広報PR活動に取り組む中で、「プレスリリースを出しているのに、なかなか記事にならない」「メディアはどこを見て取材を決めているのか」といった疑問を感じる企業も多いのではないでしょうか。情報があふれる時代だからこそ、メディアがどこから情報を見つけ、どのような視点でニュースを選んでいるのかを理解することが大切です。
プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESは、2026年2月20日に神戸新聞社とアンカー神戸の後援を受けて、「広報PRで踏み出す最初の一歩 ~兵庫・関西から熱量を届けるストーリーの作り方~」をテーマにしたセミナーを開催。第三部では神戸新聞社で記者を務める、大島光貴さんにお話しいただきました。
記者・メディアの目線でメディアが求めている情報や、取材したいと思われる企業のポイントについて、当日の内容をもとにレポートします。
第一部:「未来への種蒔き」。ブランド成長を後押しするプレスリリースのコンセプトシート|神沢鉄工
第二部:企業活動の背景がニュースに。宣伝にしない共感を生む広報PR|堂阪 陽子
株式会社 神戸新聞(兵庫県神戸市):最新のプレスリリースはこちら

神戸新聞社 編集局経済部 記者
大島 光貴2003年、神戸新聞社に入社。朝来支局や三木支局などの地方拠点で計10年間勤務し、地域に根差したニュースを発信。2018年から経済部で製造業や交通事業者の取材を担当。2025年の神戸空港国際化を巡る報道で中心的な役割を担い、航空分野の取材に強みを持つ。2026年3月からは金融・財界・医療産業の取材を担当する。栃木県出身。
記者はどこから情報を見つけ、何を重視しているのか
神戸新聞社で交通分野を担当する記者の大島光貴さん。鉄道や航空、港湾などの取材を中心に、神戸空港の動向なども追いながら日々ニュースを取材しています。大島さんは普段、どのようにして情報を得ているのでしょうか。
1.プレスリリース
記者クラブを通じて配信されるプレスリリースのほか、取材を通じて関係ができた企業から直接届くものも多くあります。また大島さんは、PR TIMESにメディアユーザーとして登録し、「兵庫県」「神戸市」といったキーワードで配信される情報を受信。担当分野である交通・航空関連の企業からの発表も含め、日々チェックしているそうです。
2.SNS(特にX)
航空分野では、海外企業が日本語のプレスリリースを配信しないことも多いため、SNSも情報源のひとつなのだそうです。特に、Xでは専門メディアや業界に詳しい人の投稿を手がかりに、取材につながるケースもあるといいます。
一方で、SNSの情報は玉石混交のため、「広報PR担当者から、直接プレスリリースや取材依頼を送ってもらえると助かる」と話す大島さん。
取材するかどうかの判断は、主に次の3つを重視しているといいます。
- 社会的価値:人口減少や交通人材不足、物流のラストワンマイルといった、社会課題の解決につながる取り組みか
- ニュース性:万博やオリンピックなど、社会的関心の高いテーマとの関連があるか
- 担当分野との一致:記者それぞれの専門領域に合っているか
こうした視点に合致する情報ほど、「取材してみたい」と感じるニュースになるのだそうです。
記事になる企業に共通する視点・アプローチ
セミナーでは、実際にプレスリリースをきっかけに取材・記事化につながった事例も紹介されました。
1つ目は、韓国の伝統的なキルティング生地を使ったバッグブランド「pionunnal(ピオヌンナル)」が、2025年9月に配信したプレスリリース。百貨店のポップアップショップでは完売するほど人気の商品ですが、大島さんが特に注目したのは、「国内航空会社の機内販売に採用された」という内容でした。

参考:【JAL×pionunnal】大好評のコラボレーションが再登場!
航空会社の機内販売という信頼性の高い販路に、神戸の小さな企業の商品が採用された点にニュース性を感じ、取材を決めたといいます。取材を進めると、女性CEOを中心に少人数でブランドを運営していることや、国内の縫製工場と連携したものづくりの背景などが見えてきました。こうしたストーリー性もあり、記事として大きく紹介されたといいます。
2つ目は、神戸と高松を結ぶフェリー会社「ジャンボフェリー株式会社」の取り組みです。深夜に到着する便は利用者が少ないという課題に対し、大阪・関西万博による宿泊需要の高まりを見据え、船を「宿泊施設」として活用する新サービスを開始しました。

参考:もとの港に戻ってくる!?新感覚の「ふね泊」で非日常を満喫!「あおい」に泊まろうキャンペーン始めました!|ジャンボフェリー
夜に出発して朝に戻る航路をホテル代わりに利用する「ふね泊」という発想は、既存の航路や船という資源を活用しながら新しい価値を生み出した取り組みです。さらに、レイトチェックアウトを設けるなどサービスを柔軟に改善している点も含め、興味深い事例として紹介されました。
2つの事例から見えてくるポイントは、「既存の資源を活かしながら、新しい価値を生み出している」こと。企業が持つ強みや資源を見直し、新しい使い方や価値として発信することが、ニュースにつながるのだと大島さんはいいます。
また、記者にとっては「ストーリー」も重要な要素のひとつ。特に次のような視点は、取材したいと感じるきっかけになりやすいそうです。
- 社会課題へのアプローチ(人口減少、人材不足など)
- 地域の文脈と結びついた取り組み
- 開発者や製品・サービスの背景にあるエピソード
メディアの特徴を理解し、記事化のチャンスを広げる
広報PRにおいては、「メディアを知る」ことも大切です。記者は企業を取材する際、事業内容や経営者の経歴など、その企業のことを事前に調べたうえで取材に臨みます。同様に、広報PR担当者もメディアの特徴を理解し、情報を届けることが取材につながりやすいポイントのひとつです。
例えば、特定のコーナーや企画を持つメディアには、「このコーナーに合いそうな話題があります」といった形で具体的に提案すると、記者にとっても内容をイメージしやすくなります。
神戸新聞の場合は兵庫県の読者が中心であるため、「地域と関わりのある話題のほうが取り上げやすい」と大島さん。一方で、県外企業であっても、兵庫県内でシェアが拡大しているなど地域との接点があれば記事化される可能性もあるそうです。
さらに、地元メディアに掲載された記事がきっかけとなり、テレビなどほかのメディアに広がって全国的な認知につながるケースも少なくありません。そのため、大島さんは「いきなり全国紙を目指すのではなく、まずは地元メディアに取り上げられることを目指すのもひとつの方法」と話しました。

【質疑応答】参加者からの質問に大島さんが回答
ここからは、当日セミナー会場で寄せられた質問の一部を抜粋し、大島さんの回答とあわせて紹介します。
──取材後、記事掲載まで時間が空いた場合、進捗を記者に確認してもよいのでしょうか。
私自身も思い当たることがあるので、耳が痛い質問ですね。聞いていただいて大丈夫だと思います。記者も人間なので、問い合わせをいただくと「そろそろ対応しないといけないな」と思うきっかけになると思います。
いろいろな事情で記事化が遅れているケースも考えられます。私もこの1ヵ月ほど、神戸空港の取材にかかりきりで、その前に取材させていただいたインタビュー記事でまだ出せていないものもあるんですよ。掲載の進捗について確認のご連絡をいただくこと自体は問題ありませんので、遠慮せずフォローしてもらえたらと思います。
──大阪・関西万博が終わった今、注目している話題はありますか。
今年の1月1日、神戸新聞の「ひょうご経済」というコーナーで、2026年を「ポスト万博の年」と位置づけた連載『ポスト万博の進路』がスタートしました。万博に出展した企業を取り上げ、その後どのように社会実装につなげていくのかという取り組みを紹介する内容です。
万博に出展した企業は限られていると思いますが、万博をきっかけに新しい取り組みが生まれたり、事業に変化があった企業には今後も注目していきたいと考えています。
──ほかの記者の方もSNSはXが主流なのでしょうか。InstagramとX、どちらを広報として始めるべきか悩んでいます。
これは正直、人によると思います。私は45歳なのでXを見ることが多いですが、若い記者だとInstagramをよく見ている人もいると思います。世代によってSNSとの接し方も違うので、一概にどちらがいいとは言い切れませんね。
可能であれば、複数のSNSを使うのがいいのではないでしょうか。また、業界によっても向き不向きがあります。例えばアパレルのようにビジュアルが重要な分野であれば、画像で見せやすいInstagramのほうが、相性がいい場合もあります。
もし迷う場合は、担当している記者に直接聞いてみたり、その業界でどのSNSがよく使われているのか調べてみるのもひとつの方法だと思います。
──プレスリリースは情報量が多いほうがよいのでしょうか。それとも簡潔にまとめたほうがよいのでしょうか。
どれくらいの記事になるのかにもよります。あまり簡潔すぎると結局こちらから全部聞かなければいけなくなるので、ある程度情報は網羅されているほうがありがたいと感じますね。情報が充実していると、「これ以上聞くことはないかもしれない」と思うこともありますが、そのほうが記事は書きやすいですし、記者としては作業時間を有効に使えるという面もあります。
もちろん、ニュースの内容によって取材方法は変わります。現場を見たいと思うテーマであれば、こちらから現地取材をお願いすることもありますし、新しいサービスや施設など、まだ実物がない場合は、パースやイメージ図などの素材を提供していただき、電話取材で記事にするケースもあります。
まとめ:記者の現場視点から見えてくる、広報PRのヒント
神戸新聞社の大島さんに、記者がどのように情報を見つけ、どんな視点で取材を判断しているのかを解説していただきました。
取材につながるポイントとして挙げられたのは、社会的価値、ニュース性、そして企業ならではのストーリー。さらに、メディアの読者層や媒体の特徴を理解したうえで情報を届けることも、記事化につながる重要な要素だといいます。
自社の取り組みを社会の文脈とどう結びつけて発信するのか。記者の視点を知ることは、広報PRのヒントを見つけるきっかけにもなります。まずは、自社が持つ強みや背景を見つめ直し、誰にどんな価値を届けているのかを言葉にしてみること。そうした積み重ねが、メディアに届く情報発信につながっていくのではないでしょうか。
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