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海外向け広報「グローバル・パブリックリレーションズ(PR)」の基礎知識と成功のポイントを解説

企業の活動がますますグローバル化・ボーダレス化する中で、日本企業にとって海外市場を視野に入れた情報発信は欠かせないテーマとなっています。実際に海外展開を進めている企業だけでなく、国内中心の企業でも、思いがけず海外から問い合わせが入るケースや、取引先のグローバル化に伴い海外向けの対応が求められる場面が増えています。

そのような時代において、「海外を意識した広報PR」を理解しておくことは、将来的な成長に向けた重要な準備です。海外広報の考え方を学び、異文化・異市場でのコミュニケーション手法を知ることは、今後のキャリアや自社の広報ノウハウ強化にもつながります。

本記事では、グローバル・パブリックリレーションズ(グローバルPR)が注目される背景と、実践のポイントをわかりやすく解説します。

目次
  1. 海外に向けた広報「グローバル・パブリックリレーションズ(PR)」とは?

  2. グローバル・パブリックリレーションズ(PR)が重要な5つの理由

  3. グローバル・パブリックリレーションズで海外向けの広報施策を行う際の重要な5つのポイント

  4. グローバル・パブリックリレーションズでよくある課題と解決策

  5. 企業活動のグローバル化・ボーダレス化が加速する今、海外とのリレーションが今後のビジネス拡大のきっかけにも

  6. グローバル・パブリックリレーションズの基礎知識に関するQ&A

海外に向けた広報「グローバル・パブリックリレーションズ(PR)」とは?

世界の競合他社との競争を勝ち抜くためには、企業・ブランド価値や認知度向上、他社との差別化を図れるコミュニケーション戦略が求められます。その戦略のひとつがグローバル・パブリックリレーションズ(PR)です。

過去、国内広報と海外広報と役割を分離する企業がメジャーとされていましたが、企業のグローバル化が加速するにつれ、日本国内と海外という線引きは薄れ、グローバルな視点での広報戦略が必要とされています。日本国内でのケーススタディやアプローチとは違った視点で、進出先各国の事情を十分に理解しながら戦略を立てることが重要です

広告と広報の壁が低くなりつつあり、さらにSNSの普及による情報の民主化により、生活者がメディアの役割を果たせる時代。海外では、PRはマーケティングミックスが中心で、全てのコミュニケーションを担う重要な役割であるとされています。グローバル市場で勝ち抜くためには、メディアリレーションに限定した広報PR活動だけでは通用しません。

グローバル・パブリックリレーションズは、より多角的なコミュニケーションができるかが成功の鍵となります。

グローバル・パブリックリレーションズ(PR)が重要な5つの理由

グローバル・パブリックリレーションズを行い、海外も含めた広報を行うことはビジネスにおいてどのような効果が期待できるのでしょうか。具体的な5つの理由を紹介します。 

1.グローバル市場での企業ブランド価値向上

グローバル市場でのビジネス成功、そして継続的な成長のためには、グローバル規模で企業ブランドの価値を高める必要があります。

日本のマーケットだけではなく、世界にマーケットを広げた場合では見込める顧客やサービスの規模が異なります。日本以外の地域でブランド価値が認められることで、企業の成長を大きく後押しすることとなるでしょう。

2.海外展開・提携の機会創出

グローバル・パブリックリレーションズを通して海外現地メディアに掲載されることで、企業ブランドの認知向上に寄与します。また、メディア掲載されることは、ニュースバリューや注目される価値のある企業である証しであり、企業のレピュテーション向上の後押しにもなります。

それゆえ、海外市場進出時にメディア掲載を狙うことは、未来の取引先やパートナーとなりうる海外企業から関心をもってもらえる機会となりえます。

3.ステークホルダーの拡大

グローバル・パブリックリレーションズの大きな役割のひとつに、海外のステークホルダーとの双方向のコミュニケーション活動があります。コミュニケーションを重ねることで、日本国内のみの広報PR活動では得られなかった、海外のステークホルダーとの良好な関係を築き、その結果拡大させる機会となりえます。

企業により取り巻くステークホルダーは様々ですが、ビジネスを成功させるためには、ステークホルダーの拡大は必要不可欠です。海外のステークホルダーを獲得するためには海外向けの広報が重要だといえるでしょう。

4.海外市場・トレンドの把握

多数の企業の取材や市場調査を日々行っている海外メディアは、海外市場に精通したステークホルダーだといえます。海外メディアとのコミュニケーションを通して得た情報は、ビジネス上の強みとなりえるため、積極的にビジネス部門に情報をシェアしましょう。

5.グループ全体での社員のエンゲージメント向上

海外を含むグループ内でのインターナル・コミュニケーションも、グローバル・パブリックリレーションズの重要な役割です。全グループ社員が目標や理念を共有し、会社に対するエンゲージメントを高める上で重要な役割を果たします。

社内報やブログを活用した情報発信や、海外グループ会社の社員に対してトップ自身が積極的にコミュニケーションを図ることも効果的です。拠点ごとの情報格差をなくしたり、トップの生の声を伝えることで、企業の一員であるという意識・一体感の醸成に役立ちます。

社員のエンゲージメント向上

グローバル・パブリックリレーションズで海外向けの広報施策を行う際の重要な5つのポイント

海外に向けた広報「グローバル・パブリックリレーションズ」では、日本国内に限定した広報PRの成功事例やアプローチとは違った視点が求められます。次に、海外に向けて広報施策を行う際に特に注意したい5つのポイントを紹介します。

ポイント1.海外を含むグループ全体で統一したメッセージ発信

グローバル・パブリックリレーションズにおいて、グローバル視点で広報戦略を考え、海外を含むグループ全体で統一したメッセージを発信する動きが強まっています。各国ごとにメッセージが変わるとグローバル企業としてのイメージや影響力が薄れてしまい、相乗効果の機会を失うこともあります。

広報PR手法は国ごとに差はあれど、もっとも伝えたい共通メッセージはグループ間で共有し、グループ全体で統制を図ることが大切です

ポイント2.それぞれの国・地域ごとにカスタマイズしたアプローチ

グローバル・パブリックリレーションズを行う上で課題となるのが、国や地域によって社会や政治、文化、宗教、生活習慣、制度などの違いが存在する点です。また、メディアの特性や関心も国・地域ごとに大きく異なります。

地域における違いを理解することなく、日本での広報PRの手法をそのまま海外で実践しても、十分な効果は期待できません。グループ全体でのメッセージ統一やグローバル視点での広報PR戦略を取り入れる一方で、それぞれの国や地域にとって最適なアプローチを考え、現地に合ったコミュニケーションを図ることが重要です。

ポイント3.日本国内で活動する外国メディアとの関係性構築

海外拠点に広報機能がないと、海外メディアとのリレーションを現地で一から築くことはハードルが高く、なかなか上手く進まないと感じる広報担当者も多いでしょう。日本から海外に向けて情報発信したい場合は、まず最初に日本に特派員を置く外国メディアにアプローチすることをおすすめします

日本には、米、英、独、仏など欧米のメディアと、中国、韓国などアジアのメディアなど、全部で数十社が独自に特派員を置き、取材を行っています。記者は日本に在籍してますが、各メディアとも関心を持つのは、自国に直接影響のあるニュースです。アプローチの際には、対象メディアの国内トピックスに絡めるなど、メディアのニーズを意識しましょう。

以下が日本に特派員を置く外国メディアの一例です(順不同)。

  • ウォール・ストリート・ジャーナル(米)
  • フィナンシャル・タイムズ(英)
  • ブルームバーグ(米)
  • ダウ・ジョーンズ(米)
  • ロイター(英)
  • フィガロ(仏)
  • ハンデルスブラッド(独)
  • 新華社通信(中)
  • 朝鮮日報(韓)

ポイント4.企業ホームページを活用した情報発信

企業ホームページは世界中からアクセスすることができ、自社に関心を持った外国メディアや、海外の様々なステークホルダーに向けて幅広い情報提供の場として活用できます。国や地域によって社会の関心事は異なるため、企業が注力する事業分野や社会貢献活動などの取り組みも異なります。企業理念や戦略など、企業として伝えるべき基本メッセージは統一して発信すると同時に、多言語対応するのはもちろんのこと、エリアやターゲットのニーズに応じた情報提供ができるように内容をカスタマイズすると良いでしょう

ポイント5.文化・宗教・ジェンダーなどのリスクマネジメント

グローバル・パブリックリレーションズでは、国や地域ごとに異なる文化・宗教・ジェンダー観への理解が欠かせません。国内では問題にならない表現やビジュアルでも、海外では不快感や誤解を招くことがあります。たとえば、色の意味、写真の構図、服装、登場人物の性別バランス、宗教的儀式の描写など、細部の違いがブランドの信頼を左右します。

発信前には、現地スタッフやネイティブのPRパートナーによる表現チェックを行い、潜在的なリスクを洗い出しましょう。また、炎上や誤解が起きた場合の対応方針(コメント発表・謝罪プロセス・SNS運用ルールなど)を事前に整備しておくことも重要です。文化的感度の高い広報活動は、単なるリスク回避にとどまらず、「多様性を尊重する企業姿勢」として世界的に評価される要素にもなります。

ポイント6.海外現地PR会社や特派員との連携

国や地域によって社会や政治、文化、宗教、生活習慣、制度や、メディアの特性が異なります。これらをすぐに理解することはなかなか困難です。グローバル・パブリックリレーションズをスタートさせる際には、現地のメディアや最新のPR手法を熟知した海外現地PR会社をパートナーに迎えることもひとつの手です。日本のPR会社の多くが海外拠点を設けていたり、海外現地PR会社と業務提携しているため、日本国内にいながらPR会社の開拓が可能です。

連携

グローバル・パブリックリレーションズでよくある課題と解決策

海外向けの広報活動は、国内PRの延長では通用しない難しさがあります。言語・文化・メディア環境・価値観の違いが絡み合うため、国内ではスムーズに進んでいた施策でも、海外では誤解を招いたり、反応が得られなかったりするケースが少なくありません。特に、翻訳の精度や文化的な配慮、現地メディアとの関係構築、効果測定の方法などは、担当者が最も悩みやすいポイントです。

最後に、グローバルPRを実践する際によくある4つの課題を整理し、それぞれに対する実務的な解決策を紹介します。現地パートナーとの連携や体制づくりのヒントとして役立ててください。

1.翻訳・ローカライズでブランドメッセージが正しく伝わらない

海外広報で最も多い失敗が、翻訳文が「正しいけれど伝わらない」ケースです。日本語の丁寧表現や微妙なニュアンスが、外国語では曖昧に響き、ブランドトーンが崩れてしまうことがあります。単なる翻訳外注ではなく、現地の文化やメディア特性を理解したネイティブPR担当者によるレビュー体制を整えることが重要です。さ

らに、企業として「用語・表記ルール・ブランドトーン」を定めたグローバル・スタイルガイドを作成し、各国で一貫したメッセージ品質を維持しましょう。社内共有にはナレッジツールを活用し、用語や文例を定期的に更新していくことも有効です。

2.海外メディアやインフルエンサーとの関係構築が難しい

海外メディアは国によって取材文化が異なり、日本のようにプレスリリースを送ることで掲載につながるわけではありません。英語圏では関係構築を重視する傾向が強く、一方的なリリース配信では信頼を得にくいのが実情です。

現地特派員との1on1ブリーフィングや、リモートでの記者向けデモンストレーションを定期開催し、双方向の関係を築くことが大切です。インフルエンサー施策においては、フォロワー数よりもエンゲージメント率や文化的親和性を重視しましょう。

短期的な露出ではなく、信頼関係を前提にしたリレーション維持型のPR戦略へシフトすることで、持続的な露出とブランド理解が促進されます。

3.情報発信後の反応や効果を把握しづらい

国や地域によってメディア環境が異なるため、情報発信後の効果測定が難しいという悩みも多く聞かれます。PV数や掲載件数などの日本と同様の指標だけでは、海外での実際の影響度を捉えきれません。

Googleアラートをはじめとするグローバルモニタリングツールを活用し、報道件数やSNS上での反応を可視化する仕組みを整えましょう。

数値的な露出量に加えて、「どのようなトーンで報道されたのか」「どのエリアで反響が強かったのか」といった定性分析も欠かせません。定期的に現地PR会社とデータを共有し、月次・四半期単位でKPIレビューを行うことで、広報活動を継続的に改善できます。

4.文化的誤解や炎上によるブランド毀損リスク

文化・宗教・ジェンダーに関する感度の差による炎上は、海外PRで最も注意すべきリスクの一つです。たとえば、女性の肌を強調した広告が欧州でフェミニズム的批判を受けたり、色やシンボルの意味が国によって不適切とされる場合があります。

こうしたリスクを防ぐには、発信前に現地スタッフやローカルPR会社による表現レビューを必ず実施することが基本です。また、誤解や批判が発生した場合に備え、コメント方針やSNS投稿ルール、謝罪プロセスを明記したグローバル危機対応マニュアルを整備し、各国の担当者が即時に対応できる体制を構築しておきましょう。

文化的感度の高い広報活動は、単なるリスク管理にとどまらず、ブランドの価値を国境を越えて正しく伝えるための「信頼資産」になります。多様性への理解を発信の基盤に据えることで、企業はより持続的で共感を得やすいグローバルコミュニケーションを実現できるでしょう。

企業活動のグローバル化・ボーダレス化が加速する今、海外とのリレーションが今後のビジネス拡大のきっかけにも

今回は、グローバル・パブリックリレーションズが重要な理由と、実施すべきポイントについてご紹介しました。

企業活動のグローバル化・ボーダレス化が加速し、日本企業が海外に積極的にビジネス展開していく時代です。世界の競合他社との競争を勝ち抜くためには、企業・ブランド価値をグローバル市場で高めていかなければなりません。それゆえに、グローバル・パブリックリレーションズが今後ますます重要となり、広報活動がビジネス拡大や成功のきっかけになりえます。

グローバル・パブリックリレーションズ(PR)を進める上で、進出先各国の事情に十分な理解が必要なため、情報収集力が求められます。さらに、これまでの成功事例が通用しない可能性が大いにあるため、日本国内で行っている広報PR活動よりも難しいと感じるかもしれません

より多角的なアプローチと強固で包括的なストーリーが、実施していくための重要なステップであることを忘れずに、日本国内の広報PR視点とは違ったグローバルな視点を意識してプランニングしていきましょう。

グローバル・パブリックリレーションズの基礎知識に関するQ&A

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この記事のライター

野崎 有希

野崎 有希

PR Agency、HR TechにてPRとマーケティングを経験したのち、現在は通販会社(ショップジャパン)の広報部に所属。コーポレートPR、プロダクトPR、採用PRの戦略立案に従事。社会人キャリアはずっとコミュニケーションに関わる仕事をしています。人生のミッションは、「みんなの応援団」!周りの方が幸せになるきっかけをPRの力で作りたい。‟その人“の魅力を引き出すインタビュー記事は、読むのも書くのも好き。

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