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自らがつくり出す「攻め」を意識した広報PRの役割|Sansan×SmartHR対談

Sansan株式会社と株式会社SmartHRの広報部門のトップによるセミナーが2023年4月25日(火)に開催され、当日は会場とオンラインを合わせて100名以上が視聴しました。

本記事では、社外広報だけでなく、社内への活動や組織の話など、さまざまな観点での対談内容をレポートします。

Sansan株式会社 執行役員/CCO/コーポレートコミュニケーション室長

室 健(Muro Takeshi)

2003年、広告会社に入社。コーポレートコミュニケーション局で企業のPR戦略を立案。ミシガン大学に留学後、海外事業統括局でエージェンシーのM&Aに従事。その後、クリエイティブコンサルティング局で局長代理兼グローバルクリエイティブディレクターとして日系企業・グローバル企業のキャンペーンを設計。2022年4月、経営視点でのコミュニケーション戦略立案にチャレンジすべくSansanに入社。現在はChief Communication Officerとして社内外のコミュニケーション活動を統括。

株式会社SmartHR 執行役員・VP of Marketing & Communication Design

岡本 剛典(Okamoto Takanori)

教育系ベンチャー企業のマーケティングリーダーを経て、2009年にGMOクリック証券株式会社入社。プロダクトマーケティング担当後、マーケティング責任者に着任。デジタルからマスマーケティングを統合したマーケティング・ブランディング戦略の策定、実行を担う。2018年10月、マーケティング責任者としてSmartHRに参画。幅広のマーケティング・ブランディング戦略を行い事業成長に貢献。

事業成長に向けた広報PRの組織と役割

成長を続ける2社の組織体制が気になる方も多いのではないでしょうか。まずは、各社の広報PRの組織と役割について伺いました。

プロダクトコミュニケーション3つの取り組み

──広報組織とその役割を教えてください。

室さん(以下、敬称略):コーポレートコミュニケーション室という部署で、全社を横断し、PRを含めたコミュニケーションを統括しています。

プロダクトのコミュニケーションはもちろん、企業ブランディング、インターナルコミュニケーション、グローバルPR、神山まるごと高専との連携、SNSやオウンドメディアの運営など幅広い役割を担っているのですが、その中でも重要なプロダクトのコミュニケーションとして、主に3つの取り組みがあります。

1.導入事例リリース
ある企業に導入された情報は大きな武器です。この情報は営業自身が気づかないこともあるため、広報担当者自らから取りに行くこともあります。

2.新機能/連携リリース
ネタになる新機能や連携の情報はそのプロダクトのユニットに話に入って何かないですかと発掘しにいっています。

3.調査リリース
新しいプロダクトや新しい機能を発表する場合、その需要を喚起する調査結果を通じて、メディアや生活者にその重要性に気づいてもらうことが重要です。

例えば、営業活動におけるデータ活用の価値をあぶり出す調査リリースは広報からの提案で実施。営業個人の人脈で終えるのではなく、営業部門を超えたチーム全体で顧客情報を共有することの大切さを伝える内容です。

参考:営業は個人から組織力の時代へ。Sansan、「営業活動におけるデータ活用の実態調査」を実施

岡本さん(以下、敬称略):ブランドマーケティングやリード獲得などの役割を果たすマーケティング部があり、広報・PRはマーケティング部に属しています。具体的な活動としては、社外広報だけでなく社内広報や採用広報も含めた包括的なブランドコミュニケーションを担当。現在、広報部は6名体制で、社内社外のPR活動を行いながら、採用候補のブランドコミュニケーションを行っています。

当社も調査レポートを行っているのですが、人事・労務の方のノウハウはあまり世の中に流通していないので、他の会社が人事評価をどのように行っているのかを調査し、発信しているんです。

参考:SmartHR、「人事評価」機能で作成された評価シート10万件のデータから評価制度の傾向を分析

事業の成長につながる組織化

──岡本さんは、現職に就任されて、まず実施されたことは何でしたか。

岡本:私がSmartHRに入社したのは、2018年の10月。当時のシリーズBというフェーズで、組織としてはマーケティング全体が5名程度、広報担当はわずか1名の体制でした。ひとり広報体制の状態で、代表だけでなく従業員全体が情報を発信、お問い合わせも全員で受ける状況だったんです。

私たちのテーマは、「高速で事業を成長させること」でした。事業規模や社員数が拡大するにあたり、社外に対して情報を発信する人数を増やすことが中心。取材やメディアの露出につなげるべく、まず着手したのは問い合わせ対応に向けた業務フローの整備でした。

100%社外広報の活動だったのですが、2020年に入り、社内や採用のための広報活動を本格的に開始。社外広報3名、社内広報1名、社外と社内兼任が1名、採用広報が1名という、現在6名の体制まで広げています。

Sansan×SmartHR対談01

──広報部門の立ち上げのポイント、注意することなどありますか。

岡本:社員が増えると、部門間の情報共有は難しくなりますが、それでも広報は情報を取りに行くことが重要です。当社の場合、社内からの異動が多いのですが、社内のことを理解しているメンバーの方が立ち上がりが早い、という点は言えるかもしれません。

また、個人が情報を発信する際のルールについてよく聞かれるのですが、厳格には設けていないんです。代表やVP執行役員などの上層部が積極的にSNSで発言する様子を見て、メンバーたちにも浸透。自発的に情報を発信する環境が形成されており、明文化されていないルールやガイドラインに、企業の思想が根付いていると感じています。

BtoBビジネスも届ける先はいち生活者

──室さんは、現職に就任されて、まず実施されたことは何でしたか。

室:入社して約1年くらいになりますが、当初広報部門では社内からの依頼を受けて、プレスリリースを作成することが多かったのです。しかし、事業を非連続で成長させるためには、広報が積極的に事業をリードしていくことが重要です。そのため、他の部門に対して積極的に提案していく「攻めの広報」に変革してきたという経緯があります。

BtoCと比較すると、BtoBの広報活動は受け身になりがちな印象がありますし、難しいと感じる人も多いのではないでしょうか。しかし、実際はBtoBのPRも届ける相手は「ビジネスパーソン」という属性の「生活者」です。そう捉えて、インボイス管理サービス「Bill One」の場合、「ビールワン」と題して、月次決算を頑張ったビジネスパーソンを応援するプレゼントキャンペーンを実施してSNSを中心に大きな反響を得ました。

Sansan×SmartHR対談02

気になる各社の「KPI」と「経営層とのコミュニケーション」

広報PR活動を行ううえで、KPIや目標設定が難しいという声をたくさん耳にします。また、経営層とのコミュニケーションについても同様に、悩まれている方は多いのではないでしょうか。

各社、どのようなKPIを設定し、普段経営層とどのようなコミュニケーションを図っているのでしょうか。

KPI達成の積み上げ、事業成長に合わせた設定を

──KPIに関してはどのように設定していますか。

岡本:私たちは具体的な施策や企画ごとにKPIを設定していますね。

例えば、勉強会を開催した際、イベントをどの程度記事化できているか確認しています。担当者ごとに細かいKPIを設定し、上長がそれらをチェックすることで、KPI設定した目標一つひとつが積み上げられ、自然と広報PR活動の成功につながると思っています。

室:当社は、事業が成長するフェーズに合わせて、指標を変化させています。四半期ごとに指標を見直していて、プロダクトの方向性が変わった際は、すぐに指標の見直しを図ります。

「Sansan」に関連付けられて表示されるキーワードの分析もモニタリング指標のひとつですね。「Sansan」と言えば、「名刺」が想起されますが、次に何を重視するべきか。名刺だけではなく、名刺の先に存在する顧客、または顧客データベース、CRM、営業データベース、営業DXなどのキーワードが扱われているのかという点に注目しています。

経営層を動かすキーとなるメッセージ

──経営層とどのようにコミュニケーションを図っていますか。

室:経営会議が毎週ありますが、自分が入社する前は、露出報告がメインでした。現在では、PR施策の提案も積極的に行っています。メディア露出やSNS投稿は経営層も知っていることが多く、それよりも、リリースに対する反応を基にした次のアクション、あるいは経営層が把握しきれていないSNSでの他社・他業界の話題などを伝えることが重要と考えます。

企業メッセージを検討するための1on1やプロダクト部門との定例会議も頻繁に行っており、経営層とは週に数回はコミュニケーションを取っていますね。

また、広報起点で、経営層を動かすような戦略メッセージを作り出すこともあります。例えばBill Oneは請求書受領からの企業の月次決算を加速させることを目指しているサービスです。請求書を受け取る側だけでなく送る側もIDを持っており、ユーザー同士がお互い使えば使うほど月次決算が加速していくという世界観を「インボイスネットワーク」と名づけ、事業戦略の中で活用しています。

Sansan×SmartHR対談03

岡本:私たちは特に定例会議を設けず、社内の議事録やコミュニケーションをオープンにすることで常に情報をキャッチアップしています。年始や半期など特定のタイミングで、経営側から事業の方針を示すメッセージが発表されます。今年年始の内容は、タレントマネジメントをどのように拡大し、SmartHRと認知を紐づけていくか。このような内容を広報PR活動に落とし込んでいますね。

一方で、社内コミュニケーションについては代表がコミットしており、会議を設けて行っています。議事内容や背景を正しく伝えるコンテンツ、ボードメンバーのトークセッションなどを取り入れたイベントを社内広報のメンバーが実施しています。

Sansan×SmartHR対談04

各社が注力するふたつの取り組み

最後に、各社が現在注力している取り組みについてお話いただきました。

「ブランディング」と「企画力」

──現在、広報PRとして注力されていることはありますでしょうか。

岡本:「ブランディング」と「企画力」です。事業の進展に伴い、製品やサービスの新規性の価値が低くなることがあります。そこで大切になるのが、自らニュースを作り出し、価値を創出していくこと。現在、その段階に入ってきていると感じています。

広報担当者は、企業全体のブランド作りに携わっているという意識を持つべきだと思い、製品やサービスに限定されず、社内の雰囲気や採用活動を含むより広域な役割を担う立場として「ブランディング」というキーワードを掲げています。

メディアに対する事業説明は、社内に同時公開。先日のARR(年次経常収益)100億円突破の発表は、成果だけでなく、事業の将来における「タレントマネジメント」の重要性を強調する、ブランディングを意識した内容にしています。

また、自社の採用イベントの一環として、人事労務の複雑な専門用語を打つタイピングゲーム「人労打」をエンジニアが開発してくれたのですが、この遊び心は、企業ブランドやサービスのコミュニケーションにとって重要なメッセージ。「SmartHR=人事・労務」という印象を打ち出しながらも、プレスリリースやSNSを通じて拡散されるなど、広報PR活動に活かせましたね。

参考:SmartHR、タイピングゲーム「人労打」を公開

「サステナビリティ」と「新しい技術の活用」

室:一つ目は、「サステナビリティ」です。SaaSの事業モデルは、サステナビリティと直接関係を持ちにくいと感じている方もいるかと思いますが、上場企業として、また、グローバルに発信していくためにサステナビリティの観点は重要。神山まるごと高専と連携する理由のひとつでもある人材の多様性。私たちのミッション「出会いからイノベーションを生み出す」は、人材の多様性から生まれると考えています。また、請求書を電子化してペーパーレスを推進することも環境に配慮をした行動であり、サステナビリティの観点を意識していますね。

二つ目は、「新しい技術の活用」です。先日、契約DXサービス「Contract OneでGPT-4の利用研究開始を発表しました。GPT-4のようなような新しい技術をどう活用すべきか、技術者はもちろんのこと全社で取り組み議論しています。

参考:契約DXサービス「Contract One」が「GPT-4」の利用研究を開始

さいごに

広報PR活動は単なる情報発信でなく、事業の成長における大切な役割を担っています。

今回紹介された顧客を巻き込む仕掛けは、伝えたい相手を理解したBtoBビジネスにおいて貴重な事例です。

また、企業としてのテーマ(目標・目的)、事業の成長に合わせた広報体制についての話は、これから広報PR活動を強化したい企業はもちろん、体制を整えたい、見直したい企業にとって、業界問わず参考になるのではないでしょうか。

社外広報はもちろん、組織としての役割など、考えるきっかけにしてみてください。

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この記事のライター

柏木択斗

柏木択斗

株式会社PR TIMES 営業本部 カスタマーサクセスチーム マネージャー代行/2020年に新卒でPR TIMESに入社。プレスリリース配信プラットフォーム「PR TIMES」の営業を行い、スタートアップから大企業までのPR支援を実施。その後、タスク管理ツールを運営するJooto事業部に異動し、営業・カスタマーサクセス業務に従事。現在は「PR TIMES」を既にご利用いただいているお客様の情報発信の支援をするカスタマーサクセスチームに所属。1社1社の個別支援からセミナーなどのコンテンツの提供を行う。

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