麹を学問にする「Kojinomy(コウジノミー)」を創設、提唱します
■Kojinomy(コウジノミー)とは
このたび、糀屋三左衛門(代表取締役/第29代当主 村井三左衛門)は、麹を対象とした新たな学問体系「Kojinomy(コウジノミー)」を提唱いたしました。
Kojinomyとは、「Koji(麹)」と学問を意味する接尾辞「-nomy」を組み合わせた造語であり、麹を起点として、人文学・社会科学・自然科学の領域を横断的に結びつける、『領域横断型』の学問領域として命名いたしました。
麹菌(Aspergillus oryzae)は、日本酒、味噌、醤油など日本の伝統的発酵食品の根幹をなす存在であり、その重要性から2006年には日本の「国菌」に指定されています。当社は、こうした麹の学術的・文化的価値を体系化し、学問として再定義し社会実装する必要性を強く感じ、本構想を立ち上げました。
■背景:なぜ「いま」、麹の学問が必要なのか
いま世界では、麹がガストロノミーやフードテック、ウェルネス、ウェルビーイング、サスティナビリティなど様々な分野で注目されています。しかし、日本発のはずのこの素材が、海外のシェフや研究者によって次々と再発見される一方で、その本家である私たちが体系的に語る手段を持っていない現状に、私は危機感を抱いています。
一方で、国内では長年にわたり、多くの人々が発酵や麹に関わってきました。大学や研究機関の研究者や、酒、味噌、醤油など醸造メーカーの方、あるいは、一般の料理研究家の方など、それぞれの立場から深い知見を積み重ねてきました。
ただ、その研究成果と実践が、農学、医薬学、文化人類学、経営学などの学問分野ごと、あるいは味噌や醤油、あるいは料理への利用やなど応用分野ごとに閉じてしまい、なかなか横につながらない、いわば“たこつぼ化”した状態になっているようにも感じます。Kojinomyのプロジェクトは、そうした知と実践の断片を結び直し、麹の可能性をもっと開かれたかたちで社会に共有していくための試みです。
そして、この試みが出来るのは、味噌、醤油、清酒、焼酎、みりん、酢など全国に3000社以上の取引先を抱え、創業600年の長きにわたり、麹に関して横断的に接してきた私たちだからこそ出来る、また、私たちにしか出来ないこそ、しなくてはならない取組みだと考えています。

■学問体系としての射程
Kojinomyが対象とするのは、麹に関する多様な知識と実践の統合です。
たとえば以下のような要素が含まれます:
麹菌そのものの生物学的特性
原料となる米・豆類など素材の特性
醸造・発酵技術とその変遷
食品としての機能性・健康影響
流通・マーケティング・制度設計
麹が育まれてきた風土・気候・宗教・言語・美学・文化的意味
教育面では、座学にとどまらず、発酵の実習や体験プログラムを通じた文理融合的な学びを促進します。研究面では、醸造学・発酵学の枠にとどまらず、人類学やツーリズム、地域政策、環境科学などあらゆる分野の連携によって麹を再解釈し、新たな知の体系を構築していきます。
■想定される主な研究領域の例
Kojinomyは、以下のような広範な学問領域にまたがります:
・人文学:
歴史学(麹と食文化の系譜)/民俗学/宗教学(神饌・神事との関係)/芸術学(麹を題材とした表現)/言語学(発酵語彙の変遷)/美食学(麹のガストロノミー)など
・社会科学:
経済学(麹食品の市場構造)/教育学(STEAM教育への応用)/観光学(麹ツーリズム)/労働社会学(蔵人・工場労働の継承)/地域政策学 など
・自然科学:
醸造学/微生物学/栄養学/医学・薬学(麹の機能性)/環境学(麹菌と共生環境)/工学(製麹機器開発)
このように、従来は分散していた知見を、麹というフィルターを通して再編集・再統合することにより、学際的な創発と社会実装を両立することを目指します。
■応用展開のビジョン:「麹 × ○○」による社会価値の創出
Kojinomyが目指すのは、学問的体系化だけではありません。研究成果を社会に還元し、現代の課題解決へと接続する「麹×○○」の応用展開を見据えています。
想定されるプロジェクトの例
麹 × ツーリズム: 醸造現場や風土を巡る体験型観光
麹 × STEAM教育: 理科・アート・歴史を統合した学び
麹 × セルフケア: 発酵食品を活用した健康・美容法
麹 × アート/デザイン: 麹をモチーフにした創作活動
麹 × 新素材/バイオ: 持続可能なバイオマテリアル開発
麹 × 環境技術: 食品残渣や副産物の循環資源化・浄化技術
■社会的・文化的な意義と国際展望
Kojinomyの創設は、日本にとって文化と産業の両面における意味を持ちます。
地域に根ざした伝統産業としての麹文化に、現代的価値と新しい担い手を見出すこと。それにより、地方創生や新しい産業振興のモデルを提示すること。さらには、国際的な研究拠点として日本が発酵・醸造の知的主導権を握るための基盤を築くこと。
世界の発酵研究が今、再注目されている中、日本から発信されるKojinomyの動向は、ガストロノミー(美食学)を擁するスペインバスク地方のように、学問と文化、そしてツーリズムや経済が連動する全体戦略の起点となり得ると考えています。
■今後の展開と連携構想
Kojinomyの推進には、大学・研究機関に加え、食品企業、地域自治体、伝統蔵元、アーティスト、市民活動家など、多様なセクターの連携が不可欠です。
今後は以下の方向で活動を展開してまいります:
・学際的な研究チームの組成とプロジェクト化
・教育カリキュラム・教材の開発(高校・大学・一般向け)
・地域に根ざした実践活動(ツーリズム・地域産業振興)
・国際的な知見共有と研究ネットワークの構築
・官民連携による社会実装と制度提言
将来的には、世界各国から研究者・学生・起業家が集い、麹を通じた知の交流・創造が行われる国際的なハブ拠点として、Kojinomyを育ててまいります。
本構想にご関心をお持ちの方々、研究・教育・事業・自治体・文化関係の各分野の皆様との連携を心より歓迎いたします。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像