大阪市に本社を構える株式会社類設計室は、1972年に設計事業を手掛ける会社として創業。現在「設計事業部」「教育事業部」「農園事業部 類農園」「宅配事業部 類宅配」「管財事業部 類管財」の事業部を展開しています。
全社の広報PRを管轄する経営統括部の山根教彦さんと西埜隆文さん、設計事業部で設計業務に加え現場の目線を活かした広報PRを担う橋本宏さんを取材。本記事では、業種の異なる複数の事業を行う同社ならではの広報PR戦略、プレスリリースの活用についてお届けします。
株式会社類設計室(大阪府大阪市):最新のプレスリリースはこちら
株式会社類設計室 経営統括部 経営企画課・課長 兼 広報人材課・課長
2013年入社。設計事業部の意匠設計として、東京設計室に配属。2016年に、同企画部に配属となり、教育施設から民間のイノベーション施設、事業所の移転・建替え事業などを担当。現在は経営企画課と広報人材課の責任者として、組織全体の広報PR活動に携わる。
株式会社類設計室 設計事業部 大阪設計室 企画部・次長
2007年の入社から設計実務に携わり、4年前から設計事業部の広報リーダーも兼務。企画部では教育・企業・地域に関わるさまざまなプロジェクトの企画構想を担いながら、広報活動では設計メンバー全員の作品・活動を積極的に広報することに力を入れている。
株式会社類設計室 経営統括部 広報人材課
新聞社に約20年勤務した後、株式会社類設計室入社。新規部門の立ち上げに携わり、編集・制作を担当。2021年からは広報PR担当として、主にプレスリリースの作成と配信を行う。
本社広報に加え、事業部門それぞれに広報担当者
──本日はよろしくお願いします。まず、株式会社類設計室さんの広報PR体制や特徴などを教えていただけますか。
山根さん(以下、敬称略):はい。私が所属する経営統括部の中に広報人材課があり、現在7名の広報担当が在籍しています。全社の広報PR活動は広報人材課が主体となって行っていますが、設計・教育・農園・宅配の各事業部門にもそれぞれ広報担当がいて、連携して取り組んでいるのが特徴です。
今日は、事業部の広報を代表して、設計事業部から橋本も一緒にお話させていただきます。
橋本さん(以下、敬称略):よろしくお願いします。
──どのような経緯で事業部ごとに広報担当者を置くようになったのでしょうか。
山根:ジャンルの異なる5つの事業すべて本社部門の広報担当者だけで満遍なく行うことが難しかったからです。
もともとBtoBの取引が多い設計事業部では、営業活動で充分に売り上げを伸ばせていたので広報PR活動の必要性を感じていませんでした。しかし、これからはBtoBの事業であっても外に向けた広報PR活動が必要ではないか、という声が少しずつ上がり始めたんです。
とはいえ、その時期の広報の時間の大半はBtoCの教育事業部に割いており、限られた時間でほかの部署の広報PRや採用関係を回している状況で。
「それなら自分たちで広報をやろう」と設計事業部としての広報チームが立ち上がりました。
──現場からの声で始まったんですね。
橋本:弊社は「自分たちの生きる場は、自分たちで作っていく」という理念を掲げていて、広報だけでなく、さまざまな組織活動に主体性を持って取り組むことを大切にしています。設計事業部の広報を立ち上げるときも「自分たちでやろうよ」「自分たちでやりたい」という部署内の空気だったと記憶しています。
──外に向けた広報を必要だと感じたきっかけはあったのでしょうか。
山根:外部講師を招いて開催した勉強会の中で、「今までの営業スタイルから、Webを使った営業をやってみないか」という話になり、ホームページを改変するプロジェクトを立ち上げたのがきっかけです。お客さまの反応を細かく分析し、「次はこういうニュースを上げてみよう」「次はこんなふうに変えてみよう」と修正を繰り返しました。
そんなときに、ホームページ経由で大型の受注が入り、成果が見えたことで、今までとは違う窓口を開いておくことの重要性、外に向けた発信が大切だという流れが一気に高まりましたね。
事業部門を横断「広報委員会」の立ち上げ
──本社の広報部門と各事業部の広報部門はどのようにそれぞれの動きを共有しているのでしょうか。
山根:私が2021年に異動した当初は、広報計画を基に、季節性や時流、販促のピークなどを考慮して内容を見直す作業を事業部ごとに行っていました。しかし、5つの事業部門が協働・共創していくためには、全体を眺めながらお互いの状況を理解することが大切。そこで立ち上げられたのが、各事業部のメンバーが横断する「広報委員会」という組織です。
2022年には各事業部から2人が出席し、それぞれの取り組みを発表するミーティングを毎月行うようになりました。ほかの事業部の取り組みに対して「それすごくいい取り組みだね」「うちでも活かしてみたい」といったやり取りも生まれ、少しずつ組織化されていきました。
現在は、広報委員会で年間の広報計画を立て、その年の広報戦略を年度始めに共有。途中の経過報告を共有し、必要があればその都度ミーティングをしています。
──本社部門の広報担当から事業部に対して広報PRの打ち出し方をアドバイスすることはありますか。
西埜さん(以下、敬称略):そうですね。農園事業部の「類農園」の場合、直売所に来るお客さまに向けての情報は農園に所属する広報チームが積極的に発信していますが、本社広報チームがより広く世間に発信することは多いとはいえなかった状態でした。
以前、類農園で「大和ルージュ」という赤いスイートコーンを発売しましたが、やはり直売所のお客さまに向けたPRが中心でした。ただ「大和ルージュ」は意外性もあり、話題になりそうな商品。これだともったいないと思い、「おもしろいので類農園を知らない人にもっと発信しましょう」とこちらから提案して、プレスリリースを配信したところ、大きな反響につなげることができました。
より開かれたところに向けた情報発信
──「大和ルージュ」は画としてもとても映えるものでしたね。一方で設計事業部などでは、発信する情報によっては専門的なものもあると思います。難しい内容を生活者に届ける際に、工夫されていることはありますか。
西埜:事業部門ごとに広報を持つ理由がまさにそれです。本社部門の広報と事業部門別の広報が「これはどういう意味ですか?」「より広く社会に発信するのであれば、この書き方のほうがいいですよね」とやり取りをすることで、今まで専門用語を使って配信していたものも説明を入れるなど、わかりやすさを追求できるようになりました。
「大和ルージュ」はとてもいい事例になりましたが、BtoC向けの事業部では反対に、報道関係者など位相の違うところに向けてアプローチすることで、そこから生活者へより広く情報が拡散されていく流れを意識しています。
山根:「より開かれたところへ向けた情報発信」をするという意識は、現在の体制になって深まってきたと思います。
橋本:これまで、設計業界から外への情報発信は、業界誌への掲載や受賞報告がメインで、そのほかは設計事例をホームページに掲載する程度でした。やはり業界向けの広報PRという印象が強かったと思います。
発信する情報も変えなければならないと、自社の季刊誌を制作し、お客さまの声を自分たちで拾いに行くように。建物の魅力をはじめ、つくり上げていくプロセスやお客さまの思いなどをクライアントや協業者、他事業部で関わりのある方々に広く届けられるようになりました。
株式会社類設計室のプレスリリース活用事例
事例1.正しく情報を届けることで、関係者とのやり取りもスムーズに
──ここからはプレスリリースについて詳しくお伺いさせてください。これまでに、どのような配信で反響がありましたか。
橋本:大阪本社のすぐ近くで、まちづくりに関わっている淀川区役所跡地開発プロジェクトのプレスリリースでは、正確な情報が届くことによって、地域の方にプロジェクトに込める想いや実現像をよく理解していただけること、社会に浸透することを実感した事例のひとつです。
このプロジェクトでは、私もいろいろな地域住民の方々とやり取りをさせていただいています。その中で「すごい良いものができるんだね」「完成するのが本当に楽しみです」と多くのエールをいただくことが、たくさんあります。会うとすぐに、地域のみなさんと一緒に建物と街をつくっていく空気が生まれています。関係者の意思が丁寧に伝わっていることでエールが集まり、応援者も増える中で、プレスリリースの効果があったと感じています。
参考:公民連携型図書館を核とした まちづくり拠点を創出する大阪・十三駅前の複合開発拠点(大阪市)を設計・監理
事例2.予想外の反響で、より多くの人に見られる結果に
西埜:類農園の「宇陀オーガニックビレッジフェス」のプレスリリースは、配信後に予想を超えて大きな反響がありました。
奈良県宇陀市が主催のイベントで、類農園は出店する側ということもあって、本社部門の広報も「とりあえずプレスリリースを出しておこう」という程度の認識でした。ところが実際にプレスリリースを配信してみると、反響が大きくてとても驚きましたね。通常は、配信日にPV数が一気に増え、以降は下がっていきますが、一週間のうちに何度もPV数が伸びるタイミングがあったんです。かつてないようなアクセス傾向で、より多くの方に見られたというのが新鮮な経験でした。
参考:【類農園】奈良県宇陀市主催「宇陀オーガニックビレッジフェス2023」参加 ~11月26日に、パネルディスカッションに登壇や有機の米づくり取組を紹介を行います。子どもに人気の「おむすび兄さん」も登場!~
事例3.季節性を意識した情報発信の大切さに気づくきっかけに
山根:教育事業部が手がける「こども建築塾」で実施した防災に関するイベントも大きな話題を集めましたね。当社が関西に本社を構える企業であることと、1月17日の阪神淡路大震災が発生した日を意識して、当初から1月に開催しようと決めていました。
新聞社とテレビが取材に来てくださり、夕方のニュースでも4分ほど流れるなど、想像以上の結果につながっています。このプレスリリースをきっかけに、季節性を意識して発信する情報について考えるようになりましたし、狙いを定められるようになったと思います。
参考:【こども建築塾】子どもたちが「防災と建築」について一級建築士から学ぶ「こども建築塾」開催(1月13日・大阪)について、当日の講義内容に新たなプログラムを追加しました
山根:また、プレスリリースだけでなくPR TIMES STORYに掲載した「こども建築塾」開講の裏側も、大反響で多くの方に見ていただくことができました。
取材形式で記事を書いたことで、プレスリリース以上に親しみやすかったのかもしれません。
参考:建築を切り口にものづくりの楽しさを学ぶ「こども建築塾」開講の裏側
「みんなで広報」で循環を生み出す
──現在の広報PR体制になって、どのようなところに手応えを感じますか。
橋本:各事業部の社員が、きちんと社会に目を向けて情報を発信し、そこから得た社会の反応を事業に活かしていく。これまでのように事業部内だけで仕事をしていては実現できなかった「必要な人に必要な情報を伝え、その情報を得た人が問い合わせをくれる」という良い循環が生まれているのを感じます。
また、僕は設計事業部の広報リーダーをしていますが、設計事業部では多くのメンバーが広報PR活動に関わってくれていて、一人ひとりがやる気を持って社会発信に取り組んでいます。社会に役立てるものを発信したいという意欲が、仕事のやりがい、高度化にもつながっています。そこが僕自身が一番手応えを感じている部分です。
山根:橋本の言葉と重なりますが、広報PR活動に携わるようになってからは、自分が関わっている案件だけでなく会社全体を見るようになりました。携わる案件が広がったことで、お客さまの喜ぶ声を生でたくさん聞くことができたのはよかったと思いますね。
45周年誌、50周年誌と周年誌の企画にも関わったことで、会社への理解が深まり、事業部問わず共通した当社の良さや強みにも気づくことができ、広報の仕事を通して自分の世界を広げられたのも大きかったです。
──最後に、これから多岐にわたる事業を展開する企業や、同じ事業形態で取り組む方に向けて広報PR活動に対するアドバイスなどあれば伺いたいです。
山根:広報PR活動は広報部が一括して行うものと思われがちですが、もっと開かれ、みんなでやる広報の体制ができればよりおもしろくなると思います。
また、広報PR活動は成果指標が測りにくいところがありますが、PR TIMESなどを活用することで、プレスリリースがどれだけ閲覧されて、どれだけの人に届いたのかを知ることができます。それだけでも根拠となりますし、手応えにもつながるのではないでしょうか。
橋本:広報PR活動は広報担当だけがやるのではなく、多くの社員を巻き込んでみんなで社会に届けていくことが大切です。その評価に基づいて、今度は自分たちの会社をどうつくっていけばいいのかを考えていくような、そういう流れを生み出すことがポイントだと思います。
西埜:広報PRはどうしても属人性に頼るところがあります。もちろんそれも大切ですが、みんなでやることで反応を見ることができ、それが社員一人ひとりのやる気にもつながっていくわけです。あと一歩先に進もうという活気が出てきて、それが広報の新しい形になっていくのではないかと思います。
──本社広報、事業部広報との連携、とても参考になりました。本日はありがとうございました。
まとめ:類設計室に学ぶ「みんなで広報」のポイント
5つの事業部がそれぞれに多様な事業を展開する、株式会社類設計室。その広報PR活動を支えるのが、社内に浸透する「みんなで広報」の文化でした。
- 事業部門ごとに広報担当者を置き、本社広報と連携
- 部門を横断した広報委員会を立ち上げ、1年間のニュースを逃さない
- より広く社会に発信することで、会社の新たな魅力を創出・再認識
複数の事業を行う企業にとって、これから広報PR活動の体制を検討する企業にとって、参考になったのではないでしょうか。
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