首都圏以外の広報PR担当者から「地元のメディアとは付き合いが深いものの、ほかのエリアではどういった広報PR活動をすべきなのかわからない」という声をよく耳にします。
こうした悩みを解決するべく、12月6日に名古屋で「宣伝会議リージョナルサミット2023」が開催されました。
第一部では、地域企業を代表して昭和12年に愛知県で創業して以来、手帳製造とOEMを手がけてきた伊藤手帳株式会社から広報部の神谷敦子さんが登壇。本記事では、地縁なし、知人ゼロから始めた伊藤手帳の広報PR活動、全国で話題となった企画をお届けします。
第二部で登壇したギズモード・ジャパン編集長の尾田和実さんのレポートはこちら:情報源もドーナツ化現象。編集者が足を運びたくなる地域企業になるには
伊藤手帳株式会社の最新のプレスリリースはこちら:伊藤手帳株式会社のプレスリリース
伊藤手帳株式会社 広報部
大学卒業後、結婚、出産に伴い扶養枠で働ける仕事につく。2009年、ITベンチャー企業の創業時にジョイン。WEBマーケティングの仕事と広報業務の仕事に携わる。2012年、和装業界へ転職、新規事業であるECサイトをゼロベースから立ち上げ運営。半年で売上ゼロから月商10,000,000円を達成。2015年、個人事業主として独立し、WEBコンサルタントを中心に中小企業の相談を引き受ける。2017年、単身東京へ(フリーランス広報として現在に至る)。伊藤手帳株式会社では広報責任者として戦略立案からメディア対応まで幅広く業務を担当。この3年は産学連携の取組みに主軸を置く。商品化に至るプログラムの開発を行い、愛知大学キャリア支援センターとの取組みでは初年度・2年目と続けて地元メディアや全国メディアで取り上げられた。
株式会社PR TIMES 営業本部
東京生まれ、埼玉・香港育ち。新卒で広告代理店に入社後、2016年にPR TIMESに入社。営業担当としてお客様へのサービス提案を経験後、2019年よりサポート部門責任者に。その後、新規事業推進担当やプロダクト開発との兼務を経て、2022年末から営業本部に復帰。現在は営業本部副部長として営業活動の全体推進を行いつつ、プレイヤーとしてサービス利用のご提案や利活用の支援活動を行う。
経営戦略×社会性で企画化
小暮:まずは、神谷さんが着任されてからここ数年で、どんな風に御社の広報PRが変化したのか教えてください。
神谷さん(以下敬称略):当初からPR TIMESさんを活用していましたが、最初は自社愛の強さゆえに、社会的背景も読み取らずに、ひたすら会社や商品の魅力を押しまくるプレスリリースを作っていました。メディアキャラバンも手当たり次第にアプローチして、取材獲得に至らず終い。地元新聞の取材がたまにあった程度でしたので、このままではダメだと思い、プレスリリースの内容を見直してみることに。PR TIMES主催の勉強会やPR TIMESカレッジに積極的に参加して、研究する日々を送っていました。
いただいたアドバイスを参考にメディア目線を意識してプレスリリースを作ったところ、じわじわと問い合わせが増えていくようになったんです。その中でもタイトルはかなり重要だと実感しましたね。
また、社会性のある情報でなければ全国のメディアにはなかなか取り上げられないことに気づき、社内で話題を探すことにしました。そこで大切にしていることが2つあります。
- 自社の経営戦略に当てはまるもの
- 社会性のあるテーマに沿ったもの
自社のビジョンである「地域社会への貢献」と、当時、話題になっていた「Z世代」を組み合わせて考えた結果が産学連携だったんです。
全国メディアから注目を集めた「産学連携」の3つのポイント
小暮:伊藤手帳さんが地元の愛知大学との産学連携を始めたのが3年前でしたね。伊藤手帳さんにとっても産学連携は大きな試みだったはず。振り返ってみていかがでしょうか。
神谷:産学連携を思いついてすぐに社長に相談したところ快諾を得て、一緒にプログラムを作り大学側に投げることに。とはいえ中小企業と連携してくれる大学はあるのか、プログラムに参加してくれる学生はいるのかどうか不安でしたが、とある経済紙で愛知大学が企業規模不問で連携先を募集していたのを発見。願い出たところ承諾をいただきました。
母校でもあったので、話題づくりのためだけでなく、参加してくれる学生のキャリア形成に役立ててもらえたらいいなという思いもありましたね。
2021年
産業連携に取り組んで1年目は、学生と一緒に商品開発した『3STEP日記』が話題となり、中日新聞、中部経済新聞、朝日新聞、名古屋テレビ、CBCラジオ、テレビ愛知など地元メディアから多数の取材を受けました。
2022年
2年目になると多くの人の手に渡り、地元メディアで紹介された記事をきっかけに、FM愛知から「ユニークな商品だから番組で紹介したい」とお声がけいただき、日経MJからは「商品のネーミングが面白い」と高評価を受けて、一気に拡散。その後、日経新聞、日経クロストレンド日経トレンディに取り上げてもらいました。ここから五月雨式にTBSラジオやニュースエブリーから取材依頼が舞い込みます。
2023年
3年目には、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌、Webメディアの約50媒体で紹介されるようになりました。パーミッションを得てないものを含めると数え切れません。今朝も目覚ましテレビのイマドキで紹介されていたと思います。そして、ギズモード・ジャパンさんにも大きく取り上げていただきました。
あくまで個人的な考察ですが、注目を集めた理由をまとめると、3点がポイントだったと考えています。
- 題材(商材)をどう見せるか
当社の場合、題材(商材)は手帳。社会性のあるテーマとして「Z世代」を選び、マッチさせたこと。
- 社内の協力体制の向上
研究を重ねて作りあげたプレスリリースの内容を販売サイトにどう反映するかに始まって、細部に至るまで、広報である神谷さんとEC担当者がコミュニケーションアプリも活用しながら頻繁に打ち合わせを行い、連携を怠らなかったこと。
- 学びの積み重ね
全国メディア目線で考えて、毎日たくさん届くであろうプレスリリースに埋没してしまわない工夫が大切。マーケティングで培った経験と広報やプレスリリースをコツコツと学び続けた“積み重ね”が、産学連携の3年目というタイミングで芽吹いたと思います。
広報PR術は「愛」と「巻き込む力」
小暮:ありがとうございます。では、反対に広報PR担当者が「やってしまいがちな注意すべきポイント」についてお話いただけますでしょうか。
神谷:私が考えるNGポイントとそれをOKにする例を紹介します。
NG例1.自社の商品やサービスを自社愛のみで主張
→ほかと比較するのではなく、「自社の商品・サービスは社会的背景でこのような意義がある」ことを伝える。
NG例2.専門用語が多く、独りよがりなプレスリリースやメルマガ
→「誰が読んでも伝わる内容」かどうかを確認し作成する。
NG例3.名刺交換した記者にしつこく連絡する
→こちら都合で連絡するのではなく、名刺交換できたメディアの方がどのような記事を書いているかを定期的にチェックし、「良い記事を書いている記者やライターに感想を送る」ようにする。
そして、地元メディアから全国に伝わることを意識することはもちろん、掲載されることで喜んでくれる人がいることを考え、地域を大切にしています。
小暮:それでは最後の質問になりますが、広報PRパーソンに必要なことはなんだと思いますか。
神谷:広報PRを担う人に必要な要素は、「プレスリリースでゴリ押しせずとも自社愛を伝える力」と「社内を良い意味で巻き込んで大きな波を作っていく力」ではないでしょうか。
愛を感じられるようなプレスリリースを作成することと、ひとり広報でできることは限られていますので、社内や協力してくれる人を巻き込む力、つまり「愛」と「巻き込む力」が大切だと思いますね。
まとめ:地域情報を全国に届けるには
広報PR活動の失敗から、約50媒体から取材を受けることになった伊藤手帳。情報発信の拠点となり東京から物理的な距離があっても、広報PRの取り組み次第では多くのメディアの目に留まります。
全国発信を意識した地域企業の広報PRに必要な要素は、
- 社会性のあるテーマを意識した話題づくり
- ゴリ押しではない自社愛の表現
- 社内を巻き込んだ広報PR活動
上記3点を意識して、プレスリリース作成をはじめとする広報PR活動に取り組んでみてください。
第二部では、「地域にこそ面白い情報がある」全国に広めたい情報の見つけ方をテーマに、全国メディアを代表して株式会社メディアジーン 執行役員でギズモード・ジャパン編集長の尾田和実さんが登壇。講演の内容をまとめていますのであわせてご覧ください。
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