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「東京グルメ」が実践。訴求と集客を最大化するショート動画時代のSNS新ルール|株式会社Total Art Development

「東京グルメ」が実践。訴求と集客を最大化するショート動画時代のSNS新ルール|株式会社Total Art Development

「時間をかけて投稿を作っても、閲覧数が伸びない」。そう悩むSNS運用の担当者の方は多いのではないでしょうか。

PR TIMESは2025年11月27日、Web・SNSマーケティング会社を17年間にわたり経営し、SNS総フォロワー数250万人以上のグルメ紹介アカウント「東京グルメ」を運営する高橋忠正さんを招き、ユーザー会を開催しました。

今回のテーマは、「ファンとの信頼を築く情報発信術とSNS運用の裏側」。

本レポートでは、高橋さんのお話をもとに、ファンに届く投稿方法や、ショート動画時代に押さえておきたいSNS運用のポイントを中心にお届けします。

株式会社Total Art Development 代表取締役

高橋 忠正(Takahashi Tadamasa)

高校卒業後すぐに単身渡米し、ニューヨークでWebマーケティング・SEO対策・デザインを学ぶ。帰国後はWeb・SNSマーケティングの会社を17年経営し、幅広い業界の企業をコンサルティング、集客を実現。自社アカウントでも成功事例を作るために2020年より「東京グルメ」を始動し、現在SNSの総フォロワー数250万人超(2025年11月時点)に成長させる。

情報を広げるための3ステップ

企業が情報発信に使えるツールは3つに整理して考えられると高橋さんは説明します。

1つ目はWebサイト。自社のサービスや商品を自由に紹介できる重要な場所ですが、検索してもらえなければ情報を見てもらえません。検索結果に表示されるよう準備し、情報へたどり着きやすくすることが大切です。

2つ目はプレスリリース。公式情報をメディアに直接届けられる点が魅力です。高橋さん自身、「東京グルメ」で紹介するお店を探す際には、「PR TIMES」をよくチェックしているとのこと。気になる店があれば、翌日にSNSで紹介することもあるそうです。

そして、3つ目がSNSです。特に今は「ショート動画の時代だ」と高橋さん。従来のSNS投稿はフォロワーに届くものでしたが、ショート動画は「フォロー外」の人にも届きやすいのが特徴です。グルメに限らずさまざまな分野で、新しい層との接点をつくるチャンスが広がっています。たとえば不動産会社なら、物件の内見をショート動画で紹介するだけでも立派なコンテンツになるでしょう。

3つをバランスよく使用することで、情報発信の幅が大きく広がると高橋さん。Webサイトは「検索して見に来てもらう」、プレスリリースは「メディアに届ける」、SNSは「拡散される(広げる)」という役割や特徴を意識することが大切です。

「3時間かけて1本」より「30分を6本」を目指す

なぜ多くの企業のSNS担当者が疲弊してしまうのか。運用について意識したいポイントを見ていきます。

継続できるリアルな運用で数の担保を

「とりあえずSNSもやって」と急に任され、限られた時間の中で運用せざるを得ないケースが多いことを懸念しているそうです。そのうえ、時間をかけて投稿しても閲覧数が伸びない。すると「SNSにリソースを割く意味があるのか」と悩み、ほかの業務に追われるうちに更新頻度が落ちていく……。これが典型的なパターンであり、企業のSNS運用の課題だそうです。

この状況を変え、発信を継続するには「投稿に時間をかけすぎないこと」がカギ。

たとえば動画制作に慣れていない方だと、1本3時間以上かかることも珍しくありません。それであれば30分でできる動画を6本作ったほうがいいと思います。

需要を見つけることも大きな役割に

短時間で作るほうがよい理由は3つあると高橋さんは続けます。

1つ目は、CMのようにきれいな動画は広告だと思われてスワイプされやすいこと。2つ目は、オフの部分=人間くささが伝わるほうが好感を持たれやすいこと。そして3つ目は、完成度にかかわらず毎日投稿したほうがアクティブなアカウントだと評価され伸びやすいことです。

それでも、企業からの発信である場合、ある程度の動画の品質を保つ必要があるでしょう。「スマートフォンのカメラを固定するだけで素人っぽさがぐっと減る」と制作時のポイントも紹介されました。

SNSが最初から大きく伸びることはめったにありません。ただし、何十本と投稿していくなかで、自社の商品やサービスの需要がどこにあるのか見えてくる。こうした発見もSNS運用の大きなメリットだと考えているそうです。

ファンとの接点が増えるショート動画の共通条件

情報を広める以外にもメリットがあるSNS。しかし、多くの企業がSNS運用、そしてショート動画を取り入れている中で、どのような投稿であれば、生活者の目に留まるのでしょうか。

「10人中何人が魅力的」と思うテーマを選ぶ

投稿テーマを決める際、私は「10人中何人が魅力的だと思うか」を基準にしていると高橋さんは語ります。

たとえば、寿司や焼肉、全国展開のチェーン店の動画は、好きな人や認知している人が多いので伸びやすい。反対に、好みが分かれるテーマは伸びにくい傾向があります。

ちなみに「東京グルメ」で最近特に反響が大きかったのは、生湯葉を自分ですくって食べられる店の動画だったそう。「楽しそう」「誰かと一緒に行きたい」と思ってもらえる要素も、シェアにつながったと振り返ります。

グルメ以外の分野でも、「あるある」「知識系」「知らないと損」など、多くの人が共感できるテーマを選ぶことがポイントだと続けます。最近では、社内の雰囲気や働く人の姿を等身大で伝えるショート動画も増えています。企業としてどのような価値を伝えたいのか、訴求したい事項をよく検討したうえでテーマを選ぶことが大切です。

ショート動画は冒頭2秒で再生数が決まる

「ショート動画は冒頭2秒が大事」とよく言われますが、高橋さんも冒頭2秒ですべてが決まると考えているとのこと。

視聴者は画面を高速でスクロールし、手を止めるのは、おもしろそうなときだけ。フォロー外の人にも表示されやすいからこそ、知らない人が見る前提で、冒頭に魅力を詰め込む必要があると強調します。

高橋さんのおすすめは、TikTokのインフルエンサーが毎回「〇〇を紹介する東京の大学生です」と名乗るように、冒頭2秒には「誰が紹介しているのか」と「コンテンツの魅力」を入れることだそうです。

 

「100本中、自店紹介は1本だけ」で売上3倍に

企業SNSでよくある失敗が、自社の宣伝ばかりになることです。CMだけが続く番組を見たい人がいないように、SNSも同じく、宣伝が続くと視聴者が離れていきます。

SNSは、「有益な情報を提供する場ととらえてほしい」と高橋さんは語ります。

実際、高橋さんがSNS運用を支援したある飲食店では、100本以上の投稿のうち、自店の紹介動画は1本だけ。残りはすべて周辺の店を紹介するようにした結果、1年かからずフォロワーが8万人に増え、売上も約3倍になったといいます。そのエリアを訪れる人に役立つ情報を発信し続けたことで、「この情報を出しているお店はどんな店だろう」と認知されるようになったと振り返りました。

では、宣伝はどこですればよいのか。答えは、Instagramのストーリーズだと高橋さんは続けます。24時間で消えるという機能と、主にフォロワーに届くという特性が宣伝と相性がよいとのこと。ショート動画でフォロワーを増やし、ストーリーズで集客する。この順番と、使い分けを意識することが重要になります。

「東京グルメ」の名前だけでフォロワーが増えた理由

フィード(通常の投稿)はプロフィールに移動しないとフォローできませんが、動画内にフォローボタンが表示され、遷移なしにフォローできるのがショート動画の特徴です。

視聴者はプロフィールを見ずに「今見た動画で」フォローするかを判断する。そのため、アイコンとアカウント名だけで発信内容がわかることがより大切になってきます。「東京グルメ」のフォロワーが急増したのは、アイコンとアカウント名のわかりやすさの効果もあると分析していました。

【質疑応答】参加者からの質問に、「東京グルメ」高橋さんが回答

ここからは、当日会場で寄せられた質問の一部を、高橋さんの回答と合わせてご紹介します。

── ショート動画を投稿する時間帯は、気にしたほうがよいのでしょうか。

フィード(通常の投稿)では「投稿時間が大事」と言われていますが、ショート動画は視聴者によって表示されるタイミングが異なるので、気にしなくて大丈夫です。

コンテンツが魅力的であれば、数日後にはきちんと再生されます。しいて言えば、深夜はみんなが寝静まっていて初動が鈍くなるので、避けたほうがよいくらいですね。

── 社内でSNS運用にリソースを割くのが難しく、外部の運用代行会社への依頼を検討しています。

SNS運用代行を事業にしている私が言うのも変ですが、理想は社内でチームをつくってノウハウを共有することです。外部に委託する場合、まずスポットでコンサルや添削を依頼してみるとよいでしょう。また、アルバイトスタッフに時給を払い、投稿をお願いするのもひとつの方法です。若い世代は特にSNSの感覚が飛び抜けています。SNSに触れる時間にきちんと対価を払えば、喜んでコンテンツを作ってくれるはずです。

たとえ投稿の質がイマイチでも、アットホームな雰囲気が伝わることで採用広報になることもあります。先述のように、完成度にかかわらず毎日投稿することが大切です。

── 各SNSの使い分け方で、意識すべきことはありますか。

私は1本のショート動画を、Instagram、TikTok、YouTube、Facebook、X、自社サイトなど約10の媒体に投稿しています。プラットフォームごとに利用者層が異なるからです。

以下はあくまでも私の肌感覚ですが、各SNSの利用者層について参考にしてみてください。

  • X:ラーメン好きが集まっているので、ラーメン店と相性がよい
  • TikTok:若くて感度の高い層が多く、トレンド系の反響がでやすい
  • Instagram:オールマイティで、おしゃれなものやトレンドに反応が起きやすい
  • YouTubeショート:年齢層のやや高い男性が多い傾向がある

──プレスリリースによる情報発信では、何を意識するべきでしょうか。 

タイトルがどれだけクリック率に影響するかは、Webマーケティングでよく語られてきました。クリックした後も、読み手は2秒程度で「自分が見るべき情報かどうか」を判断し、滞在するか戻るかを決めます

そのため、プレスリリースもぜひ、タイトルとアイキャッチを魅力的にすることを意識してみてください。

本文では、「読み手へのメリット」が伝わることが大切です。「4,000円のコースが登場しました」より「6,000円だったコースが4,000円になり、品質も改善されました」のほうが、読み手にとって情報価値が高いです。ショート動画のリンクを貼ればさらに具体的な魅力が伝わると思います。

ペルソナ像を記載するのも有効です。「銀座エリアの20代前半の方がランチで利用することを想定しています」と書くなど、その層にフォロワーが多いインフルエンサーに「紹介してみよう」と思ってもらえるような工夫もよいのではないでしょうか。

まとめ:インフルエンサーの実践知を企業のSNS運用の参考に

今回のユーザー会では、高橋さんから、企業がSNSでファンとの信頼関係を築く秘訣が紹介されました。ポイントは、以下の5つです。

  • SNSによる情報発信は継続が大切。完成度よりも「毎日投稿すること」を意識する
  • CMのようにきれいな動画は広告と受け取られやすい。スマートフォンで撮影することで、オフの雰囲気が伝わり好感を持たれる
  • 社内のリソースが足りなければ、アルバイトスタッフに協力を仰ぐのも手。採用広報にもつながることも
  • SNSでは宣伝ではなく「有益な情報を発信する場」であることを意識する
  • ショート動画で新規層へ訴求(フォロワー増)、Instagramストーリーズで集客する(フォロワーから顧客増)という設計を意識する
  • ショート動画1本を複数のメディアに展開することで、さまざまなファンとの接点を築ける

高橋さんのお話には、SNS運用担当者はもちろん、広報PRに携わる方が今日から実践できる、具体的なノウハウが詰まっていました。

これからSNS運用を始める担当者の方も、すでに活用している方も、ショート動画という新たな分野に挑戦してみてはいかがでしょうか。採用広報にもつながる点は、社内で提案する際の後押しになるはずです。

<編集・校正:PR TIMES MAGAZINE編集部>

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この記事のライター

原由希奈

原由希奈

札幌市在住、1986年生まれ。2019年よりフリーランスライターとして活動。採用広報記事や経営者インタビュー、教育分野を中心に、企画・取材・執筆まで一貫して手掛ける。校正技能検定(初級)所持。大手メディアからキャリア/ビジネス系メディア、企業noteまで幅広く執筆中。

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