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創業120年を前に老舗メーカーがリブランディングに挑戦。新たに実施した広報PR施策とは|コクヨ株式会社

ブランドを見直して、ステークホルダーに新たに認知してもらうことを目指すリブランディング。企業にとっては一大プロジェクトであり、広報PR担当者が担う役割も大きいでしょう。

プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESでは、7月9日に「ブランディングに貢献する広報PR」をテーマとしたユーザー会を実施。来年120周年を迎える老舗文具・オフィス家具メーカーのコクヨ株式会社で、コーポレートPRを担当する大貫遥さんに登壇いただき、リブランディングを起点とした広報PR施策について伺いました。

コクヨ株式会社 コーポレートコミュニケーション室

大貫 遥(Ohnuki Yo)

1992年生まれ。東京都出身。2015年に京王電鉄株式会社に入社。事業・コーポレート広報を兼任。その後、札幌の新規開業ホテルの運営担当に異動、広報部門の立ち上げを経験。2021年にBASE株式会社のコーポレートPRに入社、インナーブランディング、新規事業広報を経験。2022年にコクヨ株式会社に入社、コーポレートPRとして、コクヨのリブランディングに取り組む。趣味はサウナ、2023年にはコクヨサウナ部発のブランド「SAUNA BU」発足にも携わった。

「文具だけじゃない」へ向け、新体制の広報PRがスタート

──まずはリブランディングに至った背景について、教えてください。

コクヨは1905年に創業し、来年120周年を迎えます。紙製品からスタートして1990年代には売上3,000億円を達成。長くその水準をキープしてきましたが、2015年に5代目の現社長が就任を機に、低成長からの脱却を目指す方向に舵を切りました。これまで文具・オフィス家具メーカーとして歩んできましたが、2030年に向けて新たに「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする。」というパーパスを掲げ、リブランディングにチャレンジしている最中です。

この一環として、広報PR体制も一新しました。コクヨの広報PR体制は、企業広報を担うコーポレートPRの部門と、各事業部の広報を担う事業PRの部門があり、連携して施策を行っています。リブランディングする以前のコーポレートPRは、ベテラン社員の経験に頼っていたので、体制を強化すべく、2022年に自分を含めた中途社員3名が加わりました。新体制になってから始めに着手したのが目標設定です。

「メディア・ポートフォリオ」を作成

私が入社した当時は、リソースの配分先を集中をしていたということもあり、掲載されるメディアはほとんど新聞のみ。プレスリリースも配信していましたが、新聞向けの書き方がベースでした。一方、リブランディングでは企業イメージを「挑戦」や「クリエイティブ」といった方向へ変えたかったんですね。そのためにはもっと若い世代へもコミュニケーションする必要がありました。

そこで新聞以外の露出も獲得すべく、まずはメディア・ポートフォリオを設定することに。新聞、テレビ、Web、その他の4項目で、掲載される割合を目標値として定め、同時にターゲットとするメディアを選定しました。ターゲットメディアは3段階に優先順位付けし、それに従ってアプローチや取材対応をしようというわけです。これをメンバー間の共通認識とすることで、同じ方向に向かってPR施策を行えるようになりました。

印象的な「画づくり」にこだわり、アセットをフル活用

新聞以外のメディアでも取り上げられるようになるために、重視したのが「画づくり」です。テレビやSNSでは、いかに印象的なビジュアルであるかが掲載に大きく影響します。そのため、コクヨのアセットをフル活用してメディアにどんな画を提供できるのかを発信していったのです。「画づくり」を意識した施策として、以下の3つをご紹介します。

1.社長がメディアに出演

社長自身がメディアに出演することは、コクヨのブランディングに大きく影響を与えます。そのため、経営者にフォーカスする企画に積極的にアプローチをかけました。そのようなメディアに1つでも出演すると、同様のコンセプトの番組などからオファーをいただくようになり、効果を実感。さらに大型のテレビ番組へ出演すべく、制作会社やテレビ局にリレーションをつくることも開始しました。

2.工場・オフィスをオープンに

社内には画になる場所がたくさんあることを、メディアにアピールしました。例えば、コクヨの社内のインテリアは、オフィス家具メーカーとしてのこだわりが随所にあり、写真映えします。また、文具を製造する工場は見学も可能です。このように、コクヨには画になる場所がたくさんあるので、それをメディアにアピールしていきました。特に工場見学をコンセプトにする企画はわりと多いので、取材や掲載につながりやすいということを実感しています。

3.メディア向けの発表会・撮影会

新商品を発表する際はプレスリリースの配信にとどまっていましたが、新たに発表会や撮影会を実施してみました。複数社のメディアに取材に来ていただき、特に時流に合った商品の場合にはかなり多くの掲載につながることも。すぐに使われなくても、時間差でこのときの映像が流れることもあり、実施する意義を感じています。

本業に集中するための環境づくり

メディア掲載を増やすためには、リソースが必要です。そのため、新たな施策と同時進行で、業務の整理も行いました。

例えばアンケート回答などは毎年来るものがわかっているので、優先順位をつけて回答するものを取捨選択。日々大量に届く問い合わせは、グループ会社のBPOサービスに一次窓口を委託しました。これらによって本業に割く時間を確保できるように。効果的なPR施策を行うためには、業務効率化もぜひ検討してみてください。

先回りして企画から入る、コクヨ広報のフレームワーク

──リブランディングを起点に、新たに行ったPR施策について教えてください。

ここでは2つのPR施策の事例をご紹介しますが、その前に施策を考える際に大切にしていることをお話したいと思います。それは、事業部から「プレスリリースを出してほしい」と依頼される前に、先回りして最適な提案をすることです。広報の方は経験があるかと思いますが、ある程度事業部でプレスリリースの内容を固めて、あとは配信するだけという段階で広報に持ち込まれるというケースがあります。しかし、プレスリリースはあくまでひとつの手段。本来ならもっといろいろなやり方があったのに、固まった状態ではできることが限られます。そのため、私たちは事業部に依頼される前に先回りして情報を取りに行き、場合によっては企画段階から参加することも。情報を得るための工夫もいろいろしていて、半年に一度その先に予定するトピックを共有してもらう場を設けたり、社内コミュニケーションツールのSlackに関連がありそうなキーワードを登録して引っかかるようにしたりなど、キャッチアップのための仕組みづくりを心がけています。

また、事業部から情報を提供してもらうために、メディア掲載があったときには必ず社内に共有しています。SNSで話題になっていたら、その投稿内容もシェアしたり。生活者の反応をダイレクトに感じてもらうことで、広報PRのメリットを実感してもらえるよう努めています。

コクヨ広報のフレームワーク①

事例1:ライフスタイルブランド「SAUNA BU」の立ち上げ

企画の段階から入った施策のひとつに、「SAUNA BU」があります。これはサウナに関するライフスタイルブランドで、銭湯で使うグッズなどを企画・販売しています。コクヨには2016年からサウナ部があり、社会的にもサウナがブームになったので、これをブランディングに活用しようと考えたのです。私自身も部活のメンバーとなり、ブランドの立ち上げに参加しました。

商品を発売する際に工夫したのも、やはり画づくり。部活動らしさを伝えるために、白背景の写真だけでなく、実際の銭湯でメンバーが商品を使用している様子の写真を用意しました。さらに、部活動でお世話になっている施設への恩返しとして、「お忘れもの防止」ポスターを作成し、無料配布するという企画も。ストーリー性を持たせてWebニュースにそのまま掲載されることを狙いました。さらに商品の発売発表会を「勤労感謝の日」にセッティングし、移動式サウナをオフィスに呼んで、社員をねぎらうイベントを兼ねることに。こういった話題づくりは、ブランド立ち上げの際にすでに企画していました。商品企画と広報の施策を同時に検討していたからこそ、できた広報PRだったと思っています。

コクヨ広報のフレームワーク②

参考:コクヨの新ライフスタイルブランド「SAUNA BU」のメディア発表イベントを開催しました

事例2:ノートの水平リサイクル「つなげるーぱ!」の実施

2つ目の事例は、ノートを水平リサイクルする「つなげるーぱ!」という施策です。コクヨは『キャンパスノート』が一番売れている商品なので、紙資源を大量に消費しています。そのため、長期ビジョンの中のマテリアティのひとつに「循環型社会への貢献」を設定しており、それまでも使用済みノートを回収してトイレットペーパーなどにダウンサイクルする取り組みを行っていました。この取り組みをさらにレベルアップすべく、水平リサイクルに挑戦することに。しかし、それだけでは話題化につなげるのは難しいため、小学校のプログラムと掛け合わせる「つなげるーぱ!」という施策を提案しました。

この施策は、ノートのリサイクルを通じて学ぶ体験型環境学習プログラムです。学校にはノートを回収するボックスを設置し、投函されたノートが新しいノートの表紙へと水平リサイクルされます。このときにも画づくりにこだわり、小学生がノートを投函する様子を撮影。工場の製造ラインの写真と合わせると、水平リサイクルの流れをビジュアルで伝えることができます。プログラムの授業にはメディアも招待したので、複数のメディアへの掲載につながりました。

また、この施策のプレスリリースは続報も配信し、継続的に取り上げてもらうことを目指しました。事後リリースはどのような画が撮れるのかがわかり、次の機会に取材につながりやすいという効果があります。なるべく一過性で終わらせないような工夫を大事にしています。

コクヨ広報のフレームワーク③

参考:全国の小学校を舞台とした、ノートのリサイクルを通じて学ぶ体験型環境学習プログラム「つなげるーぱ!」を開始

まとめ:訴求したいブランドイメージに立ち返る

老舗企業のリブランディングという大きな転換点で、広報PRがどのように貢献すればよいのか、ヒントがたくさんつまったセミナーでした。最後の質疑応答で、プレスリリースを配信する際の優先順位の決め方について聞かれた大貫さんは、「長期ビジョンのストーリーに沿っているか否かと、社会への影響の大きさを重視している」と回答。また、プレスリリースを配信しなかった場合でも、ほかの手段で情報発信するようにしているとのことでした。

コクヨの広報PR施策から学べるポイントは以下です。

  • 広報は企業が訴求したいブランドイメージに立ち返り、コミュニケーションを実施する
  • 事業部の伝えたい情報をただプレスリリースに落とし込むだけでなく、どうやったらメディアに掲載されるのかを考え、そのために企画から入ることもする
  • 多様なメディアに取り上げてもらうためには、どのような画を提供できるかが重要
  • 発信して終わりではなく、事後リリースや社内への効果共有まで行う

リブランディングの予定がある企業の広報PR担当者や、ブランディングに貢献する施策を行いたい広報PR担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

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