PR TIMES MAGAZINEは、広報PR活動に課題を感じている企業・団体向けに、日本全国の地域ごとにサービス導入の成功事例を紹介するインタビューを実施。
本記事では、株式会社ワールドパーティーの角谷圭一朗さんと中村友香さんにお話を伺いました。商品のストーリーを丁寧に伝える広報PR、特定の商品に特化した広報PRのポイントについて語っていただきました。
株式会社ワールドパーティー(大阪府大阪市):最新のプレスリリースはこちら
株式会社ワールドパーティー 執行役員COO 営業本部長 Wpc.事業部長
四国大学卒業後、福岡県の染色工房でテキスタイルデザインや着物、ファッション雑貨などの幅広い商品企画、販売に従事。2008年にワールドパーティーに入社、営業職を経て17年にWpc.事業部長に。19年に執行役員COO/営業本部長就任、マーケティングから商品企画、営業、広報PRまで一括してWpc.事業部を掌握。
株式会社ワールドパーティー 営業本部 Wpc.広報担当
大学卒業後、金融機関での勤務を経て2019年に株式会社ワールドパーティーに入社。ECサイトの運営や受注業務、お客様対応を担当し、21年より現職。プレスリリース作成や取材対応、シーズンビジュアルの撮影立ち合いなど、広報業務全般を行う。22年に企画・販促を担当した「旅する喫茶 meets Wpc. クリームソーダアンブレラ」が累計販売数25万本を突破。
傘をファッションの一部に。ブランド立ち上げから約20年
──ワールドパーティーについて教えてください。
角谷さん(以下、敬称略):傘やポンチョなどのレイングッズを製造・販売するメーカーです。1994年に洋傘加工業の「株式会社中村」から名義変更して、株式会社ワールドパーティーとしてスタートしました。主軸となるのは、2004年に「新たな可能性を生み出す」スローガンのもと誕生した傘のドメスティックブランド「Wpc.」です。こちらのブランドは、おしゃれな傘をファッションの一部として選んでいただくというコンセプトで、20年かけて市場に魅力を伝え続けてきました。
──広報PRの体制はどのようなものでしょうか。
中村さん(以下、敬称略):メインブランドの「Wpc.」事業部直下に広報担当が置かれており、2人体制です。私はメディアリレーションズとプレスリリース配信を担当、もう1人はSNSや広告を担当しています。商品の企画からビジュアル撮影、ECサイトを含めた販促まで一貫して携われるのが特徴。商品はデザイナーが主体で企画しますが、ほかの従業員も、自由な発想でデザイナーとやり取りをしながら商品を企画しているんです。自分で企画した商品のストーリーやコンセプトを、そのままプレスリリースで紹介したこともあります。
年間700種類の商品を適切なタイミングで発信
──主軸商品の傘は、どのくらいのスパンで企画から配信までが一巡するのでしょうか。
角谷:傘だけで年間700種類の商品を展開しています。例年300種類の新商品を発売しており、常時ラインナップが入れ替わり続けるイメージです。
中村:プレスリリースの原稿作成は配信日の約1ヵ月前から始めますが、例えばブランドのビジュアルを撮影する準備は半年前から、企画やデザインの発案も含めると1年前から準備しています。春夏と秋冬にシーズンを分けていて、プレスリリースを頻繁に出すのは2月~6月の春夏シーズンです。2月以降は日傘、梅雨直前になると雨傘を含めた新商品が多くなります。
──年間700種類の商品ごとに発信のチャンスがあるのですね。訴求すべき商品を選び、発信するときに気を配っている点はありますか。
中村:商品の数が多いと、テーマ性がかぶるものが出てくるのも確か。そんな中でも、機能性を訴求したい商品とイチオシの商品を交互に配信することで、プレスリリースにメリハリがつき、双方に注目が集まりやすくなると感じています。例えばフォトジェニックで「映え」がテーマの傘が複数あるとき、同じようなタイミングで発信してしまうとそれぞれのインパクトが薄まって、あまり話題になりません。
SNS映えする商品の前後にはあえて機能性に特化した商品を挟む、タイミングを空けるなどの点で気を配っていますね。特に「イチオシの商品は配信の間隔を空ける」こともポイント。タイミングについては、メディアの担当者が忙しい月曜日と金曜日よりも、なるべく火、水、木曜日の午前中の配信を目指しています。
キャッチーなタイトルで商品の特徴を伝える
──プレスリリースを書くときに重視しているポイントを教えてください。
中村:必ず「どういうコンセプトの、どんな商品なのか」が伝わるタイトルを作るようにしてます。ファッション系やトレンド系のメディア、テレビ番組からの取材が入りやすいキャッチーな言葉を選んだり、フレーズを厳選していたりしていますね。
例えば、「傘でメイクを。コスメボトルからインスピレーションを得たビニール傘が登場 淡いグラデーションカラーで顔まわりを華やかにし、血色感や抜け感を演出Wpc.『コスメティックアンブレラ』発売」のプレスリリースは、「傘でメイクを」という言葉選びに対して、メディアからの反響が大きかったです。
コスメボトルをイメージしたアイキャッチに加え、化粧品を紹介するときに使う「血色感」「抜け感」のような表現をあえて選ぶことで、プレスリリース全体で一貫したコンセプトを表現しました。全国ネットのテレビ局、Webメディアも結構、これらのキャッチーな言葉を抜き取って「『傘でメイク』というのが新鮮で面白いですね」と取り上げてくださいました。
かわいいデザインの傘であれば、ほかのメーカーからも販売されています。そこを差別化するためには、もう一個踏み込んでプラスアルファの要素をタイトルや商品説明に盛り込むことが大切です。かわいいだけで終わらない、ストーリー性の付与をしっかりとするようにしています。
商品ごとのストーリーを丁寧に伝えるプレスリリース
中村さんと角谷さんに、配信後に手ごたえを感じたプレスリリースの事例についてお聞きしました。
事例1.オーロラ色のビニール傘がWeb配信でバズを生み、過去最多の30万本を売り上げる
参考:Wpc.™より見るたびに表情が変わるオーロラビニール傘を発売開始。
中村:PR TIMESのプレスリリース配信を始めたのは2020年5月。コロナ禍の真っ只中でインバウンド消費が落ち込み、店舗の売り上げにも少なからず影響があった年でした。それまでまったくプレスリリースは配信していなかったのですが、「何か発信しなければ」と広報部を立ち上げ、PR TIMESを導入。こちらは、見る角度によって表情を変える商品の魅力が伝わるよう、さまざまな角度から撮影した写真をふんだんに用いて配信しました。
プレスリリースをきっかけに、Webメディアの「ファッションプレス(FASHION PRESS)」で取り上げられ、同時にTwitterでもつぶやいたところ、「映える」商品であったこともあいまってバズり、約10万いいね!の反応がありました。特に、誰がどの角度から撮影してもきれいなオーロラ色に見える特徴が、魅力として受け入れられたようです。
角谷:実店舗はプラザスタイルが運営する「PLAZA」「MINiPLA」限定で販売していたのですが、一時期は朝、店舗の前に行列ができて争奪戦になるくらい反響があったんです。販促に直結する配信の底力を感じたプレスリリースでした。オーロラビニール傘は単体の商品としては最多の累計30万本、約6億円の売り上げを達成し、これを上回るヒット商品はいまだありません。
事例2.こまめな配信でブランドイメージを構築、「男性用日傘」の市場をけん引する
参考:シリーズ累計販売数17万本*1突破 傘を「持ち歩く習慣」の提案 男の晴雨兼用傘ブランド 「Wpc. IZA(ダブリュピーシーイーザ)」2023年春夏・新作アイテムを公開&販売開始
中村:私自身の持論として、商品の情報は「出せば出すほどいい」と思っています。ひとつの商品であっても出し惜しみせずに、場合によっては複数回に分けてプレスリリースを配信するのも効果的です。こちらのプレスリリースは、男性にも日傘を持ち歩く習慣を提案するブランド「Wpc.IZA」に関するもの。2021年3月に発売したブランドなのですが、シーズンをまたいでも
- 商品の機能
- 累計販売本数のアップデート
- ブランドイメージにオダギリジョーさんを起用したこと
- ポップアップなどのイベントにまつわる情報
などの内容ごとに、4回以上に分けて情報を発信し続けています。男性が日傘を持ち歩く際、おそらく一番ネックになるのは「恥ずかしい」という先入観ではないでしょうか。それを変えるため、晴雨兼用の機能性を訴求して、傘を持ち歩く習慣を提案しやすくしています。発売以来、男性用日傘の市場は拡大しつづけており、小売店でも売り場を拡大するところが出てきました。
販売3年目に突入する今年は、複数回にわたって配信し続けた効果を感じています。1~2年目は累計販売数が17万本程度で、男性用日傘の市場に生活者がピンと来ていなかった印象だったのですが、2023年に入ってすでに20万本売れています。プレスリリースが話題を呼び、売り上げにつながるだけでなく次のPVを呼び込む、よい循環が生まれているように思います。
事例3.使い捨てのイメージを払拭し、サステナブルな企業姿勢を伝える
参考:Wpc.から環境配慮型の晴雨兼用傘ブランドが誕生 未来への取り組みとして売上の2%を森林保全団体へ寄付「SiNCA by Wpc. (シンカバイダブリュピーシー)」
角谷:傘を製造するときにはCO2(二酸化炭素)が発生してしまいますし、まだ「使い捨て」のイメージも根強いです。そのような課題に、「いいものを長く使う」提案をしようと発信したのがこちらのプレスリリース。風速15mでも壊れない強度とこだわりの素材、売り上げの2%を森林保全団体に寄付するストーリーを細かく説明しました。傘を1本買うと、売り上げのうち100円ほどが寄付されるようになっています。
SDGsや持続可能性といった考え方が普及する以前から、業界では使い捨ての傘が持つ問題点はすでに認識されていました。コンビニエンスストアで買うビニール傘は強度が低くて、すぐ折れるから捨てられがちだったり、愛着が湧きにくかったり。傘以外の服飾品を想像してみてください。例えば、お気に入りの靴は手入れして長く使い続けるものだと思います。
当社としては10年以上前から、傘を服や靴と同じファッションアイテムの一部として捉えていただくコンセプトを打ち出してきました。「おしゃれな傘を、お気に入りとして長く楽しんでいただきたい」という私たちの想いは、切り口を変えればサステナブルなメッセージとして伝わるはずです。新しいようでいて、Wpc.の立ち上げ時から一貫した考えが込められているプレスリリースです。
今後は企業理念や傘以外の情報も伝えていく
──今後の広報PRの目標を教えてください。
角谷:Wpc.は「傘をファッションに」という目標のもと始動し、2024年に20周年を迎えます。デザイン性が高い傘のリーディングカンパニーとして事業を展開してきた中で、ある程度生活者にも認知してもらえてきている手ごたえは感じています。今後はさらに、テレビCMやポップアップイベントも交えて、今一度傘はファッションの一部であると認識していただける仕掛けづくりをできれば、と思っています。
加えて、今は商品に関するプレスリリースが多いのですが、イベントやCSR関連の取り組み、企業の姿勢が伝わる発信にも裾野を広げて情報を発信していくつもりです。傘のテキスタイルを雑貨に転用するなどの取り組みも始めていますので、「傘」以外の発信をいかに増やしていくかも考えていきたいですね。
今回の事例ポイント
レイングッズに特化したブランドに関する情報を、高い頻度で配信し続けるワールドパーティー。傘やポンチョなどのプレスリリースが大部分を占めつつも、それぞれの商品の個性やストーリーを前面に出すことで、読み手を飽きさせない配信につなげています。
- 一目見て商品コンセプトが伝わるタイトルにする
- 商品が持つプラスアルファの魅力を訴求して差別化につなげる
- 同じ商品の情報も複数回発信してアップデートしていく
上記のポイントは、BtoC商品について発信する担当者の方、商品開発から販促まで一貫して担当するメーカーの方にとってもヒントとなるノウハウではないでしょうか。さらに、「傘」以外の情報発信も増やしていくという中村さんと角谷さん。個性あふれる商品の魅力をキャッチーに伝える同社の発信から、今後も目が離せません。
なおPR TIMES MAGAZINEでは、商品・サービスのストーリーを伝えるPR TIMES STORYや、トレンド情報を集めるノウハウについても解説しています。ぜひ参考にしてみてくださいね。
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