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地方から全国に広げる広報活動とは?ストーリーを届けるメディアコミュニケーション|PR TIMESカレッジVol.6~分科会~

地元での広報PR活動を行いつつ、商圏を超えて商品やサービスの魅力を伝えるためにはどうするか、という課題は地方発の企業の広報がよく抱える悩みです。愛知県発のグローバル企業であるブラザー工業株式会社も、その課題解決にまさに現在取り組みされています。ブラザー工業株式会社の広報担当の西さんとブラザー販売株式会社の若山さんに、現在実施されている広報活動やその考え方についてオープンにご紹介いただきました。

※5月23日に行われた学びとつながりの広報PRイベント「PR TIMESカレッジ」の分科会でお話いただいた内容をレポートいたします。

ブラザー工業株式会社 CSR&コミュニケーション部 広報チーム 主任

西 恭平(Kyohei Nishi)

1988年愛知県生まれ。2011年ブラザー工業株式会社に入社。商品企画部、財務部を経て、2017年から現職。広報担当として、メディアへの積極的な取材提案によるブラザーグループの露出拡大や、広告宣伝と一体となったメディアミックス活動などに尽力している。

ブラザー販売株式会社 マーケティング推進部 広報グループマネージャー

若山 勝(Masaru Wakayama)

1998年ブラザー販売株式会社に入社。ミシンの直営店、家電量販店、ECなど各販売チャネルの営業部門からデジタルマーケティング、新規事業開発、事業所の管理部門を担当し2021年から現職。広報では社内広報、SDGs推進に注力。

ブラザー工業株式会社(愛知県名古屋市):最新のプレスリリースはこちら

地元メディアとのコミュニケーション

1908年に名古屋で創業したブラザー工業株式会社は、地元名古屋を中心に記者クラブへの投げかけなどをはじめとした広報活動を行ってきました。まずは、これまでの活動で築いてきた地元メディアとのリレーションについてご紹介いただきました。

現在でもブラザーの活動は東海エリアのメディアでよくニュースで取り上げられています。直近でも、東山動物園とは、昨年新しくパートナー協定を締結し地元のメディアを招待し大きな発表会を実施。当日のニュースや翌日の新聞でも大きく掲載されたそうです。

また、それ以外にもコロナ禍でマスク不足が起こった際には、家庭用ミシンを使ってマスクを作る「手作りマスクプロジェクト」を実施し、社員だけではなく社長自らがミシンでマスクを作るなどの活動を通して、地元の各メディアで取り上げられ話題になりました。

このように、地元のメディアとのコミュニケーションや露出についてはある程度形ができている中でも、見えてきた課題があったと西さんは語ってくれました。

ミシンと佐々木氏、マスク籠
画像:ブラザー工業株式会社より提供

地方から全国へ広げるメディアコミュニケーションへの挑戦

地元メディアでの取り上げがある一方で、採用活動やステークホルダーの視点からも東京や全国での認知を広げていく必要があるということで、ブラザーとして全国へ広げるメディアコミュニケーションへの挑戦が始まりました。

当時の課題は具体的に2つあったそうです。ひとつは東海3県以外での認知の低さ。ブラザーがどんな事業を展開していてどういった会社か、そういった認知が東海エリア以外では低いことが課題として挙がりました。東京の大学へ通っていた西さん自身も肌で実感していたとのこと。

さらにもうひとつは、若年層における認知の低さと一定の年齢層以上を中心にブラザーはミシンの会社であるという認知が強いことで、さまざまな事業を推進していても、どうしてもミシンのイメージが先行してしまっていました。

これらを解決するためにブラザーはローカルのメディアだけではなく、より広く全国展開するメディアにアプローチすることを決めます。

アプローチにあたっては広告換算額を1.5倍にすることと、「取材提案」による全国放送TV番組での放映実現を目標として設定しました。

広告換算額は2018年から2021年の3カ年の計画として設定し、掲載されたメディアの規模も含めて結果につながるという点で、掲載数ではなく広告換算額を目標においたとのこと。また、広告換算額でみても全国に広く伝わるという点においても、テレビメディアへの積極的な取材提案を行っていくことも合わせて目標においていました。

実際に新たな広報上の目標を立て、全国メディアへのアプローチを強化したブラザー。目標の達成に向けて実施してきた活動については、大きく分けて次の3つの軸でご紹介いただきました。

①積極的な情報発信

西さんは「言うまでもなく、我々から情報量を増やさないといけない」と語り、メディアに向けた情報発信量を意識的に増やしたそうです。

プレスリリースはもちろん配信を続けて行く中で、それ以外の情報発信方法を考えました。ブラザーにとってプレスリリースは、HPに掲載し記者クラブへの投げかけをするものという定義づけでしたが、そこまでの大きな情報ではないが、メディアにはお伝えしたい「ネタ」の発信も増やしていきました。

PR TIMESでのプレスリリースやニュースレターとしての配信などの場を活用して、これまでの定義に縛られず、より多くの企業の活動をメディアの方へお届けするようになっていきました。地元名古屋のテレビ局のみに送っていたプレスリリースを、東京のテレビ局にもすべて送るようにし、テレビ局へのコミュニケーションを強化していきました。

また、配信量を増やしながらも一方通行のコミュニケーションにならないように「PR TIMES STORY」を活用した新たな取り組みにも挑戦しました。

企業の想いや裏側を企業の主語で発信することのできるサービスで、ブラザーの事業やサービスの裏の面白いエピソードやこだわりなどを深く紹介することで、メディアの方も取材イメージがわきやすくなります。実際にこのSTORY発信からも取材依頼があり、掲載件数を伸ばすことにも寄与したそうです。

それと並行する形で、世間の話題や掲載傾向をブラザーの中で分析し、ブラザーの活動に世の中の話題の切り口をつけて発信することで、メディアの関心事から逆算してネタを提供していくようになりました。

ほかにも、取材や問い合わせが入ったメディアの方としっかり関係をもっておくことや、予算によっては計画的な出稿も行い、さまざまな確度のアプローチを実施していきました。

②積極的かつ効果的な取材提案

情報発信と合わせて、メディアから取材を受けるための情報提供や提案に関しても新たに取り組みをはじめました。

効果的な提案に向けては、表面的ではなくその取り組みの背景にある活動や企業文化など、さまざまな切り口からメディアにアプローチするようになったと西さんは話します。

それが実を結んだのが、ブラザー社内における「AI導入」でした。最初にメディアの方に話をしたときにはあまり関心をいただけなかったそうですが、そこでブラザーのAI導入にどんなオリジナリティがあるのかという点を洗い出してメディアに伝えていきました。

まずは、社内の若手が中心となって成し遂げたことが特徴のひとつとしてありました。外部の力を借りながら進めていく企業が多い中で、若手社員の熱い想いで実現したことは今回のプロジェクトの中で切り口になるストーリーです。

加えて、このように若い社員でも活躍ができること、自分たちの力で作ってしまおうというチャレンジ精神はブラザーの企業分化でもあり、それもオリジナルの要素だったそうです。

こういった切り口を組み合わせることで、ブラザーの「AI導入」は大手の経済雑誌の特集記事の冒頭で紹介されました。さらに特集はブラザーの取り組みありきで決まったとのことで、広報PRの成果としても大きなものにつながった事例だと言えます。

③メディアとの関係構築

コロナ禍でメディアの方と直接お会いする機会が制限されていく中で、改めてあらゆる場面を逃さずに関係構築をしていくための取り組みも実施。

メディアの方を招待した記者向けの勉強会やイベントも開催していくことの重要性についてもお話してくださいました。

国内販売を担当するブラザー販売の若山さんは、記者向け展示なども開催しているとのこと。メディアの方との個別のリレーションも重要視し、広くお知らせするプレスリリースの一方で個別でのコンタクトも実施し、どういった方がどのように反応してくださるかなども確認し、次のコミュニケーションに活かしています。

メディアの方の反応から個別での関係構築をしっかりしていくことで、結果的に求められている情報を提供することができ、展示会にご参加いただけたり、掲載にもつながったりしていくということなのでしょう。

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3カ年計画の挑戦の結果と今後

実現できたことと見えてきた課題

2018年より地方から全国へのメディアコミュニケーションに向けて「広告換算額の増加」と「取材提案」の2つの目標と、それを実現するための「積極的な情報発信」と「積極的かつ効果的な取材提案」、「メディアとの関係構築」3つの軸で活動してきたブラザー。その取り組みの結果について振り返っていただきました。

掲げていた2つの目標のうち広告換算額の1.5倍という部分は達成できたそうで、プレスリリースをはじめとした情報発信回数の増加もあり、全国メディアへの露出数も計画通り伸びてきて目標達成につながったとのことでした。

ただ一方で、取材提案によるTV放映の実現が難しかったそうで、それが実現するということはなかったとのこと。

西さんは、テレビでの取材はアウトオブコントロールなところがあり、それが取り上げてもらえるかどうかはその時のほかのニュースとの兼ね合いや企業知名度の問題がやはりあるので、難しい部分が大きかったと振り返ります。

それでも、事業やサービスの特徴を捉えて発信の数をストーリーを立てて提案していけば、取り上げられる可能性は確実に増えていくと語り、回数とストーリー性の重要さを伝えてくださいました。

発信を続けたことで、直近では、カラオケルームで家庭用のミシンを貸出するという施策がテレビで大きく取り上げられました。当初そこまで大きな話題になると思ってなかったものの、SNS投稿をきっかけに大きな露出につながっていきました。こういった実体験を通して、積極的な情報発信の大切さに気づかされたとのことです。

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体制を整えてPRの最大化へ

ブラザーは2030年までの中長期ビジョンとして、新しいブラザーのBtoB領域を伸ばしていくという事業戦略、そしてサステナビリティの取り組みを強化していくということを発表しており、ブラザーが社会と地球環境のために責任を果たしていくというようなメッセージも含めて今後は発信に取り組んでいきます。

その活動にあたっては、これまでの広報部門単体での活動ではなく、広告宣伝のチームやブラザーが運営する展示施設の「ブラザーミュージアム」といった機能とも連携して露出の最大化、PRの最大化を図っていきたいと話してくださいました。

さらに現在ブラザーでは危機管理広報体制の強化も進めていて、攻めと守りのバランスも整えて次の目標に向けて活動を始めているという未来に向けたお言葉でまとめてくださいました。

質疑応答|ブラザー工業 西氏/ブラザー販売 若山氏

質疑応答の時間では、メディアへの能動的なコミュニケーションを増やして行く中で生まれる、複数の事業を展開している企業ならではのお悩みについての議論が生まれていました。

実際に売上があって会社としても推していきたいサービスとメディアの方から関心事項が違ってしまう場合はどのように対応していますか?

ブラザーも同じで新商品が発売されましたというものより、ミシンやカラオケの話のほうが取り上げられやすいという状況があります。それに対して、メディアの方に身近なものでないものも身近に感じていただくための施策を行っています。こういった取り組みによって専門誌だけではなく一般の新聞などでもお取り上げいただきました。専門的なものでも、身近に感じていただけるための工夫と提案で、取材のイメージを持っていただけるということがあるのかもしれません。

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分科会まとめ|ブラザー工業 西氏/ブラザー販売 若山氏

今回の分科会は、本イベントの中でも唯一のグループ登壇で、ブラザー工業の西さんにグループ全体のお話をご紹介し、ブラザー販売の視点を若山さんに加えていただく形で会が進行していきました。

最後の締めくくりとしてお二人がお話された内容は偶然にも同じでした。全国に向けた広い活動でありながらも、大切なことは「社内の活動やメンバー、そのストーリーなど社内にしっかりと目を向ける」ということ。社内で連携して情報の収集も発信も広報部門だけに留まらない形で実施し、そのうえで内容の大小を問わず、その行動や想いをしっかり全国的に関心を集める切り口をつけて伝えていくことで広がりをつくっていくことができるということでした。

地方から全国へ。メディアのコミュニケーションを広げていくことは大変なことではありますが、発信の数とその企業ならではのストーリーを整理することができれば、企業や団体のある場所に関わらず日本全国に向けてその行動を届けていくことができるのではないでしょうか。

PR TIMESカレッジの最新情報は、公式ページをご確認ください。
https://prtimes.jp/college/

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この記事のライター

髙木 健志

髙木 健志

出版社でライフスタイル・タウン系の雑誌とWEBマガジンの企画・営業・編集・ライティングを担当し、メディアやイベントを通した情報発信事業を様々な形で実施。現在は、PR TIMESのお客様により立体的な情報発信やPR活動をしていただくための伴走者として、PRパートナー事業部にてプレスリリースからPRの企画、進行管理のサポートなどを行っています。

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