PR TIMES MAGAZINE|広報PRのナレッジを発信するWebメディア
記事検索
title

ファッションブランドに求められる広報PR思考とは|やまと×ビームス×繊研新聞社

新たなトレンドが次々と生まれるファッション業界。各ファッションブランドは、生活者の目を引くためにどのような取り組みをしているのでしょうか。

プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESでは、2025年1月29日にファッションブランド広報PR担当者向けのユーザー会を開催。株式会社やまとの楢村玲子さん、株式会社ビームスの安武俊宏さん、株式会社繊研新聞社の若狭純子さんの3人をゲストに迎え、「ファッションブランドに求められるPR思想」についてプレス担当とメディアの視点でお話しいただきました。

株式会社やまと プレス担当

楢村 玲子(Naramura Reiko)

2008年に株式会社やまとに新卒入社。販売経験を経て2011年より人事採用・研修業務に従事し、研修課長・採用教育課長を務める。その後、商品デザインの分野でものづくりや媒体制作などに携わり2024年4月よりプレスを担当。

株式会社ビームス オウンドメディアマネージャー

安武 俊宏 (Yasutake Toshihiro)

福岡生まれ札幌育ち。文化服装学院卒業後、2005年にビームス入社。販売員、プレス、販促分野を統合するプレスチーフを経て、2024年3月からオフィシャルサイトの責任者として指揮を執る。また、大学や専門学校での講師も務める。3度の飯よりおしゃれな洋服や雑貨、インテリアが大好き。

株式会社繊研新聞社 編集局長

若狭 純子(Wakasa Sumiko)

北海道出身。1992年に大学卒業後、繊研新聞社に入社、本社営業部配属。1995年から大阪編集部、テキスタイルなどの素材分野を担当し、2010年から商品面デスクとともにファッショングッズを受け持ち、2014年4月から総合1面デスク。2023年4月から現職。夫と中学生の息子の3人家族。著書に『素材いろいろ物語』。

着物の概念を変える株式会社やまとの情報発信

1917年創業の株式会社やまとは、『「きもの」でエキサイティングな世の中をつくる』をビジョンに掲げ、現在は5つのブランドと2つのプロジェクトを展開。きものの可能性、きものに関わる人を広げながらきもの文化の普及と発展に取り組んでいます。

やまとのすべての活動の根底にある理念や、広報PR活動で大切にしていることなどについて、楢村さんにお話いただきました。

各ブランドのカラーを引き出すプレス担当者の情報発信

──まず、御社の広報PR体制について教えていただけますでしょうか。

楢村さん(以下、敬称略):私がいる「プレス」という部署は2名体制で全体の情報発信を担っています。また、運営する5つのブランド「きものやまと」「KIMONO by NADESHIKO」「Y. & SONS」「DOUBLE MAISON」「THE YARD」には、それぞれブランドディレクターをはじめ、付随するスタッフがいて、Instagramの運営も各ブランドに担当者がいるので、そことも連携しながら広報PRに取り組んでいます。

──御社はプレスリリースの配信数が多く、外に向けた情報発信を積極的にされていますが、広報PRの軸になっていることは何でしょうか。

楢村:2019年に矢嶋孝行が代表取締役社長に就任した際に、企業ビジョンを「KIMONO DREAM MAKERS」に刷新しました。このビジョンを実現するためには、当社のステートメントにもある「きものには無限の可能性がある」ことを信じ、きものと日本文化をアップデートし続けることが大切だと考え、どのブランドもブレずにここに寄与することを軸としています。

──プレスとして広報PR活動に取り組む中で、これまでに楢村さんが感じた課題などはありましたか。また、それに対してどのようなアプローチをされたのでしょうか。

楢村:「発信力」という部分は、まだまだ頑張らなくてはいけない課題だと感じています。各ブランドのカラーを正しく理解し、それぞれのブランドがしっかり立っていくことが重要なので、そのためのアプローチとして、情報の整理やメディアリレーションの構築、プレスリリースの作成といった「情報発信の基盤づくり」と、社内連携の強化に取り組んでいます。

すべてのブランドと会社の発信は私たちプレスが担っているので、各ブランドの年間の営業計画や商品計画を正しく把握し、適切なタイミングでプレスリリースを配信できるようにすることも心がけています。

着物を中心に関わるすべての人が幸せな状態でいてほしい

──広報PR活動をするうえで、楢村さんが大切にされていることは何ですか。

楢村:きもののつくり手も、売る人も、買う人も、みんなが「きものを中心に幸せな状態であること」を大切にしたいと思っています。

例えば、産地や職人さんは「守っていかなければならないもの」というバイアスがありますが、私たちのスタンスは「守る対象」ではなく、一緒にワクワクする未来をつくる大切な「パートナー」。そして、その職人さんたちが大切にしている伝統や、ものづくりに対する思いを伝えていくことが私たちの責任だと考えています。

株式会社やまと 資料01

──会社としてのスタンスやビジョンは、どのようにして社内にそれを浸透させているのでしょうか。

楢村:弊社では、企業理念やビジョン、ミッションなどをまとめた『ブランドブック』というものがひとり1冊ずつ配られていて、従業員はそれを読んでしっかり理解するよう努めています

また、毎年創業月の8月に「ビジョン共有会」という場が設けられ、そこであらためて自分たちの存在意義について話し合っています。自分たちが何を目指しているのか、何ができていて、何ができていないのかをディスカッションするんです。

そこが私たちにとっての「必ず立ち返る場所」。自分たちがこれで大丈夫なのか迷ったときや、日々の取り組みを見つめ直すときにも、そういう場所があることが心強いですし、プレスリリースを書くときにも欠かせないものになっています。

プレスリリースは、短期的な露出や反響ではなく長期的目線を重視

──楢村さんが、情報発信の際に心がけているポイントについて教えていただけますでしょうか。

楢村:理念やビジョン、ミッションを落とし込むということは大前提としてありつつ、それを踏まえたうえで心がけているのは以下の4つです。

ポイント1.「親しみ」と「憧れ」の両立

きものを日常的に着ない方であっても、きものに対して「憧れ」を持っている方は多いのではないでしょうか。プレスリリースでは、その「憧れ」だけではなく、「親しみ」も感じられるよう両方をバランスよく表現することを心がけています。

例えば、各ブランドのルックブックは、写真や動画などビジュアルにこだわり、みなさんに憧れていただけるような発信をしていますが、Instagramでは「親しみやすさ」を感じていただける発信を意識しています。

ポイント2.情緒的価値の重視(ストーリーテリング)

今は、きものに対しても「手軽さ」や「簡単さ」が求められる時代ですが、それだけではなく裏側の開発ストーリーやつくり手の想いなど、情緒的価値を持って伝えることを大切にしています

ポイント3.社会課題との連携

弊社では、「なぜ私たちの会社は存在するのか」「この会社で何を成そうとしているのか」を根本に据えていますが、その中で生まれた社会課題に関連する取り組みも積極的に発信しています。

最近では、「【やまと×アトリエはるか×渋谷区】障がいを有するハタチの方へ向けた『ハタチ記念撮影会』」という企画を実施しましたが、こういったことも一度きりで終わらせるのではなく、きちんと毎年続けていくことを大切にしています。発信して終わらせるのではなく、持続可能な中で取り組む。読み手に対しても「社会課題に取り組んでいる会社だな」というより、「素敵な取り組みだな」「困っている人にも広めたいな」と思っていただけるストーリーテリングを心がけています。

ポイント4.画像でブランドイメージを伝える

プレスリリースの配信を通して、各ブランドの認知度を高めていくことも意識している部分のひとつです。例えば、当社が展開しているブランド『KIMONO by NADESHIKO』のプレスリリースでは、「新作がリリースされます」という情報発信の前に、「ビジュアルルックブックが公開されます」というプレスリリースを配信しました。

そこでは文章でブランドを詳しく解説するというよりも、画像を多様することでビジュアルでブランドとしてのスタンスや「何を目指しているのか」を伝えています。それが積み重なっていくことで、ブランドイメージが構築されていくことが狙いです。

参加者から、株式会社やまと・楢村さまへ質問

──たくさんのブランドを展開されている中で、プレスリリースを配信する・しないの基準はありますか。

楢村:新作や季節性のある商品のプレスリリースは配信するようにしています。ただし、その裏側にストーリー性やブランドスタンスが伝わる要素があることがポイントです。

このプレスリリースを出すことで、会社としてのスタンスや価値を高める内容であるかどうか、信頼につながるかどうかという部分が、プレスリリースを配信するか・しないかの基準になっています。

──ルックブックのプレスリリース配信の事例がとても参考になりましたが、発売日や商品情報がない発信に対する反応はいかがですか。

楢村:Webメディアからは、画像が多いプレスリリースを喜んでいただけることが多いです。発売日やどこで発売されるかという最低限の情報は掲載しているので、ニュース性のある内容にはなっていると思います。

ビジュアル先行のプレスリリースを配信するメリットとしては、その後商品が順次発売になった際に、ものづくりの裏側のストーリーを加えることによって、同じ商品でも2回プレスリリースが配信できること。それによって、ブランドとしてのイメージ構築と、ブランドのスタンスの両方をしっかりと伝えることができると思います。

ブランドをつくっていくうえでは、短期的なメディア露出や反響獲得だけでなく、長期目線でのステークホルダーとの関係構築が大切になるので、すぐにメディア掲載につながらなかったとしても、地道に発信をしていくことに意味があると思います。

株式会社やまと 資料02

「らしさ」を伝える株式会社ビームスの戦略立案

セレクトショップの草分けとして、1976年に東京・原宿で1号店をオープンした株式会社ビームス。日本とアジア地域に約170店舗を展開し、アパレルをはじめ、雑貨やインテリア、アート作品などを幅広く販売しています。

ファッションという枠にとらわれないユニークな施策を次々に創出する同社のブランド戦略について、安武さんにお話しいただきました。

ファンを増やし続けるBEAMSの広報PR

──まず、株式会社BEAMSの広報PR活動について、具体的な業務や取り組みの目的などを教えていただけますか

安武さん(以下、敬称略):広報PRの取り組みは多岐にわたりますが、主なものとしては大きく以下の3つがあります。

1.販促戦略の立案

1つ目は、MDのスケジュールに沿ったプランを策定すること。商品がいつ・どのくらいの数量で入荷するのかを把握して、最適なプロモーションを立案します。私はオウンドメディアの担当をしていますが、外部のメディアも使いながら複合的・戦略的にメディアを組み立てていくことがもっとも大きな部分です。

2.オウンドメディアコンテンツ/クリエイティブ制作

2つ目は、各ブランドに対してどのようなプロモーションをするのかを考えるコンテンツ制作です。コンテンツ制作は、ブランド視点でコンテンツを提案する「プロダクトマーケティング型」と、世の中のニーズに合わせたコンテンツを提供する「カスタマーマーケティング型」の2種類がありますが、BEAMSは比較的「プロダクトマーケティング型」のコンテンツが多いのではないでしょうか。

株式会社ビームス 資料01

3.メディアの掲載獲得

3つ目は、プレスリリースの作成と配信、メディア関係者やインフルエンサーとの日々のコミュニケーションや取材調整など、さまざまなメディアへの掲載を獲得するための取り組みです。自分自身がメディアとなってSNSで発信をしたり、被写体として登場したりすることもあります。

また、商品が魅力的でなければメディアに掲載したいと思っていただけないので、時にはプロダクトに口出しをすることも。例えば、『老舗×老舗』のコラボレーションは、確実にメディア掲載が取れることが予想できたので、イギリスのアウターブランド「BARBOUR」とフランスのシューズブランド「PARABOOT」のコラボをバイヤーに提案したところ、2年越しで商品化が実現したこともありました。

株式会社ビームス 資料02

「らしさ」を形にしていく際のポイント

──年齢を問わずファンがいる「BEAMSらしさ」はどのようにして生まれたのでしょうか。

安武:昨年、弊社の企業サイトをリニューアルし、同時にビジョンをこれまでの「happy life solution company」から「happy life solution communities(明るく楽しい社会現象を起こし、すべての人が幸せになれるコミュニティを目指します)」に改訂しました。「company」を「comunities」に変えて、「会社だけにとどまらない世の中・社会などの周りの方々をhappyにしていこう」というビジョンに変わったんです。

この「みんながhappyに」という部分は、昔から社長をはじめ社員の中にも浸透していて、それぞれが「happy」を自分なりに解釈した結果が、今のBEAMSにつながっているのではないかと思います。

また、「BE FES!!」と呼ばれる自社開催のフェスをはじめ、BEAMSのコンテンツはどれも「楽しそう」で裏側に笑顔があることがイメージできるものばかり。それもまた、BEAMSらしさといえるのではないでしょうか。

──『BEAMS AT HOME』など、発行されている書籍からも楽しさが伝わってきます。

安武:『BEAMS AT HOME』は、BEAMSスタッフのライフスタイルにフォーカスした本で、「BEAMSらしさ」を体現しているコンテンツのひとつだと思います。誌面に登場するのがすべてBEAMSのスタッフで、ひとりあたり8〜12ページほど使って自分の部屋の紹介をしているんです。「アパレル企業がなんで部屋?」と思われるかもしれませんが、「happy」を追求していくとやはり「ライフスタイルも楽しく」ということがポイントになるんです。

また、一昨年にはスタッフひとりに対して丸ごと1冊を使った『I AM BEAMS』という書籍を発売しました。とことん個人を深掘りする本で、現在8人分が出版されており今後も継続していく予定なんですよ。

──ユニークで印象的なコンテンツが多数ありますが、広報PR活動をするうえで安武さんが大切にされていることは何でしょうか。

安武:大切にしているのは、「常にお客さま視点に立ち返る」ことと、「世の中のすべてをマーケティング視点で見る」こと。また、戦略を考える際には、お客さまがBEAMSをどこで知って、どこで興味を持ち、何と比較検討したのかを分析していく「ファネル分析」をよく使います。私たちが目指すべき形は「認知→興味・関心→比較・検討→購入・申し込み→継続→紹介→発信」が循環していることですので、生活者を階層別に分けて、停滞したり離脱したりするポイントを見つけることで、戦略の見直しや改善策を打ち出して問題解決につなげることが重要です。

このファネル分析は、普段の生活の中でも意識的に使っています。コンビニで水を買うときですら「何でこの水を買うのか」「どこで認知して」「何と比較検討したのか」をこのファネルに当てはめて考えています。そういうことを積み重ねることによって、シンプルに考えられるようになりますし、こうした「ユーザー視点」は販促活動にも役立つと思います。

株式会社ビームス 資料03

参加者から、株式会社ビームス・安武さまへ質問

──今は雑誌やテレビだけでなく、XやInstagramなどのSNSでもいろいろな発信ができますが、BEAMSのオウンドメディアマネージャーとして、特に注力している媒体があれば教えてください。

安武:ひとつ挙げるとすれば昨年12月からスタートしたTikTokでしょうか。「若年層へのリーチ」という意味ではすごく魅力的なプラットフォームだと思っています。

これまで、アパレルブランドがTikTokで情報発信するのはなかなか難しいのでは、と感じていましたが、その成功事例をつくるというのが今の僕の個人的な目標のひとつです。

──広報PR活動が採用面で役立ったと感じたことはありますか。また、SNSや書籍に登場するスタッフは公募しているのでしょうか。

安武:『BEAMS AT HOME』はとても効果がありました。この本を出版してから1、2年後の新卒面接では、「この本に載りたい」という方がかなり増えたんですよ。

書籍に載せるスタッフについては、公募する場合もありますが、『I AM BEAMS』に関していえば公募はしていません。もともとBEAMSはスタッフ同士がとても仲が良く、社内の誰がどんな趣味を持っているのか、どの分野に長けているのかなど、お互いのことをよく知っていて自然と情報が集まるので、公募をする必要がないんです。

株式会社ビームス 資料04

繊研新聞社の編集局長に聞く、価値ある情報提供

ファッションビジネスの総合情報企業として多彩な事業を展開する、株式会社繊研新聞社。主力事業のひとつである繊維・ファッションビジネスの日刊紙『繊研新聞』は、全国紙として高い知名度を誇ります。

トレンド情報からアパレル・小売り・素材メーカーの動向までファッション業界の情報を網羅する同紙は、どのようにしてつくられているのでしょうか。編集局長の若狭さんに、情報収集の方法や読みたくなるプレスリリースについて教えていただきました。

充実した紙面づくりを支える情報収集力

──まず、繊研新聞編集部の体制と主な読者層について教えていただけますでしょうか。

若狭さん(以下、敬称略):繊研新聞編集部の記者は50人以上。分野やアイテムごとに担当グループが大きく分けられていて、さらにその中で企業ごとに担当記者が決められています。また、広告や部数を管理する業務局のメンバーとも記事の内容などを相談しながら誌面づくりをしているのも特徴です。

繊研新聞の主な読者層は、現場の販売員、バイヤー職、デザイナー、製造卸、SPA(製造小売業)、輸入卸、ディベロッパーなどファッション業界に関わる方をはじめ、多岐にわたります。1日20本ほどの記事が配信されるWebの無料版の読者はもう少し若い層が多く、中には学生の方もいらっしゃいます。

──繊研新聞は、繊維・ファッション業界の情報を網羅することを強みとされていますが、日々の情報収集はどのようにされているのでしょうか。

若狭:基本的には足を使ってネタ探しをするのが原則で、その中で電話やメール、SNSなどを活用して情報を集めている人もいます。記者会見があればもちろん飛んでいきますし、こちらから企業側にアポイントを取ることもあります。それぞれの記者が「この時期にこの人に会わなくてはいけない」というタイミングが必ずあるので、それを着実にやっていくという感じです。

また、プレスリリースも大切な情報源で、記者一人ひとりが1日に相当数のプレスリリースを見ていると思います。企業の広報PR担当者からプレスリリースを配信する前に情報をいただくこともあり、事前に取材をさせていただき、配信後すぐに記事を出すこともあるんですよ。

もちろん、ほかの媒体やSNSなどから情報収集することもありますし、知らない情報が見つかったときやおもしろそうなネタがあればすぐに取材に行きます。記者一人ひとりが担当分野に対して常にアンテナを張り、毎日いろいろなところに問い合わせをしながら能動的にニュースを獲得しているのが特徴です。

──紙面が出来上がるまでのフローについて教えていただけますでしょうか。

若狭:各グループで最低でも週1回は編集会議を行い、記者から出されたネタをデスクが記事にするかどうかを判断しています。その際、情報として集められたプレスリリースは1箇所に集約され、担当記者に割り振られます。その中から、翌日の記事に載せるものや当日中にWeb版に掲載するものを決定。取材に行ったほうがよさそうなものに関しては、デスクやグループリーダーから提案し、記者同士で分担を決めていきます。

読みたくなるプレスリリースは狙いがすぐに伝わるもの

──膨大なプレスリリースの中で、読みたくなるプレスリリースの特徴とは何でしょうか。メディアに情報を提供する際のポイントなどあればお聞きしたいです。

若狭:まずは、見出しで主語と述語、プレスリリースの狙いが「すぐにわかる」かどうかがポイントになると思います。そのためには、誰もがわかる「普通の言葉」で書いてあることが大切です。特に新聞記事は短いので、プレスリリースも簡潔なものがありがたいですね。

また、「画像がわかりやすい」というのも重要なポイントのひとつです。特に、トリミングなどしてもよさそうな自由度が高そうな画像や、キャッチーなビジュアルのものにも興味が惹かれます。新聞は限られたスペースに画像を入れるので、「トリミング禁止」「ロゴ必須」などの条件がある場合には、記事化からは遠ざかってしまうかもしれません。

個人的には、問い合わせたいことなどがあった場合に連絡がつきやすい担当者だと、なおありがたいですね。これは、日ごろのお付き合いや関係性などが大切になるのかなと思います。

──プレスリリース作成の際には、季節性や地域性・話題性・社会性・公益性・新規性・希少性・意外性などのメディアフックが重要になりますが、特に繊研新聞で記事化されやすいメディアフックはありますか。

若狭:どれかひとつでも入っていることは、最低限必要なポイントですね。特に、ここ数年は企業の「社会性・公益性」は欠かせない要素になってきていると思います。

その中で、繊研新聞が今大切にしているのは、地域性(ローカル)という要素です。東京だけに一極集中しがちなところを、もっといろいろな地域から情報を出していこうということを10年ほど前から取り組んでいるのですが、最近は特に地域性のある記事に対する反響が大きくなっています。ですから、九州、沖縄、北海道などにも定期的に取材に行って、地域性のある情報を発信するように努めているところです。

繊研新聞社 資料01

参加者から、株式会社繊研新聞社・若狭さまへ質問

──プレスリリースをたくさんご覧になる中で取り上げるポイントはどういうところが大きいのか、ファッション業界で注目されるテーマは何でしょうか。

若狭:ファッション業界で注目されているキーワードとして、「SDGs」や「エシカル」は日常的に話題になっています。その一方で、SDGsの目標達成年である2030年まで残り5年となり、達成に向けた焦りを感じる声があったり、ヨーロッパでは「SDGs疲れ」といった風潮も見られたり、持続可能性よりも「気軽な消費」を求める動きが出てきているのも事実です。

そうした中、繊研新聞では2024年12月から『サステナブルのその先へ』という連載を開始し、新たなキーワードとして「リジェネレーション(再生)」に注目しました。この言葉は、SDGsやエシカルの延長にある言葉で、農業やデザイン業界では広まりつつあるものの、ファッション業界ではまだ十分に定着していません。その背景を探るため、第1回目の連載では東京建物グループのリジェネレーションの取り組みを取材し、代表取締役へのインタビューも交えて記事化しました。

この取材も、もともとはプレスリリースがきっかけとなっていますが、東京建物さんのPR担当の方からは「まさか繊研新聞さんが食いついてくるとは思わなかった」と驚かれました。このように一見、繊研新聞とは遠そうな内容であっても、私たちが注目するテーマが新しい形に発展することもあるので、ぜひ積極的に情報を発信していただきたいと思います。

繊研新聞社 資料02

まとめ:ファッションブランドが意識すべき情報発信の考え方

ファッションブランドの広報PR担当者が、どのような視点で情報発信をしているのか、また、メディアがどのような観点でプレスリリースをチェックして記事化しているのか、具体的に知ることができた今回のセミナー。登壇者の方々が話した内容の中から、ファッションブランドを展開する企業の広報PR・情報発信に関する考え方のポイントを下記にまとめます。

楢村さん/株式会社やまと

  • 企業理念・ミッション・ビジョンに基づきすべての情報発信を行う
  • ブランドごとのカラーを理解し、それぞれの特徴を生かした広報PR戦略を展開
  • 情緒的価値(ストーリーテリング)を重視し、商品開発の背景や職人の思いも伝える
  • プレスリリース配信の際にはストーリー性やブランドのスタンスが伝わる内容かどうかを重視
  • 短期的・一時的なメディア掲載ではなく、長期的な関係構築を意識した情報発信

安武さん/株式会社ビームス

  • 企業ビジョン「happy life solution communities」の下、「楽しさ」を重視した企画で「BEAMSらしさ」を体現
  • ブランド視点の「プロダクトマーケティング型」のコンテンツを積極的に展開し、独自性を確立
  • 社員のライフスタイルや価値観を書籍などで紹介することで、ブランド価値を向上
  • ファネル分析により認知から購買・発信までの流れを最適化し、ユーザー視点を徹底する

若狭さん/株式会社繊研新聞社

  • 足を使った取材が基本で、記者会見の出席や企業訪問も積極的に行う
  • 地域性を重視し、東京以外のエリアでも定期的に取材を展開
  • 大切な情報源であるプレスリリースは、主語・述語・狙いがひと目でわかる見出し、画像編集の自由度が高いもの、担当者とすぐにつながるものを重視
  • 今注目しているのは、SDGsやエシカルの延長にある「リジェネレーション(再生)」

今回ご紹介した内容を参考に、今後のコミュニケーションや情報発信に役立ててみてはいかがでしょうか。

PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法料金プランをあわせてご確認ください。

PR TIMESの企業登録申請をするPR TIMESをご利用希望の方はこちら企業登録申請をする

この記事のライター

PR TIMES MAGAZINE執筆担当

PR TIMES MAGAZINE執筆担当

『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

このライターの記事一覧へ