カフェやレストラン、ホテルを全国で展開する株式会社バルニバービ。「人通りが少ない」「駅から離れている」など飲食店にとっては好立地といえないいわゆるバッドロケーションでお客さまに愛される人気店を生み続ける同社が、現在特に力を入れているのが「食から始める地方創再生プロジェクト」です。
なかでも、淡路島の「Frogs FARM ATMOSPHERE」や出雲市の「WINDY FARM ATMOSPHERE」などの大規模複合施設は、食を土台にその土地の潜在的な魅力を引き出し、大きな注目を集めています。
こうした枠にとらわれないプロジェクトを支える同社の広報PR活動にも関心が寄せられる中、本記事では、株式会社バルニバービで広報PRを務める福地恵理さんに、広報PR活動や企画を考える際に大切にしていることをお話いただきました。
株式会社バルニバービ(大阪府大阪市):最新のプレスリリースはこちら
株式会社バルニバービ コミュニケーションディレクター 広報・情報学修士(専門職)
学生時代からフリーランスでレストランサービスに携わり、さまざまな飲食店でのホールサービス、レセプショニストとしての経験を経て、同社に2010年入社。代表秘書と広報を兼務し、2015年同社上場後はIRも包含した企業広報担当としてコミュニケーション企画など幅広く手掛ける。2019年3月、日本初の広報専門の大学院を修了。
広報PRの役割はお店の課題を解決すること
──まず、バルニバービさんの広報PR体制を教えていただけますか。
実は、バルニバービに「広報部」は存在せず、会社として「広報」と名乗っている者が私を含めて2名います。
私はもともと創業社長(現会長)の秘書からキャリアがスタートし、店舗オープンのたびに取材を受けているうちに広報の役割を担うようになりました。会社が上場したタイミングからはIRも兼任し、管理本部所属ですが、企画本部や営業部など部署をまたいで仕事をしています。
お店の課題を解決することが広報PRの役割だと思っていて。店舗の特徴や強みをどのようにいかしながら課題解決につなげていけるかをいつも考えています。
客観的な視点を持ち現場に寄り添う
──飲食店を全国展開されていますが、それぞれのお店の広報PR活動を「こうしよう」と決める際、福地さん、店舗どちらから話が挙がることが多いのでしょうか。
スタッフの日報に目を通して、うまくいっていないところや課題に感じる部分を私から声をかけることもありますし、お店のほうから「こういうことをやってみたいです」と相談が来ることもあります。
──各店舗の日報にも目を通すんですね。
全店舗ではありませんが、継続して日報を読んでいるからこそ、進んでいない部分や違和感を感じることができます。あとは、実際にお店へ行って、「元気?」と声をかけながら困っていることを聞き出すようにしていますね。
──関西地方、中国地方を行き来されているとおっしゃっていましたね。
飲食店の業務は、シンプルにいえばお客さまを席へご案内し、オーダーをとり、料理やサービスを提供しお見送りする。どうしても同じことの繰り返しに見えるのですが、その中での変化や、いつもと違う雰囲気や違和感みたいなものは、実際にお店に行くからこそ感じるものもあるんです。
──お店からの発案はどのように進めているのでしょうか。
お店からの相談については、気をつけていることがあります。私が何をしている人かわからない状態では、相談もできないですし、何を聞いていいのかわからないと思うので、私自身を「困ったことを解決してくれる人」と認識してもらえるように地盤づくりをしてきました。
大切なのは現場から「こういうことがやりたい」という意見が出ること。ただトップダウンでやるだけではお客さまに魅力を伝えることはできません。
働いている人の発案を大事にしたうえで、具体的な形にするように進めています。
私から「やってください」とは一切言わず、現場から出たアイデアに対して「本当にやりたいのか、目的は何か」「自分でお金を払うか、自分の家族に自信を持っておすすめできるものか」といった質問をしながらスタッフとお客さまそれぞれの目線でみながらプランをつくっていく。アドバイスするのが私の役割のひとつだと思っています。
──お店からプレスリリース配信の希望が上がることもありますか。
お店からプレスリリースの希望があったときに大切にしているのも客観的な視点です。「これって、本当にプレスリリースを出す価値はありますか?」と、対話を重ねます。
私たちの会社は、親会社であるバルニバービの下に子会社が12社あり、異なるブランドを運営していて、すべて合わせると95店舗(2023年12月末時点)あるんです。「GARB」という屋号のついたレストランは12店舗ありますが、内装もメニューもそれぞれ異なります。お店ごとに広報PRの打ち出し方を変えるのはもちろん、プレスリリースがよいのか、それ以外がよいのか、その店舗の課題などをしっかり見極めて施策を考えていますね。
トレンドでなく、現場の「やってみたい」を重視
──メニューやキャンペーンなどを考えるときは、「広まる」ことを想定した商品開発など、PR視点で考えることが多いのでしょうか。
店とお客さまをつなげるという意味ではPR視点ですね。
バルニバービには「食を通してなりたい自分になる」という理念があって、働いている人たちは、自分のやりたいことや出したいメニューなどを提供することで、お客さまに喜んでほしいと考えている人たちです。もっと美味しい料理をお客さまに届けたい、でもそれをどうやって届けたらいいのかわからない。私は、そういう現場の人たちの「伝えたい」をサポートしています。
また、トレンドを追うことは基本的にしません。もちろん「〇〇の日」といった記念日や「クリスマス」などのイベントに合わせたプレスリリースを配信することはありますが、普段の商品開発は、自分たちが「やりたい」という熱量や商品に対する愛情を大切にして、そこに込められた背景や思いなどを聞き出すことに時間をかけています。
──飲食店の方にお話を伺うと、新メニューはつくっているもののニュース性を見出すことが難しいと聞きます。福地さんが工夫されている点を教えていただけますでしょうか。
見た目が斬新でSNS映えするメニューもいいですが、それだけではないと考えています。むしろバルニバービはそういうことがあまり得意ではない会社なんですよ。それよりは、パティシエが主役となる舞台をつくりたいスタッフの思いや声を商品を通して伝えていく、それはピッツァや一杯の珈琲でも同じです。彼らは自分自身に挑戦して新しいものをつくり続けています。「新しい」の定義が違うのかなと思います。
──バルニバービの現場の方々は、「これをやりたい」という思いが強く、それを形にしていくことが多いのでしょうか。
「流行らせよう」という思いはないけれど、「私たちなりのトレンド、俗にいうブームをつくりたい」という思いは強いかもしれませんね。
そういう中で、私は現場から上がってきたものを、第三者的視点で見るようにしています。例えば「美味しい・美味しくない」は人それぞれ好き嫌いもあるしものすごく主観的ですよね。だからこそ、背景にあるこだわりや思いを聞き出して発信していくようにしています。
以前、福岡県糸島市の自治体から、糸島の食材を使って何かをしてほしいという依頼をいただき、糸島の食材だけを使った「一日糸島レストラン」を紀尾井町にあるレストランで開催したことがあります。当日は、生産者の方々にお越しいただき、食材への思いを語ってもらい、その映像を流しました。食事を楽しみながらメモを取るお客さまもいて、お客さまの理解も深まったと思いますし、シェフにとっても生産者の方にとっても新しい発見があった場になったと思います。
──新店オープンや新メニューは発信以外に注力していることはありますか。
プレスリリースは「何のために出すのか」がとても大切です。数年前に会長や社長から「バルニバービ」という社名をもっと出したいという話がありました。これも何を目的にするか、ですが、ちょうど淡路や出雲でのプロジェクトなど飲食の枠を超えて農業や宿泊、地域コミュニティの創出など会社として求める人材も広がってきたタイミングでした。それならば社名をもっと出していくべきではないか、ならば経済系のメディアにも出していこう、となりました。
組織の成長過程に合わせた課題があって、それを解決していくのが広報PRです。プレスリリースにおいても、その本質的な部分がとても重要だと思っています。表に書いてあることに惑わされず、視点を変えることが重要です。
バルニバービの事例から見るプレスリリースのポイント
事例1. プレスリリース、記者会見、SNSを関連付ける
──ここからはプレスリリースについてお伺いさせてください。これまでに、どのような配信で反響がありましたか。
島根県出雲市を舞台にした、食から始まる地方創再生プロジェクト「WINDY FARM ATMOSPHERE」のプレスリリースは、社内外からとても評判がよかったです。
4月の記者会見に焦点を当て、3月23日にPR TIMESからオープン告知のプレスリリースと、併せて記者発表会のお知らせを各メディアに配信。島根県のローカルテレビ局や新聞社など、ほぼ全媒体を回って地元のメディア開拓もしました。その結果、記者会見には50社ほどが集まっていただきました。当日はその日のために制作した動画を流しながらのローンチイベントをハイブリッド開催しました。
また、「地方創再生」をテーマに、制作会社を通してテレビ東京系列の経済報道番組WBS(ワールドビジネスサテライト)にも、情報提供しながら出雲の当該プロジェクトだけでなく淡路の地方創再生プロジェクトも取材につながりました。
まずはWeb上で情報をたくさん見てもらい、記者会見やお披露目の場で生配信。事後報告としてYouTubeやSNSでもアップしパブリシティ掲載を獲得する。すべてを関連づけてうまくいった事例だと思います。
参考:バルニバービ、島根県西海岸において食から始まる地方創再生プロジェクト「WINDY FARM ATMOSPHERE」 を始動。第一期となるレストラン、ホテル、パーキングエリアが5/1(月)正午オープン
また、一度のニュースで終わらせず、オープン日は記者発表の様子と合わせて発信しています。
参考:【バルニバービ、食から始まる地方創再生プロジェクト】島根県出雲市西海岸にレストラン、ホテル、パーキングエリアからなる「WINDY FARM ATMOSPHERE」 が5月1日(月)オープン
事例2. 写真のインパクトが足りないときは、GIFを使って魅力を伝える
──写真がきれいなのはもちろん、トップにGIF画像を使用している工夫も気になりました。
実は、ネタに困ったときや1枚の写真だけでは魅力が伝わらないな、というときに複数の写真を使用してGIFを使っているんです。私は普段からプレスリリースにおける写真の重要性を社内でも伝えていますが、フライヤーなど店舗販促用の写真しかないときはGIFを使って少しでもイメージが伝わるようにしています。
参考:【薪で火を灯し、燻香までまとわせた特製グリラーが最高の肉をご用意】東京・渋谷 ミヤシタパーク内レストラン「NEW LIGHT」が12/23(土)~25(月)期間限定のクリスマスコースの予約受付スタート
PickUp!メディアリストの最大活用
──福地さんは、プレスリリース配信の際にメディアリストを活用されているそうですね。
コロナ禍以降はリモートワークの方も増えて、新規の関係性がつくりにくくなっています。以前のように突撃で訪問というのがしにくくなったときに、PR TIMESの豊富なメディアリストはすごく活用できると思ったんです。
そこで、PR TIMESの担当者にも相談しながらメディアリストを細かく分類しました。「IR」「レストラン(関西)」「島根」「地方創生・SDGs」「スイーツ」など20以上に分かれています。インポートのリストも、その時々に合わせて全部変えているんですよ。
メディアリストをつくるのは地味で時間がかかる作業ですが、優先順位が高く一番大事な作業のひとつだと思っています。
PR TIMESのメディアリストの作成・設定方法についてはこちら:【PR TIMESノウハウ】メディアリストの作成・設定方法
お店のサポーターであり、会社の理念を伝える人
──最後に。今後どのようなことに取り組んでいきたいですか。
「バルニバービ」は、ガリバー旅行記に出てくる島の名前です。その島では日々おかしな研究が行われているのですが、ガリバー旅行記のバルニバービを反面教師に机上の空論ではなく、実体(アナログ)を伴った飲食ビジネスを行うという思いが込められています。私はそれが「固定観念にとらわれず、自分たちなりによいと思えることに取り組む」ことにもつながると考えています。
私が入社した当時と比べて会社の規模は大きくなりましたが、社名に込められた思いや理念は、今でも私たちにとっての共通の指針です。自分の名前に由来があるように、社名にも由来があって、それを大切に継承しつづける多くの仲間がいます。私の仕事は、その思いを伝えていくこと。
そのためにも、自分にできることをどんどん伝えていきたいです。今後も、「お店のサポーターであり、会社の理念を伝える人」として走り続けていきたいと考えています。
バルニバービに学ぶ広報PRのポイント
広報部という専門部署を持たず、部門を超えた多面的なアプローチでさまざまな施策を展開する福地さん。現場の声を大切にすること、プレスリリース配信の心構え、メディアリストの活用方法など、実際に役立つポイントが多数ありました。
- 広報PR担当者はお店のサポーターであり、頼れる存在であることを社内に周知
- トレンドよりも現場の「やってみたい」の思いを重視
- 店舗ごとの特徴と課題を踏まえた企画、広報PR施策
- プレスリリース、記者会見、SNS……すべてを関連付けて一つのニュースを長期の話題に
- 丁寧にメディアリストを作成し届けたい相手にプレスリリースを配信
飲食業界の方はもちろん、BtoC向けの商品・サービスについて発信する担当者や商品開発を担当するメーカーの方にとっても、お仕事を振り返るきっかけになったのではないでしょうか。
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