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ニュースリリースにとどまらないストーリーを届ける。社内外で共感を呼び起こす広報活動|TOTO株式会社

PR TIMES MAGAZINEは、広報活動に課題を感じている企業・団体向けに、日本全国の地域ごとにサービス導入の成功事例を紹介するインタビューを実施。

本記事では、TOTO株式会社の桑原由典さんと羽田野孟さんにお話を伺いました。同社ではニュースリリース配信に加えて、企業のストーリーをインタビュー形式などで発信する「PR TIMES STORY」も活用しています。トイレなどの水まわり商品の開発秘話、ストーリーを丁寧に伝える広報活動や採用広報への活用について語っていただきました。

TOTO株式会社の最新のニュースリリースはこちら:TOTO株式会社のニュースリリース

TOTO株式会社 広報部 本社広報グループ 企画主査

桑原 由典(Kuwahara Yoshinori)

大学院で建築学を修了後、建築系出版社を経て、TOTO株式会社の建築文化活動を担当する部署に入社。2013年10月より広報業務を担当し、2023年4月より現職。中長期視点での企業広報戦略の策定・実践を担当。

TOTO株式会社 人財開発部 人財採用グループ

羽田野 孟(Hadano Hajime)

大学卒業後、新卒でTOTO株式会社に入社。人事として労務・評価等を担当。現在は人財採用担当として、経験者採用および採用広報などに携わる。

企業のブランド価値向上のため、PR TIMES STORYを導入

──広報体制について教えてください。

桑原さん(以下、敬称略):TOTOの広報部は、本社が北九州にある関係で「本社広報グループ」と「東京広報グループ」の2つに分かれています。広報部では社外広報と社内広報のいずれも担当しており、本社と東京を合わせて計17名のメンバーで構成されています。

社内の情報源となる部署が主に北九州の本社と東京の事業所に分かれていることと、北九州と東京のメディアそれぞれとお付き合いしているため、広報部の2つのグループでそれぞれ技術者への取材やメディア対応など、役割分担をして広報活動を進めています。

──PR TIMESでのニュースリリース配信、PR TIMES STORYを導入したきっかけは何ですか。

桑原:TOTOでは、メディア以外の方々にもニュースを伝えたいという想いで、敢えて「ニュースリリース」と呼んでいます。メディアに配信するだけではなく、会社のWebサイトにもニュースリリースの枠を設けていますが、より多くの方にニュースを届けたいと考えていました。

PR TIMESのプレスリリース配信は多数の企業が活用しているプラットフォームであり、Web上での転載先が豊富なことも決め手となり、導入しました。また、オウンドメディアに近い発信ができるPR TIMES STORYにも大きな可能性を感じ、こちらは昨年から積極的に使っています。

TOTO株式会社01

──通常のニュースリリース配信とPR TIMES STORYとの発信のすみ分けについて教えてください。

桑原:PR TIMESを利用して配信するニュースリリースでは、当たり前ですが、新規性がある「ニュース」が必ず含まれています。主に、発表した情報をメディアに取り上げられることでの情報拡散と、会社の公式な情報発信の2つが狙いです。

その一方で、PR TIMES STORYは、ニュースリリースでは紹介し切れない情報をストーリー形式でお伝えすることが目的。新規性にはとらわれず、定番商品やサービスであっても、社内外ともに知られていない開発秘話などを社内のキーマンへの取材で掘り起こして、丁寧に紹介しています。

将来的には本格的にオウンドメディアを立ち上げることも検討していますが、スモールスタートを切るプラットフォームとしてPR TIMES STORYが使いやすいと考え、選択しました。

発売30周年を迎えた看板商品のストーリーにみる「振り返る意義」

TOTO株式会社 PR TIMES STORY1

──看板商品である「ネオレスト」が発売30周年を迎えたことを機に、PR TIMES STORYに誕生秘話を公開されました。御社における「ネオレスト」ブランドの位置づけを教えてください。

桑原:「ネオ(Neo)」には新しいという意味があり、「レスト」はレストルーム(Restroom)、つまりトイレ、またはトイレ空間を意味しています。「新しいトイレ空間を創造し続けていく」という想いが「ネオレスト」という商品名に込められています。

商品名そのものが象徴している通り、「ネオレスト」は1993年に発売したときから、次世代トイレという位置付けでスタートしており、現在においてもTOTOにおけるトイレの最上位シリーズであり続けています。「トイレの新常識を生み出し続けていく」というTOTOの強い意思が込められている商品です。

──なぜPR TIMES STORYを活用しようと思われたのですか。

桑原:2022年8月にフルモデルチェンジしたばかりということもあり、30周年をフックとする特設Webサイトの開設や、TOTOミュージアムでの企画展など、他部署による様々な施策が計画されていました。

広報部としては、従来通りのニュースリリースの発信はマストとして(PR TIMESでも発信しています)、30周年というタイミングならではの仕掛けができないかと考えていました。「ネオレスト」のDNAともいえる特長である「タンクレス」「節水」は、30年前から脈々と受け継がれ、進化し続けています。それならば、「原点である初代の誕生秘話をストーリー化したら面白いのでは?」と考えました。そこで、初代「ネオレストEX」の元開発者3名へのインタビューをもとに、ストーリーを構成しました。

執筆したPR TIMES STORYのストーリーがこちらです。

実は、初代ネオレストの開発秘話は、Webで公開しているTOTOの社史(100年史)でも紹介されています。新たにストーリー化するのであれば、社史よりも踏み込んだ内容にしようと思いました。社内でもあまり理解されていないマニアックな内容であっても、本質的に重要な部分はできるだけ詳しく紹介しています。文章だけでは伝わりにくい内容は、イラストを新たに作成しました。画像は、PR TIMES STORYで掲載できる上限の20枚をすべて使い切っています。

PR TIMES STORY内の画像
社員も知らないかもしれないマニアックなメカニズムも図解されているPR TIMES STORY

ストーリー化の決め手は、30年前に開発に携わった社員が社内にいたことです。開発背景についての詳しい社内資料もありましたが、資料だけではくみ取れない開発者の「想い」や、当時の社内外の空気感など、いわゆるナラティブな要素は、実際の当事者に話を聞いてみないとわかりません。30周年という口実があれば社内調整ができる手ごたえもあり、この機会を「広報マンとして逃したくない」という想いが、このストーリー実現を後押ししました。

配信の効果を実感したニュースリリース・ストーリー

桑原さんと羽田野さんに、実際の配信後に手ごたえを感じたニュースリリースやPR TIMES STORYについてお聞きしました。

事例1.ニッチなテーマに取り組む研究者にスポットライトを当てたストーリーにメディアから取材依頼

TOTO株式会社 PR TIMES STORY2

参考:「クサい」原因の解明は好奇心と探求心。蓄積された「ニオイ」のプロファイルから原因を嗅ぎ分ける鼻を持つ研究者!~日々の鼻の訓練がきれいで快適な水まわり商品を生む~

桑原:「ニオイ」の研究者にスポットライトを当てたストーリーになります。水まわりのニオイを断つにはニオイを知らなければならないということで、TOTOがニオイの研究をする意義や、研究者の情熱などを紹介しています。

TOTOでは基本的に、広報部員がストーリーを執筆しています。ストーリー制作全般に言えることですが、初稿ができあがった段階で広報部内の数人のメンバーで読んで意見を出し合い、ブラッシュアップしていきます。

その際に意識しているのは、メディアを含めた社外の方の目線で、ストーリーが「わかりやすいか」「面白いか」ということ。加えて、アイキャッチ画像のインパクトです。この「ニオイの研究者」であれば、白衣でただ立っていても研究内容が想像しにくいので、試行錯誤を重ねた末に、研究者が小便器に鼻を突っ込んでニオイを嗅いでいる写真になりました。

このストーリーの配信後、テレビ局から取材オファーが舞い込みました。また、新聞社の記者への売り込みにもストーリーを活用することで、研究者への取材にもつながっています。「快適のために不快なニオイと対峙するTOTO社員」という意外性が、引き合いにつながっているのかもしれません。

事例2.節水便器の開発秘話をまとめたストーリーが全国約100ヵ所のショールームに紹介される

TOTO株式会社 PR TIMES STORY3

参考:【節水便器 開発秘話①】30年前の“3分の1以下”の水で流せる理由――節水便器の進化が加速した1990年代

桑原:こちらは1990年代から2000年代にかけて節水便器の開発に携わった3名が、日本セラミックス大賞を受賞したことをきっかけに作成したストーリーです。TOTOの重点商品のひとつである「節水便器」と正面から向き合う内容で、1話では収まらず、3話構成となっています。

TOTOの節水便器には欠かせない2つのコア技術を中心に、その開発秘話を丁寧に紹介しています。ひとつは、便器表面をナノレベルにツルツルにする「セフィオンテクト」。もうひとつは、グルグル回すことで少ない水量でも効率的に洗浄し、かつ掃除のしにくいフチ裏をなくした「フチなし・トルネード洗浄」です。

こちらのストーリーは、社内からの反響がありました。全国に約100ヵ所のショールームがあるのですが、そのショールームで接客対応をする社員向けの情報紙で紹介されました。情報紙はトイレ関連の事業部が作成しているのですが、このストーリーが商品知識を高めるために有効であると評価されたようです。

PR TIMES STORYを始めて1年あまりですが、社内外ともに反響がでてきています。ニュースリリース作成とはけた違いの労力がかかりますが、社外と社内の両方の目線をもった広報ならではの切り口で、社員の様々なこだわりや想いをストーリー化する活動の手ごたえを感じています。

事例3.TOTO採用広報に関するニュースリリースを配信後、応募者が2割増

TOTO株式会社 プレスリリース1

参考:TOTO 2024年3月卒業学生向け、技術職冬季インターンシップを開催

羽田野さん(以下、敬称略):こちらは、2022年12月末に配信した新卒の技術職向けの冬季インターンシップ開催についてのニュースリリースです。

従来は合同説明会や自社主催イベント、TOTOグループの採用マイページを中心とした発信で、「TOTOに興味を持っている人」にしかアプローチできていませんでしたが、PR TIMESを活用することで、より幅広い学生に対して情報を発信することができるようになりました。

今回初めてPR TIMESでニュースリリースを出した結果、応募者が例年よりも2割ほど増え、多くの方に参加してもらうことができました。また、インターンシップに参加した学生の中で実際に入社を決めてくれた方も多数おり、確かな手応えを感じています。

今後も採用広報に関する新しいトピックをPR TIMESでどんどん発信していきたいと思っています。

今後の広報活動の目標

──今後の広報活動の目標を教えてください。

桑原:広報活動の基本方針は今後も変わらないと考えています。それは、社内外含めてあらゆるステークホルダーの「共感」を最大化していくことで、TOTOのファンを増やしていくことです。

広報が使える「素材」は、社内情報です。従来は、メディアに取り上げてもらうことを前提とした仕立て、すなわちニュースリリース形式の一本足打法でした。そこに、オウンドメディアを視野に入れ、PR TIMES STORYを活用したストーリー形式での発信が2022年より加わりました。

どちらの発信にも持ち味があります。メディアに取り上げていただくと、より多くの方の共感を得られやすいですし、ストーリー形式は広く拡散させるというよりも、刺さった方に深く共感いただきやすいように思います。それぞれの持ち味を見極めながら、共感の輪を広げる活動を進化させていきたいです。

羽田野:採用広報においても「共感」という部分が深掘りすべきキーワードになるかと思います。採用では共感していただいて、その次に仲間になっていただくことが大切。インターシップ、DXやデータサイエンスに特化したイベントなど、具体性をもった情報を伝えていきたいと考えています。

TOTO株式会社2

今回の事例ポイント

TOTO株式会社では、PR TIMESのプレスリリースだけでなく、PR TIMES STORYを活用した情報発信を積極的に行っています。なかでも、本社広報グループの桑原さんは、社員も知らないような商品の開発秘話を開発者本人にヒアリングするなど、多くのストーリーを執筆しています。TOTO株式会社の広報部の施策には、以下のような特徴がありました。

  • 自社商品発売30周年を記念した情報発信を実施
  • PR TIMES STORYを導入し、商品の開発秘話などを発信
  • 縁の下の力持ちのような役割の社員にもスポットライトを当てたストーリーを作成
  • PR TIMESで採用広報に関する情報を配信

「共感」を最大化し、より多くのTOTOファンをつくるための広報活動をしていきたいと語る本社広報グループの桑原さんと、一緒に働く仲間を増やすため奔走する人財採用グループの羽田野さん。今後もTOTO株式会社の広報活動から目が離せません。

なお、PR TIMES STORYや採用広報については、こちらの記事も参考にしてみてくださいね。

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この記事のライター

小町ヒロキ

小町ヒロキ

取材ライター。新卒で大手損害保険会社に入社し、5年ほど営業として勤務した後、ライターとして独立。今までに取材した企業は100社を超え、200名以上にインタビューを実施しました。現在は取材ライター業務だけでなく、Webマーケティング会社の広報担当としてプレスリリースの作成や採用コンテンツの執筆を行っています。趣味はバラエティ番組を見ること。

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