PR TIMES MAGAZINE|広報PRのナレッジを発信するWebメディア
記事検索
title

テレビ取材多数。売り上げUPにつなげたスタートアップアパレル企業の広報PR|ライフスタイルアクセント株式会社

新しい会社やブランドを立ち上げる際、どんな切り口で情報を発信すればメディアから注目してもらえるのか。広報PR担当者にとっては悩みどころです。

プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESでは、2024年12月11日に「ブランド立ち上げから現在まで。変化するファクトリエの広報PR」をテーマにユーザー会を実施。日本初のメイドインジャパン専門のファッションブランド「ファクトリエ」を展開するライフスタイルアクセント株式会社から、小林正樹さんに登壇いただきました。

同社代表の山田敏夫さんのビジョンに共感し、起業時からプロボノスタッフとして事業に携わってきた小林さん。現在は広報PR全般を担当していますが、どのようにメディアと関係を構築してきたのか、どんな点を重視して情報を発信してきたのでしょうか。当日、お話しいただいた内容を元にまとめています。

ライフスタイルアクセント株式会社(熊本県熊本市):最新のプレスリリースはこちら

ライフスタイルアクセント株式会社 コンテンツ兼広報担当

小林 正樹(Kobayashi Masaki)

1982年大阪府生まれ。大学卒業後、PRパーソン養成スクール「EFAP JAPON」にて広報全般を2年間学んだ後、PR会社2社で広報の経験を積む。PR会社に勤めながら、2012年、メイドインジャパン専門の工場直結ファッションブランド「ファクトリエ」の創業メンバーとして、2年半ボランティアとして務め、その後社員第1号として入社。広報に限らず、コンテンツ作成、出張ファクトリエ(講演活動)、工場ツアー、カスタマーサポート、接客、発送業務、熊本本店店長などあらゆる業務を担当。現在は、コンテンツ兼広報担当として、工場への取材やコンテンツ・メルマガ作成、広報、そして洋服の商品開発にも携わりながら、日本のものづくりの豊かさを発信している。

100%日本製。アパレル業界の構造的問題に切り込む

「ファクトリエ」は、2012年に立ち上げたメイドインジャパン専門のファッションブランドです。企業理念に「語れるもので日々を豊かに」を掲げ、国内の腕のいい工場で作られた洋服を、大切に長く使ってもらいたいという想いで運営しています。

このブランドが生まれた背景には、アパレル業界の深刻な問題があります。日本には世界的なブランドから依頼の来るような腕のいい工場がいくつもあるのですが、それらの多くが厳しい経営状態を余儀なくされています。国産の洋服は、1990年はシェア50%だったのですが、2014年には約3%まで落ち込み、現在は1%に近い数値となっています。そのような状況のため、新たな若手人材も入ってきません。人手不足で技術も継承されず、悪循環に陥っているのです。

アパレル業界には中間流通がたくさんあり、メーカーが販売価格を下げることで、下請けである工場にシワ寄せがくることがほとんどです。

腕のいい工場にはしっかり利益を得てもらい、この悪循環を断ち切り、本当に良い商品をお客さまに届けることを目指しています。メーカー側が小売希望価格を決めるのが通常ですが、私たちは「工場希望価格」を採用しています。素材代や縫製賃など必要経費を含めて、原価の倍の価格で売るというのが基本スタンスです。

ライフスタイルアクセント株式会社さま 資料

創立から3年で次々にテレビ番組に

起業したばかりの頃は、まずメディアに出て知名度を上げなければいけない状況でした。しかし資本金は50万円しかなく、広告予算は取れません。そのため、広報PRの力でメディアに取り上げてもらうことを目指して、さまざまな取り組みを実施してきました。

1.番組ごとに企画書をカスタマイズしてメディアキャラバン

「ファクトリエ」の第一弾商品はビジネスシャツだったので、実売につながりそうな経済系メディアを中心にアプローチすることにしました。まず、経済系のテレビ番組をリストアップし、その番組ごとに企画書を作成します。経済系といってもそれぞれの番組に特徴があり、重視している点も異なるので、番組ごとに切り口を変えてアプローチすることにしたのです。次に、ひたすら代表電話にかけてアポを取り、メディアキャラバンです。もちろん一発で取材につながることはありません。担当者からもらったフィードバックを会社に持ち帰り、「取材するにはここが弱いと言われたので、こんな取り組みができないか」などと社内で再度検討し、企画書をブラッシュアップしていきました。

その中で特に情熱を注いだのが、「いかにたくさんの切り口を用意できるか」です。メディアが知らない事実を切り口に、「どんな変化が社会(消費者)・お客さまに起きているか」を伝えました。

例えば、「国産の洋服のシェアは50%から3%にまで落ちている」と、数字を伝えるとびっくりしますよね。そういう、あまり知られていない事実を切り口として多くの企画書を作り、情報を提供していきました。まずはひとつの切り口で伝えてみて、担当者の反応がよくなかったら、また違う切り口に変えて情報提供して、というのをひたすら根気強く繰り返していったというわけです。その積み重ねが担当者の方の記憶に残ったようで、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」など、有名テレビ番組からお声がかかるようになりました。いずれも創立から4年以内、まだ従業員はおらず代長の山田がひとりでやっていた時期だったんです。

2.生産現場からの情報収集で切り口を探す

情報発信と並行して行ったのが、情報収集です。広報PR担当者は商品開発部から上がってきた情報を元に施策を考えることが多いと思いますが、どんどん切り口を変えて発信するためには、それだけでは不十分です。商品企画の段階から情報を仕入れる必要があるため、代表の山田や取引先との折衝が多いスタッフと、週に一度は会話する場を設けていました。

また、生産現場の工場にヒアリングして、専門的な知識や技術のことなどを聞くようにしていました。工場の方々にとっては当たり前でも、私たちやお客さまにとってはまったく当たり前ではないということは多々あります。それこそがメディアにもお客さまにも響くので、いかにその要素を引き出せるかが、広報の手腕にかかっていると思いますね。

それから情報収集という意味では、当社としては都合のよくない話も、商品開発担当者にきちんと聞いておくことが大事です。例えば、他社にも似た商品がある場合など、メディアから指摘されて気がつくのは恥ずかしいですよね。そういった指摘や質問にも対応できるよう、ネガティブな情報も共有できる関係が大切になります。

3.売り上げにつながらなかった要因分析

ありがたいことに多くのテレビ番組や新聞などに取り上げていただき、そのインパクトの大きさに一同驚きました。ある番組の放送後にとんでもない数の注文が入り、みんなでひたすら段ボールを作り続ける毎日になったこともあります。売り上げも飛躍的に伸び、やはりテレビ番組に出ることは夢があるなと実感しました。

一方で、大きなメディアに取り上げられたものの、あまり売り上げにつながらなかったケースもありました。そのため、メディアに取り上げられたあとは、必ず売り上げを振り返り、分析しています。例えば、縫製の裏側がきれいであることや、縫製の詳細を紹介してもらうと、売れ行きがとても良いんです。「日本の職人さんはすごい」という印象を強く与えられるからだと私たちは分析しているのですが、このように番組の内容と売り上げの相関が見えたりします。その結果を踏まえて、次の取材ではこんなことを強調してみよう、と対策を立てているんです。もちろんこちら側に編集権限はありませんが、プレゼンの仕方は工夫できます。メディア掲載数に一喜一憂するのではなく、どんな点を伝えられれば売り上げにつながるのかを把握するのも、広報PRとしては重要な役割だと考えています。

ライフスタイルアクセント株式会社01

“Why”を重視するファクトリエのプレスリリース

「ファクトリエ」のプレスリリースは、メディアに対して事実を脚色なく伝えることを大切にしています。そのため、なるべく販促的な表現を控え、その代わりに「“Why”=なぜこの商品を開発したのか」「開発の背景にはどういう社会変化があるのか」という点を、冒頭などにしっかり書くことを意識しています。ここからは実際に配信したプレスリリースを例に、どんな点を工夫しているのかを紹介していきます。

1.「10 Years ロンT」魅力を伝えるための商品名変更

2年前に発売した男性向けのロンTですが、当時はあまり売れませんでした。そこで、商品名を「10 Years ロンT」に変え、どれだけ洗ってもへたらず、肌触りも良いままであることを訴求したところ、大ヒットにつながっています。当社ではこのように商品名をガラッと変えて販売することはよくあります。良い商品でもその良さが十分に伝わらないときは、訴求を見直すことも重要です。

参考:10年着られるくらいのロンTが完成!年間200日以上着てもへたりなし!「10 Years ロンT」登場

2.「生産量1日わずか10枚」タイトルで貴重性を強調

タイトルに「生産量1日わずか10枚」と数字を入れて、目に留まるようにしています。“Why”を伝える際には、お客さまアンケートの声は効果的で、この男性用サマーニットTシャツのプレスリリースにも「ニットに関する悩み」を記載し、毛玉や伸びなどを解消した商品であることを訴求しました。また、どのプレスリリースも見出しだけ見れば商品の特徴がわかるようにしていて、できるだけ無意味な見出しはつけないよう意識しています。

参考:生産量“1日わずか10枚”。夏も快適な清涼ニット「DEKISUGI ハイゲージ サマーニットTシャツ」登場

3.「世界で一番座りっぱなしの日本人に!」「“座る”を快適に」届ける先の課題と解決策を強調

「日本人は世界で一番座っている時間が長い」というデータを切り口に、座る姿勢に着目して開発したメンズ向けスラックスです。タイトルからもひと目でわかるように「世界で一番座りっぱなしの日本人に!」というフレーズを入れ、本文では座りやすくするための縫製技術について詳細に記載しています。

参考:世界で一番座りっぱなしの日本人に!「“座る”を快適にするパンツ」が、バージョンアップして登場

4.「プレミアムオックスフォードシャツワンピース」

熊本県が世界に誇る、シャツ工場「HITOYOSHI」の高い縫製技術で仕立てた初のシャツワンピースなので、「地域性」を訴求ポイントとしています。地名を入れるだけで効果があるのかと疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、地域性がフックとなり、メディアに取り上げていただけました。地名のように具体的にイメージが湧くワードを入れることが、メディア掲載のポイントだと思います。

参考:熊本のシャツ工場 HITOYOSHI×ファクトリエのコラボレーション!大人女性のための着回し力抜群な”究極のシャツワンピース”登場

ちなみにご紹介した事例2〜4は、プレスリリースを配信したのみでメディアに掲載されています。記者さんに伺ったところ、メールではなく「PR TIMES」の一覧から検索して見つけてくださったそうで、タイトルで目を引くことができればこんなチャンスもあるのだと実感しました。たとえ新商品の発売日までにプレスリリース配信ができなかったとしても、商品に関する情報を配信する意味は確実にあると思っています。

ライフスタイルアクセント株式会社02

まとめ:メディア掲載率UP・売り上げUPにつなげる広報PR

「ファクトリエ」の理念に共感し、最初はボランティアとして広報PRを行ったという小林さん。これまで実践されてきた内容を、これでもかというくらい具体的にお話しいただきました。今日から真似したい、取り入れたいポイントがたくさんあったのではないでしょうか。

ライフスタイルアクセント株式会社の広報PR施策から学ぶポイントは以下の5点です。

  • メディアごとに「切り口」を変えてアプローチすることが重要
  • メディアからのフィードバックを反映し、継続的に情報提供することで次につながる
  • 取り上げられた内容と売り上げの相関を分析し、次のPR施策に反映する
  • メディアは「PR TIMES」の一覧から検索することも多い。新商品の発売日に間に合わなくても、その商品の新たな情報をプレスリリース配信する意味がある
  • プレスリリースは見出しが大切。ひと目でわかるように、重要なことは見出しで伝えることがポイント

登壇の最後に「メディアに掲載されると『自分たちの工場はこんなにすごかったのか』と、従業員の方や地元の方がとても喜んでくださるんです。これは私たちにとっても大きな喜びです」と語った小林さん。「ファクトリエ」がもたらすアパレル業界の変化が楽しみです。

DtoC事業やアパレルブランドを展開する企業の方、スタートアップの広報PR担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法料金プランをあわせてご確認ください。

PR TIMESの企業登録申請をするPR TIMESをご利用希望の方はこちら企業登録申請をする

この記事のライター

PR TIMES MAGAZINE執筆担当

PR TIMES MAGAZINE執筆担当

『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

このライターの記事一覧へ