情報があふれ、生活者の興味・関心が多様化している昨今。自社の商品・サービスが選ばれるためには、社会の変化や生活者のニーズを正しく読み取り、それを広報PRに反映することが欠かせません。物価高騰や共働き世帯の増加など、暮らしを取り巻く環境が大きく変化する中、どのような情報であれば人々に届くのでしょうか。
プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESは、5月21日に「おいしい博覧会 2025春夏」を開催。この合同試食会に出展した企業を対象に、山上景子さん(レタスクラブWeb編集長)、奥家慎二さん(MonoMax編集長)、森岡大地さん(日経クロストレンド副編集長)をゲストに迎えたセミナーも行われました。
本記事では、当日のセミナーで語られた「2025年の食のトレンド」や「情報発信のポイント」についてまとめています。

株式会社KADOKAWA LifeDesign レタスクラブWEB編集長
ライブドア、リクルートエージェントでメディア編集・マーケティングを担当。出産を機にライター・編集者として独立後、2018年KADOKAWA入社、2020年7月~現職。15歳と10歳の姉妹の母。

株式会社宝島社 MonoMax編集長
2010年、宝島社に入社。以後、『MonoMax』編集部に所属し、2020年9月から編集長を務める。ファッション、腕時計を中心に、アウトドア用品、自動車、家電、文房具などの幅広いジャンルを担当。モノのデザインなどはもちろん、生産背景のしっかりした、ストーリー性のあるグッズを愛する。
生活者の「今」を捉える2大キーワード
生活情報誌『レタスクラブ』の公式Webサイトとして誕生した、『レタスクラブWEB』。「がんばる人をラクに楽しく!」をコンセプトに、家事・育児・仕事に忙しい方々へ、日々の生活に役立つ情報を届けています。
読者の中心である30〜50代の女性は、今どのようなキーワードに注目しているのでしょうか。レタスクラブWEB編集長の山上景子さんが注目する2つのキーワードをご紹介します。
限られた予算で最大の栄養を「栄養パフォーマンス」
山上さんが挙げた1つ目のキーワードは、「栄養パフォーマンス(栄パ)」。物価高騰が続く中、「限られた予算で最大限の栄養を得たい」というニーズが、これまでになく高くなっていると語ります。
これまで「フライパンひとつで」「ざっくり作れる」「がっつりおいしい」といった、手軽さやボリューム感が重視されていましたが、今はそれに加えて「たんぱく質を効率的に摂る方法」「見直したいカルシウムの摂り方」「野菜の皮ごと調理」など、栄養にフォーカスしたレシピ情報に人気が集まっているとのこと。さらに「おいしい」「栄養がある」だけでなく、「腸活にいい」「快眠にいい」などの「プラスワンの価値」があるかどうかも、選ばれる理由のひとつになっていると言います。
楽しみながら、ムリなく続けられる「楽節約」
2つ目のキーワードは、「楽節約」。「節約」は大前提になっているものの、「とにかく何でも切り詰める」といったストイックな方法ではなく、「楽しさ」や「楽(ラク)さ」を取り入れた節約法が支持を集めているそうです。
例えば、本来捨てるはずだった野菜の切れ端や種から再び野菜を育てる「リボベジ(リボーンベジタブル)」は、その代表例。家庭菜園のような感覚で、楽しみながら節約につながることで、多くの人に受け入れられているようです。また、「まとめ買い後に下味冷凍しておく」「食材を使い切る献立づくり」など、暮らしを効率的に回しながら、ラクに節約につなげるという点も注目を集めているとのことでした。

メディアの「目に留まりやすい情報」とは
続いてご紹介するのは、ファッションや家電、ガジェットなど「モノ」にフォーカスした情報を届ける雑誌『MonoMax』の編集長を務める奥家慎二さん。2025年注目の食のキーワード・トレンドに加え、メディアの立場から見た「目に留まりやすい情報の特徴」について解説いただきました。
生活者のリアルなニーズ「時短家電」と「冷凍収納」
奥家さんが最近特に注目しているのは、「時短家電」と「冷凍品の収納スペースが大きい冷蔵庫」。「家事の手間を減らし、自分や家族との時間をより有意義に使いたい」という生活者のニーズの高まりを背景に、今後もますます注目されていくと予想します。また、近年は冷凍食品の品質が飛躍的に向上し、日常的に取り入れる家庭も増加。そうした流れから、大手メーカーも冷凍機能を強化した冷蔵庫の開発に力を入れているそうです。
これらのキーワードを取り入れながら広報PR活動を行うことで、自社商品をおすすめする切り口を増やしたり、提案に深みを持たせたりすることができるのではないでしょうか。
人気記事の傾向と、プレスリリースの配信タイミング
「Web記事は、どこに掲載・転載されるかによって注目度が大きく変わる」と語る奥家さん。
『MonoMax Web』をはじめとする各メディアにおける、グルメ系記事の人気傾向は以下にあると言います。
- MonoMax Web:「〇〇のベスト3選」などランキング形式の記事
- SmartNews:新商品紹介や人気商品の食べ比べなど、身近なショップに関する記事
- Yahoo!ニュース:時々性・季節性のある記事
- LINEニュース:コンビニのつまみから寿司、スイーツまでバラエティに富んだネタが上位に来やすい
また、グルメ系記事へのアクセスがもっとも高くなる時間帯は「昼12時」。プレスリリースを作成・配信する際には、各メディアの人気記事の傾向に加え、アクセスが高くなる時間帯も踏まえた上で、内容や配信タイミングを見極めましょう。
メディア担当者が思わず開く「メール件名」3つのポイント
社内外から「1日200本以上のメールを受け取る」という奥家さんは、「件名のひと工夫が、開封率を左右する」と言います。最初の30文字で、思わずクリックしたくなる件名のポイントは、以下の3つ。プレスリリースを作成する際には、タイトルがメールの件名として表示される点も考慮して検討してみましょう。
- 新しい発見:「3月16日は折りたたみ傘の日 〇〇からのお知らせ」「6月はレモンの検索数が最多!? レモン新商品が続々発売」のように気づきがあること
- 具体的な数字:「販売数〇〇本突破!」のような数字データがあること。ランキングなど具体的な企画のイメージがしやすく、読者の興味も集めることができるため、目に留まりやすい
- 世の中のニュースと合致(時事性・季節性):その時々の時事性や季節性がある。タイムリーな話題は、編集部内で共有されやすい

定番商品を再び話題に。ロングセラーをニュースに変える3つのアプローチ
新商品が次々と登場し、製品のライフサイクルが短くなる中で、定番商品やロングセラー商品の広報PRに悩む食品メーカーも多いのではないでしょうか。しかし、『日経クロストレンド』副編集長の森岡大地さんは、「メディアは新製品だけを取り上げるわけではない」と語ります。
変化の激しい市場の中で、定番商品やロングセラー商品を再びニュースに変える3つのポイントを、実際に注目される定番商品の事例から解説していただきました。
1.市場や競合を再定義して、価値を広げる
1つ目は、商品が属する市場や競合を再定義すること。この方法によって新たなチャンスを見いだしたのが、味の素株式会社の和風だしの素『ほんだし®』です。これまで「和食やお味噌汁をつくる際におすすめ」という訴求から、打ち出し方を「和風メニュー全般におすすめ」と変えたことで、市場や競合が大きく変化したと分析します。
「和風だしの素」を軸にした場合、他社の「かつお風味調味料」がライバルになりますが、「和風メニュー」にすることで白だしや麺つゆなどの和風だしはもちろん、コンビニの和風パスタやスーパーにある和風の惣菜までもがライバルに。活用されるシーンの幅が広がったことで、商品の魅力をあらためて伝えるきっかけを創出しました。
2.いつ・どこで・誰が「食べたくなるか」をつくる
2つ目のポイントは、「食べたくなる」具体的なシーンを設計すること。例えば、江崎グリコの『セブンティーンアイス』は、これまで動物園やアミューズメント施設といった「非日常の空間」で親しまれてきました。しかし近年では、駅構内や高校の校内など「日常の場面」に自動販売機の設置場所を拡大。その結果、通勤・通学時や日常のふとしたタイミングに出会えることで、新たな購買機会を生み出しています。
このように、いつ・どこで・誰が「食べたくなるのか」の視点を持ち、商品の新しい魅力を伝えることが大切です。
3. 売り場を変えて、出会いを増やす
3つ目のポイントは、売り場の拡張によって商品との「新たな出会い」を創出すること。例えば、カバヤ食品のアクセサリー玩具菓子『セボンスター』は、スーパーの玩具菓子売り場が主な販売場所でしたが、本物の宝石を使ったコラボ商品「大人のセボンスター」を軸に、スーパーを飛び出して従来とは異なる売り場に展開することで新しいファン層との接点を生み出しています。
また、ロッテの『雪見だいふく』は、『生雪見だいふく』としてチルドコーナーで販売。普段アイスを食べない人や冷凍食品売り場に立ち寄らない人も『雪見だいふく』と出会えるように。SNSでも話題を集めました。
売り場を変えることで、商品の見え方も変わり、再注目のきっかけをつくることができるのです。

まとめ:変化の潮流を読み解き、伝え方の「再設計」で価値を届ける
レタスクラブWeb編集長の山上景子さん、MonoMax編集長の奥家慎二さん、日経クロストレンド副編集長の森岡大地さんをお迎えした今回のセミナー。生活者のリアルなニーズに基づいたキーワードの選定から、メディアの目に留まる情報発信のポイント、さらには定番商品の「ニュース化」まで、実践的なヒントが数多く語られました。
物価高騰やライフスタイルの変化など、企業努力だけでは対応しきれない時代において、商品の新たな価値は「どう伝えるか」の工夫から生まれます。大切なのは、変化を受け身で捉えるのではなく、世の中の時流を読み取り、広報PRそのものを再構築する姿勢です。
「食」をテーマとしたセミナーでしたが、示された視点や手法は業界を問わず役立つポイントが多数あったのではないでしょうか。自社商品の情報発信や定番商品の魅力の伝え方に課題を感じている広報PR担当の方は、ぜひ参考にしてみてください。
【Related Topic】定番から新商品まで、各社の「こだわり」が光る食の展示会
さいごに、ロングセラーの定番商品から新商品まで、多彩な食品・飲料が一堂に会した「おいしい博覧会 2025 春夏」メイン会場の様子をレポート。企業の思いが詰まった商品の魅力や開発へのこだわりはもちろん、広報PRに対する工夫も随所にみられました。出展各社に伺った一部をご紹介します。
株式会社山本山
180年以上の歴史を持つ「玉露」を出展した、株式会社山本山。「海苔」のイメージが強い同社ですが、実は1690年(元禄3年)に江戸でお茶の商いを始めたことが創業のきっかけ。インバウンドでもお茶が注目される中、緑茶の新しい飲み方を提案し、「お茶の山本山」としての新たな魅力を発信しています。

株式会社あみだ池大黒
大阪府に本店を置く株式会社あみだ池大黒は、大阪の伝統菓子「おこし」をリニューアルした『pon pon coco』や2年かけて開発した『大阪花ラング』を出展。『大阪花ラング』は繊細な花びら型を保つため、生産工程でも試行錯誤を重ねたそうです。

株式会社ドウシシャ
生活関連用品の企画・開発・販売を行う株式会社ドウシシャは、常温保存ができ、凍らせるとシャーベットになる『レトロな喫茶 三種の凍らせて食べるシャーベット』を出展。1990年にギフト事業をスタートし、多種多様なアソートギフトや、当社オリジナル食品を開発し、夏・冬ギフトを展開してきた同社ですが、百貨店にオリジナルの商品を展開するなど、販路拡大にも積極的です。

キユーピー株式会社
キユーピー株式会社は、『薬味ポン酢』と『旨辛ラー油』を含めた深煎りごまドレッシングシリーズ4品を出展。深煎りごまドレッシングの使用用途を広げようと、「うどん meets 深ごま」を掲げ、サラダではなくうどんにドレッシングをかける食べ方を提案していました。発売100周年を迎えたキユーピー マヨネーズをはじめ、今年も思考を凝らした発信が楽しみです。

株式会社たらみ
株式会社たらみは、『たらみ Dessert』の第1弾として発売された、香港発祥、台湾で人気のスイーツ飲料を模した『楊枝甘露(ヨンジーガムロ)ゼリー』と『桃香果茶(トウコウカチャ)ゼリー』の2品を出展。「世界のトレンドのデザートを手軽に楽しむ」ことをコンセプトにした商品の誕生には、「物価高騰などの影響でなかなか海外旅行に踏み出せない方々にも、本格的な気分を味わっていただきたい」という背景が。「メディアの方々の話を聞くとあっさりとした味のウケが良さそうでした」と、試食を通じたやり取りで新たな気づきもあったようです。

株式会社サンクゼール
長野県に本社を構える株式会社サンクゼール。昨年の夏、「だし」を「熱中症対策」切り口で展開したところ、売上が倍増したそうです。今年はその経験を活かし、本格的に広報PRに取り組むことに。生活者のニーズを捉えた打ち出し方に注力したことで、ブースに立ち寄るメディアも多く、注目を集めていました。

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