2018年に設立し、設立5年目に入った株式会社クラス(CLAS Inc.)。コロナ禍のリモートワーク需要やおうち時間の増加も寄与し大きく売上を伸ばしている2020年、ひとり目のインハウス広報として入社したのが小林美穂さんでした。
前職では、入社当時社員15名から200名の組織に成長したベンチャー企業の広報の立ち上げも経験。小林さんならではのひとり広報担当、広報立ち上げのエピソードも交えた分科会をレポートします。
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取材を呼び込む広報活動とは?
取材を呼び込む広報活動とは、広報の体制を整え、課題の洗い出しとそれに対するアプローチ、発信する情報は高いクオリティを担保することで実現しているそうです。
小林さんは、面接の際にCLASのPR案を考え持参、その場でプレゼン。私だったら「こんなふうにPRしたい」「こんなふうに訴求できる」と、どんどん出てきた想いやアイデアを社長に伝えたそうです。入社前からの熱い想いも現在の広報活動につながっているのでしょう。
広報の体制を整える
組織体制は企業フェーズに応じた体制変更が検討されますが、現在のCLASは法人向けマーケティングの各分野のスペシャリストが代表直下で組織を立ち上げるために活動しており、広報を担う小林さんはいわゆる「ひとり広報」。B向け、C向けのサービス広報をメインに、資金調達時はコーポレート広報も行い、人事と連携して採用広報にも着手したところだそうです。
CLASのPRが抱える課題とそれに対するアプローチ
サブスクリプション、いわゆるサブスクですが、CLASの課題は家具のサブスクの認知でした。確かに動画や音楽配信、電子書籍のサブスクは広まっていますし、最近ではお花や季節に応じた食品なども利用者が増えています。そんな中、小林さんが投影した家具・家電のサブスクについてのアンケート結果では、家具・家電のサブスクを知っている、と回答した人の割合はたった約17%でした。
このような状況を踏まえ、掲げているCLAS広報のミッション。
- 「“暮らす”を自由に、軽やかに」CLASのビジョン浸透
- 循環型の「ものを捨てない社会づくり」SDGs12「つくる責任 つかう責任」に貢献
- 勢いのあるベンチャー、「経営者」としての代表・久保の認知向上
このミッションのもと、課題の洗い出しとアプローチを進めているそうです。
家具・家電を“借りる”ということに対する認知
前述の通り、認知の低さが課題として挙げられる同社サービス。まさに、ミッション1.「“暮らす”を自由に、軽やかに」CLASのビジョン浸透は、言い換えると“所有しない利用”という新しい文化の促進が必要と語る小林さん。ここで大切にしているのは、CLASは買うことも否定せず、選択肢のひとつとして借りるという提案をすることだそうです。
また、京都市をはじめとした自治体と連携して取り組むなど、精力的にこの提案を進めています。定期的に認知度調査を実施することで、実態を常に把握し、取り組みが合っているのか、進捗はどうかという点もポイントでしょう。これまで行ってきていない企業は参考にしたいものです。
他人が使った家具・家電を使うことに対する抵抗
2つ目の課題は他人が使った家具・家電を使うことに対する抵抗が挙げられました。動画や音楽配信、電子書籍などの無形商材やお花や季節に応じた食品など消耗品にはない課題です。
ここで小林さんが注目したのは、人の考え方の変化でした。“SDGs”というキーワード、ほとんどの方が一度は耳にし、多くの方が意識しているでしょう。CLASのサービスに対するアンケートでは、登録者の約4割が、CLASの目指す「“ものを捨てない”社会づくり」への期待しているという結果がでたそうです。
同社のサービス特性を人々が注目しやすいよう、「循環型でサステナブルなサービス」「シェアリングサービス」「エシカル商品」など、SDGs的な側面での訴求。他人が使った家具・家電を使うことに対する抵抗がある場合も、“ものを捨てない”を意識している人であれば十分に訴求されているでしょう。
家具・家電のサブスク=安く借りられる/買うより安い、に対する期待
サブスクというキーワードに対して、“安く借りられる”“買うより安い”というイメージを持つ人も多く、それは利用者の期待です。そのことを認識したうえで広報としては、お得感を全面に出さない。ここがタイトル「広告や宣伝とは異なる」の大きなポイントになっています。
広報PRで大切にしているのは、「価格面の訴求ではなく、サービスを通してどんな社会を実現したいのか」を伝えること。事例として2の状態を創ることだと説明しました。
- ダイニングチェアが欲しい → 買えるお店を調べる
- ダイニングチェアが欲しい → 買えるお店と借りられるお店を調べる
間違いなく、調べるという行動にも至らないし、調べないことには安いかどうかは関係ありません。ここでいう、借りられるお店を調べるという想起してもらうために、認知してもらうこと、これが小林さんが言う広報です。
発信する情報は高いクオリティを担保
認知を高めるためのこだわりと同じく、徹底されていたのが発信する情報に対するクオリティ。重視すべきと理解しながらも、対応できていないこともあるのではないでしょうか。具体的な対応方法も含む、すぐに参考にできる内容です。
ターゲットメディアの選定
CLASが発信する事例には、資金調達、ベビー&キッズ取り扱い開始、SDGsなど、いくつかの情報パターンがあり、これはどの企業にも共通します。しかし、これらの情報はメディアによって興味がある情報とそうでないもの、掲載したい情報に応じてメディア選定し、どの媒体に掲載したいか狙って情報発信しています。
また、インターネットの検索やPR手帳を活用し片っ端から問い合わせするなど、地道なアプローチを語ってくれました。自社のメディアリストは一から作成し、PR TIMESのメディアリストも発信する内容に応じて複数パターン用意しているとのこと。同様に、メディア向け資料も複数パターン用意しているそうです。
メディアリストを分けることで、その情報を本当に必要としているメディアに届けることができるため、必ず実施したいものです。
メディアに届けるためのキーワードを採用
ここでも認知がカギとなります。テレワーク/リモートワーク/在宅勤務、ウィズコロナ/withコロナ、サステナブル/サスティナブル……同じことを表現する際にもより検索にヒットするよう、検索数の多いキーワードにこだわります。
目に留まる画像を設定
CLASではプレスリリースのメイン画像のクオリティには特にこだわり、社内のデザイナーが制作しているとのこと。各配信ですべて制作してもらうのは難しくても何パターンか用意しておき、小林さんがロゴのみ差し替えるなど、工数とクオリティの追及をバランスよく行っていることがわかりました。
また、画質やデザインのこだわりだけでなく、プレスリリースがSNSでシェアされることが当たり前になっているため、SNSシェア時の見栄えにもこだわり、必ず決めたサイズで制作。せっかくニュース性が高い情報発信なのに、ロゴが切れてシェアされている投稿を見てはもったいないな……と感じているそうです。実はそんな小林さんも同じ失敗をしたことがあり、その経験が活かされているとのことです。
イメージが伝わる画像はもちろん、ギャップを見せて絵的に面白いというこだわりも過去の配信事例を投影し説明する小林さんからは“特にこだわっている”という言葉に合った通り、熱い想いを感じました。
質疑応答|株式会社クラス 小林氏
社内コミュニケーションが大切ということがわかりました。気を付けていることなどありますでしょうか。
各チームや、それぞれのポジションで働く人の仕事についてできる限り理解するようにしています。そして、必ずリスペクトの気持ちを忘れずにいることで、お互いに良い情報交換ができるようにしています。
「お得」から「最適空間」「SDGs」に変えたタイミング、なぜ変えようと思ったのでしょうか。
お得系の取材が増えた際に、自社が目指す姿と少しずれているように感じ、なにをいちばん訴求したいのか、どんな社会を実現したいのかを社内で会話しました。そのときに、元々自由で軽やかな「最適空間」の提供や、家具・家電を捨てない「SDGs」に通ずるサービスのため、訴求ポイントを切り替えました。
メディアに対して問い合わせページから連絡する際、どのような内容を送っているのでしょうか。
会社の紹介、サービス説明など内容は突飛なものではないですが、相手に合わせて内容を変えて、テンプレ化はしないようにしています。テンプレ化すると、対象のメディアに伝えたいことが伝わらない、どこかでひずみが出てしまうと思うんですよね。そのメディアが取り上げている記事を見て、どんな情報なら興味を持っていただけるか、理解するようにしています。
メディアリストはPR TIMESの一斉配信だけか、手紙や個別メールなのか運用を教えてください。
手紙は送っていません。毎回ではないですが、リリース内容に応じてメッセージを変えて、メールやSNSのDMで個別に連絡もしています。たまに「こういう情報があったら興味ありますか?」など相談ベースでご連絡することもありますね。
地方自治体との協業、地方ならではのPRのテクニックはありますでしょうか。
地方自治体との協業はアライアンス担当が主体で対応していますが、広報としてはプレスリリース発表も1度ではなく2段3段まで用意しています。また、先日は代表が地方のイベントに出演したりと、密な連携や関係性構築を心がけています。PRのテクニックではないですが、私の方でできるご提案をさまざまな角度で行い、自治体の方も興味を持ってもらえるよう努めています。
取材問い合わせについて、大手の新聞社やテレビに対するアプローチの工夫はありますでしょうか。
ECサイトというサービス性質上、相性が良いということもあり、主にWebメディアを中心にアプローチしています。大手の新聞社やテレビに対しては、そこまで積極的にアプローチしているわけではないですが、リサーチャーの方がWebニュースを見て問い合わせてくれて、テレビ番組に取り上げられるケースもありました。
広報活動の効果測定はどのように設定していますでしょうか。
事業計画から算出して数値目標を設定し、社名(クラス)とサービス名(CLAS)の指名検索数をずっと追っています。メディアの露出後はやはり指名検索が増えるので掲載前後の推移を調べたり、SNSでどのようにシェアされているか反響も見ています。
また、プレスリリースのPV数、認知度調査での家具・家電のサブスク=CLASといった純粋想起率、広報経由での問い合わせ件数など、その時々の事業状況に応じて設定しています。
プレスリリース配信可否はどのようにしているのでしょうか。
アンテナを立てて全員参加の週次のオンラインミーティングやSlackで社内の情報をキャッチアップし、現場にヒアリングした上で、タイミング、話題性、ニュース性などの社会的インパクトを考えて配信可否を判断しています。異業種とのアライアンスは事前に相手先の広報と打ち合わせをした上で、同時配信する日程を決めています。また、設立日や「5月30日(ごみゼロの日)」などの記念日に合わせて自社の調査リリースを配信するなど、工夫しています。
分科会まとめ|株式会社クラス 小林氏
スタートアップということもあり、日々アップデートする情報をインプットしている小林さん。会社の誰よりも情報を早くインプットし、理解するように努めているそうです。
この分科会は、プライム市場上場企業、創業100年以上の企業もいればベンチャー、スタートアップの企業と幅広い参加者が集っていましたが、特にスタートアップ企業、「ひとり広報」の方はタイトルにある「取材を呼び込む広報活動」だけでなく、組織体制や広報業務に対する考え方まで参考になったのではないでしょうか。
また、今後は上場に向けた動き、アフターコロナを見据えた対応、サービス提供地域拡大した際の地方メディアアプローチが大きな軸になってくると最後に語ってくれました。
これから同社がますます成長し、その過程で広報がどう変化していくのか。また、お話を聞けるのが楽しみです。
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