「来月から広報を任せたい」「現在の業務と兼任で広報もやってほしい」──
こうした突然の辞令で、ひとり広報に就任したというケースは少なくありません。専門的な知識や経験がないまま業務を始めることになり、何から着手すべきか分からず戸惑う方も多いのではないでしょうか。
特に、KPIや成果目標が設定されている場合、焦って施策をこなす日々に追われがちです。しかし本来、広報PRは「社内外のステークホルダーと信頼関係を築くための活動」。短期的な成果だけでなく、長期的に企業の価値を高める視点が欠かせません。
本記事では、ひとり広報として取り組むべき11のステップをわかりやすく解説します。まず何を整理し、誰と連携し、どのように動くべきか——。中長期で成果を出せる広報活動の第一歩として、ぜひ参考にしてください。
ひとり広報が増えている背景
近年、「ひとりで広報を担当する」体制をとる企業が増えています。突然任命され、何から手をつけるべきか戸惑いながら広報業務をスタートする方もいらっしゃるでしょう。
では、なぜ「ひとり広報」というスタイルが広がっているのでしょうか。その背景には、企業活動における広報の必要性が非常に高まっていることがあります。
企業の信頼性や社会に対する姿勢が重視される時代になり、広報は単なる情報発信ではなく、社会と信頼関係を築くための重要な役割を担うようになりました。
また、SNSやメディア環境の変化により、企業のメッセージはすぐに可視化・拡散されるため、誠実で戦略的な発信が求められています。加えて、採用活動やブランドイメージの構築においても、広報の果たす役割はますます大きくなっています。
こうした社会的背景に加え、デジタルツールの進化によって少人数でも効果的に広報活動を行える環境が整ってきたことも後押しとなり、「まずはひとりからでも広報を始めよう」という企業が増えているのです。
なぜ「ひとり広報」は難しいの?よくある課題と解決策
ひとり広報に任命された多くの方が、最初に直面するのが「すべて自分でやらなければならない」というプレッシャーではないでしょうか。
広報業務は広範で、優先順位も状況によって大きく変わります。まずは、特に多くのひとり広報の方が抱える3つの代表的な課題と、それに対する現実的な対策を紹介します。
課題① 業務負荷が大きすぎる
プレスリリースの作成、メディア対応、社内報の編集、SNS運用……広報が担う業務は多岐にわたり、ひとりでは手が回らないのが現実です。
これらすべてを完璧にこなそうとするよりも、まずは「やらないことを決める」ことが重要です。優先順位を整理し、クリッピングや配信業務など、外部サービスやテンプレートを活用できるものは積極的に活用して効率化しましょう。
課題② リソースやノウハウが不足する
広報経験が浅いと、そもそも何から手をつければいいのかが分からないという悩みも多く聞かれます。情報収集に追われ、孤独を感じやすいのもひとり広報の特徴です。
そんな時は、広報担当者を対象にした勉強会やコミュニティに積極的に参加するのがおすすめです。自社だけでは得られない視点やノウハウが得られ、横のつながりも生まれます。
課題③ メディアとの関係構築が難しい
ひとり広報の多くが課題に感じるのが、記者との接点づくりです。メディア対応の経験が少ないと、何をどう話せばよいのか分からず、関係構築が進まないことも。
まずはメディアキャラバンなどの場を設け、顔を合わせる機会をつくりましょう。実際の会話や資料のやりとりを通じて、信頼関係を少しずつ築いていくことが大切です。
ひとり広報になったらまず実行したい11のSTEPを紹介
初めて広報活動をする場合、何から手をつけたらいいのかわからない人も多いのではないでしょうか。また、ひとりで広報活動をする場合、リソースが限られているため、綿密に計画を立てることが重要です。広報PR活動の全容を理解し、行動目標をすり合わせてから活動すると、メンバーの協力も得やすく円滑に仕事が進みます。
今回は未経験でひとり広報に就任した方の多くが目標にする、メディア露出を通じたPR活動に必要な11のSTEPを解説していきます。

STEP1.PR活動の全体像・事例を把握
まずは、チームを先導する第一歩としてPR活動の全貌を把握していきます。トップダウンの指示で動く前に、「PR」と「広報」の違いや全体業務を理解しておきましょう。「広報」は「PR」に内包された概念であり、大きく「社外広報」と「社内広報」に分かれます。
「社外広報」……企業の認知拡大やサービスの利用促進、採用や資金調達に貢献
「社内広報」……社員のエンゲージメントを高めるなど、社内文化の醸成に貢献
広報PR活動と一口に言っても、広報の目的によって活動内容は異なります。同時にPR事例に目を通すことで、PRが持つ企業・社会へのインパクトを認識しながら理解を深めることができます。
STEP2.経営陣との認識合わせ
広報業務の全体像を把握したら、PR活動を通して企業が向かう方向を経営陣とすり合わせます。
「PR活動=メディア露出」と考える経営陣も多いため、PR業務が持つ可能性や成功事例を通してPR業務の全体像をプレゼンしてもいいかもしれません。また、「どのステークホルダー(クライアント、求職者、株主、ユーザー、社員など)」に対して、「どのように見られたいのか」、「現状は何が課題か」、「そのために何ができるか」に答えることにより広報活動で実現する世界観が共有しやすくなります。

広報PRを、マーケティングや広告などと誤って認識しているメンバーがいる場合は、それぞれ活動の目的が異なることを明確にしておきましょう。
STEP3.年間計画を立てる
広報を手段に「誰に対して何を伝えるのか」が決まったら、年間計画に落とし込みます。資金計画、事業計画、採用計画をもとに「いつまでにどのような状態になっていればよいか」「いつまでに達成をするか」を決めていきます。
限られたリソースで結果を出すためにも、各ステークホルダーごとに目標を作成し、重要度・優先度をもとに取捨選択をする意思決定が必要となります。PR活動の計画は経営方針に紐づくため、PR活動自体が経営活動といわれるのも頷けます。
STEP4.PR企画を作成
年間計画をもとに想定ステークホルダーごとのPR企画を作成します。「ネタがない」ではなく「ネタをつくる」心持ちで、時流・季節性・意外性・社会性・数字を考慮して企画します。案が浮かばない時は競合企業の打ち出しを参考にしましょう。
STEP5.PR手段の選定
ステークホルダーと関係構築を図る最適な手段を選びます。年間計画、PR企画を参考にSNS・オウンドメディア、広告、寄稿、メディア露出などから最大の効果が見込める手段を短期的、長期的な視点で選定します。
認知度拡大が見込めても、設定した目標とは違うメッセージがステークホルダーに伝わることも考えられます。都度PR活動の目的を振り返りながら手段を選んでいきます。
STEP6.評価方法・目標設定
企業のPR課題のひとつとしてよく挙げられるほど、PR活動の評価は難しいといわれています。定量と定性目標を合わせたOKRを用いたり、行動指標をもとにKPIで評価したりと組織によって評価方法はさまざま。プロセス、アウトプット、アウトカムそれぞれに評価軸を定め、広告換算、好意度評価、SNS反響数といった手法を検討します。
STEP7.情報収集
PR計画を行動に移していきます。自社の情報を発信する機会が増えるPR担当者。企業を取り囲む政治、経済、社会、技術の動向を理解しておくと、企画立案、プレスリリース作成、資料作成、メディア対応時に言葉の説得性が増します。
マクロ情報に限らず、経営陣やメンバーに対するインタビューなど社内にも目を向けることで、思わぬPR企画につながる情報を手に入れられる場合もあります。
STEP8.プレスキットの作成
情報収集をしたら、経営陣に代わって企業の魅力を伝えることを目標にプレスキットを作成します。メディア関係者に向けて、企業やサービスに関わるプロモーション用の資料や画像・動画素材をまとめましょう。
企業によってプレスキットの内容は異なりますが、マーケット規模、社会課題、それに対する自社のサービス優位性、他社との違い、実現するための社内制度やメンバー、企業としての注目ポイントをまとめると企業価値が伝わりやすくなります。
STEP9.メディアキャラバン
選定媒体へアプローチをするメディアキャラバンのため、メディアリストを作成します。ステークホルダーが接触する媒体を選定し、電話やSNSを通じて(プレ)取材を獲得します。ここでもPRの目標に立ち返り、時には競合他社とも協力しながらメディアリレーションを構築します。
最初は業界紙や地方紙など、企業に興味を持ってくれる媒体での掲載実績を増やすのもよい手段といえます。媒体にこだわりすぎて掲載チャンスやメディアリレーションの機会損失を招かぬよう気をつけましょう。
STEP10.PRコミュニティの参加・ネットワーキング
ひとり広報にとって強い味方になるのがPRコミュニティへの参加です。スタートアップ企業は特に単体掲載が難しい媒体もあるので、共同でPR企画を持ち込んだり、メディア関係者を紹介し合ったりと協力体制が築けます。
まずはどういった会があるのか参加して確認するのも意味がありますが、具体的な課題や問題意識を持っているほうがアドバイスや助け合いができ、よりよい関係構築につながります。
STEP11.社内共有
広報PR活動で必要となるのが社内の理解や協力です。社内向けにも定期的な発信をすることが重要です。社内報、社内向けイベントの企画、社内広報勉強会といった手段を選択します。
メディアに取り上げてもらった際の結果報告は特に重要です。企業やサービスが世の中に露出することで、メンバーのエンゲージメント醸成や協力獲得が容易になります。結果を出すことが何よりも信頼構築につながるといっても過言ではありません。
ひとり広報が知っておきたいサービスやコミュニティ
限られた時間やリソースで成果を出すためには、外部サービスやコミュニティを活用することが重要であると解説しました。そこで最後に、知っておいていただきたいPR TIMESのサービスについてご紹介します。
国内シェアNo.1であるプレスリリース配信サービスである「PR TIMES」は、メディアへの情報拡散だけでなく掲載の効果測定機能をはじめ、ひとり広報を支える実用的な機能が揃っています。また現在ご覧いただいている、「PR TIMES MAGAZINE」では、実践事例やノウハウが紹介しているので、広報初心者にも心強い情報源となるはずです。
さらに、PR TIMESが主催する「PR TIMES勉強会」や広報・PR担当者向けコミュニティイベント「PR TIMES カレッジ」は、広報の基礎から実務まで体系的に学べる場として人気です。実際の広報担当者同士で交流することで、自社の課題へのヒントや視野の広がりにもつながるでしょう。
加えて、「Webクリッピングサービス」を活用すれば、掲載情報を自動で収集・整理でき、社内への報告や効果分析の手間を大幅に軽減できます。必要な情報だけを素早く可視化できるため、ひとり広報にとっては欠かせない存在です。
こうしたツールやネットワークを積極的に取り入れることで、効率的かつ質の高い広報活動が実現できます。ひとりで抱え込まず、使えるものをうまく活用していくことが、効果的に続けるためのコツです。ぜひ活用してみてください。
ひとり広報になったら11のSTEPを社内メンバーと一緒に進めよう
ひとり広報はPRのプロフェッショナルとしてメンバーを先導する立場にあります。決してひとりで広報をするわけではありません。
焦らずに広報PR活動をするためにも、達成したい世界観をメンバーとすり合わせ、実行、振り返りを通じてメンバーと共に目標を目指していきましょう。11のSTEPは上から順に対応する必要はなく、臨機応変に活用ができます。自社に合ったPR活動を進めるうえで参考にしてみてはいかがでしょうか。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
ひとり広報に関するQ&A
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