株式会社NTT QONOQ（以下、コノキュー）は、2023年4月25日にユーザーの「好奇心に寄り添い、新たなライフスタイルと出会える」ことをコンセプトにしたVR空間を実現する『360Media（スリーシックスティメディア）』をリリースしました。

さまざまなライフスタイルをテーマにした空間の中で、新たな気付きや発見が生まれる場となっており、複数社の商品を一つの空間に集め、業種・業態を超えたコラボレーションが実現しました。「キャンプ・アウトドア」や「アート＆カルチャー」といった特定のテーマへ興味のある方がサービスに訪れることで、新しい商品や体験に出会うことができます。

今回のリリースでは、パートナーとしてWEBメディアCAMP HACKを運営する株式会社スペースキーと株式会社マガジンハウスに参画いただきました。

360°に広がるVRのキャンプ場で、キャンプ場到着からバンライフのメインとなる車中泊までの1日の流れを追体験できる「バンライフ」エリアの監修をCAMP HACKに担当いただき、マガジンハウスには学びの新しい形を提供するため、誰でも無料で参加できるVR上の学校として「MIG (Magazinehouse Institute of Good life )」エリアの監修を担当いただきました。

本サービスは、2022年10月に事業を開始したコノキューがフォーカスし続けた「顧客体験」の視点と新技術に対する挑戦、パートナー企業との協力によって誕生しました。本ストーリーでは、その挑戦の軌跡について伝えます。

【1】顧客体験を追求した結果、WEB VRでのサービス立ち上げへ。

（左から、NTTコノキュー 勝山、山﨑、齊藤、大垣）

2022年10月、コノキューは株式会社NTTドコモ100%子会社として事業を開始しました。個人のお客さま・法人のお客さまに対して、VR（仮想現実）やAR（拡張現実）、MR（複合現実）などXRを用いて、メタバース・デジタルツイン・XRデバイスの3つの事業を柱に、さまざまなサービス、ソリューションを展開しています。

その中でも、今回リリースした「360Media」は元々、"顧客体験"に関する新規事業を考案し、ビジネス化することもめざして動いていた組織から生まれました。そのような背景もあり、新規事業を考えるにあたって、現在起きている顧客の購買体験について着目しました。

現在の購買体験から生まれた仮説とは？

詳しく知るため、ユーザーインタビュー等を実施したところ、興味深い気づきが得られました。昨今の購買体験（特に新型コロナウイルスが流行してから）は、まずInstagramやYouTubeなどのSNSで情報に触れ、興味関心を抱き、購買意欲を高める。そして、最後の振り分けとしてリアルで試着したり触ってみたりすることで、意思決定するプロセスが主流になりつつあるということです。

この現状に対し、「SNSで興味を引いてからリアルで購買するまでの間に大きなタイムラグがあり、機会損失しているのではないか？」とチーム内で仮説を立てました。せっかく興味を持っていただいても、時間が空いてしまうことで、別の商品との出会いや考えの変化により購買しないということは度々発生します。

そのプロセスをシームレスにする手立てとして、VR技術が上がりました。それはつまり、VR技術を使うことでリアリティが追求された購買体験を提供することで、ECサイトのような単なる商品羅列ではない、新しい体験を提供できるのではないかという仮説でした。

▼「バンライフ」のVR空間で紹介される商品の一覧画面

「アクセスのしやすさ」「リアルさ」の追求から生まれたWeb VR

そんな新しい体験を提供するにあたって、重視したポイントがあります。それは「アクセスのしやすさ」と「リアルさ」です。

VR技術といっても、さまざまな手法や組み合わせが存在します。例えば、昨今話題になっているメタバースで没入感を体験するためには準備が必要になります。ヘッドマウントディスプレイをセットアップする、アプリをダウンロードする、コンテンツをロードする、といった具合に準備に手間と時間がかかってしまいました。

また、今のメタバースは負荷を軽減するために空間がデフォルメ化されていたり、商品などのオブジェクトをローポリゴン（荒くしてデータ量を減らす）にすることでローディング時間を短くしたり、スムーズにアバターを操作できるようにしています。そうすると、結果的にリアリティが欠如してしまうのです。

このようなさまざまな検証を踏まえ、利用者に対して認知から購買までのプロセスをスムーズに体験いただくためには「アクセスのしやすさ」と「リアルさ」を追求する必要があることから、スマートフォンでVRを提供すべきであると結論付けました。

その結果、「360Media」では誰もがアクセスできるWeb VRを採用し、アバター操作等の自由度は低くしています。しかし、その代わりにより簡単に、商品を綺麗に見ることのできるサービスをめざしたいと考えました。

360Mediaで採用しているWebVR技術は、ゲームエンジンなどで使われているグラフィックツールとWebを組み合わせています。その調整により、今お持ちのスマートフォンで、リアルな映像をインストール無く、いつでもどこでも簡単にアクセスできるようになりました。

【2】XRを通じた新しい体験作りをめざして。開発の中で生まれた、さまざまな変化。

開発スタート。そしてメンバーに生まれた変化

向かうべき方向性が決まると、早速開発がスタートしました。

数々のサービスやソリューションの開発を行ってきたコノキューですが、今までと異なる点もさまざまあったと振り返ります。サービスとして、「アクセスのしやすさ」と「リアルさ」を追求しながらも、幅広く一般の方が購買を意識して活用することを想定する必要がありました。

そのため、エンドユーザーのみなさまへ継続的に価値を提供し続けられる製品であることをめざし、これまで以上にニーズへ柔軟な対応ができるような開発体制が求められたのです。その実現に向けて、変化に強い開発体制の実現のため内製化やアジャイル開発の実現に挑戦してきました。経験が浅く不慣れな状態からのスタートになりましたが、より良い製品を生み出すチームになるためにはどうすれば良いかをメンバーと話し合いながら開発を進めます。

対応するメンバーの中にも変化は生まれました。コロナ前は、XR＝顧客体験のデータ分析における1つのチャネル程度、としか考えていなかったメンバーもいたといいます。しかし、開発でXRに関わっていく中で、「XRでしか表現できないことも多くあり、ユーザー体験を確実に向上できる技術だ」と確信を持つようになったと振り返ります。新しい領域のため、さまざまな情報が大切で、チーム内で最先端の技術情報を集め合い、「XRといえば」で最初に出てくる会社になることをめざしていきました。

欠かせなかった、パートナー企業さまのご協力

また、サービスのリリースに向けて、パートナーとして協力いただいたCAMP HACKとマガジンハウス両社の協力は欠かせませんでした。「360Media」を提供するにあたって、ユーザーへ認知していただくことを考えた際、メディアのみなさまとコラボレーションした空間をリリースしていくことで効果的に進められないかと検討したことがきっかけだったと振り返ります。

～CAMP HACKとのコラボレーション秘話～

今までにない空間・店舗体験ができ、VRと相性の良いテーマ、更にVRであれば表現の幅が広がるテーマを絞っていく中で、キャンプ・アウトドアというテーマに可能性を見出しました。その中で、国内最大級のキャンプメディアであるCAMP HACKと実施することが最適だと考え、お声がけしてキャンプテーマはスタートします。

キャンプには多種多様なスタイルがありますが、CAMP HACKにて考えていただいたテーマが「バンライフ」でした。そのテーマを実現するうえで制作に着手し、何度かプロトタイプを作りながら改善点を一緒に話し合うことで今の空間を作っていきました。特に、デザインのディレクションをするにあたって、「リアルなキャンプ風景」「非日常感ある星空」の2点にこだわっています。

また、空間を散策する中で、ユーザーを自由に移動させてしまうと、どこに行けばよいか分からないという課題が提起されました。そこから検討を重ね、結果として「時系列」のシーン移動を作っています。これによりキャンプ場到着から翌朝までの時系列でのHow Toや商品を見ながら、キャンプに対する理解を深められるのではないかと考えています。

加えて、バンライフの車中泊シーンについては、Automotive Japanに協力をいただきました。それによって、実際に販売している車両をPhotoVRで撮りつつ、商品を合成することで社内の広さやランタンの明るみなどを感じ取っていただけます。

▼「バンライフ」内VR空間

～マガジンハウスとのコラボレーション秘話～

マガジンハウスとのコラボは、別の案件でもともとお話をしていたことがきっかけでした。当時、お話をする中で、コノキューのショールームにて5G技術やXRサービスのデモをご体験いただいたところから始まっています。

両社の持つ強みを持ち寄って何か新しいことができないかという議論を進める中で、我々が構想していたVRメディアというサービスの技術と、マガジンハウスの強み・魅力であるコンテンツ企画力・発信力を掛け合わせることで、新しいメディアを生み出すことが出来るのではないか、という話になりました。その会話から「学び」の場というアイデアが生まれてきたところに、多様なテーマを取り扱う4誌がコラボレーションするという幅広さを合わせて、「人生を豊かにするヒントを学べる場」をテーマとした学校、がコンセプトになっています。

コンセプトを構想するなかで、「実際に学校をつくっているように見せて実はバーチャルだった、というようなストーリー性を持たせたい」というアイデアなど、マガジンハウスからのご提案はコノキューにとって非常に学びが多いものばかりでした。弊社のみの視点ですとバーチャル空間を提供すること自体が前提のようになってしまっていますが、よりユーザーにワクワクしてもらうためには、バーチャルな世界に入るまでのストーリーや意味を付与することも大事な要素になるのだと感じました。

空間の設計についても、建築家の谷尻誠さまのご提案により、画像生成AIを使用して「言葉を空間に翻訳する」という新たな手法に挑戦しています。今回の学校のコンセプトを支えるキーワードを入力し、そこから出力された空間イメージの画像を元に空間が設計されました

▼学校のコンセプトを支えるキーワード

▼出力された空間イメージ画像から設計された3つの空間

【3】ついにリリースされた「360Media」。今後の展望

チーム内の開発、そしてパートナーによる協力を経て、2023年4月25日に「360Media」がリリースされました。

今回、ユーザーのみなさまに楽しんでもらう空間やコンテンツを作成しました。しかし、今後は「360Media」に訪れる生活者と企業の顧客同士がリアル空間と同様に交流しながら、気軽に買い物できる場が提供できるような機能を開発していきたいと考えています。

3Dだからこそ体験できるワクワクできる場を提供し、より多くの方に「360Media」に訪れてもらいたいと考えております。ぜひ、今後ともコノキューにご期待ください。

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