本稿は、水越和幸氏による寄稿です。
北海道新聞社の記者としておよそ30年活動した経験を活かし、広報アドバイザーとして活動する水越さんに、プレスリリースを作成するうえでの心得と重要なタイトル設計について執筆いただきました。
はじめに:タイトルは「玄関口」
タイトルは、読み手との最初の接点です。プレスリリースを建築物にたとえるなら、その玄関口にあたります。すっと中に進んでいけるか、それとも、迷宮に入り込んでしまうか。それを決めるのは、タイトルにかかっています。
この記事では、受け手と発信する側の両方の視点から、目を引くタイトル設計のコツについて詳述します。プレスリリース作成を始めたばかりの方、タイトルが苦手と感じる方の疑問や不安を少しでも解消できれば幸いです。
受け手の見方:短時間で取捨選択
タイトルは、受け手にとって取材するかどうかを決める重要な判断材料です。私が報道の現場で働いていたころを振り返ってみます。
もっともプレスリリースに接していたのが、東京の民間経済担当の時期です。言うまでもなく、東京で北海道新聞は弱小で、一人当たりの守備範囲は広くなります。自動車、電機、エネルギーなどの企業から配布されるプレスリリースを、1日あたり少なくとも50通、多い時は100通以上に目を通していました。判断基準は、①タイトルだけ見て、それ以降は読まない②リードまで読み、ひとまず保存する③最後まで読んで即、問い合わせる-です。数が多ければ、1枚当たり3秒で済ませていました。
新聞と同じような順番で読む
このような見方をするのは、プレスリリースが新聞と同じような構成という前提があるからです。新聞は、①見出し(タイトル)②前文(リード)③本文──から成り立ちます。

最初に大事なことを配置する「逆三角形」の構造です。こうした文書は、①→②→③の順に読まれます。
今の時代、「あまり新聞を読まないので……」という方も多いでしょう。とはいえ、Webメディアのニュースであっても基本構造はよく似ています。見出しを頼りに、読むべき記事を選ぶはずです。

キーワードは必ず盛り込む
肝心なことが終わりのほうに書いてあり、タイトルにもない。お手伝いしていて、そんなプレスリリースを見かけることがあります。それでは、前段で読むのをやめられてしまうと、せっかくの発表が届きません。
まず、「逆三角形」を念頭におくべきだと考えます。これだけは絶対外せないというキーワードを書き出し、タイトルに入れるよう心掛け、読む側の立場になって、作成していきましょう。
受け手の見方:社会とのつながりを探す
次は、プレスリリースの内容について見てみます。目のつけどころは、人によって違うものですが、その事象が社会にどれだけ影響を及ぼすかという点に、着目しない記者はまずいないでしょう。新聞記事もテレビの報道番組も、社会の断面を切り取り、多角的な見方を提示することを狙っているからです。
記事が思い浮かべば最初の目的達成
プレスリリースでは「社会性」が重要とされますが、その通りです。記者がタイトルに目を通し、ニュース要素があり、記事が思い浮かぶような内容と受け止められれば、最初の目的は達成したといえます。
取り組もうとしていることが、どう世の中の動きとつながっているか。そこを意識してタイトルも考えてみてはいかがでしょうか。「少子高齢化」「脱炭素」「人手不足」などが典型です。ふさわしい事業内容でしたら、どんどん使っていけばいいかと思います。
無理やり使用は逆効果
一方で、大きな状況を表す言葉を無理やり使うと逆効果になる恐れもあり、注意が必要です。事業内容との関連性が弱い文言は、浮いてしまいます。元サラリーマンが定年後に、都会で故郷直送の野菜を使ったサラダ店を開くという話題を例にしてみましょう。「農業の活性化を実現」とすると、大上段に構えた印象を与えます。「地元野菜の価値を発信」などと抑え、農業の盛り上げに一役買うことは、リードで触れたほうが、読まれやすいです。
ありがちな5つの誤解:うまく伝わるためのヒント
プレスリリースづくりの支援をしていて感じる、タイトルに関するよくある誤解は、以下の5つです。
- コピーをつけると思い、力が入る
- 広告と同じようにセールス表現を使う
- 「〇〇初」を何とか加えたい
- 難しい専門用語を使っても大丈夫
- 簡潔が一番。逆に、情報を盛り込むほど良い
勘違いしたまま、作成してしまうと、せっかく良い試みなのに、うまく伝わらない恐れがあります。その要因と、解決の手がかりを示してみましょう。
誤解1:コピーだと思う(語呂より明快さ)
タイトルで大事なのは、ひと目でわかる明快さにあります。それなのに、コピーライターと同じような作業が求められると勘違いしている方がいます。「タイトルに最も時間をかけるべきだ」などと言われるのが、要因かもしれません。
コピーのような妙味のあるタイトルを求める記者は少数でしょう。受け手には、ひねりをきかせた文言をあれこれ考える余裕はありません。しかも、メディアで働く人は、みんなプロです。掲載されるような文言を提示してやろう、などと考え、いたずらに時間を費やしてはいけません。発信する側になって気づいたのは、こちらが思った以上に、ふさわしい見出しがつく例がほとんどということです。
難しく考えず、伝えたい重要な言葉をうまく並べることに注力すべきだと考えます。そう聞くと、タイトルづくりのハードルは下がったような気がするのではないでしょうか。
誤解2:セールス表現を使ってしまう(広告ではない)
「大人気」「お得」など宣伝文句をうたうことです。こうした表現は、プレスリリースがだれに、どのような目的で出されているか忘れてしまうために生まれます。プレスリリースは、記者などメディア関係者に、自社の取り組みを広く知ってもらうため送るものです。商品の紹介であっても一義的には、買ってくれる人に向けたメッセージではありません。
受け手は、セールス表現を嫌います。画期的な事業なら、言葉が躍ってしまいがちですが、少し物足りない程度が適切だと考えます。感嘆詞や疑問詞の多用も避けるほうがよいでしょう。特に、「!!」「!?」のように2つ並べたものは使用を控えるよう勧めています。
誤解3:「初」が大事(安易に使わない)
3つ目はよく指摘される点です。なぜ「〇〇初」と銘打ちたいと考えるか。それは、プレスリリースづくりのポイントとして、「新規性」が掲げられていることと、密接に関連しているとみています。新しさを追求するあまり、狭い範囲での珍しさを探しているのではないでしょうか。
ですが、「初」という表現は、都市の規模などによっても価値が大きく変わります。メディア側は「初」に対し、厳密に問うてくることも少なくありません。安易に使うと信頼性を損なうリスクがあります。新しさが弱くても、社会性やストーリー性、意外性などがあれば、ニュースとして成立します。
もちろん、初めてに大きな意味があり堂々と胸を張れるなら、そう盛り込んだほうがいいですが、一定の注意は払うべきです。自信がなければ、タイトルに盛らず、リードや本文に「県内では珍しい」などとしたほうが無難だと私は考えています。
誤解4:専門用語を盛り込む(言い換えを)
専門用語や業界用語は、受け手にとって鬼門です。特に一般紙やテレビでは、記事中に難しい言葉をなるべく使わないよう指導を受けていることと関連します。タイトルに難解な単語が並んでいるだけで、記者は「何と言い換えればいいのか」と頭が痛くなってしまうでしょう。
難しい単語は、別の表現をとるよう心掛けるべきです。リードや本文中にどうしても使わざるをえないときでも、その近くにわかりやすい説明を置く必要があります。専門的な言葉は、みんなが知っているわけではないことを念頭に置きましょう。
誤解5:短いほうがいい 何でも詰め込む(先例に学ぶ)
「簡潔に、伝えたいことの大まかな内容がわかることを心掛けて」。そう言われ、短く数文字で終わらせる方がいらっしゃいます。反対に、情報を詰め込みすぎた冗長なタイトルを見ることもあります。
まず、前者です。「〇〇〇について」や「×××に出展」とだけ銘打っても、受け手の目は引かないでしょう。読んでいけばわかるというのは、受ける側には通用しません。
後者についても、長々と書かれたものは、どこがポイントなのか一瞬でつかめません。できる限り無駄をそぎ落としていく作業が必要です。
「5W1H」を全体の中に入れるのは鉄則ですが、ことタイトルは限られた文字数ですから、内容に応じ、省く要素があっても仕方ありません。Who(だれが)、What(何を)は必須で、Why(なぜ)も何らかの形で触れたほうがいいでしょう。一方、催しの案内では、Where(どこで)、When(いつ)は不可欠ですが、明確に場所や開始日が決まっていない事業なら、盛り込む必要はありません。
プレスリリースのタイトルの独特のスタイルに慣れるには、先例を参考にすることが有用です。
例えば、
①PR TIMESのホームページで、プレスリリースアワードの受賞作を研究し、優れたタイトルのパターンを学ぶ
②同業や類似業種の他社リリースを比較研究する-といったことが挙げられます。PR TIMESのテンプレートを使えば、タイトルを含め、スタイルや文字数のめどが立ちやすいので、活用をおすすめします。
プレスリリースアワード:https://prtimes.jp/magazine/pickup/pressreleaseawards/
PR TIMESテンプレート集:https://prtimes.jp/magazine/pickup/template/
言葉の並べ方を意識──編集記者の視点で
キーワードが盛り込まれているのに、インパクトが弱い。そう感じるタイトルを、受け手だったころも、出す側に回った今も、見かけることがあります。原因は、言葉の並べ方です。「逆三角形」の項で述べた「重要事項先出し」は、ここにもあてはまります。
配置の好事例に学ぶ
キーワードの配置がうまいと、記憶に焼き付くものになります。2025年のプレスリリースアワードの受賞作を見てみましょう。
「伝説のおっちゃん」ふるさと納税で“借りられる”時代へ。 …①
伝説の鮎釣り名人が鮎釣りを伝授! …②
飛騨でしか味わえないふるさと納税を体感せよ! …③
これは、「ローカル賞」に輝いた岐阜県飛騨市の作品です。印象に残った受賞作のひとつです。このタイトルは、②から始めても、③を冒頭に持ってきても、素晴らしいと感じるでしょう。ただ、もっともインパクトのあるキーワードは「おっちゃん」です。「ふるさと納税」で「おっちゃん」を「借りられる」とするより、「おっちゃん」を「ふるさと納税」で「借りられる」としたほうが、ひと目見たときの印象が違います。重要情報はなるべく早く配置するのが有効であることを示す好例です。
見出しの2つの型を比較
こうした発想の基は、新聞社の編集記者時代の経験にあります。この部門では、とにかくキーワードを早く見せることが大切です。新聞でよく見る「千鳥配置」の見出しを例にしてみましょう。こういう見出しは、通常の形とそうではない形があり、以下、前者をA型、後者をB型とします。
A型は、重要なテーマを冒頭で提示し、言い切れなかった部分を後段で補足する構成で、読者にとって重要情報への到達が早いです。B型は、先にテーマを示し、その後にキーワードを伝える構成で、普通の文章を読むような感覚で意味がとれますが、重要事項が後出しになります。新聞を見渡して、圧倒的にA型が多いのは、こちらが基本で、B型が例外と捉えられているからです。

事業内容が出来栄えを左右
私が調べたところ、過去のプレスリリースアワードの受賞作を分析すると、9割以上がA型かそれに近い形をとっていました。プレスリリースにおいても、やはり重要な言葉が先に来るような形を最初に考えるべきだと考えます。
事業や商品がひと言で説明できるときは、インパクトの強い言葉から、スムーズに始められます。逆に、なかなかタイトルがつかない、プレスリリース全体もまとまらないのは、事業内容があいまいだったり、コンセプトが固まっていなかったりする例が多いようです。先に進まないときは、そもそも事業のどこかに問題点がないか見直したほうがいいでしょう。
生成AI活用:チェックは鬼の目で
プレスリリースづくりにおける生成AI活用は、すでにかなり一般的になっているのではないでしょうか。必要な情報を入力すれば、整った形の文書がすぐに完成するので、効率は高いといえます。スタイルも一定程度担保され、誤字脱字もほとんどありません。
見出し作成能力は予想以上
タイトルも一定の水準は保つことができるとみています。私は2025年夏、新聞記事を加工した文章を100件作成したうえ、生成AIに「〇字以内で見出しをつけてください」という簡易なプロンプトで指示しました。
できた見出しと、基にした記事の見出しを比べ、あくまで主観での優劣判断で、若干AIに甘い「採点」をしてみました。その結果、AIが「同等」か「上回る」は36%でした。これは高いか低いか。私は予想以上に精度が高いとみています。新聞社の記者が一定程度時間をかけ練った見出しに対し、AIは数秒。労力を考えれば、かなり優秀といえるのではないでしょうか。
過信は禁物。3つの例を基に
だからといって、生成AI頼みにしていいわけではありません。以下では、自分で作成したプレスリリースを例に、日ごろの支援での経験や、新聞記事を活用した「実験」を基に、感じたことをまとめます。
1.事実を誤解
私が勤める「北海道よろず支援拠点」のプレスリリースのタイトルについて、さまざまなプロンプトで、タイトルの改善を図ってみました。内容は、公共施設の一角での中小企業無料相談窓口は以前から、日中に実施してきましたが、2025年5月から、月に2回、夜間にも開くというものです。
元のタイトルは以下の通りです。
札幌市図書・情報館の中小企業相談窓口、金曜夜も開設
北海道よろず支援拠点、5月から隔週で 日中の回数も2倍
何度かやり取りした後、次の案が出てきました。
夜の時間帯にも対応する経営相談窓口を新設
— 札幌市図書・情報館で北海道よろず支援拠点
改善したかに見えましたが、今回は、もともとあった窓口を夜も開くので、「新設」とはいえません。このような勘違いを、時々見かけます。
2.語感はいいが、内容にズレがある
仕事帰りの一歩が、地域を変える力に。
冒頭に、こう記した案もありました。これを見ただけでは、何の話か即座にわかりません。「地域を変える力」も、内容から考えると、ややオーバーです。ありきたりで響きのいい言葉を選びがちなのは、商品や試みについての現場感をつかめないためだとみています。
3.キーワードが落ちる
「夜の時間帯にも経営相談に対応」
— 北海道よろず支援拠点、札幌市図書・情報館で相談機会を拡大 —
もっとも案として良かったのが上です。ところが、「中小企業」が落ちていました。よくできたと思い、キーワードがなくなったことを見逃しかねない例です。
活用には3つの留意点
私なりのタイトルへのAI活用のポイントをまとめると、①できるだけ複数の案を出してもらい、いいものを組み合わせる、②キーワードを決め、配置にも留意する、③誤読はないか、ニュアンスに違いはないか、過度に誇張していないかなど、入念に点検する──です。特に大事なのは③。チェックには「鬼の目」が必要です。
人間の力が必要(直木賞作家の言葉が伝えるもの)
直木賞作家の小川哲氏は『言語化するための小説思考』(講談社)の中で、AIによる表現活動について、次のように記しています。
出力された作品の質でAIが人間と肩を並べ、あるいは先行していく未来は遠くない将来に生じると感じているが、作品から世界に接続していく過程には、現実世界を生きた人間の持つ強さが残っている。
小説などの分野でAIが人間と同等の力を発揮するような時代が来ても、人間の力が必要、という示唆に富む言葉だと感じています。
おわりに:独特のスタイルに慣れる
新聞社時代の話になりますが、記事を書く外勤記者から、編集部門に移ると、だれもが最初は戸惑います。見出しの世界は、通常の文章である「散文」より、詩や俳句・短歌などの「韻文」に近い性質を持つからです。上達するため、さまざまなパターンを集めて比較し、出来のいいものを模倣することからスタートします。
タイトルづくりも同様で、まずは独特の形式に慣れることから始めてみてはいかがでしょうか。PR TIMESのサイトなどで、良い例をいくつも見て研究するのが早道です。新聞や雑誌、Webニュースの見出しなども参考になります。
好例を体で覚えれば、整ったスタイルのタイトルができるようになるでしょう。生成AIが提示した案を見る目も養われ、うまく文言を取捨選択することもできるはずです。難しく考えず、まず手を動かしてみることから始めてみてはいかがでしょうか。
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