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「未来への種蒔き」。ブランド成長を後押しするプレスリリースのコンセプトシート|神沢鉄工

「未来への種蒔き」。ブランド成長を後押しするプレスリリースのコンセプトシート|神沢鉄工

プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESは、2026年2月20日に神戸新聞社とアンカー神戸の後援を受けて、「広報PRで踏み出す最初の一歩 ~兵庫・関西から熱量を届けるストーリーの作り方~」をテーマにしたセミナーを開催しました。

第一部は、兵庫県三木市の老舗工具刃物メーカー、神沢鉄工株式会社が手がける刃物ブランド「FEDECA」で、ブランドマネージャーを務める浅郷剛志さんが登壇。

創業130年の老舗でありながら、新ブランド設立に踏み切ったのにはどのような背景があったのでしょうか。新ブランドの成長を後押ししたプレスリリースの活用法について、当日の内容をもとにレポートします。

神沢鉄工株式会社(兵庫県三木市):最新のプレスリリースはこちら

浅郷 剛志のプロフィール画像

神沢鉄工株式会社 執行役員 FEDECAブランドマネージャー 

浅郷 剛志(Asagou Takeshi)

1981年埼玉県さいたま市生まれ。投資会社での勤務を経て、木工家具づくりの修行に取り組んだ後、2013年に兵庫県三木市の老舗工具刃物メーカー・神沢鉄工株式会社へ入社。2015年、新規事業として立ち上げた刃物ブランド「FEDECA」のブランドマネージャーに就任。「刃物で遊ぶ文化をつくる」をビジョンに掲げ、製品開発やワークショップなどを通じた刃物体験の普及に取り組む。休日は家族とともに自然の多い場所でバンライフを満喫。

1本のプレスリリースが転機に。実感した広報PRの力

明治28年(1895年)の創業以来、電動ドリル用の特殊錐などプロ向け工具を製造してきた神沢鉄工。しかし、海外製品との価格競争の激化や住宅のプレカット化による職人市場の縮小を背景に、「このままの事業で100年先も存続できるのか」という危機感を抱くようになります。

その打開策として神澤社長の発案により2015年に立ち上げたのが、刃物ブランド「FEDECA」。翌年、同ブランドから発売したナイフキット「It’s my knife」を「多くの人に知ってもらいたい」と初めてプレスリリースを配信したことが転機となりました。

当時は専任の広報PR担当もおらず、手探りでの作成でしたが、多くのメディアに転載され、神戸新聞にも取り上げられるなど、大きな反響を獲得。また、その記事をきっかけに経済産業省近畿経済産業局の「クールジャパン」関連企画で同商品が選ばれ、パリで展示・販売される機会にもつながりました。

期待するプレスリリースの3つの可能性

「It’s my knife」の発売以来、プレスリリースを軸に広報PR活動を行ってきた同社。浅郷さんは、プレスリリースに期待する役割として以下の3つを挙げます。

  • 熱量の保存:商品に込められた想いや開発の背景、届けたい価値といった「熱量」をプレスリリースで記録として残す
  • 公的な宣言:新しい発想や価値を世の中に生み出したことを公に発信する手段として活用できる
  • ロングテール効果:ニッチな商品であっても、プレスリリースを通じて必要なメディアや生活者に届く可能性がある

「It’s my knife」には、2020年にライフスタイルマガジン『Daytona(デイトナ)』で大きく紹介されたことをきっかけに次の転機が訪れました。

コロナ禍により外出が制限される中で「家で楽しめるもの」として注目され、注文が急増。生産が追いつかないほどの反響となり、日本だけでなく海外からの注文も相次いだといいます。プレスリリースとして公開されていた情報が、後から「価値ある情報」としてメディアに見いだされたことで大きな話題を集めた事例のひとつといえるでしょう。

神沢鉄工さま01

コンセプト起点のプレスリリース設計

神沢鉄工では、プレスリリースを単なる告知ではなく、「商品のストーリーを伝える設計図」として定義。機能や価格で競争が決まりやすいプロ向け工具の市場に身を置いてきたからこそ、商品の開発段階から「誰にどんな価値を届けたいのか」というストーリーを明確にすることを重視しているといいます。

その考え方を形にしたのが、同社独自の「コンセプトシート」です。商品企画の初期段階で、次の要素を1枚のシートに整理します。

  • ターゲット:誰に届けたいのか
  • インサイト:ユーザーの潜在的なニーズや課題
  • コンセプト:誰のどんな幸せを実現する商品か
  • 機能の特徴:コンセプトを支える要素

コンセプトシートは商品開発の指針になるだけでなく、そのままプレスリリースの骨子として活用。開発段階から方向性を共有することで、チームの認識を揃えます。

1.「こどもの、一生もの。」をコンセプトに子ども用包丁の新たな価値を発信

「コンセプトを最初に提示する」という考え方がよく表れている事例が、2024年10月に配信された「こども包丁」のプレスリリースです。掲げたコンセプトは、「こどもの、一生もの。」。子ども向け包丁の多くは安全性を優先するあまり、プラスチック製の柄や波刃で切れ味が弱いものが一般的でした。そうした状況に疑問を抱き、「最初の一本こそ、本物を使ってほしい。」という考えのもとこのコンセプトを打ち出しました。

  • 子どもと一緒に料理を楽しめる包丁
  • 成長しても使い続けられる品質
  • 大人になって家を出るときに持たせられる道具

こうしたストーリーを軸にプレスリリースを構成し、商品の背景や価値を伝えることを意識したといいます。

2.「ミニマル包丁」という新しいカテゴリーを世の中に発信

「こども包丁」はもともと子ども用として発売された包丁でしたが、社内では「結局こればかり使ってしまう」と好評だったことから、大人向けにその先端をとがらせた小さな包丁「コレバッカ」として展開することになったそうです。

「刃渡り9センチのコンパクトなサイズ」「ハンドル位置を高く設計し、軽い力でも切れる構造」「三徳包丁のような押し切りができる設計」といった特徴を活かし、「ミニマル包丁」という新しいカテゴリーを提案しました。

神沢鉄工さまプレスリリース

一般的な家庭用包丁は刃渡り18センチほどですが、現代の食生活では食材があらかじめカットされていることも多く、「9センチでも十分ではないか」という問いを投げかけたかったと浅郷さんはいいます。

タイトルを考える際に、浅郷さんがもっとも大切にしているのが「商品名」よりも「一番伝えたい価値」を中心に据えるということ。このプレスリリースでも、「刃渡り9センチでも日常で使いやすい」「ミニマル包丁という新しいカテゴリーを定番に」というメッセージを伝えました。

また、神沢鉄工のプレスリリースには、メディアにとって使いやすい工夫も多数盛り込まれています。

  • 画像を豊富に用意:商品写真を複数のカットや背景で掲載。最初の画像は文字入りで特徴をわかりやすく示し、その後に文字なしの写真も用意するなど、メディアが使いやすい構成に
  •  GIF画像で使い方を可視化:静止画では伝わりにくい部分をGIF画像で表現。小さな包丁でもしっかり切れる様子などが直感的に理解できる仕様に
  • 「逆説」のメディアフック:「子ども用だからこそ切れ味が良い」という意外性のある切り口でメディアフックとして機能するように
  • ストーリーを重視した情報量:商品の背景や開発ストーリーまで丁寧に伝える長めの構成で、企業の想いや価値をしっかり届けられるように

【質疑応答】参加者からの質問に神沢鉄工・浅郷さんが回答

ここからは、当日セミナー会場で寄せられた質問の一部を抜粋し、浅郷さんの回答とあわせて紹介します。

──「It’s my knife」はコンセプトと商品名が一致していて印象的です。商品名はいつ頃決まり、商標登録はどのタイミングで行ったのでしょうか。

商品名は、完成後に決まりました。どんな名前にしようかと考えていたときに、偶然アメリカのロックバンド「ボン・ジョヴィ」の『It’s My Life』という曲を思い出して、「これだっ!」と。「It’s my knife(これが俺のナイフだ)」という、魂の叫びが聞こえてきた感じです。商標登録は商品をリリースするタイミングで出願しました。

──プレスリリースに使っている画像は、プロのカメラマンに撮ってもらっているのでしょうか。

物撮りなどは外部のカメラマンにお願いすることもあります。一方で、商品の使用シーンなどは社内で撮っています。商品の魅力を伝えるために、「この角度でこう撮ってほしい」というのは、社内のほうが伝わりやすいのかなと思って内製しています。

──情報量の多いプレスリリースが特徴ということですが、すべてを記載してしまうことでかえってメディアの興味を引かないという懸念はありませんでしたか。

長文のプレスリリースは読むのが面倒ですし、それで読まれないというリスクも確かにあるとは思います。だからこそ「タイトルとリード文でいかに興味を持ってもらうか」ということにはこだわっています。

また、プレスリリースにすべての情報を盛り込んでしまうと、「取材でそれ以上の話が出てこないのでは」と思われるリスクも考えられます。ですが、私たちの商品に対する思いや考えはプレスリリースだけでは伝えきれないほどあるので、その点も問題ないのかなと思っています。

──プレスリリースを配信しても反応がいまひとつで悩んでいます。雑誌『Daytona』から取材依頼があったのは、プレスリリース後どのくらいのタイミングだったのでしょうか。

2016年の商品発売のタイミングでプレスリリースを配信し、その4年後にお声がけいただきました。おそらく、編集部のほうで「コロナ禍のおうち時間で楽しめるもの」を探している中で、うちの商品がひっかかったのではないかと思います。

僕たちも、プレスリリースを配信しても反響がないことはあります。それでも気長に「Webの中に種を蒔くイメージ」で配信を続けています。即時性を期待するのではなく「いつか芽が出たらいいな」という気持ちで、一つひとつのプレスリリースに僕たちの思いを込める。プレスリリースは「ブランドを形成する資産」で、そこが広告と大きく異なる部分ではないでしょうか。

神沢鉄工さま02

まとめ:発信し続けることで広がる、プレスリリースの価値

ひとつのプレスリリースが、新たな取り組みを社会へ広く届け、注目を集めるきっかけになることがあります。神沢鉄工株式会社も、そうしたプレスリリースの可能性を実感してきた企業のひとつです。

同社の取り組みから見えてくるのは、プレスリリースは単なる告知ではなく、企業の思いや価値観や商品に込めたストーリーを社会に届けるための手段だということ。すぐに大きな反響が得られなくても、思いがけないタイミングで注目されることもあるため、まずは情報を発信し続けることが大切なポイントといえるでしょう。

続いては、プレスリリースエバンジェリストの堂阪陽子さんにご登壇いただき、「自社の強み」を見つけるヒントを解説いただいた第二部をお届けします。

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この記事のライター

PR TIMES MAGAZINE執筆担当

PR TIMES MAGAZINE執筆担当

『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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