人材育成方法のひとつである「フィードバック」。個人やチームの目標を達成するために適切な行動が取れているかどうか、事実をベースに評価を伝えて改善点を指摘する手法です。
そんなフィードバックの意味や目的を解説、併せて、効果的なやり方や参考となるフレームワークもご紹介します。フィードバックの意義を見直し、効果を最大化させたいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
フィードバックとは?
ビジネスにおけるフィードバックとは、社員の業務内での行動について口頭や文面で指摘や評価を行う人材育成方法のことです。チーム目標や個人目標を達成するために適した行動が取れているかを確かめ、必要な行動を促します。
フィードバックは基本的に1対1で行います。また、行動による結果がどうなったのかをファクトベースで伝えるのも特徴。フィードバック対象者が次の行動に活かせるよう、改善点を明確にフィードバックします。
フィードバックが重視される理由
フィードバックが重視されている理由は複数あります。まず、上司と部下のコミュニケーションが不足していること。コロナ禍によりテレワークを導入する企業が増えたことで、お互いを理解するためのコミュニケーションが減っています。フィードバックのように、1対1で部下の業務や仕事の進め方について話す時間は非常に重要な機会となっています。
働き方に対する価値観が多様化していることも、フィードバックが重視されている理由のひとつです。仕事への向き合い方を理解しながら、目標達成のための行動を促す機会としてフィードバックが活用されています。
フィードバックと似た言葉との違い
フィードバックのような人材育成方法には、ほかにも複数の種類があります。どの言葉も耳にする機会が多いので目的や実施内容を混同している方も多いのでは。それぞれの言葉とフィードバックとの違いについて解説します。
コーチング
フィードバックと混同されがちな言葉に「コーチング」があります。フィードバックが対象の相手の行動や結果に対して第三者目線から指摘・評価することに対して、コーチングは対象の意見に耳を傾け、相手の内側から気付きを引き出します。
フィードバックがあらかじめ決めた目標を達成するために行動できているかを見直し、適宜修正するために行われる一方で、コーチングは対象の中にある答えを見つける手助けをし、自発的な行動を促すために行われます。
ティーチング
「ティーチング」もフィードバックに似た言葉のひとつです。ティーチングは名前の通り、相手に対して自身の経験や知識、スキルを教える行為を指します。そのため、コーチングを実施する側には経験豊富な方が選ばれます。
一方、フィードバックは必ずしも知識や経験が豊富な方でないと行えないものではありません。もちろん適切なフィードバックを行うには業務や業界に関するある程度の知識が必要ですが、業務に対して第三者目線での評価ができるのであれば、誰でもフィードバックを行うことは可能です。
フィードフォワード
フィードバックと対照的な言葉に「フィードフォワード」があります。あまり聞き慣れない単語ですが、人材育成や組織開発を行ううえでは知っておくのがおすすめです。
フィードフォワードは、対象が目標や目的に意識を向けるよう促す場合に実施されます。フィードバックが過去の言動を振り返り改善点を洗い出すのに対し、フィードフォワードは将来や未来に目を向けてこれから行うべき行動について話し合うのが大きな違いです。
レビュー
フィードバックと内容が似ているようで明確に異なるのが「レビュー」です。フィードバックは対象の行動や結果に対して感想を述べるとともに、改善すべき点も伝えます。不足している部分を伸ばし、目標や目的を達成するために実施されるのが特徴です。
一方、レビューは単語の意味通り感想や意見を伝えるのみにとどまる行為。フィードバックと混同されやすい言葉ですが、改善のために行われるフィードバックと、ただ感想を伝えるために行われるレビューは、受ける側にとって大きな違いがあります。
チェックバック
フィードバックとやや内容が似ているものの、言葉が使用される業界が異なるのが「チェックバック」です。
フィードバックが人材育成のさまざまな業界で使われているのに対し、チェックバックが使用されているのは映像業界・広告業界など。主に、制作物に対する修正指示の際に使われている言葉です。
マネジメント
「マネジメント」は、フィードバックと関連性の高い言葉です。マネジメントには元々「経営」や「管理」などの意味があります。目標を達成するために組織を発展させることが目的で、マネジメントは基本的には複数人を対象に行われます。
フィードバックは、マネジメントを行ううえで実施されるマネジメント手法のひとつです。効果的なフィードバックによりチームメンバーが成果を出しやすくなり、目標やミッションを達成するマネジメントを行えます。
1on1
フィードバックと混同されがちな言葉に「1on1」があります。フィードバック同様、人材育成方法のひとつではありますが、目的や実施頻度が異なります。
フィードバックが上司からの業務の進捗確認・課題点の指摘などがメインである一方、1on1は部下から日々の仕事に関する悩みを聞いたり、困っていることを解決したりすることが目的です。
そのためフィードバックが、1ヵ月〜数ヵ月に一度と実施頻度は少なめなのに対して、1on1は週に一度もしくは最低でも1ヵ月に一度実施しながら部下との信頼関係を構築します。
フィードバックの種類
フィードバックには、ポジティブとネガティブの2つの種類があります。行動に対してよい評価がメインになるのがポジティブフィードバック。一方、ネガティブフィードバックは、改善してほしい行動を伝えます。それぞれ実施する際のポイントと期待できる効果を解説します。
肯定的な部分を評価するポジティブフィードバック
「ポジティブフィードバック」は、フィードバック対象者のよい言動を評価してモチベーション向上につなげる方法です。肯定的な意見を伝えることにより、自発的な言動を促します。
ポジティブフィードバックをする際のポイントは、評価する行動を具体的に述べること。それによりどんなメリットが得られたかも同時に伝えます。そして最後に、今後求めている行動についても話します。
ポジティブな意見を伝えるとともにフィードバックを行うので、指導内容が受け入れられやすく、フィードバック対象者のモチベーションを高く保つ効果が期待できます。
改善点を指摘するネガティブフィードバック
「ネガティブフィードバック」は、問題を指摘して改善につなげるための方法です。ポジティブフィードバックと比較して、内容がシビアになったりフィードバック対象者が必要以上に構えてしまったりすることがあるため、伝え方には気を付ける必要があります。
ネガティブフィードバックの手順は、基本的にポジティブフィードバックと同様です。行動に対する具体的に改善してもらいたい点を挙げ、なぜそれがよくなかったのかを伝えて理解を促します。そして最後に、今後求めている行動についても話します。
あくまでもフィードバック対象者の行動に対して意見を述べるものであり、叱ったり怒ったりすることではないことを留意しておきましょう。感情的にならず、丁寧な言葉遣いを心掛け、相手に期待しているからこそのフィードバックだと理解してもらいましょう。
フィードバックに期待されている5つの効果や目的
フィードバックを実施するうえでは、どのような効果があるのかを把握しておくことも大切です。通常のフィードバックに期待されている5つの効果と目的を説明します。
効果1.モチベーションを高められる
フィードバックに期待されている1つ目の効果は、モチベーションを高められることです。
フィードバックは、先輩や上司がしっかりと部下の仕事ぶりを見ていることを示すタイミングでもあります。放置されておらず、期待していることを伝えられればモチベーションを高められます。
効果2.目標達成への軌道修正ができる
フィードバックに期待されている2つ目の効果は、目標達成への軌道修正ができることです。
フィードバックの一番の目的は、目標達成に向けた行動のズレを修正することにあります。第三者目線で間違っている行動を指摘することで、努力を正しい方向に誘導することが可能です。
効果3.業務能力の向上が図れる
フィードバックに期待されている3つ目の効果は、業務能力の向上が図れることです。
フィードバックを定期的に実施することで、効率や生産性を意識するようになるため、自然とPDCAのサイクルができあがります。自身の行動は次回のフィードバックにより効果的だったかどうかがわかるので、適切な行いとそうではない行いの区別がつくようになり、パフォーマンスが向上します。
効果4.仕事や会社へのエンゲージメントの向上が期待できる
フィードバックに期待されている4つ目の効果は、仕事や会社へのエンゲージメントの向上が期待できることです。
フィードバックを通して上司・先輩と部下のコミュニケーションを頻繁に行うことで、信頼関係を深められます。信頼できる上司や先輩が一緒に働いている環境では、部下も自然と積極的に仕事に取り組み、会社に貢献しようという意識に変化、定期的にフィードバックを行うことで、仕事や会社へのエンゲージメントの向上が期待できます。
効果5.人材育成としての効果が期待できる
フィードバックに期待されている5つ目の効果は、人材育成としての効果が期待できることです。
フィードバックには、人材育成の目的があります。目標達成のためのフィードバックだけでなく、能力を伸ばすための助言をする機会としても活用可能です。
部下が抱える悩みや課題点を吸い上げ、改善に向けた取り組みを促すこともできます。
フィードバックを検討するときの5つのフレームワーク
フィードバックには、さまざまな複数のフレームワークが用意されています。フィードバックの目的やフィードバック対象者に合わせて使い分けられるよう、どんなタイプがあるのかを知っておきましょう。参考となる5つのフレームワークをご紹介します。
1.FEEDモデル
フィードバックを検討するときの1つ目のフレームワークは、FEEDモデルです。
フィードバックにおけるもっとも基本的なフレームワークで、FEEDは「Fact」「Example」「Effect」「Different」の頭文字を取ったものです。
まず事実を取り上げ、次にその事実を取り上げた理由を述べます。その次に、その事実があったことによるポジティブな影響を伝え、最後に代替案として今後取ることのできる行動を示します。
フィードバックの方法に迷ったらまずはFEEDモデルを実践してみましょう。
2.SBIモデル
フィードバックを検討するときの2つ目のフレームワークは、SBIモデルです。
SBIモデルは、順を追ってフィードバックをする方法。SBIは「Situation」「Behavior」「Impact」の頭文字を取ったものです。
SBIモデルではまず、これからフィードバックする内容の具体的な状況を述べます。「先週」「この前」ではなく「◯月◯日、17時からの◯◯の会議」と明確なシチュエーションを伝えます。
その次に、先ほど伝えた状況でフィードバック対象者が取った行動(事実)について説明しましょう。主観ではなく言動をベースとした事実であることが重要です。
最後にその行動を取ったことによる影響を伝えます。この場合も主観ではなく、その場にいた方がどう受け取ったのかを話しましょう。ポジティブフィードバックであればそのまま伝え、ネガティブな内容であれば「心配している」「問題だと思っている」と柔らかい表現をすることが大切です。
SBIモデルのメリットは、事実ベースでのフィードバックがしやすいことです。感情的にならず建設的な対話を期待できます。特にネガティブフィードバックを行う際におすすめのモデルです。
3.KPTモデル
フィードバックを検討するときの3つ目のフレームワークは、KPTモデルです。
KPTモデルは、フィードバック対象者の意見も聞きながら進めるフィードバック方法。KPTは「Keep」「Problem」「Try」の頭文字を取ったものです。
まずは今後も続けるべきよかった行動と、今後はやめるべき悪かった行動を箇条書きにし、それぞれ振り返りを行います。そして最後によい点・悪い点を踏まえたうえで次に挑戦すべきことを話し合います。
KPTモデルのメリットは、お互いの意見を書き出しながらフィードバックを実施できる点です。問題や課題を可視化しながら行動を振り返られるので気付きを得やすく、次の行動につなげる具体的な案も出やすいのが特徴です。
4.サンドイッチ型
フィードバックを検討するときの4つ目のフレームワークは、サンドイッチ型です。
サンドイッチ型は、ネガティブな内容をポジティブな内容で挟み込むフィードバックの方法。改善点や指摘を相手への評価で挟んで伝えるため、サンドイッチ型と呼ばれています。
サンドイッチ型のメリットは、相手のモチベーションを下げにくいことです。肯定に始まり肯定に終わるので褒められた内容が残りやすく、フィードバックに対して身構えにくい環境を作り出せます。
ただし、改善点の指摘がポジティブフィードバックに埋もれてしまうことがあるので要注意。ネガティブな評価の量を多く、ポジティブな評価の量は少なめを意識しましょう。
5.ペンドルトン型
フィードバックを検討するときの5つ目のフレームワークは、ペンドルトン型です。
ペンドルトン型は、心理学者のペンドルトン氏が開発したフィードバックの方法。一方的に意見を伝えるタイプとは異なり、フィードバック対象者と対話を行い、考えを促しながらフィードバックを行うのが特徴です。
ペンドルトン型フィードバックは、議題の確認・よかった点・改善点・今後の行動計画・まとめの5ステップが基本的な流れ。フィードバック対象者の内省を促し、自ら次の行動を考えてもらうフィードバックなので、主体的なアクションを期待できます。
効果的なフィードバックのやり方
フィードバックの効果を最大化するために意識したいのが、指摘を伝える際の順番です。
肯定・否定・肯定の順番でフィードバックを行うのが一般的です。フィードバック対象者のモチベーションを下げずに改善に向けた行動を促せます。否定から入ったり、否定で終わったりしないよう注意しましょう。
効果的なフィードバックのタイミング
もっとも効果的なフィードバックのタイミングは、相手がフィードバックを必要としているときです。指摘や指導の内容を素直に受け入れやすく、フィードバック後のモチベーションも維持できます。
部下が悩んでいたり、直接フィードバックの申し出があったりした際には、すぐにフィードバックの場を設けるよう調整しましょう。
効果的なフィードバックをする7つのポイント
フィードバックの効果を最大化するために、フィードバックの内容や表現には十分に注意しましょう。特に大切なのは、フィードバックのときだけでなく普段から積極的にコミュニケーションを取ること。効果的なフィードバックのために意識したい7つのポイントを解説します。
ポイント1.リアルタイムに伝える
効果的なフィードバックをする際の1つ目のポイントは、リアルタイムに伝えることです。
フィードバックの効果を最大化するには、リアルタイムに実施することが大切。行動したことから時間が経過してしまっていると、指摘や指導内容に実感を伴わなくなってしまいます。
ポイント2.行動に対してフィードバックを行う
効果的なフィードバックをする際の2つ目のポイントは、行動に対してフィードバックを行うことです。
重要かつ必ず意識したいのが、行動に対するフィードバックになっているかどうか。性格や人格など、その人自身を否定するような内容になっていると、本来のフィードバックの目的からズレてしまいます。
ポイント3.具体性を意識する
効果的なフィードバックをする際の3つ目のポイントは、具体性を意識することです。
フィードバックは、目標を達成するために行動を改善することを促します。「なんとなくよい」「なんとなく悪いから改善してほしい」という伝え方では、フィードバックを受ける側にとって有益な時間となり得ません。
行動に対する評価を伝えると同時に、「何が」どうよかったのか、悪かったのかを具体的に伝えましょう。
ポイント4.表現や態度に気を付ける
効果的なフィードバックをする際の4つ目のポイントは、表現や態度に気を付けることです。
フィードバック内容を率直に受け止めてもらい、行動に反映してもらうには意見を伝える際の表現や態度も重要です。否定的な内容を伝えるにしても、肯定的な内容を伝えるにしても、ポジティブな言葉選びを心掛けましょう。
圧力をかけるような態度も基本的に避けるべきです。リラックスした状態で雑談のようにフィードバックができる雰囲気づくりを意識してみてください。
ポイント5.実現可能な範囲のフィードバックにとどめる
効果的なフィードバックをする際の5つ目のポイントは、実現可能な範囲のフィードバックにとどめることです。
フィードバックの内容も注意したいポイントです。改善点や理想とする行動を伝える際は、フィードバック対象者の年次やスキル、経験を考慮することが大切。そうするべきとはわかっているけれど、経験や能力不足でできないと相手が感じている場合、フィードバック後のモチベーションが下がってしまう可能性があります。
フィードバックをする前に、現場の状況や相手に一任できる責任範囲を確認したうえで実現可能なフィードバック内容を考えましょう。
ポイント6.フィードバックのシチュエーションに気を付ける
効果的なフィードバックをする際の6つ目のポイントは、フィードバックのシチュエーションに気を付けることです。
ポジティブな内容ではなく、ネガティブな内容が多くなりそうな場合は、フィードバックのシチュエーションに気を付けましょう。同僚がいる場所は避け、会議室で1対1の状況で行ってください。
上司や部下など、ほかの従業員がいるシチュエーションでは、周囲の目が気になってしまうため、フィードバックの内容をきちんと理解してもらえなくなってしまいます。フィードバック対象者が恥ずかしい思いをしてしまうことも考えられるので、ネガティブフィードバックに関しては1対1で行うのがおすすめです。
ポイント7.普段からコミュニケーションを取る
効果的なフィードバックをする際の7つ目のポイントは、普段からコミュニケーションを取ることです。
フィードバックの効果を最大化するには、指摘や指導内容を受け入れてもらいやすい土台づくりが大切。普段からコミュニケーションを積極的に取って信頼関係が築けていれば、対象者が身構えることが少ないため、フィードバックを効果的に行えます。
行動や結果を具体的に評価し、適切な指摘を行うことが効果的なフィードバックにつながる
フィードバックは主に新入社員に対して実施される指導方法ですが、なかには慣習的になんとなく行われていることも多いはず。チーム目標を達成するためには、フィードバックによるモチベーションアップやスキル向上、業務へのエンゲージメント向上が効果的です。ご紹介した7つのポイントを押さえて、フィードバックの効果を最大化することを意識してみてください。
フィードバックに関するQ&A
PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法と料金プランをあわせてご確認ください。
PR TIMESの企業登録申請をするPR TIMESをご利用希望の方はこちら企業登録申請をする