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広報とは?意味や目的、広報活動の仕事内容を現役広報担当者が解説

「広報」は今や大企業だけでなく、立ち上げ期のスタートアップに担当が置かれることもある重要な職種です。新たに広報を任された方や、広報担当者の設置を検討しているものの、そもそも広報の役割や目的、仕事内容について実ははっきり理解していない……という方もいるのではないでしょうか。

デジタル化が進んだことで、ステークホルダーとの接点が増加しています。接点の多さに比例して発信の機会も増える今、企業・団体側がメッセージを伝えてステークホルダーと良好な関係を築く重要性が高まってきました。その役割を担うのが広報担当者です。

本記事では、広報という言葉の意味や企業・団体における役割、目的、実際に行っている広報活動の内容を解説していきます。

広報とは?

広報とは、企業や団体などの組織が、ステークホルダー(利害関係者)との関係性を構築・維持することです。広報とは何か簡単に説明すると、自社と関係する人々との良好な関係を作ることだといえるでしょう。

広報という言葉はそもそも、戦後にGHQが民主化政策として取り入れた「Public Relations(パブリック・リレーションズ)」の訳語です。

パブリック・リレーションズとは、「組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、維持するマネジメント機能」と定義されています(参考:『体系 パブリック・リレーションズ』スコット・M・カトリップほか著)。

さまざまなステークホルダーと相互にコミュニケーションを行い、社会(パブリック)との良好な関係を築くための営みを「広報活動」と呼びます。

戦前まで「広報」は「弘報」と書かれることもありましたが、弘報は情報の配信のみを意味する一方向的なものであったため、人々に知らせて理解や協力を求める双方向的な「PR」の語が入ってきてからは、広報が多く使われるようになった、とされています。

広報とPRの違いとは?

広報とはパブリック・リレーションズの訳語であると説明しました。

ただ、概念としては広報=PRではなく、広報はPRの一部とする考え方が国内では主流です。PRは、商品の販促活動を指す「プロモーション」とも異なります。

広報とPRの違い

PRとは、「広報」「広聴」の双方を含む概念です。

広報は、さまざまな相手との関係を構築し、戦略のもとで情報を発信する活動です。

対して広聴は、社会の声に耳を傾け、自社の目指す姿や顧客のニーズを正しくとらえて社内に届ける活動を指します。

広報と広聴が混ざり合うPRでは、「どう伝えるか」「どうヒアリングするか」などといったコミュニケーションの手段が注目されがちです。ただあくまで根底にあるのは、発信すべきニュースを生み出すために積み重ねた、企業・団体の「行動」なのです。

行動の積み重ねこそがもっとも大切で、その行動を知りたいと思う人々に伝えるために戦略を練る。このことがパブリック・リレーションズの本質ともいえるでしょう。

広報に求められる5つの役割

パブリック・リレーションズの役割は「組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、維持する」ことと紹介しました。

では、実際に企業・団体と社会が有益な関係性を構築するうえで、広報にはどのような役割が求められるのでしょうか。代表的な5つの役割を説明します。

広報イメージ

役割1. 社会に対して情報発信する

広報担当者の1つ目の役割は、社会に対する企業・団体からの情報発信です。情報発信の際は「社会と信頼関係を構築する」目的を忘れないようにしましょう。売り上げにつながるサービス・商品の情報発信だけでなく、自社の存在意義や企業理念なども伝えていくことが大切です。

代表的な業務である「プレスリリースの作成・配信」や、「メディア関係者への対応」も広報の一環です。文章はもちろん、広報担当者が与える印象や行動も、見る人には情報として伝わります。そのため、担当者はコミュニケーションの一つひとつに細心の注意を払う必要があります。

役割2.ステークホルダーとのコミュニケーションを図る

広報担当者の2つ目の役割は、自社の発信が世間にどのように受け入れられたかを把握することです。

一方的な情報発信だけでは、社会から信頼を獲得しにくいものです。自社が発信した情報が社外からどう受け止められたかについて、反応を探って誠実に対応するのも、広報担当者の役割です。

メディア関係者からはもちろん、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSを通じて生活者の声を聞くこと、投資家の意見や、行政の方針に気を配ることも重要です。さまざまなステークホルダーの意見を取り入れながら自社の立ち位置を客観的に把握し、最適なコミュニケーションを考え、実践しましょう。

役割3. 事業活動に役立つ情報を社内に共有する

広報担当者の3つ目の役割は、社会からの反応やフィードバックを社内に還元して事業活動に役立てることです。

社内の現場担当者は、業界外の情報をキャッチアップすることが遅れてしまうこともあるでしょう。そうしたときに、広報担当者が率先して社会からのフィードバックや動向を社内に伝えることが大切です。新たな視点でビジネスチャンスを見つけたり、潜在的なリスクにいち早く気づいたりすることにもつながります。

役割4.経営者に課題を伝えて変革を促す

広報担当者の4つ目の役割は、時には経営に直結する課題を伝えて社内の改革を促すことです。

ステークホルダーからの批判、政局や業界の変化によるリスクなど、企業・団体としてのプレゼンスに直結する課題に突き当たることもあるでしょう。これらを経営陣に伝え、変革を促すことも、広報担当者のつとめです。

社会からのさまざまな要請に応えるためには、組織風土や企業文化の改革が必要になる場合もあります。CSRやSDGsなどの取り組みを伝えることも重要です。短期的な痛みがあっても変化を恐れず、長期的な目線を持って行動していくことで、結果として自社の持続的な成長につながるといえます。

広報担当者はこうした進言を聞き入れてもらうために経営の視点を忘れず、経営陣ともこまめにコミュニケーションを取るようにしましょう。

役割5. ブランディングに即した企業文化を醸成する

広報担当者の5つ目の役割は、企業イメージに合った企業文化を作りあげていくことです。

広報担当者は、社会における自社の立ち位置を冷静に把握しながら、必要に応じてブランディングを行います。その過程で、自社のブランドやイメージに合った行動・意識を従業員に浸透させていくのも大切なミッションです。

社内外で丁寧にコミュニケーションを重ねることで、ステークホルダーとの信頼関係が徐々に構築され、それに即した企業文化も醸成されるでしょう。このようなブランディングが成功すれば、社外にファンが増えて事業活動がうまくいくのはもちろん、従業員も、高いモチベーションとエンゲージメントを持って働くことができます。

ブランディングについては下記の記事でも詳しく解説しています。

企業・団体が広報活動を行う目的

以上をまとめると、広報担当者の役割は「自社と社会との間で信頼関係を構築し、維持する」ことです。

情報のやりとりだけを行っている状態では、役割のすべてを果たすことは難しいでしょう。広報担当者が介在することでステークホルダーとの良好な関係を堅持し、一層強固なものにしていく必要があります。

ここでは対象別に「コーポレート広報」「サービス広報」「インターナル広報」の3つに分けて、それぞれの役割・目的、広報として何をするのかを紹介します。

コーポレート広報:採用や資金調達など会社全般の課題を解決する

経営に寄与する「コーポレート広報」は、ステークホルダーとのコミュニケーションを行うことで、採用や資金調達、取引先との関係構築など、さまざまな側面から会社の経営に貢献します。サービス広報のように発信する内容が限定されるものではないため、相手や内容によって最適な伝え方を変える柔軟さが求められる仕事です。

コーポレート広報の目的は、顧客や株主などのあらゆるステークホルダーと適切なコミュニケーションを取り、お互いにとってwin-winの関係を実現すること。経営陣との意思疎通も重要であり、関係者を巻き込んでいくリーダーシップやスピード感が求められます。

サービス広報:購入と問い合わせ、ファンを増やす

売り上げなど事業成長に寄与する「サービス広報」は、商品やサービスの特徴、ブランドの世界観を社会に広めることで、マーケティングにも貢献します。短期的には売上高や問い合わせの増加が期待されますが、長期的にもブランディングにつながっていきます。

商品やサービスの認知度を上げることはもちろん、サービスとユーザーを結びつけて熱心なファンを獲得することも目的のひとつです。広告施策などと伴走しながら、サービスや商品に込めた想いなどを伝えることができるのは、広報担当者ならではの強みでもあります。メディア関係者へのアプローチなど、専門的な知識が求められるでしょう。

インターナル広報:経営理念の浸透や離職率低下など社内活性化を推進する

社内に向けてアプローチする「インターナル広報」は、経営理念を社内で広め、会社組織と社員のコミュニケーションを活性化させることで、仕事を通じた社員の充実感や成長機会を拡大します。

インターナル広報の仕事は内向きの活動と捉えられがちですが、実は社外に向けた情報発信も業務として行います。経営上のニュースやサービス・商品の特徴など社内の情報を適切に吸い上げ、自社の「らしさ」を軸に、オープンに発信していきます。

広報担当者の仕事は必ずしも社外・社内で割り切れるものばかりではなく、どちらもつながっているものと考えるのが適切だといえますね。

広報活動とは?具体的な5つの仕事内容

広報活動とは、さまざまなステークホルダーと相互にコミュニケーションを行い、社会(パブリック)との良好な関係を築くための営みだと説明しました。

そのための広報担当者の仕事は多岐にわたり、企業・団体の方針によって大きく異なります。次に、広報活動では何をするのか、主な5つの仕事内容をご紹介します。

プレスリリース_意味

仕事1.プレスリリースの作成・配信

広報の業務といえば第一に想起されるほど代表的な仕事が、プレスリリースの作成・配信です。

プレスリリースとは、企業・団体がメディアに向けて発信する公式発表です。新たなサービスや経営上のニュース、新商品などの情報に関して発信されることが多く、自社の認知度向上やブランディングに寄与します。広報担当者はプレスリリースがメディアに掲載されるよう、日頃からメディアリレーションズを築き、適切なタイミングで情報を提供することが求められます。

仕事2.メディア関係者への対応

メディア関係者と良好な関係を築く「メディアリレーションズ」も重要な仕事です。広報担当者は、経営者への突然のインタビュー依頼や、サービス・商品に関する取材に臨機応変に対応することが求められます。

取材対応はスピードとタイミングの良さが大切。メディア関係者と関係性を構築するためにも、取材対応は丁寧かつ迅速に行いましょう。

また、プレスリリースやメディアに掲載された情報から取材に結びつくことも多いです。プレスリリースについては、メディア関係者からのフィードバックを踏まえて日々改善することで、より多くの取材につながるでしょう。

仕事3.社員の発信についてのチェック

ブランドイメージを守るため、自社から発信する新商品・サービスに関するコンテンツをチェックすることも重要です。

チェックすべきポイントは、企業・団体としてトーン&マナーが統一されているか、センシティブな内容やモラルに触れていないかなど。会社の名前で公表する情報に関しては、経営やサービス・商品への影響が大きいため、広報担当者がコンプライアンスを順守しながら確認を重ねることが大切です。

また、社員がインタビュー取材や講演の依頼を受けたり、SNSなどを通じて情報を発信したりすることも多いでしょう。発言が企業イメージと乖離しないよう、広報の視点を社員に浸透させることも重要です。

仕事4.自社メディアやSNSを活用したコミュニケーション

企業・団体も自社メディアやSNSを活用した情報発信が求められる時代です。X(旧Twitter)やInstagram、TikTokなどのSNSの利用者増加にともない、ステークホルダーとの双方向のコミュニケーションが可能になりました。メディアリレーションズを通じた外部メディアへの掲載とともに、SNSを活用してコミュニケーションを取っていきましょう。

X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSは、アカウント開設のハードルが低く、簡単に始めることができます。あらゆる人が不快にならないよう表現に気を配る必要はありますが、生活者とのコミュニケーションを取りやすいというメリットがあります。情報が拡散され、一気に自社の認知拡大につながる可能性もあるでしょう。

すぐに多くのフォロワーを獲得するのは難しく、多くは地道な発信が求められます。「継続的にコンテンツを作り出せるか」など、中長期視点で運用について検討してから始めましょう。

仕事5.社員に対するフォローや情報発信

広報担当者は、社内にも情報を発信していく役割を担っています。自社が目指す姿を誰よりもまず社員に理解してもらうため、社内の動向や社員一人ひとりの活躍に目を向け、社員それぞれの想い・熱意をくみ取り、伝えていく必要があります。

リモート勤務などで直接顔を合わせる機会が減った企業・団体も少なくありません。企業文化を醸成して働く意欲を高めるためにも、企業・団体全体を見渡せる広報担当者の立場から、各方面に情報を発信していくとよいでしょう。

代表的な仕事として、社内報の作成などが挙げられます。

広報の仕事に求められるスキルとは

広報は社内外で情報をやりとりしながら、経営視点でブランディングや変革のきっかけを作り出すこともある、業務範囲の広い仕事です。

そのためコミュニケーション能力や表現力、企画を作る発想力などさまざまなスキルが求められるでしょう。

広報PR担当者としてさらにブラッシュアップを目指す方、これから広報担当者になりたいと考えている方はぜひ、こちらの記事も参照してみてください。

広報とは、企業・団体と社会の両方に寄り添う仕事

「広報」と聞くと、メディアに向けた発信を行うイメージが強いかもしれません。しかし、実際にはステークホルダーと良好な関係を構築するために、多岐にわたる業務を行っています。

 広報担当者は、自社が直面する課題や理想を理解しつつ、社会からの要請を受け止めることで、企業・団体と社会の両方に寄り添った広報活動を行います。まずは、社内に広報職を設置するかどうか検討してみるのもよいでしょう。

すでに広報担当者がいる場合は、自社と社会の課題を洗い出し、どのようにメッセージを発信していけるか、考えてみましょう。PR TIMESでは、広報担当者がメディアや世の中にメッセージを広く発信するためのプランを複数用意しています。会社設立から2年間、毎月1回・最大10件までプレスリリースを無料で配信できる「スタートアッププラン」もありますので、ぜひ登録申請してみてください。

<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>

広報を行う意味や役割、目的、仕事内容に関するQ&A

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この記事のライター

ならきち

ならきち

在宅ライター主婦。会社員時代は中古IT機器の専門商社で広報をしていました。取材対応をはじめとするメディアリレーション全般、プレスリリース執筆、危機管理対応、記者会見の企画・運営、自社ブログ記事の企画・執筆などを担当した経験を活かし、広報担当者の役に立つ記事を書きたいです。現在はわんぱくな息子に翻弄されながら在宅でライターの仕事をしています。

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