんではあえて逆にシンプルにしているんですね。
山見:そうですね。数年前は中の人感を出した方がいいんじゃないかという議論がありましたが、社員が発信してくれることを加味すると、引用ツイートしやすいような素材に留めておく方がいいのではないかとなりました。
情報がオープンになっているからこそ社員の発信力が高い
西村:発信力がある方たちがいないと成り立たない戦略ですね。
山見:そうですね。もともと会社の社風として情報共有がとってもオープンだということが影響していると思います。社外秘なものだけは徹底管理しますが、基本的に情報がオープンなことである意味心理的安全性みたいなのが保たれて、このオープンな情報は発信していいんだなと1人ひとりがのびのびとX(旧Twitter)で発信できているのかな、と思いますね。
金子:私の場合は、採用している立場でもあるので採用に役立ちそうだなというのがあれば発信しています。フォロワーさんに学生の方もいるのでサイボウズのことに触れてもらうきっかけになっていると思います。
西村:学生からDMは届きますか?
金子:いただくことが多いですね。私は返信して必要であれば、面談もしています。採用イベントでもX(旧Twitter)のアカウント名を公表して、フォローしていただいてますね。その中で、よりサイボウズに興味をもっていただく、そしてDMをいただければサイボウズについてお答えするようにしています。
西村:新卒向けのイベントは年間で何回ぐらい開催されていますか。
金子:その年にもよりますが、2022年度の採用は6回です。時期としては、1月から5月頃までに月2回のペースで行い、徐々に学生の方の意向を高められるように取り組んでいます。
もちろん、他の時期にも就職活動をしたい方はいると思うので、YouTubeで動画で観ていただけるようにもしています。最近内定を承諾してくれた方からも「YouTubeを観られたので、とてもイメージが湧きました」というお言葉をいただきました。
学生が気になっていること
新人もベテランもみんな対等の関係性
西村:会社のルール、会社として大切にしている仕事の取り組み方・進め方がありましたら教えてください。
金子:まずチームの中では、「新卒だから」として強制される業務はありません。新卒チームのプロジェクトは毎年いくつかありますが、やりたい人がやる。やりたくない人はやらなくてよいという方針です。先日、「金子さん、こういう仕事したいって言ってたよね」とお声がけいただき、互いの尊重について感じることがありました。
また、研修では「人事が社員に教える研修」というものではありません。議論して、この文化を直さないといけない、となることもあります。例えば、サイボウズの文化の中で「不屈の心体」というものがありますが、これを初めて見た新卒が「体力があるやつだけ頑張れみたいに見える」と言ってくれて、今見直しているところですね。
みんながみんな取締役
山見:決定事項が上から落ちてくるのではなく、その決定事項に向けて走る。役職や年次、部署も関係なく、全員で議論に入れるところは本当に対等だしフラットな組織だと思います。取締役の社内公募というのはまさにそれを形にしたものだと思います。
昨今のコーポレートガバナンスの取締役強化の流れに反するものでは決してなく、もちろんその流れには賛成しています。しかし、サイボウズの場合は上から監視するような取締役という立場が必要かというとそうではありません。もともと基本的に情報はみんなに等しくオープンにフラットに共有され、意思決定をするまでの議論も誰でも参加でき、誰でも意見できるしという状況なんです。もちろん最終的な意思決定というのは経営会議にかけますが、それまでの議論は誰でも参加でき、会議自体についても誰でも参加可能です。
ある意味、日頃から全員でサイボウズを取り締まっている、お互いを監視し合っているものですね。取締役は特別な立場ではなく、全員取締役みたいなもの。であれば、なりたい人が取締役になってもいいのではないか、ということで社内取締役公募が始まりました。これがまさに互いの尊重だったり対等な関係性というのが如実に組織の形として出ているかなと思います。
まとめ
「ダイバーシティ」や「女性の社会進出」という言葉を目にすることが多くなったこの世の中。個人がダイバーシティとは何かを考える時代になり、同時に企業としてのダイバーシティのあり方も求められています。
ダイバーシティという言葉のように、企業ごとにさまざまな価値観や考え方があります。その中で今回、多様な働き方をユニークな制度によって推進しているサイボウズさまにインタビューさせていただきました。取締役が新卒1年目の社員だったり、働く「時間」と「場所」の制約を設けない姿勢はこれからの時代に求められる多様な働き方であり、求職者にとっても大切な判断基準となっています。
なぜ多様な働き方が必要なのか。
この問いに対してインタビューの中で、「一個人という時点で多様であり、誰も同じ価値観を持っていないと思っています。」と答えていただきました。
まさに共感です。1人ひとりのことを考えるとみんな違って当たり前なのです。そこに対して真摯に向き合っているからこそ、男女とわかりやすくカテゴライズせずにいられたり、働き方の満足度が高いのだと感じました。
サイボウズさまのように100人100通りの働き方を再現するのは難しいと感じたかもしれません。しかし、やってダメだったらアップデートし続けることで希望の光はおのずと見えてくると思います。
人の数だけ働き方がある。
だからこそ、次はどのようなユニークな働き方が推進されるのかこれからも楽しみです。
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