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リファレンスチェックとは?実施方法・質問内容・注意点など人事担当者向けの基礎知識を紹介

企業が採用をするうえで、採用候補者(以下、候補者)のことを「さらによく知りたい」というのは当然のこと。多角的に情報から入社後の配属やオンボーディングに活かすなど、自社でより早く活躍してもらうために取り入れたいのが「リファレンスチェック」です。候補者をよく知る第三者から客観的な情報を提供してもらい、履歴書や職務経歴書、数回の面接だけではわからなかった、候補者の情報を得ることができる手段です。

リファレンスチェックの実施方法や守らなければならない注意点など、これからリファレンスチェックを導入する際に必要な基礎知識をまとめました。

目次
  1. リファレンスチェックとは?

  2. 企業がリファレンスチェックを行う5つのメリット

  3. リファレンスチェックを実施するための基礎知識

  4. リファレンスチェックの具体的な質問内容

  5. リファレンスチェックを行うときの5つの注意点

  6. リファレンスチェックで長期的に活躍してくれる採用を実現しよう

  7. リファレンスチェックに関するQ&A

リファレンスチェックとは?

リファレンスチェックとは、中途採用の選考過程で、採用候補者の就業実績や勤務状況、社内外でのコミュニケーション状況などを前職の関係者、もしくは現職の関係者から情報を得ることです。英語では「Reference Check=身元照会」表記しますが、候補者から得た情報の裏づけをするものではなく、候補者の強みや長所の把握に活かします。

企業・会社に広報担当者が必要な理由

リファレンスチェックの実施率として、外資系企業58%、日系企業23%という調査結果※1も出ている通り、外資系企業ではよく取り入れられていますが、日本では然程浸透していません。また、別調査※2では、日本人求職者のリファレンスチェックの認知度は2割程度に止まっています。しかし、実施に対しては許容すると答えた人が8割を超えており、「自分自身の気づいていない強み」を伝えられることを期待するなど、ポジティブに捉えられているようです。

※1 リファレンスチェック実施状況調査(エンワールド・ジャパン調べ2021.03.10発表)
※2 求職者のリファレンスチェックの認知・期待調査(ディップ調べ/2021.04.21公開)

前職調査との違い

前職調査はリファレンスチェックと混同されますが、収集する情報や目的が異なります。リファレンスチェックが就業実績や人物像の情報収集に対して、前職調査では職務経歴書や面接時に把握した情報の虚偽、これまでの金銭トラブルや前歴などを確かめることが目的です。

個人情報保護法が成立以降、個人情報保護やコンプライアンスの配慮により、前職調査を実施する企業は減少していると言われています。

企業がリファレンスチェックを行う5つのメリット

リファレンスチェックを行うことは、企業に多くのメリットがあります。経歴詐称など重大な事項を防ぐだけでなく、選考過程で適正な評価を可能にすることで入社後の活躍のためにも活かされます。

メリット1.マッチングを高めて早期活躍につなげる

第三者の評価を得ることで、採用企業と候補者のマッチングを高めることができます。

選考過程で候補者から提供される情報は、概ね主観によるものです。しかし、実際に一緒に働いていた関係者から客観的な評価を得ることで、入社後の活躍イメージができ、最適な配属やオンボーディングに活かすことができます。

それらを積み重ねることが早期活躍につながるでしょう。

メリット2.客観的な視点から強みを把握できる

職務経歴書や面接、面談ではわからなかった候補者の強みや長所をより把握することができます。選考で実施する数回の面接や面談では、候補者の全てを知ることはできません。前職や現職の関係者だからこそ知りえる候補者の強みや長所を知ることができるでしょう。

メリット3.実績やその過程の適正な評価を得られる

候補者から得た実績や勤務状況に関する情報に対して、実績だけでは見えにくいソフトな面も適正な評価を得られます。例えば、プロジェクトの実行中にチームメンバーとの人間関係はどうだったのか、コミュニケーションは円滑だったのかなど社風へのマッチングを高めるため、ストレスなく活躍してもらうためにも重要な情報です。

メリット4.早期離職を防ぎ、長期的な活躍に導ける

主観的にも、客観的にも求職者のことを知ることができ、マッチングを高めることができます。その結果、早期離職を防ぐことができ、長期的に活躍できるようになります。

選考段階から多くの情報を得ているため、適切な配属や環境を用意でき、企業と候補者双方にとって納得感のある就業につながります。早期離職を防ぎ、長期的な活躍に導けるでしょう。

メリット5.入社後のマネジメントに活かせる

リファレンスチェックによって、第三者から求職者の人柄やコミュニケーションに関する情報は、入社後のマネジメントに活かせます。入社前から候補者の強みや長所だけでなく弱みやこれから伸ばすべき能力を把握できるため、早期にマネジメント体制を準備できるのです。

リファレンスチェックを実施するための基礎知識

リファレンスチェックを実施するにあたって、どのような準備をすればいいのでしょうか。実施のタイミングや方法、実施する際の進め方など実務のための基礎知識をまとめました。

プレスリリース事例

【1】リファレンスチェックを行うタイミング

リファレンスチェックを行うタイミングに決まりはありません。リファレンスチェックは、第三者からの客観的な情報を得て、求職者の主観的な情報を補完することが目的です。職務経歴書からの情報や面接、面談を経て、候補者のことをある程度把握できたあとのタイミングで行うのが良いでしょう。

【2】リファレンスチェックの流れ

①目的や実施に関する説明をし、許諾を得る
候補者へ実施の意向と目的を説明し、許諾を得ましょう。個人情報保護法により、同意なくリファレンスチェックを行うことはできません。

②推薦者を探す
推薦者の選定には、候補者に選定を依頼する場合と、採用企業側で選定する場合の2つのパターンがあります。リファレンスチェック実施の許諾を得るときに、どちらのパターンで実施するかも含めて説明をしておきましょう。推薦者が決まったら、リファレンスチェックの意向や目的について説明し、協力の許諾を得ます。

③質問内容の決定
リファレンスチェックで推薦者に質問する内容を検討し、決定します。当日は推薦者にもらう貴重な時間を割いてもらうことになります。欲しい情報が深掘りができることはもちろん、答えやすい明確な質問にします。

④実施方法の決定と期日調整/日程調整
実施方法は、書面やWeb上で回答を求める方法、電話やZoomなどでヒアリングする方法、リファレンスチェックサービスを活用する方法などがあります。実施方法に合わせ、書面やWeb上で回答を求める場合は回答までの期日調整を行い、電話やZoomなどの場合は30分程度を目安に日程調整しましょう。

⑤実施
電話やZoomなどを利用して行う場合は、事前に質問内容を共有しておくとヒアリングがスムーズに進みます。

⑥レポーティング
ヒアリングした内容をレポートにまとめて、採用メンバー、組織開発、入社後に携わる研修担当、配属先部署に限定し、共有します。

【3】リファレンスチェックの推薦者の選び方

推薦者を探す方法は、候補者にリファレンス先を紹介してもらう場合と、採用企業側がリファレンス先を探す場合の2つの方法があります。

候補者にリファレンス先を紹介してもらう場合

候補者にリファレンス先を紹介してもらう場合は、候補者本人が推薦者へ連絡を取ります。推薦者の選定は、候補者との関係性など一定の基準を設けた方がよいでしょう。候補者から推薦者に実施について説明し、許諾を得られたら、採用担当者へ推薦者の連絡先を共有します。ツールの利用やWeb上での回答の場合は、候補者から推薦者にそのまま案内するケースもあります。

採用企業側がリファレンス先を探す場合

採用企業側がリファレンス先を探す場合は、採用担当者がSNSや求職者の前職、もしくは現職のWebサイトを利用し、関係者を探します。調査会社などを利用し、リファレンス先を探すことも可能です。

【4】リファレンスチェックで確認する人数の目安

リファレンスチェックを行う人数は、2名以上が一般的です。より客観性のある情報を得るために複数名に協力してもらうようにしましょう。

候補者との関係も重要な要素です。一緒に働いていた同僚や、マネジメントを受けていた上司など、候補者との関わり方はさまざまです。職場以外での候補者のことをよく知る友人や、取引先の関係者などを指定する場合もあります。リファレンスチェックで得たい情報を最もよく知っている人を選定するようにしましょう。

【5】リファレンスチェックで利用したいツール

リファレンスチェックを行うには、人事や採用担当者の負担も大きくなります。アンケート形式で実施しレポートまでしてくれる外部サービスの活用を検討してもよいでしょう。リファレンスチェックを行うときに利用したいツールをご紹介します。

beck check
オンラインで実施できるリファレンスチェックサービスです。職種やポジションに合わせて質問を自動生成してくれるので、質問内容を作成する時間を削減できます。大手企業からスタートアップまで幅広い規模の企業で導入され、導入企業数は300社を突破しています。
運営会社:株式会社 ROXX

ASHIATO
エン・ジャパンが事業の中で培った採用ノウハウから作成された独自質問がメインで設計されているリファレンスチェックです。信頼、実績、人柄に関する情報が得られるように構成されており、回答レポートはグラフで視覚的に把握しやすいのが特徴です。入社後に求職者が活躍、定着することに重点が置かれています。
運営会社:エン・ジャパン株式会社

リファレンス・レター
月額1万円から利用できる使い放題のリファレンスチェックサービスです。中途採用だけでなく、新卒採用や派遣社員、アルバイトなどさまざまな雇用形態での採用に対応可能です。全ての質問を自由に追加、編集することができ、自社や求職者に合わせて質問を設計できます。
運営会社:株式会社KUROKO

リファレンスチェックの具体的な質問内容

では、どのような質問をすればいいのでしょうか。勤務、スキル、人物像の3つの観点から、具体的な質問例をご紹介します。

1.勤務に関する質問

  • 在籍期間について、相違はありませんか?
  • 欠勤や遅刻、早退はどれくらいの頻度でありましたか?
  • どのような時に欠勤、遅刻、早退しましたか?
  • 退職が決定したあとの勤務状況はいかがでしたか?
  • 勤務状況について印象深いことがあれば教えてください

2.スキルに関する質問

  • 業務における実績を教えてください
  • 社内でリーダーシップはありましたか?
  • 部下やチームのマネジメントはできていましたか?
  • 最も活躍していたのは、どんなポジションや業務のときでしたか?
  • 今後、改善するべき点や身につけるべきスキルはありますか?

3.人物像に関する質問

  • 長所と短所を教えてください
  • 業務に対する責任感や取り組む姿勢はいかがでしたか?
  • 職場の人間関係の中では、どのような役割の人でしたか?
  • 問題が発生した時、どのように対応していましたか?
  • 他責にすることはありませんでしたか?
  • また一緒に働きたいと思いますか?

リファレンスチェックを行うときの5つの注意点

前述の通りメリットも多く、導入を検討したいリファレンスチェックですが、気をつけるべき注意点もあります。違法行為となってしまう場合もあるので必ず確認をしてください。

注意点1.許諾を得ずリファレンスチェックをするのは違法となる

リファレンスチェックを行う場合は、必ず候補者の許諾を得ます。個人情報保護法では、第三者が本人の同意なしに個人情報を提供することを禁止しています。リファレンスチェックの推薦者を候補者から紹介してもらう場合も、採用企業側で探す場合もその旨を含め、まずは実施の許諾を得ることが必須となります。

許諾書などを用意して証明ができるようにし、許諾書は必ず保管しておきましょう。

注意点2.内定取り消しは合理的な理由がない限り不可

リファレンスチェックの結果による内定取り消しは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合を除きできません。内定通知書を出した時点で求職者とは労働契約が成立するため、内定取り消しは解雇になってしまいます。

リファレンスチェックによって内定取り消しが認められるのは、以下のような場合です。

  • 学歴や経歴の詐称があった
  • 職務内容が申告していたものと全く違った
  • 懲戒処分を受けたことがあった
  • 反社会的勢力との繋がりがあった など

リファレンスチェックの結果によって内定取り消しを検討する場合は、顧問弁護士に相談してリーガルチェックを受けるようにしましょう。

注意点3.求職者の不利益や差別につながる質問はしない

求職者の不利益や差別につながるような質問はしてはいけません。厚生労働省が定めている「公正な採用選考の基本」を参考に、適切な質問を設計しましょう。

具体的には、以下のような内容の質問はできません。

  • 本籍や出生地に関すること
  • 生活環境、家庭環境に関すること
  • 国籍や人種に関すること
  • 思想、信条、宗教などに関すること
  • 病歴などに関すること
  • その他、社会的差別の原因になる可能性のあること など

注意点4.収集した情報は個人情報保護法を遵守して取り扱う

リファレンスチェックによって収集した個人情報は、個人情報保護法に則り適切に取り扱われなければなりません。不要な個人情報は削除する、個人情報を取り扱う従業員への監督を行うなどが義務づけられています。

適切な個人情報の取り扱いについては、社内の情報管理体制を整備することも必要です。

注意点5.拒否された場合の対応策を考えておく

求職者からリファレンスチェックを拒否されるケースも存在します。インターネット調査※2(前述同)では、リファレンスチェックに対するネガティブな印象や懸念として、第1位「第三者のコメント内容を自分自身では知ることができないことに不安を感じる」(42.7%)、第2位「第三者の人柄・役職などが、選考に影響しそう」(39.6%)などが挙げられています。実施意向と目的を説明する際に、リファレンスチェックで期待できるポイントを伝え、懸念点が解消できるコミュニケーションを心がけるようにしましょう。

それでも拒否されてしまった場合は、その理由を詳細に確認します。妥当な理由がある場合はリファレンスチェック以外の方法を採用しても良いでしょう。確認したい事項に応じて、ワークショップ面接やワーキング選考を実施するのがおすすめです。

リファレンスチェックで長期的に活躍してくれる採用を実現しよう

リファレンスチェックの基礎知識についてまとめてお話してきました。職務経歴書や面接や面談だけではわからない候補者について、候補者をよく知る第三者から客観的な情報を得ることができます。候補者自身の主観的な情報と第三者からの客観的な情報を双方得ることで、高いマッチングを期待できます。

リファレンスチェックを行うためには、個人情報の取扱をはじめとした注意点を厳守し、長期的に活躍してくれる採用を実現しましょう。

リファレンスチェックに関するQ&A

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この記事のライター

長瀬 みなみ

長瀬 みなみ

ITベンチャーにて広報PRを担当したのち、ヘルスケアベンチャーにて広報PR部門の立ち上げ、ブランド責任者として取締役就任。YouTubeチャンネル運営など、さまざまなメディアを活用した分ランディングや広報活動を行う。独立後は、広報PR・ブランディング・コミュニティ運営など幅広く活動している。これまでの経験から広報・ブランディングに関する戦略立案からプレスリリース執筆まで幅広くカバーしたコンテンツを作っています。

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