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メディア取材が集まる老舗和菓子店。顧客層を広げた4代目の「非日常」を伝える意識|株式会社お亀堂

愛知県豊橋市で70年以上和菓子店を営むお亀堂は、和菓子への「挑戦」と「革新」をミッションに、地域活性化として地域企業や農業生産者との『共創』、『いままでにない商品』づくりに取り組んでいます。

ここ数年は、これまで以上に新商品開発をし、プレスリリースやSNSを活用して情報発信を行うなどの広報PR活動に注力したことで、メディアから高い関心を集めるように。PR TIMES MAGAZINEでも「【日本一ふわっふわとろっとろの大福】を目指して開発した「お亀堂」渾身の逸品が販売開始」のプレスリリースに目を奪われ、取材を申し込みました。

本記事は、令和5年、同社代表取締役に就任された森貴比古さんに伺った、広報PR活動に力を入れるようになったきっかけ、活動をする中で大切にしているポイントをお届けします。

株式会社お亀堂の最新のプレスリリースはこちら:株式会社お亀堂のプレスリリース
お亀堂公式X:https://twitter.com/okamedo_jp
お亀堂Instagram:https://www.instagram.com/okamedo_jp/

株式会社お亀堂 代表取締役社長

森 貴比古(Mori Takahiko)

愛知県生まれ。高校を卒業するまで地元で過ごしたのち、大学進学を機に実家を離れる。大学院まで海藻の研究を続け、卒業後、一般企業に就職。食品の品質保証に3年間従事したのち、実家である株式会社お亀堂に戻って家業の和菓子づくりへ。令和5年、同社代表取締役に就任。

職人の技術だけでは売れない時代に

──早速ですが、入社されてから和菓子づくり(商品開発)と並行して精力的に情報発信を行っていますよね。現場と広報PRの両立は大変だと思いますが、取り組むきっかけは何だったのでしょうか。

コロナ禍の影響が大きいですね。時間が空いたのでいろいろな取り組みに挑戦することができたんです。職人たるもの、黙って仕事をすればよかったのは昔の話で、今は、いくらおいしい和菓子を作ってもエンドユーザーに伝わらなければなかなか売れない時代です。もっと多くの方にお亀堂の和菓子を知ってもらいたくて情報発信に力を入れるようになりました。

そして、「先代とは違う土俵で結果を出したい」という思いもありましたね。

「地域」との共創を実現した話題の商品開発

──先代と異なる土俵のひとつが、情報発信だったんですね。

はい。地元で従来どおりに和菓子を作っているだけでは、先代を超えるのはなかなか難しいです。お亀堂の和菓子を知らないエンドユーザーもまだまだ多いですから、そこに訴求するにはSNSしかり、プレスリリースしかり、広報PR活動が欠かせませんでした。

新たな商品開発の際は話題性も意識していて、以前は年配のお客さまが中心でしたが、少しずつお客さまの層は広がっています。「地域」「コラボ」という新しい視点を取り入れた「ブラックサンダーあん巻き」では、若い世代や男性客の増加につながりました。

株式会社お亀堂プレスリリース01

参考:豊橋でしか買えない限定品『和菓子とチョコの融合「ブラックサンダーあん巻き」』

|地元発祥の人気商品とコラボした「ブラックサンダーあん巻き」プレスリリースのポイント

タイトルの「豊橋でしか買えない(希少性)」は読み手の関心を引き付けるフックとなっています。同じく豊橋市発祥である有楽製菓株式会社の人気商品「ブラックサンダー」とコラボ開発したオリジナルであることも記されています。

また、本文では、商品の誕生秘話からヒットの背景、ユーザー評価、受賞歴、おいしい食べ方に至るまで、商品の魅力が伝わるように事細かく記載。写真では商品断面を見せることでシズル感を演出しているのもGOODです。伝えたい情報をインプットさせつつ読み手の興味を自然と深めていく組み立て、読み手の興味を引き付けたままプレスリリースの最後にたどり着く構成は参考になります。(PR TIMES 取材担当者より)

「地域」といえば、昨年は夏以降も暑かったせいでサツマイモの成長にも影響があったんです。農家の方の一助になればと規格外まで育ってしまったサツマイモを使った「鬼まんじゅう」を発売したところ、地元メディアに多数取り上げられて。実に喜ばしいことでした。

株式会社お亀堂プレスリリース02

参考:酷暑で規格外まで育ったサツマイモをモチモチ触感の「鬼まんじゅう」へ 愛知・豊橋のお亀堂が地元青果市場と全面協力

|規格外さつまいもを使った「鬼まんじゅう」プレスリリースのポイント

読み手の共感を誘うキーワード「酷暑(時流/季節性)」を冒頭に用いて、その後に続く「規格外まで育ったサツマイモ」に十分な説得力を持たせるタイトルは、伝えたい要点がまとまっています。また、ここにもやはり「地元青果市場(地域性)」が軸に。本文中にもメディアの関心度が高い「フードロス(社会性/公益性)」「値下げ(話題性)」などのキーワードが詰まっています。文中に用いられた写真は、「鬼まんじゅう」単体だけでなく、通常と規格外のサツマイモの比較、製造過程も掲載され、森さんの写真へのこだわりも窺えます。(PR TIMES 取材担当者より)

──新しい取り組み、うまく先代との違いが出ていますね。代替わりしたとき、同じような思いを伺うことがありますが、森さんは昨年代表に就任され、大切にしていること、広報PR活動の中で意識していることは何でしょうか。

同じように引き継がれて、これから会社を牽引されていく方にお伝えできるとしたら、しっかりと目標を立てて、従業員と共有しながら、自分が見本になって頑張ること。私もそう心がけて日々取り組んでいるところです。

中小企業なので現場と経営の両立となると1日8時間では足りないことも多々ありますが、それでも現場が好きなので、どれだけ忙しくても現場に立つ時間は割くようにしています。

広報PR活動に力を入れる理由は、最初お話ししたようにエンドユーザーの方々にお亀堂の和菓子を知ってほしいといった気持ちからです。新しい商品を開発しただけでは売り上げは伸びないので、どうしても話題性が重要。地域と協働したり、周囲を巻き込んだ取り組みを行ったりすることで、新しい道が開けるように思います。私にとって「地域」がこれまでもこれからも重要なキーワードであることは間違いありません。

「非日常」を伝えて顧客拡大を実現

──先ほどもいくつかお話をいただきましたが、森さんのプレスリリースはやはり注目を集めていますよね。大切にしていること、ポイント等がありましたら教えてください。

プレスリリースを作成するのは私ですが、広報PRに関してはまだまだ勉強中の素人なので、アドバイスをもらいながら進めています。

素材の撮影は、商品が映えるようにしていること、あとは「非日常」なシーンを切り取ることにこだわっています。当初は、別の者(和菓子職人:石川未紗さん)と一緒に行っていましたが、現在産休中なので石川の意思を引き継いで行っています。

──「非日常」ですか。もう少し詳しく教えていただけますか。

例えば、お亀堂の工場横にある古民家を改装してオープンした「古民家caféお亀堂」のプレスリリースでは、普通の家屋では体験できない「非日常」が楽しめる空間であることがお伝えできるよう撮影しています。

おばあちゃんの家に遊びに来たような、いつもとはひと味違う時間が流れる空間の魅力がプレスリリースを通じてメディア、そしてエンドユーザーの方に伝わっていればうれしいな、と。

株式会社お亀堂プレスリリース03

参考:お亀堂の工場横の古民家を改装した「古民家caféお亀堂」

──商品の断面写真も目を惹きます。あと、作り方や工程も丁寧に綴られていますよね。

和菓子はお餅で包んでしまうと中身が見えないので、断面を切って見せることで、味も想像が付きやすくなりますよね。

加えて、お亀堂は「こんなに細部にまでこだわって和菓子を作っている」「手間暇をかけて丁寧に作っている」ということをしっかりお伝えしたいと思っています。和菓子は想像される以上に細かい作業が多くて、商品はその集大成なんです。お正月限定で発売した今年の干支である辰をモチーフにした上生菓子※1をはじめ、製造過程をこと細かに書いているのはそのためです。

お亀堂の商品はすべて口に入れるものですから、原材料にこだわっている点、心を込めて作っている点を伝えたくて。「煮〜たま卵太郎※2」の場合だと、大量の卵がタレに漬け込まれている写真は消費者にとっては見慣れない量だと思うので、これも非日常さも感じ取ってもらえたらいいなと考えて載せています。

※1:お正月限定上生菓子、来年の干支『辰』を発売
※2:トロッとした大きな煮卵がおにぎりの中に入った「煮〜たま卵太郎」

株式会社お亀堂プレスリリース04
プレスリリース「お正月限定上生菓子、来年の干支『辰』を発売」より

そのほか、文章については、焦点がぼやけると何が言いたいかわからないプレスリリースになってしまうので「何をお勧めするのか」という点を押さえて書くように注意しています。あと、専門用語をできる限り使用しないようにしていて。「錦玉羹(きんぎょくかん)」「練り切り(ねりきり)」のように和菓子の世界では当たり前の言葉でもメディアの方やエンドユーザーの方に馴染みのない表現を使用しないように心がけています。

株式会社お亀堂インタビュー01

──特に、反響があったものなどありますか。

一つ目は、やはり「大福」でしょうか。プレスリリースでは理想としてきた『ふわっふわとろっとろ』を写真でも文章でも表現し、反響が出ましたね。

参考:【日本一ふわっふわとろっとろの大福】を目指して開発した「お亀堂」渾身の逸品が販売開始

株式会社お亀堂プレスリリース画像01
「【日本一ふわっふわとろっとろの大福】を目指して開発した「お亀堂」渾身の逸品が販売開始」より抜粋・加工

二つ目は、ひよこがモチーフの和菓子「ぴよ子」でしょうか。かわいらしさと「イースター」という点もあって、若い女性からの購入が増えました。先ほどお伝えした干支の辰をモチーフにした上生菓子同様、製造過程をこと細かに書き、写真では、卵の殻の中にあるぴよ子の胴体、その中にしっかりと包まれた餡がわかるように。また、大量に「ぴよ子」が並んでいるという非日常の写真をメインにもってきています。

参考:イースターや新生活をイメージした、ひよこがモチーフのあんこの和菓子「ぴよ子」4月1日より期間限定で販売開始

株式会社お亀堂プレスリリース画像02
「イースターや新生活をイメージした、ひよこがモチーフのあんこの和菓子「ぴよ子」4月1日より期間限定で販売開始」より抜粋・加工

目標は和菓子で「地域活性」と「伝統の継承」

──取材のきっかけになった「大福」以外にもたくさんの工夫が伺えてよかったです。最後に、お亀堂の今後の活動についてお聞かせください。

お亀堂としては、これからもミッションに掲げている和菓子への「挑戦」と「革新」を続けて、地域活性を牽引できるように頑張りたいと思っています。

和菓子は成熟したマーケットなので挑戦できることは少ないかもしれませんし、革新的なことも限られているのかもしれません。それでも恐れずに、いろいろと行っていきたい。

私たちの企業活動が地域活性につながり、また私たちが手づくりする和菓子を通じて、日本の伝統文化や風習の継承にもつながったら、これほどうれしいことはありませんね。

株式会社お亀堂取材02

広報PRに活かされる地域活性に向けた4代目の思い

経営者であり和菓子職人である多忙な合間を縫って、終始丁寧に回答いただきましたが、言葉の端々からは、ヒットメーカーのこだわりや広報PRに取り組む姿勢、そして「地元(豊橋)を盛り上げたい」という思いが強く感じられました。

お亀堂の4代目森さんが大切にする広報PR活動ポイントは3つ。

  • ユーザー視点、メディア視点を大切に
  • 写真は映えと「非日常」を意識
  • 「地域」軸に周囲を巻き込んだ活動

地方から全国に向けてこれから新たに広報PR活動に取り組んでいきたい中小企業の方、特に食品を扱う企業の広報PR活動において、大いに参考にしていただける事例ではないでしょうか。

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