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自ら最前線に立つことで実感した代表が広報PRを理解する意義

終身雇用の撤廃やリモートワークの普及、副業の推進など急速に変化を続ける私たちの働き方。不確実性の高い社会において、どう働くか、どう生きるか悩む人も多いのではないでしょうか。

こうした背景から、キャリア相談をするためのサービスやコーチングサービスなどが増えています。キャリア相談事業に黎明期から乗り出し、キャリアのパーソナル・トレーニング『POSIWILL CAREER』を提供するポジウィル株式会社さん。

その躍進の裏には、代表自らが注力したSNSでの発信や広報PR活動がありました。そこで今回は、Twitterフォロワー3万人をほこるポジウィル代表・金井さんに、SNS発信などの広報PR活動に力を入れるようになったきっかけや、どんなことに取り組まれたのかなどのお話を聞きました。

ポジウィル株式会社の最新のプレスリリースはこちら:ポジウィル株式会社のプレスリリース

ポジウィル株式会社 代表取締役 

金井 芽衣(Kanai Mei)

1990年生まれ。短大で保育士・幼稚園教諭の免許を取得した後、2010年に法政大学キャリアデザイン学部に編入学。13年に卒業後、リクルートエージェント(当時)に入社。人材紹介部門の法人営業を担当する。17年、国家資格キャリアコンサルタントに登録、ポジウィルを設立し、代表取締役に就任。総額約3億円の資金調達を実施し、キャリアに特化したパーソナル・トレーニング『POSIWILL CAREER』を運営する。

きっかけは課金ユーザーひとりという苦い経験

── はじめに、金井さんのご経歴や会社・サービスについて教えてください。

金井さん(以下、敬称略):株式会社リクルートキャリア(内定時は株式会社リクルートエージェント)に新卒で入社し、社会人4年目の末に退職、独立しました。前職や前職時代のお客さんから仕事をもらえたので、自分が食べていける程度に稼ぎつつ比較的のんびり過ごすことができていました。ただ、周りにはスタートアップを創業して活躍している同期や同世代の人たちがたくさんいたので、次第に自分はこのままでいいのかなと焦りを感じるようになったんです。

そこで起業を決心し、2017年春に会社を設立しました。もともと大学でキャリアデザインについて学んでいたこともあり、オンラインのキャリアカウンセリングサービスをやりたいと考え、有料キャリア相談サービス『そうだんドットミー』(※現在はサービスを終了)のβ版を2018年9月にリリースしました。

── 会社設立当初、「キャリアの相談なんて事業として成立しない」と言われていたそうですね。

金井:そうなんです。今でこそ、キャリアカウンセリングサービスは比較的認知がありますが、当時は「お金を払ってまでキャリア相談をする人なんていない」と言われていました。ただ、私の中では、キャリアの相談をしたいというニーズ自体はあるはずだと確信がありました。というのも、人材採用の手伝いをしていたときに若手ビジネスパーソンと話す機会があり、そこで仕事に対して悩みを抱えている人がたくさんいることに気づいたんです。中には「お金を出してもいいから、話し相手になってほしい」という人もいました。このように相談相手を必要としている人たちに、どうしたらサービスを届けられるか模索し、『そうだんドットミー』というサービス名で事業をスタートしました。

当時はまだ「キャリアカウンセリング」や「コーチング」という言葉への耳馴染みがうすく、Twitterでその言葉を使って発信をしても、全然反応がありませんでした。そんな中、「相談」という言葉を使い、キャリアを相談することの重要性について発信をしたところ、今までにないほどに大きな反響をもらうことができたんです。そこでサービス名に「相談」という単語を入れようと決めました。この体験を通して、伝えたい内容が同じでもつかう言葉・表現によって、伝わり方ってこんなにも変わるんだと実感できましたね

ポジウィル株式会社インタビュー01

── Twitterで伝わる表現を見つけたんですね。金井さんはフォロワー3万人を超え、積極的に発信されているイメージが強いですが、起業当初から意識的に発信されていたのでしょうか?

金井:会社設立当初はサービス開発に全身全霊をかけていたので、Twitterをはじめ、プレスリリースなども含めて自分から情報を発信することを全くやっていませんでした。

実は『そうだんドットミー』をリリースする前に、単発でキャリア相談を受けられる別のサービスをリリースしていたんです。勢いよくリリースしたのですが、そのサービス情報をどう届けるかという視点がゼロだったんですよ。結局、準備万端でリリースしたサービスへの課金ユーザーは、たったひとりでした。すごくショックでしたね。

そのときに共同創業者から、代表の知名度がゼロだから情報が拡散されないんだと言われたんです。当時の私のTwitterフォロワー数は200人ほど。彼女からの指摘にぐうの音もでませんでした。どんなに良いサービスを作ったとしても、届かなかったら意味がないことを痛感し、広報PR活動に力を入れようと決心しました

わからないからこそ、代表自身がやってみる

── 広報PRに力を入れると決心してから、具体的にどんなことに取り組まれたのでしょうか?

金井:大きく3つあります。1つ目はTwitterでの発信強化。前職で求人票を書く仕事をしていたこともあり文章を書くことは好きだったので、まず自分ひとりでできること、好きなことから取り組み始めました。巷で出回っているようなTwitterハック術はもちろん意識しつつ、どんな投稿内容であれば反応があるのか自分なりに仮説を立てて投稿しては見直すPDCAサイクルをどんどん回していきました。その結果、本格的にTwitter運用に着手してから数ヵ月で3,300人ものフォロワーを増やすことに成功しました。

Twitterでの発信に精力的に取り組んだことで、一方的にこちらが言いたいことを言うだけではいけないこと、どんな言葉・表現であれば伝わるか工夫することの重要性を実感できました。

── 情報の受け取り手との関係構築の仕方を学んでいかれたのですね。

金井:まさにそうですね。受け入れられる表現とは何か、伝わる表現とは何か。日々の試行錯誤から、そう考える癖付けができたと思います。

2つ目は、他社の広報さんが集まるイベントや飲み会への積極的な参加です。広報PRに関してド素人だったので、現場にいる人たちから学ぼうと思い、できる限り足を運ぶようにしていました。

── 代表自らが広報の集いに参加されるケースは珍しい気がします。

金井:ほかに広報PR活動できる人がいなかったという人事的な事情もありますが、今思うと結果的に、私自身が広報PRの理解を促進する上でとても有意義だったと思います。特に、メディアリレーションズは営業と通ずる部分があり、メディアで取り上げていただくためには、メディア関係者との関係性をより良く構築することが大事だと実感しました。2020年2月に専任の広報担当がついてからは、そういったイベントへの参加は委任しています。

ポジウィル株式会社インタビュー02

3つ目は、メディア関係者と直接話す機会を設けることです。最初はメディア関係者とのつながりはゼロだったので、Twitter経由でコミュニケーションを取りにいったり、知り合いが掲載されている媒体があれば記事の担当者を紹介してもらったりと、あらゆる経路からメディアさんと直接お話する機会をつくっていきました。

どんなパーセプションを獲得していきたいかを考えるとき、客観的に社会の目線から自社サービスについて考えることが重要ですが、自分たちだけで主観を抜けきることはどうしても難しいと思います。メディア関係者とお話することを通じて、自分たちがどんなメッセージを発信すると社会との関係構築に結びつくのだろうか、ということを意識することにつながりました

実際に、弊社サービスを紹介するときに「キャリア版ライザップ」という表現で取り上げてもらえることが増えた時期があったのですが、その表現自体は「ライザップみたいだね」とメディア関係者から感想をもらいたどり着いたタグラインでした。刻々と変化していく社会の中で、サービスをどの立ち位置でみせ、どんなメッセージで発信していくか。メディア関係者との対話を通してチューニングしていくことが重要だと気づきましたね。

新しい文化を創るためには「旗振り役」が必要

── 広報PR活動をする中で、苦労したことや大変だと感じる点はありましたか?

金井:メディア側で使いたい表現と、社会が受け取りやすい表現とのバランスをどう取るべきかというのは悩みどころです。私たちのサービス領域は「キャリア」で、ほぼすべての人に関わる事柄なので、視野を広く持って表現を選択しないと、無意識のうちに人を傷つけてしまい炎上につながる可能性があります。メディアとサービスの関係は運命共同体。メディアにとっての利を考慮しつつ、こちらも広い視野で社会を捉え、露出のバランスをとっていくことが難しいところですが、決してないがしろにしてはいけないポイントです。バランス感覚を養うために、メディアやSNSを通した情報収集やユーザーさんの声に積極的に耳を傾けるようにしています。メディアの視点、社会の視点それぞれを持ちながら、最適な表現は何か折衷案を提案することもあります。

また、サービスの認知度を上げたい、良くみせたいという気持ちがある一方で、サービスがプロダクトマーケットフィットしていない状態のときに受ける取材はつらいものがありました。メディア側が聞きたい内容とサービスの実態との乖離を、話し手の自分が一番強く感じます。どちらか一方ではなく、実態を整えつつ発信も続けるという両輪を回すことがすごく難しかったですね。

── 苦労を乗り越え、いまのポジウィルさんのたくさんの露出のベースを金井さん自らが構築していったことを強く感じます。

金井:まだ文化形成されきっていないtoCサービスは、誰かが旗振り役になる必要があると思うんです。その旗振り役はやっぱり代表自らやるべきだと感じます。新しい社会の文化形成をすることはそう簡単なことではありません。声を出し続け、継続して情報を届ける必要があります。

実は、私自身の取材疲れなどがあり、2021年6月から9月の間、メディア露出を控えていました。この間、メディア露出をしていた時期と比較して、検索流入数が半分くらいに減ってしまったんです。改めてメディアのパワーを実感するとともに、サービス成長のために、いかに情報を発信し続けることが大事か身に染みた経験でした。

とはいえ、わたしばかりが取材対応し続けるのは、経営業務の兼ね合いも考慮すると持続可能ではないと感じ、今はメンバーにも積極的に出てもらっています。また、私たちの向き合うキャリアというマーケットにおいては「多様性」がとても重要なポイントです。私だけの視点で発信するのではなく、さまざまなキャリアを歩むメンバーがそれぞれの視点で発信することが、多様な考えに溢れる現代の社会においては大事なことだと考えています。

── ありがとうございます。最後に、広報PRに力を入れていきたい代表や経営者にメッセージがあればお願いします。

金井:代表や経営者自身が広報PRを理解するメリットはかなり大きいです。ただメンバーに発信を担ってもらうのではなく自身が積極的に世の中にメッセージを発していくことが重要だと感じます。特に採用文脈においては、会社や事業への熱い想いを一番に伝えることができるのは代表・経営者自身です。どんな社会を創りたいのか、どんな思いを込めて会社を創業したのか、何を大事にしていきたいのかなど、自身の言葉で発信していくことで、採用候補者へのメッセージになるとともに、働くメンバーへのメッセージにもなります

会社を成長させるためには、たくさんの応援者、ファンが必要です。広報PR活動を行うことで、応援者やファンが増え、創りたい未来に向けて進んでいくことができると、私は信じています。

ポジウィル株式会社インタビュー03

代表の広報PRへの理解が、成長のカギ

「キャリア相談にお金を払うこと」が当たり前ではなかったときから、新しい文化形成のために試行錯誤を重ねていた金井さん。伝わらないときでも諦めず、どんな表現・どんな言葉であれば、伝えたいことを伝えることができるのか。代表自身が愚直に向き合ってきたからこそ、今のポジウィルさんのさまざまなメディア露出につながっているんだと感じました。

広報担当者ひとりだけでは、会社やサービスと社会との関係構築を完結させることはできません。だからこそ、代表自身が広報PRについて理解することが、創りたい社会に向けて前進していくことにつながるのかもしれません

(撮影:CURBON黒川、取材はリモートで実施しました)

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この記事のライター

林 優

林 優

サイバーエージェント新卒入社、Makuake配属。イベント企画・運営を担当するとともに、ガジェット・ファッション・飲食店・日本酒…など、毎月数百件開始するプロジェクトの広報業務を担当していました。多岐にわたるジャンルのプロジェクトPRを担当する中で積んできた広報業務経験を活かしたコンテンツづくりに取り組んでいます。

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