ステルスマーケティング(ステマ)を起こさないために広報が知っておきたい5つの基本知識

広報担当者がマーケティング活動を行ううえで、ステルスマーケティングに関する知識は正しく把握しておく必要があります。どんな企業も炎上を起こしたくて起こしているわけではないのと同様に、ステルスマーケティングについての基本知識がないことで、うっかり境界線を超えてしまいかねないからです。

本記事では、広報担当者が知っておきたい5つのことを、過去にあったステルスマーケティングに関する事例と共にご紹介します。

ステルスマーケティングとは?

ステルスマーケティングとは、製品・サービスを広告だと気付かれないように宣伝するマーケティングの方法です。アンダーカバーマーケティングとも呼ばれます。

企業から金銭などの報酬をもらっているにも関わらず、企業との関連がないように見せた宣伝方法であり、「実際に使った人の感想なら信頼できる」という消費者心理を悪用した、モラルを欠いた悪質な行為です。

ステルスマーケティングの手法は大きく分けて3つです。

  • 芸能人にPRであることを隠して商品を紹介してもらう
  • インフルエンサーやブロガーにPRであることを隠して宣伝してもらう
  • 一般消費者のふりをして口コミを投稿する

どの手法もPRであることを伏せた状態で行われる点が共通しています。芸能人やインフルエンサーを使ったステルスマーケティングは多く見られますが、一般消費者のふりをした口コミによるステルスマーケティングは特に印象が悪く、過去にはこの手法を使ったステルスマーケティングも行われていたケースがあります。

ステルスマーケティングは違法になるの?

日本と海外で、ステルスマーケティングの法律上の扱いは異なります。日本の場合、ステルスマーケティングは違法ではありませんが、ケースによっては違法行為と認定される場合もあります。

抵触する可能性がもっとも高いのが「景品表示法」(※1)です。景品表示法は、景品類の過剰な提供による不当な顧客誘引行為や人を欺く広告表示から、一般消費者の利益を保護するために制定された独占禁止法の特例法です。その中には、大きく分けて3つのルールが設けられています。

  1. 景品提供の制限:過大な景品提供を避けるためのルール
  2. 優良誤認表示:商品の性能や効能を優秀に見せかける行為
  3. 有利誤認表示:類似商品やサービスより有利な価格、条件に見せかける行為

景品表示法に違反した場合、消費者庁や都道府県による排除措置がなされます。平成28年4月1日からは、不当表示を行った事業者に対して課徴金の納付も命ぜられるようになりました。景品表示法については「景品やプレゼント配布時には注意!広報が「景品表示法」について知っておきたい7つのこと」にて詳細に説明しています。

一方、アメリカではステルスマーケティングは違法行為です。連邦取引委員会による「連邦取引委員会法」(※2)の5条において、不公正な競争方法は禁止されています。取引制限や独占化行為も対象で、ステルスマーケティングに関しては厳格に取り締まりがなされています。

日本ではまだ詳細な法律が定まっていませんが、これから先、アメリカのようにステルスマーケティングに対する取り締まりが強化される可能性も十分あるといえるでしょう。

ステルスマーケティングを行うことによるリスク

日本ではまだステルスマーケティングに対する法律は整備されていないことを説明しましたが、法律に抵触しないからステルスマーケティングをやってもいいのか、というともちろんそんなことはありません。

ステルスマーケティングを行うことで様々な悪影響があります。今回は、ステルスマーケティングを行う3つのリスクについてご説明します。

1.消費者からの信頼を失う

ステルスマーケティングを行うもっとも大きなリスクとしてあげられるのが、消費者からの信頼を失ってしまうことです。消費者は、第三者の口コミを信頼する場合も多くあります。ステルスマーケティングは、そうした消費者の心理を利用した狡猾な行為です。

PRであることを隠して自社にとって有利な発言を発信する企業だと一度でもみなされてしまえば、信頼を取り戻すことはかなり難しくなるでしょう。

2.企業の業績にも影響が出る

ステルスマーケティングは、ステルスマーケティングが行われた商品やサービスだけでなく、それらの事業を展開している企業の業績にも影響が出ます。悪評が拡散されることにより、すべての事業においてステルスマーケティングが行われているのではないかと、疑いの目で見られるようになってしまうからです。

ステルスマーケティングは、企業としての信頼も失うことを覚えておく必要があります。

3.業界全体の不信に繋がる

ステルスマーケティングを行うことによる影響は、業界全体の問題にも発展します。同様の事業を展開している企業の信頼度も低下し、業界全体の経済の動きが鈍くなってしまう可能性もあります。

時には業界全体の経済の再建ができず、業界内で事業を終了する事業者も続出することもあるでしょう。自社だけではなく業界全体への不信を引き起こす可能性があることも認識しておきましょう。

ステルスマーケティングは具体的にどんなもの?知っておきたい事例

実際、過去にあったステルスマーケティングの事例をご紹介します。紹介すると共に、どの点が問題だったのか、ステルスマーケティングにしないためには何に注意するべきだったのかも解説していきます。

自身が関わっているプロジェクトと共通する点はないか、この機会に見直してみてくださいね。

1.関係性の明示がないプロモーション投稿

あるコンテンツの発表に際して、その「感想」が第三者であるインフルエンサーにより同時多発的にSNSで投稿された事例がありました。いずれも企業側から依頼を受けた投稿であり、どの投稿にも同一のハッシュタグを使用しながら、PR表記・広告表記の記載がなく、関係性も明示されていなかったため、読み手から疑惑の声があがりました。

本件は、内部の情報共有とPRに関する必要知識に課題があったと指摘されています。一度情報が広がってしまうと「知らなかった」では済まないことが改めて周知された件でもあります。

関わる関係者全員と共通の倫理観を持つには、しっかりと自社の姿勢について言葉にして共有する必要があるといえるでしょう。

2.自社社員であることを伏せてSNS投稿

とあるメーカー社員が、身分を明かさずに自社の商品を推奨するような内容を複数投稿していた事例があります。該当アカウントで、該当企業の商品がPR表記・広告表記なく頻繁に紹介されるため、読み手に違和感が生じたことをきっかけに明らかになりました。

本件のポイントは、社員個人のSNSで自社製品に関連する投稿を行ってはならないという社内ルールがあるにも関わらず、徹底した周知・教育が成されていたかったことにあります。

個人の倫理観に頼らずに、新入社員、中途社員の入社に合わせて説明する機会を細かに設けることで、予期しないステルスマーケティングを避けることができるでしょう。

3.代行業者によるやらせ

ステルスマーケティングを利用したもっとも代表的なものに「やらせ」があり、「口コミサイト」で個人消費者を装った代行業者によるやらせの評価がされていたことが発覚したケースがあります。

本来は個人ユーザーが自身の体験に基づいてリアルな声を投稿する場である口コミサイトに、あたかも体験してそのサービスを称賛するかのような虚偽の口コミを多数投稿する業者が現れたのです。

発覚のきっかけは、ある企業より不正業者から営業を受けたという旨の通報でした。

本件は、口コミサイト側のアルゴリズムやユーザー認証手続きにも課題があったとされます。今では主要サイトではそのような項目を厳重に管理されるようになってきましたが、たとえそれをかいくぐるような不正サービスの提案があっても受け入れない姿勢を貫く強さが必要です

ステルスマーケティングをしないために、広報が知っておきたい5つのこと

ステルスマーケティングをしないために、広報担当者は様々な対策を行う必要があります。そして対策をするうえで重要なことは、個人の倫理観に頼りすぎてしまわないことです。

全社でステルスマーケティングに対する共通認識を持つことは、予期しないステルスマーケティングを避けることに繋がります。最後に、広報が知っておきたい5つのことについてご紹介します。

1.マーケティングに関する正しい知識

広報担当者自身が、ステルスマーケティングに関する正しい知識を有していることは必須事項です。ステルスマーケティングという言葉の定義、ステルスマーケティングはなぜ行ってはいけないのかなど、自分の言葉で説明できるように基本的な知識を勉強しておいて損はありません。

それに加え、インフルエンサーマーケティングを行ううえでの注意点、通常のマーケティングとステルスマーケティングの違いも説明できるとなお良いでしょう。社内でひとりでも多くステルスマーケティングについて正しい知識を持っていることが、ステルスマーケティングの防止に繋がります。

2.社員のSNSアカウント運営上のルール作り

全社に対して、SNSを利用するうえで守ってもらいたいルールを作り、周知・教育体制を徹底することも今後は必要になってきます。

一人ひとりの倫理観に頼っているだけでは、ステルスマーケティングが起こりうる可能性を防止できません。最低限守ってほしいラインと、確実にステルスマーケティングに繋がってしまうような行為について周知させましょう。

3.企業やブランド、インフルエンサーとの認識すり合わせ

PR、広告に関する仕事を一緒に行う企業やブランドとは、仕事内容の認識を徹底して行いましょう。その際、忖度したり、共通認識があると思い込んだりせず、企業やブランド側がステルスマーケティングに関する知識が浅い場合は特に、まず基本の認識からすり合わせていきます。

依頼するインフルエンサーによっては、一般消費者に近い感覚で活動しているインフルエンサーもいます。彼・彼女らとの間でも、ステルスマーケティングとPR・広告の仕事に関する共通認識を確認しておくことを忘れないようにしましょう。

4.PRに適した表現方法

ステルスマーケティングというとその手法が注目されますが、景品表示法の抵触可能性があるように、PR・広告に適した表現方法についても知っておきたいところです。全社共通のルールを周知する際、教育内容の一部に入れるのも良いかもしれません。

事実を偽った内容になっていないか、誇張した表現になっていないか。競合相手を貶める内容になっていないかも確認する必要があります。日常的に使用している言葉も、PR・広告を行う際には景品表示法の違法行為にあたる場合があるので、細部の表現まで確認を行ってください。

5.サービスごとのステマ防止策の把握

何らかの理由でPR・広告の表記が抜けてしまったときの防止策として、サービスごとのステルスマーケティング防止策は把握しましょう。

例えばInstagramには、健全なマーケティング活動を行うためにブランドコンテンツタグという機能が搭載されています。YouTubeには「プロモーションを含みます」と動画上に表示する有料プロモーション表示機能もあります。万が一の場合の防止策として、これらの機能を使って投稿することをお願いできるよう、サービスごとのステマ防止策の有無は知っておくと良いでしょう。

ステルスマーケティングの問題点を正しく知ることで消費者の信頼を失わない行動に繋がる

自社のサービスや商品をもっと知ってもらいたいという気持ちが大きくなると、やってはいけないことの判断がつかなくなる瞬間もあるかもしれません。そのとき、自分や周囲を引き止められるのは、ステルスマーケティングに関する正しい知識と、それによって起こり得る悪影響、予期しないステルスマーケティングを避けるための対策です。

実際に起きてしまったステルスマーケティング事件を知ることは、どの点が問題だったのかを考え直す良い機会になります。いま一度、ステルスマーケティングに対する自身の解釈を見直し、広報担当者として消費者からの信頼に応える活動ができているかどうかについても振り返ってみてはいかがでしょうか。

※参考サイト

1:消費者庁「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」

2:米国 (United States):公正取引委員会

この記事のライター

佐藤杏樹

佐藤杏樹

フリーのライター・編集者。PR TIMESに新卒入社しメディア事業部にてコンテンツ編集者・SNS運用・イベントなど担当。現在も執筆業に携わりながら広報・PRの仕事もしています。広報実務を通して得た知見や実践しやすい広報ノウハウ、最初に知っておきたい広報の基礎など、みなさまに分かりやすくお伝えします。

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