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食品・飲料メーカー新商品の広報PR|エスビー食品×永谷園の発表会・試食会で振り返る

食品・飲料メーカーの広報PR活動の中でもっとも重要な機会のひとつが「新商品発売」です。本レポートでは、7月7日に開催された食品・飲料メーカーの広報PR担当者が抱える課題解決に向けて「広報PRについての交流・情報交換会」の模様と登壇者の講演内容をご紹介。

本イベントの第一部には、2023年に創業100周年を迎えたエスビー食品株式会社の広報・IR室のマネージャーを務める浜元さん、同年に創業70周年を迎えた株式会社永谷園ホールディングスの広報部石井さんとマーケティング本部の酒井さんにご登壇いただきました。直近の新商品の事例ではどんな目標を設定して、どのような活動をしたのか。PR TIMESとともに開催した発表会・試食会の内容とあわせて、現在挑戦している広報PR活動についてを具体的に伺いました。

第二部からは、レタスクラブの雑誌版の編集長を務める前田さんとWeb版編集長の山上さんに参加いただき、メディア視点から見た食品・飲料メーカーの情報発信についてのトークセッションを実施。このレポートでは、講演会の一部をお届けします。

エスビー食品株式会社 広報・IR室 マネージャー

浜元美和(Hamamoto Miwa)

2007年にエスビー食品株式会社に入社。入社後14年間業務用営業や企画部門を担当し、2020年10月から広報・IR室へ異動となり、新商品や企業広報など会社全体の広報PR活動を担当。

株式会社永谷園ホールディングス 広報部

石井 智子(Ishii Tomoko)

株式会社永谷園ホールディングスに入社後、総務業務を経て広報へ異動。メディア対応担当、インナーコミュニケーション、HP運営管理などの担当を経て、現在は広報業務全般およびアーカイブ管理業務に携わる。

株式会社永谷園 マーケティング本部 販売戦略コミュニケーション課

酒井 繁 (Sakai Shigeru)

2004年に株式会社永谷園へ入社以降、19年間にわたり販売戦略の施策立案・実施に従事。商品プロモーションを数多く担当し、現在はコミュニケーション課にてリアルイベントやSNSを通した商品価値発信の役割を担う。

エスビー食品「創業100周年記念商品」|企業メッセージをどう伝えるか

2023年に創業100周年を迎えたエスビー食品株式会社は、2月に「創業100周年記念商品」として、赤缶カレー粉を使用した「赤缶カレーパウダールウ」「カレー粉スティック」を発売。

エスビー食品ならではの提供価値を伝えるために、新製品発表会を通して実施した取り組みについてプロジェクトを担当した浜元さんにお話しいただきました。

創業100周年記念商品

新商品発表会で特別感を伝える

──メディアへの伝え方はどのように工夫しましたか。

「創業100周年記念商品」は、見方によっては「私事」で終わってしまい、メディアの方も取り上げにくいのではないかという不安がありました。

商品に込めた企業としての想いやメッセージなどを、私たちと同じくらいメディアや生活者の方に感じていただくことが、PRのポイントになると考えたんです。

そこで、メディア向けの新商品発表会を開催し、会社の資料や歴史の詰まった「スパイス展示館」という施設を、メディア限定で初公開するという取り組みに挑戦。企業として積み重ねてきた施設をご覧いただきながら、今回の「創業100周年記念商品」をお伝えすることで、「今回限定」「初公開」という「特別感」をお届けできたと考えております。実際にこの施設に訪れたことを軸に掲載につながり、新たな形でのご紹介につながったことも良かったポイントでした。

アレンジレシピなど新たな楽しみ方を提案

──企業としての想いと合わせて、商品の魅力を伝えるために取り組んだことはありますか。

「創業100周年記念商品」は、エスビー食品の中でも長く親しまれてきた「赤缶カレー粉」を、パウダールウやスティックタイプとして発売した商品です。これは、時代に合わせた楽しみ方を提案するための商品開発の一環でもあります。

この発表会では、使い方や商品のアレンジレシピなどのイメージがつきやすくなるような工夫を心がけました。「赤缶カレー粉」自体の商品情報や使用方法を、エスビー食品の社員から深く説明ができたので、お越しいただいたメディア関係者それぞれに新たな発見をお届けできたと思います。また、対象商品の試食、商品の撮影展示エリアを設けるなどしてオフライン開催ならではの会場づくりにもこだわりましたね。

企業の想いに触れてファンになっていただくために

──創業100周年ということを発表会以外でも発信されていましたよね

発表会の1日だけではなく、より多くの方に100周年事業のことを伝えていく取り組みも行いました。小さなことですが、メールの署名に100周年バナーをつくり、やり取りさせていただくすべての方に気にしていただけるよう心がけてみました。

創業100周年記念商品バナー
100周年バナー

また、100周年の情報をまとめたニュースレターを制作し、メディアの方が情報を整理しやすく、かつ企業の歴史がわかりやすく伝わるような資料を用意したことも今回ならではの取り組みです。こういった情報がプレスリリースとともに届くことで、メディアの方に「特別感」を伝えられたのではないかと思っています。

そのほかにも発表会でお話しする内容をまとめたメディアの方向けプレゼン動画を制作し、発表会にご参加いただけないメディアの方へお送りすることもしました。

PR TIMES TV:エスビー食品が創業100周年を記念し、“赤缶カレー粉”を使用した2商品を新発売

エスビー食品「創業100周年記念商品」のリリースと企業メッセージを伝えるために行った取り組みは以下の3点です。

  • メディア向けの新商品発表会を開催
  • 「赤缶カレー粉」のアレンジレシピなど、新しい楽しみ方の提案を広げる商品を展開
  • 創業100周年の情報をまとめたレターやメールのバナーを制作

これまでとは異なった形でのアプローチに挑戦しながら、メディアを通じて企業のメッセージを伝えたことで、エスビー食品のファンを増やすことにつながったのではないでしょうか。

永谷園「パキット」|生活者視点で伝える

創業70周年を迎えた株式会社永谷園は、3月に電子レンジだけで「パスタの茹で」と「ソースの温め」が一度にできるパスタソース「パキット」を3種発売しました。

生活者視点を大切にして開発された商品です。新しいパスタ作りをどう伝えるかを考え、メディア向けの試食会や継続的な情報発信をするなどの取り組みについて、担当した石井さん、酒井さんにお話しいただきました。

パスタソース「パキット」

メーカーからの発信だけだと単なるレンジ調理商品になる

──パキットの発売でこれまでとは違う新しさを伝えるために気をつけたことはありますか。

石井さん(以下、敬称略):パキットは「パスタ自体をソースの中で茹でられる」という新しい作り方で簡単に調理できるものです。メーカー側からの商品発表だけだと単なるレンジ調理の新商品ととらえられてしまいそう、と感じ、一方的な事実情報にならないように気をつけました。

そこで今回は、メディア関係者が実際にレンジ調理を体験できる試食会を開催。どうしたら参加した方が調理工程と合わせて記事にしやすくなるかを考え、メディア用のフォトブースはもちろん、調理の方法や簡便さを伝える場を準備。その結果、多くのメディアの方に「体験」したことをレビュー記事として掲載いただきました。

こうした体験を元にした記事は、読んだお客様にとっても信頼感があり、イメージがわきやすい情報につながったと思っています。

商品開発の想いや開発秘話を伝える

──パキットの中にある生活者視点を伝えるために工夫したことはありますか。

酒井さん(以下、敬称略):パキットは、レンジで簡単調理できることから、子育てママや働く女性をはじめ、忙しい人におすすめしている商品です。作り方の新しさを伝えると同時に、広報とマーケが協業で消費者に情報発信していくことが大事だと考えました。

開発担当者の「仕事で疲れて帰ってくると、好きなパスタでもなかなか作る気になれない。茹でないパスタがあったら喜んでいただけるかも!」という想いから誕生。商品に込めた想い、開発の背景を語ることで、お客様から共感を得られると考え、広報PRへ取り組みました。

永谷園 プレスリリース

参考:子育てママの自宅ランチ、人気第1位は「パスタ(81.8%)」!一方で「1人前のパスタ調理は面倒くさい」と感じている人は半数以上

このプレスリリースでは、「子育てママのランチ事情」を調査。子育てママがよく食べるランチの第1位は「パスタ」であることがわかりました。しかし、同時に「自分用(1人前)のパスタ調理は面倒」という回答が半数以上あることも明らかに。こうした生活者の視点を参考に生まれた商品であることを発信するようにしました。

また、メディア関係者に向けた試食会の際も開発背景を語る場を設けました。読者へ紹介するイメージをつかんでいただけたようで、商品情報だけでなく背景を踏まえて紹介いただき、働く女性や子育てをされている方々に、自分たちの生活に相性の良い商品として知っていただく機会が増やせたと思います。

開発秘話で一過性の話題で終らせない

──パキットは発売後も話題が続いていますが、そのために意識したことはありますか。

酒井:商品の真新しさという点で、発売時の話題づくりを心がけていましたが、一方で一過性の話題で終わってしまうことを懸念しておりました。

そこで、先ほどお話をした生活者視点からの開発秘話を伝えていくことにつながったんです。開発秘話は、お客様の共感を得られることに加え、新商品情報と異なり時期に縛られずに発信をすることができます。

開発についての想いやエピソードを発信する広報PR用の動画を制作したり、PR TIMES STORYを使ってまとめてメディア向けに発信しました。真新しさ以外の商品特長を計画的に活かすことが、一過性の話題で終わらない広報PRになったのだと思います。

STORY:「私はこの商品が絶対欲しい!」 商品開発未経験の女性社員はまったく新しいパスタ調理商品をいかにして生み出したか?|株式会社永谷園ホールディングスのストーリー|PR TIMES STORY

メディアから見た食品・飲料メーカーの情報発信とは

レタスクラブ 雑誌編集長

前田 雅子( Maeda Masako )

リクルート「赤すぐ」シリーズ誌の編集を経験後、オレンジページに入社し、料理編集を担当。2016年株式会社KADOKAWAに入社してレタスクラブ(雑誌)編集部へ。2019年8月から編集長に就任。徹底した読者リサーチを信条とし、読者とのコミュニケーションをライフワークとする。

レタスクラブ Web編集長

山上 景子( Yamaue Keiko )

ライブドア、リクルートエージェントにてWEBメディアの企画編集、WEBマーケティングを担当。第一子の出産を機にフリーのWEB編集者・ディレクター・翻訳として独立。2018年に株式会社KADOKAWA入社し、レタスクラブ(WEB)のデスクを経て、2020年7月から編集長就任。

第二部では、『レタスクラブ』の紙版、Web版の編集長2名を交えて、「食品メーカーの広報PRのこれからとメディアについての課題」についてトークセッションを実施。

雑誌版編集長の前田さんとWeb版編集長の山上さんに、メディアにとってのメーカーからの情報発信についての考えを伺いました。

──プレスリリースやWebサイトからでも記事をつくれる中、今回紹介したような発表会や試食会にご参加いただく理由や求めているものはありますか。

前田さん(以下、敬称略):メーカーの皆さまが商品開発の際に集めた情報や市場情報など、発信者が当たり前と思っている事実や、プレスリリースに載せるほどではないと思っている「うんちく」のようなものが、記事や特集のヒントになります。

実はメーカー側の「当たり前」が読者に浸透していないことが多く、新鮮に受け取ってもらい、良い反応をいただけることもあります。例えば、「腸活」というキーワードはひと昔前のトレンドのように感じる方もいると思いますが、最近になってあらためて記事を制作したところ想像以上の反響があり、新しい事実として受け取ってくださった読者がいました。

また、特集に合わせた掘り下げた情報が重要で、メーカーの皆さまの中で眠っている情報はやはり必要です。発表会や試食会は、そういったより掘り下げた情報を直接聞くことができるので、新たな企画につながるきっかけとなることを期待しています。

山上さん(以下、敬称略):発表会や試食会で、写真が撮りやすい環境が整えられている、調理工程が理解しやすいなど、その場の情報だけで記事がつくれるように考えられていると印象に残ります。Webメディアの場合はタイムリーな情報発信が求められるので、そういった工夫がされている発表会はメディアにとってもありがたいですね。

また、前田さんが言うメーカーで眠っている「うんちく」のようなものはやはり必要な情報なので、そのようなお話が直接聞けると嬉しいです。レタスクラブの場合は読者のニーズやライフスタイルに寄り添った記事をお届けするために、SNSで話題になっていることなどを日々追いかけて、記事や特集のヒントを探しています。その中でやはり、日常生活の中での気づきや、生活が楽になるちょっとした工夫のようなものが話題になることが多く、メーカーの方からもそういった商品のポイントや使い方のコツみたいなものをお伺いできると良いなと思います

食品・飲料メーカーの広報PR活動のこれから

エスビー食品、永谷園の事例紹介、レタスクラブを交えてのトークセッションを通して、食品・飲料メーカーの広報PRのこれからについてお届けしました。

新商品やキャンペーンの情報を発信することはもちろん重要ですが、商品がどのタイミングで、どこで、どのように紹介されるのが良いかを考え、広報PR活動の目標や計画を設定していくことが大切です。眠っている情報や想いを伝えることで、企業の規模や商品数の幅などに関わらず、メディアや生活者に商品の魅力がきっと届くはずです。

今回の事例やトークセッションの内容を参考に、今後の情報発信に役立ててみてはいかがでしょうか。

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この記事のライター

髙木 健志

髙木 健志

出版社でライフスタイル・タウン系の雑誌とWEBマガジンの企画・営業・編集・ライティングを担当し、メディアやイベントを通した情報発信事業を様々な形で実施。現在は、PR TIMESのお客様により立体的な情報発信やPR活動をしていただくための伴走者として、PRパートナー事業部にてプレスリリースからPRの企画、進行管理のサポートなどを行っています。

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