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メディア編集長2名が語る。信頼を築くプレスリリースとブランド価値向上につなげる秘訣|株式会社インプレス

プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESは、8月9日にユーザー会を開催。ニュースサイト『グルメ Watch』『トラベル Watch』の編集長の湯野康隆さんと、メディアサイト『Web担当者Forum』の編集長の四谷志穂さんにご登壇いただき、「プレスリリースがニュースになるまでを徹底解説」をテーマにお話いただきました。

本記事では、セミナーレポート「メディア編集長が解説。取り上げたくなるプレスリリースの条件とは」に続き、お二人に追加インタビューした内容をお届けします。

株式会社インプレス『トラベル Watch』編集長 兼 『グルメ Watch』編集長

湯野 康隆(Yuno Yasutaka)

1995年、大学在籍中にインプレスにアルバイトとして入社。「INTERNET Watch」創刊に立ち会い、2000年に「ケータイ Watch」創刊に携わる。2019年から「トラベル Watch」を担当し、2021年に「グルメ Watch」を創刊。Watchシリーズの中では通電していない2ジャンルを担当しているが、ARグラスなどの最先端テクノロジーが大好物。趣味はレーシングカートだが、グルメ Watchを立ち上げてから10kg太り、ウエイトハンデに悩む今日この頃。

株式会社インプレス『Web担当者Forum』編集長

四谷 志穂(Yotsuya shiho)

大学卒業後、物流企業で営業兼Web担当者を経験。コーポレートサイトのリニューアルやデジタル広告の運用、倉庫の営業に携わる。2013年にインプレスに入社し、Web担当者Forumの編集者となり2018年から現職。歴史とサッカーと運動とビールが好き。

トレンドや世間の関心ごとを重視し情報を検索

──四谷さんにお伺いします。プレスリリースからニュースを探されるとのことでしたが、ニュースを探す際にどのようなキーワードやタグで検索していますか。あらためて教えてください。

四谷さん(以下敬称略)/『Web担当者Forum』:デイリーニュースの選定作業では、「マーケティング」「広告」「SNS」「SEO」「アクセス解析」「データ分析」など『Web担当者Forum』のグローバルナビゲーションに表示されているキーワードで検索をすることが多いです。防災の日や引越しの時期など、季節ごとのキーワードはある程度意識しているものの、ニュースを探す際には季節性よりもトレンドのほうを重視しています。

ピックアップする本数が3~6本と決まっているので、検索結果の上から順番にその日のプレスリリースを見ていきます。

──湯野さんは、プレスリリース以外にどのような方法でニュースを探されていますか。

湯野さん(以下敬称略)/『トラベル Watch』『グルメ Watch』:世の中の関心に重なりがあるものを優先的に取り上げていきたいと思っているので、X(旧 Twitter)のトレンドなどで何が話題になっているのかを見たり、テレビのニュースやワイドショーなどをチェックしたり、幅広いです。また、特定のキーワードを検索するというよりは、ほかのメディアやSNSで話題になっているものを深掘りするように気になるものを検索しています。

それとは別に中長期的に気になるキーワードは、Googleアラートを利用して、都度新しい情報をメールで受け取れるようにしています。例えば、数年前のコロナ禍では、「全国旅行支援」というキーワードを一定期間フォローしていましたね。

──プレスリリースを作成する際には、トレンドになるキーワードの設定は必須ということですね。

湯野/『トラベル Watch』『グルメ Watch』:断然あったほうがいいですね。私はメールでもキーワードによって自動的にラベル分けがされる設定をしているので、トレンドになるキーワードが入っているほうが関心のある人の目に留まりやすくなると思います。

広報PR活動にメディア特性の理解は大前提

──企業からのプレスリリースや企画書を毎日数多く受け取られていると思います。セミナーでは「目に留まらないプレスリリースのタイトル」についてお伺いしましたが、反対に目に留まりやすいポイントなどあればお聞きしたいです。

四谷/『Web担当者Forum』:メディアの特性をきちんと理解してプレスリリースや企画書を送ってくださる企業の広報PR担当者はその企画の精度がとても高い印象です。継続的に注目して取り上げさせていただくこともありますね。

反対に、こちらの特徴を考えずに手当たり次第送られているようなものに関しては、あえて避けるようにしています。例えば、私たちのメディア『Web担当者Forum』にグルメの企画書やプレスリリースが送られてきても取り上げることはないですよね。こちらの反応も関係なしに、無関係なプレスリリースを送り続けられると、印象が悪くなってしまうこともあります。プレスリリースや企画書を送る際には、「メディアの特性を理解する」のは大前提ではないでしょうか。

湯野/『トラベル Watch』『グルメ Watch』:確かに、メディアの特性を見ずに声をかけられることや、必ずしもこちらがほしい情報ではないパターンも多々ありますね。

私には、商品のパッケージリニューアルのプレスリリースが多数届くのですが、中身はほとんど変わっていないことが多く、ニュースになりにくいんです。もちろん、企業も何かを伝えたくて情報を発信していると思うので、「伝えたい本質を引き出す」ことを試みる場合もあります。それでも何もなければお断りしますが、ほかに何か変わったことはないのかを尋ねるなどニュース性を見いだそうとすると発見があることも。プレスリリースや企画書の段階でその内容が含まれているといいですね。

──新商品の場合ですと、はじめての「新商品発表」、「発売前」、「発売開始」……どのタイミングで、どのような切り口であれば記事になりやすいのでしょうか。

湯野/『トラベル Watch』『グルメ Watch』:発売日がもっとも盛り上がるタイミングなので、私たちとしては発売日やその前日に記事を掲載するのがベストです。

また、非常に話題性のある商品については、最初にリリースベースで記事を出した後、PVが良ければ発売のタイミングで再度記事化することもありますし、話題性が高く売り切れになるような場合は、後追いで開発者をインタビューすることもありますね。Webメディアの良いところは、リアルタイムで読者の反応を見られる点なので、世の中の反応を見ながら日々どのように記事を作るかを考えています

──お二人から見て、企画の精度が高い広報PR担当者の共通点はありますか。

湯野/『トラベル Watch』『グルメ Watch』:自分たちの会社が外からどう評価されているのか、また反対にどのようにネガティブな反応を持たれているのかをきちんと把握し、自社の課題をきちんと理解できている方ではないでしょうか。広報PRは社内外のさまざまな情報が集まる場所なので、それを自分なりに解釈してどのように外に出していくのか考えなくてはいけません。

また、私たちメディア側に発表前のものの相談をしてくださる広報PR担当者もいますが、こういった相談は日頃のコミュニケーションからの信頼関係のベースがないとなかなか難しいと思います。やはりコミュニケーションを積極的にとって、メディアとの信頼関係を築けるかは、企画の精度にとても影響するのではないでしょうか。

四谷/『Web担当者Forum』:湯野さんのおっしゃる通りで、精度の高い企画を出される広報PR担当の方は、自社のことも顧客のことも良い点だけでなく悪い点もよく理解されていますよね。なおかつ、コミュニケーションを取りながら、どのような情報を提供するとメディアが喜ぶのかも探っていて、「こういう企画はどうですか」「どういうことに興味がありますか」と積極的に質問しながら知ろうとしてくださるんです。こういったやり取りを重ねられている方々が、精度が高い企画を生み出されているように思いますね。

「値上げ時」のプレスリリースはありのままの情報を発信

──話は変わるのですが、この1年は「値上げ」に関するプレスリリースが一気に増えました。メディア側から見て、マイナスなイメージを回避して値上げ時の情報を発信するコツなどあれば教えていただきたいです。

湯野/『トラベル Watch』『グルメ Watch』:私は値上げが必ずしも悪いことだとは思っていません。生活者のみなさんも円安や紛争など世の中の状況を見て物価が高くなるのは仕方ないと理解されているはずですので、企業も隠さずにありのままの情報を出すのがよいのではないでしょうか。「〇品目〇パーセント値上げ」というぼかした発表をする企業も結構多いんですが、できるだけリアルな数字をそのまま伝えていくほうが説得力があると思います。

また、どこにコストがかかっているのか、何がネックになって値上がりするのかもあわせて発信したほうがよいでしょうね。今後も値上げの傾向は続くと思われるので、企業が価格を維持するためにどのような努力をしているのかを伝え、生活者を説得していく必要があると思います。

四谷/『Web担当者Forum』:エンドユーザーの離反を防ぐ意図があるのであれば、「ここまでは企業努力で価格を抑えてきましたが、これ以上は品質の保証ができなくなるので、どうか価格に転嫁させてほしい」といった説明をするのがよいと思います。

例えば、電気代などの原価がどれだけ上がっているかを具体的に伝えることで、「それなら仕方ない」と理解するでしょう。自分たちのお客さんにどう伝えるのがベストなのかを考え、メディアを通じてメッセージをうまく伝えることで、ポジティブに受け取ってもらえるようにすることも大切なポイントだと思います。

──価格の話でいうと、コストを抑えた低価格帯の商品と付加価値のある高価格帯の商品と二極化している印象がありますが、それぞれどのようなアプローチが必要でしょうか。

湯野/『トラベル Watch』『グルメ Watch』:多くの商品には、プレミアム価格帯、普及価格帯、そしてプライベートブランドのような低価格帯の3つの価格帯が存在しています。その中でもっともボリュームが大きいのは普及価格帯ですが、利益率ではプレミアム価格帯が優れているという構造が多くの業界で見られるんです。

ではこのプレミアムな商品をどのようにして広めるかというと、プレミアムな商品ほどその背後にある製法や生産背景などのストーリーを生活者にしっかりと説明することが大切だと思います。そこを理解してもらうことでブランド価値が創出されますし、その世界観に共感してもらえれば長く愛されるブランドになるはずです。

一方で、低価格の商品でも「なぜ安く提供できているのか」を説明することで、「安いけれど質が高い」と安心されるはずです。ネット社会の今だからこそ、そうした背景をしっかりと見せ、納得して購入してもらうことが求められているのではないでしょうか。

四谷/『Web担当者Forum』:企業向けの場合、個人の嗜好による消費行動とは異なり、会社の中で稟議を通して購入が決定されます。そのため、高価格の商品を選ぶか、低価格の商品を選ぶかには、さまざまな判断プロセスがあるので一概には言えません。企業の場合は、高価格であったとしても「高価格にはそれなりの理由がある」と認識されていることが多いですね。

ツールのコストを下げ、機能が劣ってしまうとその分人件費がかかってしまうため、価格も判断のひとつではありますが、導入による効果や活用シーンの理解を促すことのほうが重要だと思います。また、セキュリティなどのリスクには非常に慎重です。どのような企業、団体と取り引きがあるのか、導入されているのかはひとつの検討材料になるのではないでしょうか。

ですから、ターゲットとなる企業が商品を選ぶ際に何を重視しているのか、その勘所を押さえて情報を発信することが、広報PR担当者としては必要な部分かもしれないですね。

まとめ:信頼とブランド価値を築くための広報PR戦略

『グルメ Watch』『トラベル Watch』編集長の湯野康隆さんと、『Web担当者Forum』編集長の四谷志穂さんによるインタビューをお届けしました。

トレンドや世間の関心を意識した情報発信が不可欠な広報PR活動。プレスリリースや企画書では、メディアの特性を理解し、企業のメッセージを的確に伝えることが求められます。特に、値上げなどの情報を発信する際には、ありのままの事実を正直に伝えることで、生活者の信頼を得ることができるでしょう。また、プレミアム商品や低価格商品においても、それぞれの価値や背景をしっかりと説明し、共感を得るアプローチが重要です。

日々のコミュニケーションを通じて、これらの要素をしっかりと押さえた広報PR活動を行うことで、企業のブランド価値を高めることができるでしょう。

セミナーレポートをご覧になられていない方は、ぜひ合わせてご覧ください。

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『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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