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「毎週100超の新商品を生む」ヒットメーカーファミマの企画|PR TIMESカレッジ Vol.8~第3部~

話題の商品や独創的なキャンペーンを続々と展開するファミリーマート。ダイバーシティなど社会性のあるテーマにも挑み、ニュースになる施策を次々に生み出しています。生活者の心をつかむヒット商品やキャンペーン企画を支える商品企画、マーケティング・広報PR活動はどのようなものなのでしょうか。

PR TIMESでは、11月16日に学びとつながりの広報・PR担当者向けコミュニティイベント「PR TIMESカレッジ」を開催。本記事では、第3部、株式会社ファミリーマートの山岡美奈子氏、橋本剛氏、大谷萌氏による、話題を集めたキャンペーンの広報PR活動とその考え方についてのトークセッションをレポートします。

株式会社ファミリーマート 商品本部FF・スイーツ部副部長

山岡美奈子(Yamaoka Minako)

1996年am/pmジャパン入社。吸収合併に伴い、2010年ファミリーマートに入社し、サラダ、サンドイッチなどの中食の商品開発を経て、2022年より現職。「お客さまから選ばれる」コンビニエンスストアを目指し、スイーツやパンを中心に話題性のある商品開発に取り組んでいる。

株式会社ファミリーマート マーケティング本部メディア&プロモーション改革推進部部長

橋本 剛(Hashimoto Tsuyoshi)

コンビニエンスストアスーパーバイザー、人事、商品開発、新規事業開発等を経て、2022年より現職。自社課題の解決と「ターゲット顧客の知覚を刺激し行動を変えること」を目的に、店頭販促ツールの開発・制作、TVCM制作、SNS・PR企画の立案、その他媒体活用等、全国約16,500店のオウンドメディアを軸に、アーンド・ペイドメディアを活用した統合マーケティングを展開。

株式会社ファミリーマート マーケティング本部メディア&プロモーション改革推進部 メディアグループ

大谷 萌(Otani Moe)

山口県出身。早稲田大学を卒業後、ファミリーマートの関連会社に入社。ファミリーマートに転籍後、チケットサービスなどを担当し、2020年よりマーケティング本部でPR活動を担当している。

市場の成長と生活者の関心を巧みにとらえた「ファミリ〜にゃ〜ト大作戦!」

2023年2月22日の「ねこの日」に合わせて実施した、ねこをテーマにしたキャンペーン「ファミリ〜にゃ〜ト大作戦!」は、SNSを中心に多くの注目を集めました。セッションの前半では、「ファミリ〜にゃ〜ト大作戦!」の企画について、山岡美奈子さんにお聞きしました。

なぜ「ねこ」なのか?商品展開を決めた3つのポイント

数字の2が6つそろうことから「スーパーねこの日」といわれ、大変な盛り上がりを見せた2022年2月22日。ファミリーマートでもその市場性を見極めるため、ねこをモチーフにした商品「にゃんともおいしいチーズケーキ」を一部地域で発売したところ大きな反響があり、愛猫との写真をSNSにアップするねこ好きの人も多く見られました。

創意工夫をこらした売り場を展開している加盟店もあり、「ねこの日」のさらなる可能性を感じたという山岡さん。ねこについての市場規模や「ねこの日」の市場動向について詳しく分析し、以下の3つの観点から、ねこをテーマにした商品の展開を決めたそうです。

  • ねこにまつわる市場規模の大きさ:ねこの推計飼育頭数は2022年度で約883万匹となっており、同じ2022年度の小学生の数615万人よりも圧倒的に多い
  • ペットに対する支出の増加:2022年度の1世帯あたりの家計におけるペットに対する支出は、2015年度の約141%と年々増加している
  • 「ねこの日」の認知度の高まり:写真展などのイベント開催やねこのグッズ販売、SNSでのトレンド入り、さまざまな企業アカウントが1日限定でねこにちなんだ社名に変更するなど、盛り上がりを見せている

成功のポイントは「参加したくなる仕掛け」

マーケティング部と連携したメディア向け試食会などの広報PR活動にも注力し、多数のメディア掲載を獲得した「ファミリ〜にゃ〜ト大作戦!」。成功のポイントは、「積極的に参加したくなる3つの仕掛け」でした。

1.商品を手に取りたくなる仕掛け:ねこの耳や肉球、しっぽなどをイメージし、店頭で見たときに可愛くクスッと笑えるものや、「ねこ×スイーツ」で癒やされるものを目指し商品を開発。「カフェにゃて(カフェラテ)」や「にゃんとも(なんとも)」など、商品名にもねこを連想する言葉を入れることで遊び心を表現
2.2つ、3つと集めたくなる仕掛け:パッケージデザインに人気の「mofusand」や猫専門イラストレーター「Coony(クーニー)」氏の作品を採用し、バリエーション豊かなデザインで集める楽しみを提供
3.誰かに共有したり話題にしたくなる仕掛け:飼いねこをCoony氏がイラストに描き下ろし、パッケージ化するX(旧Twitter)キャンペーンを実施。3,370件の応募につながった

PR TIMESカレッジ Vol.8 株式会社ファミリーマート01

企業と社会のブリッジを構築するファミマの広報PR

商品やサービスの魅力を発信することはもちろん、企業としての取り組みを世の中に伝えることも広報PRの大切な役割のひとつです。

社会的な文脈の中で企業価値を感じてもらうのと同時に、社会によりよい変化を与えるにはどうしたらよいのか。セッションの後半では、自社の取り組みの発信について、橋本剛さんからお話を伺いました。

企業の取り組みと生活者の関心をつなぐ

これまでさまざまな社会課題に取り組んできていたものの、うまく世の中に発信できていないことを課題に感じていたそうです。

自社の取り組みと世の中を結びつけるには、どのようなことができるのか。その視点に立って考えたのが、「企業と社会のブリッジをつくること」でした。

世の中で今どのような風が吹いているのか、またその風がどのフェーズなのかを探りながら、「企業として地道に取り組んでいること」と「生活者が関心を持っていること」をうまくつないでいきます。

社会課題を起点としたファミマの施策

世の中の動きに対して呼応する企画をタイムリーに展開することで、多くのメディア掲載にもつながっています。

例えば、LGBTQに関する企業の取り組みを測る評価指標「PRIDE指標2023」において、4年連続で最高評価のゴールド賞を受賞。その取り組みを世の中に広く発信するための施策が、東京レインボープライド主催の「プライドウィーク」に合わせ、性の多様性やLGBTQ支援を意味する「レインボーカラー」の商品を期間限定で発売するというものでした。

  • レインボーカラーのファミチキ袋:ファミリーマートの商品の中でも認知度の高い「ファミチキ」の袋を、レインボーカラーで限定販売。単なる商品ではなく、社会的メッセージを伝える手段として活用
  • コンビニエンスウェア レインボーアイテム:LGBTQに賛同しているという個人の意思表明にもつながるようにと、レインボーカラーをあしらったソックスやハンカチを発売。売上の一部はLGBTQの支援団体に寄付した
  • 加盟店要件の見直し:多様性を尊重する姿勢を示すため、加盟店契約を同性パートナーや事実婚も含めて拡大

また、レインボーカラーの商品発売に合わせ、LGBTQに対するメッセージを込めたキービジュアルを展開。社会的なトレンドや顧客のニーズに応えながら、企業と社会とのブリッジをつくることによって、自社の取り組みを目に見える形でより広く世の中に発信することができました。

一方で、「ラインソックス レインボー」の売上の一部をLGBTQの支援団体に寄付することをプレスリリースで発表したものの、具体的な寄付先を明記しなかったために多数の問合せを受けるという出来事も。この取り組みの中での大きな反省点であり、大切な学びでもあったそうです。

PR TIMESカレッジ Vol.8 株式会社ファミリーマート02

広報PR担当者からの質問に回答

ここでは、講演後の質疑応答と当日お時間の関係でお話いただけなかったご参加者の方からの事前質問に対する回答をご紹介します。

──社内で意見が割れた際に合意を得るために必要なことは何ですか。

橋本さん(以下、敬称略):課題の起点に立つことです。その課題が真意を汲んだものなのかどうかが大切で、それをどうやって解決していくのかは割とロジカルに展開していけると思います。ただ、「ファミリ〜にゃ〜ト大作戦!」のように、クリエイティブが勝つタイミングも。「ファミリ〜にゃ〜ト」というとそれだけで明るい顔になるようなワードや、「ねこの飼育頭数が小学生より多い」というインパクトのあるデータと、「どう課題を解決できるのか」を提示しながら社内で話していくとよいのではないでしょうか。

──商品開発とプロモーションの時間軸について知りたいです。商品開発とプロモーション計画を平行して行っているのか、商品開発が先で、後からプロモーションを考えるのか。どのように進められることが多いか教えてください。

橋本:商品開発が先のこともあれば、PR観点で商品開発が行われることも両方のケースがあります。基本的には商品基点で、カテゴリー横断などはPR基点です。

山岡さん(以下、敬称略):基本は商品開発が先に行われることが多いですが、商品をどうアピールできるのかというPR観点での商品開発を増やす必要があると感じています。

──実際の広報PR活動について、どのようなサイクルで回していますか。

大谷さん(以下、敬称略):「どの商品のプレスリリースを出すか」「どんなニュースを出したいか」「その結果どんなニュースが出たか」というサイクルで回しています。

まず、販売戦略を行っている部署と一緒に取り上げる商品を選び、その商品について競合他社も含めた類似商品をリサーチしながら、どういうニュースになっているのかを徹底的に調べます。また、「どんなニュースを出したいのか」については、例えば、お弁当を増量するという企画では、「ごはん20%増量」という情報だけではスルーされてしまうため、「お値段はそのまま」「お米の産地を応援します」といった複数の要素を盛り込むことで、さまざまな角度でニュースにしていただけるよう工夫するのもポイントです。プレスリリース配信後はどれだけニュースになったのかを毎週分析しています。

──広報PRの施策が浮かばないような商品もあると思いますが、その場合はどのようにして企業と社会とのブリッジをつくっていくのでしょうか。

大谷:ブリッジが見つからない商品というのは実際にたくさんあります。そのような場合には、メディアの方に「今度こういう商品が出ますが、どんなことがあったらおもしろいと思いますか」「こういう要素がありますが、おもしろいと思いますか」と、カジュアルな会話の中で聞いてみます。

InstagramやTikTokなどのSNSからもヒントはたくさん見つけられますし、あらゆるニュースにも目を通すようにしています。世の中に転がっている話題をひとつでも多く拾い、その中から共通点を見つけていくのも方法のひとつです。

──多くの商品を取り扱われていますが、広告・宣伝、PR活動の方針を検討するうえで重視する点を知りたいです。

橋本:重視するのは「予算キャップの中でも最適配分」「昨年実績」「OEPの順番」です。OEPはあくまでも「O(オウンド)」が起点。ただし、それはその後の「E(アーンド)・P(ペイド)」に展開していくので、「何がニュースなのか」ということと「その後の展開」を考えてKC(キーコピー)を検討するようにしています。

──お客様の声をどのようにして商品開発につなげていますか。また、商品企画のアイデアは、どのようなことから生まれることが多いですか。

山岡:SNSなどをチェックして、その商品に対する評価をコメントから確認したり、弊社のお客様相談室に寄せられるお言葉などを参考にしています。商品企画のアイデアは、メンバーや取引先とのブレストや何気ない雑談で生まれることが多いと思います。また、市場を見るといった視点でマーケットリサーチも欠かせません

──ユニークな商品を多数展開されている印象です。どのように企画が出て、商品展開までもっていくのか教えてください。企画をする際、どのような視点から考えることが多いのでしょうか。

橋本:企画は商品基軸とコンセプト起点の2パターンがありますが、現実的には前者の方が多い印象です。モメンタム、シーズナブル、ファミマらしくちょっとお茶目でチャーミングな、そして競合からの参入障壁がある企画が理想的だと思います。

PR TIMESカレッジVol.8まとめ|株式会社ファミリーマート

世の中のトレンドや社会のニーズに応えた独創的な企画で話題を生み続けるファミリーマート。その企画を支える広報PRの取り組みは、普段なかなか聞くことができない部分でもあり、メモを取りながら話に聞き入る参加者も多く見られました。

瞬発的な話題づくりではなく、社会性のあるメッセージを継続的に発信し、世の中にポジティブな影響を与えるファミリーマートの取り組みは、広報PRに関わるすべての人にとって参考になる内容だったのではないでしょうか。

【カレッジVol.8に関する記事】
鈴木おさむ氏が1000名の広報担当者に贈る『世の中に「刺さる」方法』|PR TIMESカレッジVol.8~第一部~
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