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年間広報計画(年間広報プラン)の立て方は?3つのポイントとテンプレート、10の必要項目を紹介

限られたリソースで戦略的な広報PR活動を行うためには、「年間広報計画」が重要です。

一方で、年間広報計画の立て方がいまいちわからない、と悩む広報PR担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、年間広報計画を作成したことがないという方に向け、年間広報計画を立てるためのステップ・必要項目・ポイントを、テンプレートと併せて紹介します。

年間広報計画を立てる目的とは?

年間広報計画を立てる目的として、以下の3つが挙げられます。

  1. リソース配分を最適化する
  2. チームの意識や行動の足並みを揃える
  3. 社内のステークホルダーから理解・協力を得る

ひとつずつ確認していきましょう。

確認するイメージ

目的1.リソース配分を最適化する

1つ目は「リソース配分を最適化する」ことです。

広報PR活動のリソースに余裕があるという企業はあまり多くないもの。広報PR担当者がひとりしかいないというケースや、予算が潤沢でないケースも多いでしょう。

広報PR活動において何に集中するかが決まっていないと、リソースが分散してしまい、目的や目標の達成がむずかしくなります。

年間広報計画を作成することで、どのタイミングでどのような活動に注力すればよいかが明確になり、限られたリソースを適切に配分できます

目的2.チームの意識や行動の足並みを揃える

2つ目は「チームの意識や行動の足並みを揃える」ことです。

広報PR活動の計画が曖昧だと、チーム全体で共通認識が持てません。先の見通しが立たずチームや関係者のモチベーションが低下してしまったり、目線のずれなどによるコミュニケーショントラブルが生じてしまったりといった事態が起こり得ます。

年間広報計画があれば、チームが団結し同じ目線で行動できるようになるでしょう。

目的3.社内のステークホルダーから理解・協力を得る

3つ目は「社内のステークホルダーから理解・協力を得る」ことです。

広報PR活動では、開発担当者やマーケティング担当者など、他部署の関係者から情報提供や取材などに協力してもらう必要があります。

また、次年度以降の予算獲得のためには、経営陣に活動の方針を提示し、広報PR活動の重要性を理解してもらうことが大切です。

その場限りの広報PR活動を行っていては、他部署や経営陣からの評価も得にくくなります。目的・戦略・具体的なアクションプランが含まれる年間広報計画を作成することで、広報PR活動に対する社内のステークホルダーの理解が深まり、協力してもらいやすくなるでしょう。

年間広報計画の立て方の3つのステップ

次に、実際に年間広報計画を作成するための3つのステップを紹介します。 

STEP1.全体方針や予算など、広報PR活動の前提となる条件を確認する

はじめに、企業・団体における今年度の注力テーマや広報PR部門に割り当てられた予算を確認します。与えられた条件の中で実行可能な広報PR活動の範囲を策定する必要があるためです。

経営陣だけでなく、他部署の責任者から各部署の年間の動きもヒアリングしておきましょう。全社や各部署における注力テーマを確認したうえで、広報PR活動に求められていること・貢献できることをすり合わせていきます。

STEP2.自社の課題に基づき、戦略を策定する

全社的な方針や戦略を確認した後は、取り組むべき課題を広報戦略に落とし込んでいきます。

広報PR活動によってどのような課題をどのように解決していくか、経営陣や他部署の人にも理解されやすいよう言語化しましょう。

広報戦略の重要性や策定の方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

STEP3. 具体的な施策をスケジュールに落とし込む

戦略が決定したら、具体的な施策と実行スケジュールを考えます。「施策」「スケジュール」「体制」「予算配分」を検討し、スムーズに実施まで進められる状態にしましょう。

このステップで、自社専用の「広報カレンダー」を作っておくと便利です。広報カレンダーとは、社内外の行事やイベントについて、時系列でわかりやすくまとめたもの。

季節ネタや時事ネタと自社の事業をうまく絡め、より多くの人に情報が届けられるような施策を企画しましょう。

年間広報計画に必要な10の項目

ここからは、年間広報計画に必要な項目について解説します。

各項目について、「野菜の定期購入サービス」を運営する企業を例に具体的に説明するので、ぜひ参考にしてみてください。

年間広報計画に必要な項目イメージ

項目1.広報PR活動の前提条件

まず、STEP1で考えた広報PR活動の前提条件を記載します。

具体的には、「企業・団体の全体的な注力テーマ」「事業・部署ごとの方針」「各部署が広報PR活動に求められる役割」を確認します。

例:

【企業の注力テーマ】

  1. 人材採用
  2. 新サービスの開発
  3. 主力商品「野菜の定期購入サービス」の売上アップ

【「野菜の定期購入サービス」事業の方針】

  • 目標:今期売上1,000万円
  • 現状:昨年と同じ水準だと、売上着地は500万円
  • 分析:競合が主婦層のシェアを拡大している
  • 課題:競合がリーチできていない層の開拓
  • 戦略:20~30代の働く女性向けプランを考え、販売する

【広報PR活動に求められる役割】

  • 主力事業「野菜の定期購入サービス」の、20~30代の働く女性に対する認知率アップ

項目2.課題

課題とは、企業や団体が広報PR活動を通して目指したい理想の状態と、現状との間で、ギャップをもたらしている要因です。

過去の広報PR活動の分析や、関係部署から情報収集をして策定します。

例:

  • 理想:20~30代の働く女性に対する認知率アップ=認知率15%
  • 現状:認知率5%
  • 課題:ターゲットの女性向けに開発した新プランが認知されていない

項目3.目的

目的とは、「課題」を踏まえ、企業や団体が広報PR活動を何のために行っていくかを言語化したものです。過去の施策の結果や、自身の団体や企業の方針をもとに定義します。

例:

  • 目的:20~30代の働く女性に向けた新プランの認知獲得

項目4.ターゲットとターゲットメディア

ターゲットとは、目的達成するためにアプローチしたい顧客の層を指します。コミュニケーションターゲットともいいます。

メディアへの露出を目指す施策がある場合は、ターゲットメディアも定義しましょう。

ターゲットメディアとは、ターゲットが接触する回数が多いであろうメディアのこと。20〜30件程度のメディアを選定することが一般的です。

例:

  • ターゲット:20~30代の働く女性
  • ターゲットメディア:ファッション・美容系Webメディア、ビジネス系Webメディア

項目5.伝えたいメッセージ

伝えたいメッセージとは、項目3で設定した目的を達成するために、ターゲットに伝える内容のこと。ターゲットの理想、現在感じている不満や不足などを推測し、「何を伝えれば目的が達成されるか」を言語化します。

例:

  • ターゲット:20~30代の働く女性
  • 理想:手軽で美味しく、健康的な食事を作りたい
  • 現状:忙しくて料理や買い出しの時間がない
  • 伝えたいメッセージ:調理時間5分で栄養価の高いスープが作れる

項目6.目標

目標は、広報PR活動における「目的」をどの程度達成することを目指すか具体的に示したものです。KGI・KPIやOKRという形で設定されることもあります。

広報PR活動における目標設定の考え方・具体例については、こちらの記事で解説しています。

目標を考えたら、SMARTという目標設定のフレームワークを使って、誰が見ても明確な目標になっているかを確認しましょう。

  • Specific(具体的か)
  • Measurable(測定可能か)
  • Achievable(達成可能か)
  • Related(経営目標や事業目標に関連しているか)
  • Time-bound(期限が定まっているか)

項目7.施策内容

施策内容とは、目標を達成するために実行する手段です。年間広報計画を立てる時点では、目的と概要がわかる程度の具体性でも構いません。

例:

  • 働く女性の自炊に関する意識調査の実施
  • 野菜キットを使った調理を体験できるイベントの開催

施策による盛り上がりを高めるため、社内外の行事やイベントを時系列でまとめたうえで施策内容を決められるとよいでしょう。

具体的には、以下の5つのステップで検討します。

  1. 世の中の行事やイベント、自社イベントを一覧にまとめる
  2. 施策を実行したいタイミングを決める
  3. タイミングに合わせた具体的な施策案をブレストする
  4. 「実現可能性」や「効果性」などの観点で優先度をつける
  5. 実施する施策を決定する

項目8.スケジュール

施策の内容とそのタイミングが決まったら、各施策の準備期間から振り返りのタイミングまでをスケジュールに落とし込みます。いつまでに何をするかをざっくりと決めておくことで、余裕を持って動くことができます。

また、忙しくなるタイミングを事前に把握できるため、ほかの業務を調整したり、他部署や外部へのアウトソーシングを検討したりと、施策の準備がスムーズになります。

項目9.体制

体制とは、広報PR活動に関わる人の役割分担や、レポートラインのことです。体制図などで可視化することで、誰がどのような業務を担当しているかが一目でわかり、業務に関するコミュニケーションを円滑に行えます。

項目10.予算

予算とは、広報PR活動に使える金額です。年間広報計画を立てる際に、何にいくら使えるかをあらかじめ把握しておくことで、施策の実現可能性が判断でき、優先度の設定が可能になります。

途中で予算が不足してしまう事態を防ぐために、システム利用料など年間を通じてかかる固定費をまず整理してから、「施策ごとにかけられる費用」を配分しましょう。

年間広報計画のテンプレート

年間広報計画を作成する際の参考となるテンプレートをこちらからダウンロードできます。

あくまでも一例のため、自社の体制や目標に合わせてカスタマイズしてみてください。

年間広報計画を立てるときの3つのポイント・注意点

実際は、年間広報計画がなかなかうまくまとめられないという場合もあるでしょう。

ここからは、年間広報計画を立てるときに押さえておきたいポイント・注意点を紹介します。

ポイント

ポイント1.世の中や業界の動向と照らし合わせて考える

自社の中だけで考えず、世の中や業界全体の動向と照らし合わせて年間広報計画を立てることを必ず意識しましょう。

例えば、「社会的なトレンド」や「業界全体の課題」などです。「なぜ今その施策を行うのか?」に対して納得感が高いということは、施策が社会・業界のニーズに合っているということ。社会や業界のニーズにうまく応えている施策であれば、メディアにも取り上げてもらいやすく、生活者からの反響も得やすいでしょう。

ポイント2.過去の施策からの知見を活かす

過去の広報PR施策を通じて得た知見を活かし、行うべき施策を絞り込みましょう。

例えば、「この時事ネタ×このメッセージはメディア露出が多く獲得できた」「連休に施策を実施しても、ターゲットのアクションにつながらない」などです。

過去の施策の効果や経緯が記録されていることが前提になるため、施策ごとの効果や経緯はその都度しっかりと振り返るようにしましょう。

広報PR活動における効果測定の方法について、以下の記事で詳しく解説しています。

ただし、ポイント1で説明したように、社会の状況は刻々と変化していくものです。過去のデータは有効に活用したいところですが、「前はうまくいったから」と固執しすぎず、現在の世相に照らし合わせて判断するようにしてください。

ポイント3.状況に合わせて柔軟に計画を変更できるようにする

世の中や自社の状況に合わせて、年間広報計画を柔軟に変更できるようにしましょう。

新しいトレンドが生まれたり、災害や事故が起きてしまったりと、世の中や自社の動向は日々変わります。計画通りに進めることに執着せず、常に時流やトレンドを把握し、臨機応変に計画を変更できるよう意識する必要があります。

計画を変更する際の判断基準や、判断を仰ぐ際のエスカレーションの順序、想定される代替案も事前に定めておきましょう

年間広報計画を立てて広報PR活動の目的を達成しよう

年間広報計画を立てることで、限られたリソースを効率良く活用でき、チームの目線を揃え、社内のステークホルダーの協力を得ることができます。

年間広報計画は、「全体方針や予算など、広報PR活動の前提となる条件を確認する」「自社の課題に基づき、戦略を策定する」「具体的な施策をスケジュールに落とし込む」という3つのステップで作成します。

年間広報計画を立てる際は、自社の中だけで考えず世の中や業界の動向と照らし合わせて考えること、過去のデータを参考にすること、計画に固執しすぎないことをポイントとして押さえるようにしましょう。

広報PR活動のレベルアップを目指す方は、テンプレートも参考に、ぜひ年間広報計画の作成に取り組んでみてください。

<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>

年間広報プラン・年間広報計画の立て方に関するQ&A

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この記事のライター

山口 ルイ

山口 ルイ

広報PRをフル活用する、新規事業のマーケター。SaaS事業を経て、現在はヘルステックを担当しています。素敵なサービス・プロダクトを多くの人に知ってもらう「きっかけづくり」ができる広報PRの仕事が好き。戦略策定から企画運営を経験し、小さな事業のための広報PR活用術を蓄積中。脱陸サーファーを目指して、湘南で暮らしています。梅干しが好きです。

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