「おいしさに愛をこめて」を理念に掲げ、千葉県匝瑳市で老舗菓子店「お菓子のたいよう」を4店舗展開する株式会社太陽社。創業以来70年以上にわたり、地元の素材をふんだんに使った多彩な和洋菓子を、すべて自社工場で製造・販売しています。
近年は、SNSや雑誌などで話題になる商品も多く、地元だけでなく県外からの来店者も増えています。その人気を後押ししているのが、商品の魅力を文章や画像で巧みに伝えるプレスリリースによる情報発信とのこと。中でも、今年5月に発信した「生プリンアイス」のプレスリリースは、配信日の夕方から商品が売れ始め、品切れが続出。プレスリリースアワード2025の「Best101」に選出されるなど、大きな注目を集めました。PR TIMES MAGAZINEでも読み終わるころには、その商品を食べたくなるプレスリリースに目を奪われ、取材を申し込みました。
本記事では、未経験から広報PRを担い、「ブランドの心を言葉にする」発信を形にしてきた五喜田さんにインタビュー。どのようにして「自社らしい魅力の届け方」を見いだしたのか、その裏側にある工夫と想いを伺いました。
株式会社太陽社(千葉県匝瑳市):最新のプレスリリースはこちら

株式会社太陽社 PR・Web制作ディレクター
EC広告運用を中心に、デジタルマーケティング全般の業務に従事した後、2025年より株式会社太陽社へ入社。入社後は自社ECサイトのリニューアル・運営ディレクションに加え、広報担当としてプレスリリース制作、メディアPR、SNS戦略立案など企業のブランド発信に携わっている。
SNSと連動して密度の高い情報を発信
──本日はよろしくお願いいたします。さっそくですが、太陽社さんでは、プレスリリースの配信やSNS運用、そのほか広報PRはどのような体制で行われているのでしょうか。
よろしくお願いいたします。
現在、当社の広報PR活動の中心はInstagramとプレスリリースですが、そのほかにもTikTok・Threads・YouTube・Xなども活用しています。これまでは、Instagramの運用担当者がプレスリリースを兼任しており、配信は月1回程度でした。昨年7月、私が入社したのを機に体制を見直し、今年4月からは私がプレスリリース配信を担当しています。
──いつもおいしそうなプレスリリースを拝見しています。プレスリリース配信やSNSの運用で心がけていることはありますか。
大切にしているのは「現場の声がすぐに届く広報」です。当社は本社に工場が併設されていることもあり、商品企画の段階から工場と広報、社内デザイナーが密に連携していますし、プレスリリースにも、製造工程や素材へのこだわりをきちんと反映しています。この「工場との近さ」は、私たちが広報PR活動をするうえで大きな強みのひとつです。そして、プレスリリースを見て来店されたお客さまの反応はどうだったか、SNSの投稿にどんな反響があったかなどをリアルタイムで共有し、その反響を次の商品企画や発信に活かしています。
──密な連携、反響を次に活かす。いずれも大切ですね。
社員同士の仲もよくて、「あのお店のスイーツがおいしかった」という日常の何気ない雑談が次の商品づくりの着想につながることも多いんですよ。
──普段のコミュニケーションが商品企画につながっているのですね。発信についてもう少し伺わせてください。プレスリリースとInstagramが主な手段と伺いましたが、どのように使い分けをされているのでしょうか。
まず、相乗効果を狙って、できるだけ同時に上げています。Instagramのビジュアル訴求をきっかけにして興味を持ったお客さまが、インターネットで検索してプレスリリースにたどり着き、商品の背景に込められた想いや製造工程、使っている素材へのこだわりなどを知ってくださり、購入につながるという流れが重要だと思っているんです。
また、情報発信の基本方針には「明確・リアルなビジュアル・販売意欲の向上」を掲げていて、映像で魅せて文章で納得していただいた結果、販促効果の向上を目指しています。
SNSやプレスリリース・店頭POP・パッケージデザインなど、あらゆる接点で一貫したストーリーテリングを大切にし、情報を点ではなく線で届ける。「見て伝わる」「読んで共感する」「食べたくなる」をキーワードに、お客さまの五感に響く発信を心がけているんです。
試行錯誤を重ねて実感したプレスリリースの効果
──毎月多数のプレスリリースを配信されていますが、どのようなスケジュールで動かれていますか。配信までの流れを教えてください。
商品企画は発売の3ヵ月くらい前からスタートすることが多いです。私を含めて6名のチームでマーケティング的な視点から企画を考え、1ヵ月前には工場と連携しながら納得のいく味に仕上がるまで何度も試作を重ねています。その段階からプレスリリース配信を見据えて、撮影や必要な情報の収集も準備しているんです。試食の際には必ず全員分の感想をレポートにまとめて、プレスリリースに反映させています。
配信のタイミングは、話題性を高めるために発売の2日前や前日を目安に設定しています。余裕があるときには1週間前から原稿を書き始めますが、天気や季節感なども反映したいので、できるだけ配信日に近いタイミングで仕上げるようにしているのも意識しているポイントです。
- 商品企画を開始する:3ヵ月前
- 試作品をつくり始める(試食の感想をまとめる):1ヵ月前
- プレスリリースの準備:2日前~1週間前
- プレスリリースを配信:1~2日前
- 販売開始:当日
期間限定商品をはじめ配信数が多いため、「スピードとクオリティの両立」が常に課題になりますが、限られた時間の中で商品のおいしさが文章とビジュアルで伝わるように、チーム一丸となって毎回本気で取り組んでいます。
──五喜田さんは、太陽社に入社後初めてプレスリリースを書くようになったんですよね。
そうなんです。最初は書き方がまったくわからなくて、ゼロからのスタートでした。例えば、「何千万」と記載するときも「1千万」と書くべきなのか「1000万」「10,000,000」と書くべきなのかもわからなくてPR TIMESさんに相談していました。
──細部までこだわっていた証しですね。
ありがとうございます。前職でECサイトのLPを担当していたからか、プレスリリースについて勉強すればするほど、自分の書き方がどうしてもLPみたいな文章になってしまい、プレスリリースの型から外れているように感じて悩んでいました。でも、その思いをPR TIMESの方に相談してみたところ、「今のままですごくいいですよ」と言ってくださり、そのうえでどうすればさらによくなるのかアドバイスをくださったんです。
- 数字の表記も含めて、とにかく「見やすくする」ことが一番大切
- 画像はアップだけでなく引きで撮ったものがあるとメディアが使いやすい
- 人によって感性が違うので画像は複数あるとよい
- 読者が「食べていることを想像できる」写真を用意する
あのときのサポートがなければ、自分の書き方とは異なる方法に方向転換して失敗していたかもしれません。思い切って相談したことが、私にとっては大きなターニングポイントだったと思います。
──試行錯誤を重ねながら情報を発信していくなかで、どのタイミングで手応えを感じるようになったのでしょうか。
最初にプレスリリースの効果を強く実感したのは、プレスリリースアワード2025の「Best101」にも選出していただいた「生プリンアイス」のプレスリリースです。
「前年よりも生感アップ」と「流れ出すカラメルの実現」を何よりも伝えたかったので、GIFや画像などをふんだんに使いました。また、一番おいしそうに見える角度とバランスを意識して撮影し、読み手が「自分が食べているような気分になれる」ように「食レポ」を意識して仕上げたんです。
配信後の効果は予想以上で、他記事の約26倍というPV数を記録。通販サイトでは配信月の売り上げの約1/3を「生プリンアイス」が占めるというかつてない反響で在庫切れになるほどでした。プレスリリースを配信した日の夕方から売れ始めて、社内が驚きに包まれたのを覚えています。
「生プリンアイス」以外でも、プレスリリース配信後に一時在庫切れとなる商品が増えました。メディア取材やインフルエンサーの紹介も急増し、この半年で「過去7年分」の掲載数を超えています。

参考:【秒速完売した幻のアイス】“生プリンアイス”が今年もプリンの日に帰ってくる!
実物がなくても伝わるプレスリリース
──プレスリリースを作成される際に、五喜田さんが大切にされていることを教えてください。
もっとも大切にしているのは「お客さまの心に届くことばを探す」ことです。お菓子は本来、店頭で見て「美味しそう!」と思って買うものですが、実物を目にしていない読み手の方にどう伝えるのか。香りや口どけ、食感など、読んだだけでも味を連想できるように表現することを意識しています。
また、たいようのお菓子はギフト用途も多いため、「贈る瞬間の情景」を想像できるようにパッケージの写真にもこだわっています。「これを贈ったら喜んでもらえるかな」と、贈る人の笑顔やもらった人の喜ぶ顔を思い浮かべていただけることを考えながら作成しているんです。
たいようのスタッフはお客さまとも本当に仲が良いのですが、そうしたお店のあたたかな空気感も、プレスリリースで積極的に伝え、「行ってみたい」と思っていただけるような発信を目指しています。
──先ほどの「生プリンアイス」も印象的なプレスリリースでしたが、そのほかに反響の大きかったプレスリリースはありますか。
今年8月に配信した「つきたて餅とお迎え団子」のプレスリリースもかなり効果がありました。
お盆の時期に「つきたて餅」や「お迎え団子」を用意するのにはどのような意味があるのかを紹介したところ、地元の方だけでなく他県からも多くのお客さまがプレスリリースを見て来店してくださいました。「つきたて餅やお迎え団子の意味を初めて知った」「千葉の習わしをまねしたい」という声も多く聞けて嬉しかったです。

参考:【8/13お盆限定】最高級もち米マンゲツモチの『つきたて餅』と千葉県産コシヒカリの『お迎え団子』で――心を込めたお盆のおもてなし
また、近年はお盆時期の新たな取り組みとして、詰め合わせのセット菓子ではなく小物菓子をメインにして販売しました。お盆の時期に実家に帰省する人が少なくなっているというなかで、店長からの「大きなものではなくて、バラのケーキやお菓子などを中心にしよう」という提案がきっかけです。プレスリリースで配信したところ、すごく大きな反響がありました。
『日本経済新聞』電子版に取り上げていただいたこともあって、1日限定商品は数十分で完売。人手不足により1店舗が閉店していたので、今年のお盆商品の売り上げは昨年よりも減るのではないかと思われていたのですが、実際は昨年と比べて10%も増えるという結果になり、とても驚きました。
参考:【8/8開催】毎年完売必至「お盆フェア」――今年も“お盆だけ”の限定スイーツが大集結!
──たくさんのプレスリリースが売り上げに貢献しているのですね。手応えを感じる発信に何か共通点はあるのでしょうか。
タイトルの「ターゲットコール」に手応えを感じたものは、やはり反響も大きいです。「他社が書かないこと」「プレスリリースの少しかしこまった雰囲気を崩す」ということを意識したうえで、「これいい!」と自分が納得して発信したものはPV数や売り上げにつながっていると思います。
また、「季節性」や「社会性」を取り入れた企画も強いですね。例えば、「パイナップルのアイスタルト」のプレスリリースは、8月1日の「パインの日」に合わせて配信しました。ちょうど2025年のスイーツトレンドが「トロピカル&濃厚系フレーバー」で、そこを直球でとらえることができたため、雑誌の取材にもつながりました。パイナップルは好き嫌いが別れる果物なので、お菓子屋さんではあまり使わない素材なのですが、その常識を覆して売り上げにつながったのだと思います。
参考:【8/1新発売】“ケーキみたいなアイス”第2弾!「パイナップルのアイスタルト」が「パインの日」に新登場!
──タイトルに手応えを感じたものは反響も大きいとのことですが、タイトルをつけるときにはどのような点を意識されていますか。
「インパクト」と「他社との差別化」のどちらかの要素をタイトルに取り入れるように意識しています。
例えば、今年9月に配信した「ふわとろチーズタルト」のプレスリリースは手応えを感じたもののひとつです。「異次元のザクとろ」「飲めるチーズタルト」という言葉で、「なんだこれは!」と興味を引くことができたのではないでしょうか。このように、食べたときのイメージをインパクトのある言葉で想起できるようにタイトルに入れることを心がけています。

参考:【異次元のザクとろ】衝撃の革命スイーツ「飲めるチーズタルト」9/21限定販売!
10月に配信したクマの形のフィナンシェ「クマンシェ」のプレスリリースでは、他社との差別化がうまくできたもののひとつです。クマの形のフィナンシェはいろいろなお菓子屋さんも出しているため、私たちは「本場カナダ産の高級メープルシュガーを使用」ということを前面に出し、素材で差別化を図りました。

参考:【ハロウィンの“かわいい王”降臨】本場カナダ産の高級メープルシュガーを使用した『クマンシェ』10/22登場!
「ブランドの心」を言葉に。会社の夢を後押ししたい
──プレスリリースの手応えから発信の重要性を実感したとのことですが、広報PR活動の役割をあらためて伺えますでしょうか。
私にとって広報PR活動は、まだ「お菓子のたいよう」を知らない人に知っていただくための一番の手段だと思っています。
──新しいお客さまが増えている実感はありますか。
はい。お店に車の列ができていたり、駐車場に他県、千葉県内でも匝瑳市から遠いナンバーの車がたくさん止まっているのを見ると感じますね。
私自身、匝瑳市に長く住んでいながら、入社するまでは「お菓子のたいよう」にこれほどの商品数があり、こんなにおいしいということを知らなかったんです。入社後、お菓子ができるまでのこだわりや、物価高の中でも絶対に品質を落とさないようにがんばっている工場の方々の姿勢など、「おいしさに愛をこめて」という経営理念を体現しようと努力している姿を目にして、これはただの「商品」というよりもひとつの「作品」だと感動しました。
だからこそ、このお店の良さを伝えたいんです。みんなが大切にしている「ブランドの心」を言葉にして発信する。お菓子を通じて会社の想いと人の温かさを伝えることが、広報PRの役割だと思います。
──最後に、これから取り組んでいきたいことや、思い描いていることを伺えますか。
匝瑳市は今、人口が減って過疎化がかなり進んでいます。そのようななかで、地元を少しでも元気にするために、「お菓子のたいようを千葉県で一番のお菓子屋さんにして盛り上げていきたい」という目標を掲げています。
そのひとつとして、たいようならではの新しいチョコレートスイーツの世界をつくりたいと考えているんです。チョコレートを使ったスイーツはもちろん、新しい食べ方やアイデアを展開したい。実現したときは、その新しいチョコレート体験をお客さまにしっかりと届け、魅力を広げていきたいと思います。
また、プレスリリースやSNS、店頭キャンペーンなどを通じて太陽社の商品や地域の魅力を全国に発信することで、新しいお客さまとの接点を創出し、ブランド価値の向上に寄与していきたいです。「千葉県で一番のお菓子屋さんになり、地元・匝瑳市を盛り上げたい」という会社の夢を、後押しする広報でありたいと思います。
まとめ:売り上げ、ブランド価値を向上させる太陽社の広報PR
未経験から試行錯誤を重ね、「自社らしい魅力の届け方」にたどり着いた株式会社太陽社の五喜田さん。「ブランドの心」を伝えることを大切にした情報発信が、いま確かな効果へとつながっています。
- 工場と日常的に連携し、製造工程や素材へのこだわりをリアルタイムで吸い上げる仕組みを構築
- Instagramなどのビジュアル訴求を入り口にし、プレスリリースで背景や想いを深掘り
- 点ではなく線で発信を設計し、「見て伝わる・読んで共感する・体験したくなる」を創出
- プレスリリースのタイトルは「インパクト」「他社との差別化」「社会性・季節性」を意識
- 単なる商品告知ではなく、企業理念や文化を伝えることを重視
五喜田さんが大切にしている上記のポイントは、さまざまな業界の広報PR担当者にとって参考にしていただけるのではないでしょうか。「プレスリリースは頑張るほど効果につながる」と話す五喜田さん。自社らしい発信を磨き続け「千葉県で一番のお菓子屋さん」を目指す広報PR活動、そして同社の新しいチョコレートスイーツの世界に、今後も注目です。
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