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2040年問題とは?2025・30・35年問題との違いと影響、企業が行いたい5つの対策を解説

日本は少子高齢化がさらに進み、2025年には数々の社会課題が生じるといわれています。それが2025年問題です。しかし、より深刻かつ早急な対応が求められるのは「2040年問題」です。日本において2040年はどんな問題が顕在化するのでしょうか。

本記事では、2040年問題が起きる背景やそれによる影響、あわせて企業が行いたい対策について解説します。

2040年問題とは

2040年問題とは、日本の高齢化率が推計35.3%に達することにより、社会に与えるさまざまな影響のことです。団塊世代の次に人口の多い1971〜74年生まれの団塊ジュニア世代が65歳以上に突入し、現役世代が急減するため、2030年問題や2035年問題と比べて大きな影響が出やすいといわれています。

例えば、2040年に高齢化率が上がるのに反比例して、20〜64歳までの人口比率は推計50%です。1990年は61.6%、2019年は54.9%と減り続け、2040年には全人口の半分にまで減少するといわれています。

高齢者1人に対する現役世代の人数が少ないため、2040年には現行の社会保障制度の持続可能性が社会問題として取り上げられるようになります。

各企業では、現役世代の減少による労働力不足が深刻化します。自社事業の継続・成長のために潜在労働力を活用したり、ブランディングを見直して企業価値向上を図ったりするなど、採用競争を優位に進めるための対策が重要になります。2040年に備えて、社会・企業・個人の全員が早めの対策を行う必要があります。

参考:第1章 平成の30年間と、2040年にかけての社会の変容|厚生労働省
参考:2040年問題に備える|市町村アカデミー

2040年問題が起きる背景

2040年問題が起きる背景には、日本の人口構成上、団塊ジュニア世代が団塊世代に次ぐ割合を占めていることが大きく関係しています。

厚生労働省が公開している資料「日本の人口の推移」では、2020年は65歳以上が全人口の29%でしたが、団塊ジュニア世代が65歳を迎える2040年には65歳以上が全人口の35%に達すると見られています。これにより、2020年は全人口のうち60%だった20〜64歳の人口が、2040年には全人口の半分にまで減少します。

高齢者が増え、現役世代が減少することで問題になるのが医療・介護の需給バランスです。2040年までにも2025年問題・2030年問題・2035年問題と、高齢者増加による諸問題についてはさまざまな言及がありますが、2040年は高齢化がピークに達することでそうした問題が深刻化するといわれています。

参考:日本の人口の推移|厚生労働省

2040年問題と他の年の社会課題との違い

2040年問題は日本に大きな影響を与え、さまざまな社会課題が生じます。しかし、2040年に突然社会が変化するわけではありません。2025年・30年・35年と5年の間隔で少しずつ状況が悪化し、1度目のピークを迎えるのが2040年です。他の年の社会課題との違いを理解し、今必要な対策を実施していきましょう。

2040年問題と他の年の社会課題との違いとは?

2025年問題

2025年は高齢者の割合が日本の総人口の30%に達すると推計されている年です。30%のうち1947〜49年生まれの団塊世代は75歳以上となり、高齢化が進行することで労働力不足による影響が多方面で表面化することが予想されています。社会保障制度の劣化がいよいよ現実のものとなり始めます。

同時に、2025年にはITインフラの老朽化による「2025年の崖」問題も起きます。すでに多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に取り組んでいるものの、DX推進による成果を実感するには約5年かかるといわれています。日本の高齢化により、推進を担う従業員が不足することが考えられるため、DX推進はやや緩やかに進行する可能性があります。

一方、2040〜43年あたりは高齢者数のピークといわれています。2025年が社会基盤の劣化が表面化するタイミングであることに対して、2040年は社会基盤の持続可能性自体が危ぶまれています。制度改革や健康寿命の延伸などの対策が必要です。

参考:1.高齢者の人口|総務省統計局
参考:日本企業のDX推進実態調査2023~未来を創る全社DXへの挑戦~ | PwC Japanグループ

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2030年問題

2030年は日本の高齢化率が31.8%に達すると推計されている年です。約3人に1人が高齢者で、65歳以上の高齢者が2005年から約1000万人増加します。一方、現役世代は2030年までに約6740万人まで減少することが見込まれています。これにより、本格的に企業での労働力が不足し始めます。

2030年問題では各業界の人材不足が問題となりますが、なかでも大きな問題となるのが物流クライシスです。物流クライシスとは、ドライバーの高齢化・人材不足に加えて、DX推進の遅れやアナログ業務の継続などにより起きる社会への影響のことです。

これにより、2030年には輸送能力が34.1%低下するといわれています。モノが運べなくなると一般生活者だけでなく企業の活動にも大きな影響があります。

一方、2040年は各業界で人材不足が深刻化することが問題となります。女性や高齢者など潜在労働力の活用やDX推進などの対応が必要です。

参考:厚生労働白書 近年の社会経済の変化と家計の動向|厚生労働省
参考:知っていますか?物流の2024年問題 | 公益社団法人 全日本トラック協会

2035年問題

2035年は日本の高齢化率が33.4%に達すると推計されている年です。日本では高齢化と少子化が同時に進行しており、日本の出生率は今後も緩やかに減少することが見込まれています。15〜49歳までの女性の年齢別出生率を合計した「合計特殊出生率」は、2023年時点で1.26と過去最低の数字になっています。

少子高齢化がより深刻化することにより、2035年も人材不足が日本の社会課題のひとつとして取り上げられます。限られた人材を企業が確保するには、従業員の働き方のニーズに応える制度の導入が必要です。技術革新の後押しもあって、2035年には時間や空間、雇用形態に縛られない働き方が主流になるともいわれています。

一方、2040年は2035年に比べてさらに人材不足が深刻化するといわれている年です。採用競争を生き抜き、人材を確保した後も介護離職などで人材が流出する可能性は否めません。従業員が長期的に働きやすく、かつスキルアップしながら能力を発揮して活躍できる環境を整備することが大切です。

参考:加藤大臣会見概要 |令和5年6月6日|厚生労働省
参考:1 高齢化の現状と将来像|平成27年版高齢社会白書(全体版) |内閣府

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2040年問題が社会に与える影響

企業では人材不足が深刻化するといわれていますが、2040年問題は社会に対してどのような影響を与えるのでしょうか。医療・介護サービスや公務員と自治体の減少、社会保障制度など、さまざまな視点から社会に与えうる影響について解説します。

社会保障費の増大により医療・介護制度の維持が難しくなる

日本は高齢化に伴い医療や介護サービスの利用者が増えているため、社会保障給付費が年々増加しており問題となっています。2023年は予算ベースで約134兆円の給付が見込まれていますが、2040年には188兆〜190兆円程度まで増加する可能性があると推計されています。

社会保障費の財源は、主に保険料と国費です。社会保障給付費が増加すると、その分、国民の負担率も上がります。実際、現役世代の社会保険料の負担額は年々増加しており、2040年の保険料負担額は約106兆〜107兆円の見通しです。

高齢者の健康寿命を延ばす対策を打ち出したり、高齢者のうち医療費負担が3割となる対象者を拡大したりと政府が社会保障改革を行ってはいるものの、現役世代の数が急減しているため医療・介護のサービスを今まで通り受けられる可能性は低いと考えられています。

参考:給付と負担について|厚生労働省
参考:今後の社会保障改革について ー 2040年を見据えてー|厚生労働省
参考:医療費の一部負担(自己負担)割合について|厚生労働省

人口減少の影響で自治体が消滅する

日本は高齢化かつ少子化も進行しているため、総人口も減少傾向にあります。「日本の将来推計人口」という資料によれば、2040年には総人口が約1億人になると推計されています。

そのため2040年には、人口減少による影響で消滅する自治体が発生します。消滅する可能性がある市区町村のことを「消滅可能性都市」と呼び、全国の896の市区町村がそれに該当するといわれています。うち523の市区町村は人口が1万人未満となると予測。全国の自治体のうち49.8%が消滅可能性都市だといわれています。

東京一極集中の影響もあって自治体消滅は進行するでしょう。

参考: 「地域消滅時代」を見据えた 今後の国土交通戦略のあり方について|国土交通省

医療・福祉サービスの改革により薬剤師の業務内容が変化する

2040年に起きるとされている医療・福祉サービスの崩壊を防ぐため、医療・福祉・介護などのサービスは抜本的な改革が行われる予定です。その影響を受けるのはさまざまな医療従事者です。医療従事者には、医師・看護師はもちろんのこと薬剤師も含まれています。

薬剤師は医療・福祉サービスの改革により、業務内容が変化する可能性があります。例えば、ロボットやAI(人工知能)、ICT(情報通信技術)の活用による業務効率化が推進された際には、オンラインでの服薬指導が一般化することが考えられます。

業務のタスク・シフティングも改革に含まれるでしょう。タスク・シフティングとは、本来医師が行う医療行為の一部を他の職種に委譲する取り組みのことです。医師人材の不足をカバーするために提唱されました。

すでに一部の病院では薬剤師を活用したタスク・シフティングに関する取り組みが行われています。このタスク・シフティングにより、2040年には薬剤師の業務内容およびその価値が大きく変化するでしょう。

参考:タスク・シフティングについて|厚生労働省
参考:日本病院薬剤師会 タスク・シフティングに関連する取り組み事例|一般社団法人 日本病院薬剤師会

厚生年金の財政が破綻する

2040年問題により、日本の厚生年金の財政が破綻する可能性があるといわれています。

そもそも厚生年金制度とは、現役世代が働いて得た収入の一部を保険料として徴収し、高齢者に年金として支給する制度のことです。高齢者が増えたり、自身の収入が増えたりすると負担額が増額されますが、実は収入に占める保険料の比率には上限が設けられています。

すでに日本の保険料の水準は上限に達しており、これ以上負担が増えることはないといわれています。その代わり、給付額の伸びを少しずつ抑える仕組みを政府は導入していますが、それでも年金財政はバランスしないのではないかとの声があげられているのです。

参考:第07話 給付と負担をバランスさせる仕組み | いっしょに検証! 公的年金 ~年金の仕組みと将来~ | 厚生労働省

限られた公務員数での行政運営を強いられる

市区町村の人口が減少するだけでなく、公務員数も減少傾向にあります。特に地方公務員は1994年のピークから減少し続けており、2016年には約273万人まで減っています。2040年の人口を基に職員数を試算したところ、現状よりさらに少ない人数で行政を運営する可能性があるとされています。

公務員数の減少は、近年の採用人数減少と団塊ジュニア世代の退職が要因ではないかといわれています。団塊ジュニア世代が退職することで公務員の人材不足が加速します。

参考:自治体戦略2040構想研究会 第一次報告|総務省

2040年問題が企業に与える影響

2040年問題により、日本社会は大きな変化を余儀なくされます。一方、2040年問題は企業にどのような影響を与えるのでしょうか。考えうる3つの影響を解説します。これらの影響を最小限にとどめるため、自社でどんな対策ができるのか考えながら読んでみてください。

深刻な人材不足

2040年問題が企業に与える影響の中でももっとも深刻なのが人材不足です。15〜64歳の現役世代はピークであった1995年の約8716万人から年々減少しており、2040年には約6123万人にまで達すると推計されています。これにより、企業は人材を確保することがより困難になります。

帝国データバンクの調査によれば、2023年10月時点で人材不足を感じている企業は全体の52.1%にも及んでいます。特に、旅館・ホテルや情報サービス、建設などの業界で慢性的な人材不足が続いています。

2023年の現役世代は約7400万人です。ここから2040年には1300万人程度減少するとされているため、企業は深刻な人材不足による大きな影響を受けることが予想されます。

参考:将来推計人口(令和5年推計)の概要|厚生労働省
参考:人手不足に対する企業の動向調査(2023年10月)|株式会社帝国データバンク
参考:人口推計(令和5年(2023年)7月確定値、令和5年(2023年)12月概算値)(2023年12月20日公表)|総務省統計局

介護離職の増加

深刻な人材不足と同様に懸念されているのが介護離職の増加です。有業者のうち介護をしている方は増加傾向にあります。2017年は約346万人でしたが、2022年には約364万人に達しています。

介護離職増加には、高齢者が増加する一方で介護に従事する人材が減少していることが関係しています。介護や福祉のサービスを受けられる高齢者の数が限られてしまい、自宅で介護しながら働かざるを得ない人が増えています。自宅介護は心身の負担が大きく、結果として多くの人は介護離職を選択しています。

介護離職を防ぐには、介護休業や介護休暇などの制度を導入したり、企業に制度が整っていない場合でも、法に基づいて介護にまつわる制度を利用できることを従業員に周知したりなどの対策が考えられます。

参考:令和4年就業構造基本調査|厚生労働省
参考:仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~ |総務省統計局

既存事業の継続が困難になる

2040年問題のひとつである人材不足は、既存事業の継続を困難にする可能性があります。

2040年には現役世代が約6123万人にまで減少し、事業を運営・継続するために必要な人材の採用競争が激化します。日本企業の99%は中小企業です。大手企業に比べて人材確保が難しいため、事業継続が困難になった場合には、事業の取捨選択をしなければなりません。

そうした状況になることを避けるには、今からITを活用したDXの推進とICTの活用が必要不可欠。毎月行う単調な作業を自動化したり、業務を効率化したりすることで、事業に必要な人材の数を最小限に抑えられます。

2040年問題に向けて企業がしたい5つの対策

2040年問題に向けて企業がしたい5つの対策をご紹介します。早めに対策を行うことで2040年問題から受ける影響を最小限にとどめることが可能です。

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1.DX推進とAIなどのICTの活用

2040年問題に向けて企業がしたい1つ目の対策は、DX推進とAIなどのICTの活用です。

2040年には日本の15〜64歳までの現役世代が人口の半分にまで減少します。限りある人材を確保するため企業間で激しい採用競争が行われますが、それと同時並行で行いたいのがDX推進とICTの活用です。

DX推進によりさまざまな業務をデジタル化しておけば、作業にも近い簡単な業務をより効率的・自動的に行うことができ、少ない人数でも滞りなく業務が進行します。余剰時間で生産性の高い仕事に取り組むこともできます。

ICT(Information and Communication Technology)は、日本語で情報通信技術と訳されます。パソコンやスマートフォンなどのデバイスでインターネットを介してデジタル情報をやり取りする技術全般のことを指しています。

例えば、医療の現場ではオンライン診療、サービス業の現場ではタブレットによる注文などがICT活用法のひとつとして挙げられます。労働人口が減少する2040年には、医療・介護・行政・サービス・流通など、さまざまな分野でDX推進とICT活用に取り組む必要があります

2.女性や高齢者などの潜在労働力の活用

2040年問題に向けて企業がしたい2つ目の対策は、女性や高齢者などの潜在労働力の活用です。

子育てをする多くの女性は、一度は仕事から離れ育児に集中する時期があります。しかし、一度現場から離れるとキャリアに空白の期間ができ、復職しづらいのが現状です。

2040年はそうした潜在労働力である女性を積極的に採用し、教育を行う必要があります。子育てをしつつ働きたい方でも能力を発揮できるように、業務内容の調整や仕事環境の整備も求められます。

高齢者の場合は、長年の経験から得た知識やスキルを活かして働ける場所を用意する必要があります。若い世代のメンターとして採用するのも高齢者を活用するひとつの方法です。

3.多様な働き方ができる制度を整える

2040年問題に向けて企業がしたい3つ目の対策は、多様な働き方ができる制度を整えることです。

2040年は正社員だけでなく、時短社員やジョブ型雇用などさまざまな働き方が考えられます。限られた労働力を確保するには、ニーズに合わせた柔軟な働き方を取り入れることが重要です。

フレックスやテレワークなど場所を限定せず働ける環境を整えることも検討しましょう。2040年は団塊世代に加えて団塊ジュニア世代も高齢者となり、自宅介護の必要性が高まります。従業員の介護離職を防ぐためにも、多様な働き方ができる制度を整えましょう。

4.ブランディングの強化

2040年問題に向けて企業がしたい4つ目の対策は、ブランディングの強化です。

2040年は採用競争がより激化すると予想されています。求職者数に対して、企業の求人数のほうが多くなり、就職売り手市場となります。企業側は求職者から選ばれるため、今まで以上にブランディングを強化していかなくてはなりません。

待遇面や福利厚生、社風、働き方の柔軟性など、自社のことを積極的に発信し、企業のブランディングを強化しましょう。

5.スキルや知識をアップデートできる制度を導入する

2040年問題に向けて企業がしたい5つ目の対策は、スキルや知識をアップデートできる制度の導入です。

企業ブランディングの強化により採用競争で優位となり人材を確保できた後は、その人材が流出しにくい環境を整えなくてはなりません。その方法のひとつがスキルや知識をアップデートできる教育制度の提供です。

eラーニングや資格取得の助成、ジョブローテーション、海外研修など、さまざまな制度が考えられます。教育制度の導入は、新入社員、中途社員を問わず、幅広い従業員の離職率の低減につながります。従業員が自主的に学び続けられる企業づくりを行いましょう。

2040年問題の影響を最小限にとどめるため早急に対策しよう

2040年問題は、団塊ジュニア世代が退職期に入り、一気に現役世代が減少することから、社会に与える影響は大きいと予測されています。特に、2025〜40年までの15年間は現役世代の減少スピードが早いため、企業は労働力を確保するために早急に対策を考えていく必要があるでしょう。

この記事では2040年問題に向けた企業対策を紹介しましたが、これらは広報PR担当者にも把握していてもらいたい内容です。

自動化できる業務の洗い出しから従業員に選ばれる企業になるための環境・制度の整備まで、取り組めることから実施し、企業の発展やブランド向上につなげ、2040年問題の影響を最小限にとどめられるようにしましょう。

2040年問題に関するQ&A

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この記事のライター

佐藤 杏樹

佐藤 杏樹

フリーのライター・編集者。PR TIMESに新卒入社しメディア事業部にてコンテンツ編集者・SNS運用・イベントなど担当。現在も執筆業に携わりながら広報・PRの仕事もしています。広報実務を通して得た知見や実践しやすい広報ノウハウ、最初に知っておきたい広報の基礎など、みなさまに分かりやすくお伝えします。

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