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「全員広報」は個々の「誰かのため」から成る。|株式会社LayerX石黒卓弥

今年で創業4年を迎えた株式会社LayerX。

直近一年間で約70名の採用を行い、社員数は40名から110名に成長。社員の半数以上が入社一年未満でありながら「全員広報」の文化が浸透しています。

多くの社員が積極的に情報発信し、一丸となって広報活動に取り組む「全員広報」の文化はどのように生まれたのか。人事・広報執行役員の石黒さんに広報チームの立ち上げ時のことも含め、伺いました。

株式会社LayerXの最新のプレスリリースはこちら:株式会社LayerXのプレスリリース

株式会社LayerX 執行役員

石黒 卓弥(Takaya Ishiguro)

2020年5月LayerXに入社、人事と広報を担当。新しいメンバーが増え、チームが多様になっていくことで「変化への対応力」が高まる日々を楽しんでいます。社会の反応を見ながらの複数事業広報は簡単なことではありませんがやりがいがあります。入社したきっかけは代表福島のnote。好きな行動指針は「Trustful Team」。3人息子とLayerXの成長に日々全力で向き合ってます!

広報チームの立ち上げとWhyからのアクション

──「全員広報」の文化を浸透させた広報チーム立ち上げの経緯や進め方について教えてください。

私が入社する2020年より前は業務委託の方に広報の仕事をお願いしていました。私の入社タイミングで、同じタイミングで入社したもうひとりのメンバーと広報チームを立ち上げました。

そのとき、念頭に置いていたのは、いかに社会の「信頼」を積み上げるかということです。私たちのようなスタートアップは、社会から認知すらされていない状態です。どうやったら自分たちの存在を知ってもらえるのか、そのうえで信用していただけるのか。この二つを重視して進めていました。

──「信頼」の獲得に向けて、具体的にどのように動かれていたのでしょうか。

広報はKPIを設定することが難しいですよね。

KPIを追うとHowに寄ってしまいますが、重要なのはWhyの部分。

社会の信頼がないとスタートアップは知られることもなく、相手にされない。そうならないためにも、Howに寄らないよう、「なぜこのプレスリリースを配信するのか」「なぜこの施策を行うのか」というWhyの部分を考え抜いてアクションを決めていました。

社会の信頼を積み上げるということに向けたWhyを徹底的に考え抜き、細かなKPIは設定しない。そこを設定してしまうと、「今月あと何本プレスリリースやらなきゃ」ってなってしまいます。

数字「だけ」に意味はないと思っているんですよね。

昨日100万PVいった投稿や、SNS上でバズった投稿も多くの方が翌日には覚えていません。そのような手法を否定するつもりはありませんが、自分たちの感性を大切にしていきたいと考えています。

株式会社LayerX石黒卓弥インタビュー01

「全員広報」の文化を浸透させるまで

広報活動は社会とのコミュニケーション

── 今では「全員広報」の文化が根付いていると思いますが、どのタイミングで目指したのでしょうか。

「みんなで広報やるぞ」と始まったものではありませんでした。

まず、広報は社会とのコミュニケーションそのものだと思うんですよね。情報を発信するために記事を書くことや、どれだけSNSを発信しているかということよりも、いかに社会とコミュニケーションを取っているか、ということを大切にしています。

私たちの行動指針に「徳」というものがあり、中長期で社会の発展に寄与する存在であるかという視点で常に動いています。

LayerXの行動指針:徳

LayerXは、⻑期的な視点で社会の発展に寄与する存在であり続けたい。

短期的な売上至上主義に走らず、仲間や社会から信頼を得られる行動を追求しよう。

「こんなトライをしたよ」「こんな意思決定をしたよ」という内容は、誰かの参考になるのではないか。そのような考えで社会やステークホルダーとコミュニケーションを取っているに過ぎないんです。

「徳」という行動指針の下、自分たちのやってきたこと、考えていることが誰かのためになるのではないか。そして、社会に自分たちのことを知ってもらい、信頼してもらうために積み重ねてきた結果になります。

株式会社LayerX石黒卓弥インタビュー02

社員には誰かに伝わる体験を

── 行動指針がそこまで浸透し会社全体として取り組まれているのはすごいですね。どのような施策を行っているのでしょうか。

社員が広報として情報発信しやすい仕掛けを作り、月ごとのテーマ設定や、アドベントカレンダー※1などを実施しています。また、原稿のプレビュー段階でもっと読まれるためには、というフィードバックを人事・広報チームが主体となって行っています。

社員一人ひとりに、まず書いてみるというアクション、そのうえで自身が書いた内容に反応をもらうこと、まったく知らない誰かにその内容が伝わり反応を得ることを体験してもらいたい、という想いから逆算して設計実施しています。

直近では、行動指針の「Bet Technology」に準えた「ベッテク月間」がそのひとつ。テーマを絞ることにより書き手と読み手の期待値を合わせていこうという考えの下、実行したnoteの投稿リレーです。技術にBetすることはより良い未来にBetすることで、長期的には技術が勝つ、という「Bet Technology」という考えに基づいています。

LayerXの行動指針:Bet Technology

技術にBetすることは、より良い未来にBetすることだと私たちは考える。

判断に迷ったときは、⻑期的には技術が勝つと信じ、技術に賭ける選択をしよう。

ほかには、キャリアを迷っている方に向けた入社エントリーや、会社の雰囲気を伝える内容などを発信しています。

最近は選考プロセスで、候補者の方から当社のインタビュー記事や代表の福島のSNSを見てます、などというきっかけでエントリーしたと言われることが増えてきています。

そして、想像以上に社員みんなが情報発信に取り組んでいるので、「これまではやったことがなかったけど、やってみよう」というサイクルが回るようになってきています。

※1
12月1日からクリスマスまでの期間をカウントダウンするカレンダー。ここでは期間限定の特別なカレンダーを指す

「全員広報」の文化は経営陣を真似ることから

── 入社して間もない方も積極的に情報発信をしていますが、狙いはあるのでしょうか。

そもそも入社して間もないかどうかで対応を変えていません。LayerXに入社するまでにやったことの有無や得意、不得意は意識しておらず、「やってみたい」という気持ちを大切にしています。気持ちがあればあとはそのアクションをサポートしていきます。多くのサービスがあふれているこの世の中で、スタートアップが立ち上がる理由。それは、今までにない新しい価値を世の中に伝えたいという想いがあるからです。その想いに共感し、信じているメンバーが多いのは嬉しいですね。

── 想いへの共感、自社を信じるという部分が根底にあるんですね。

そうですね。全員が広報をするということ、情報発信をするということは、自分の会社を好きじゃないと成り立ちません。信じて、そして楽しみながら小さなサイクルを回し続けていくことが重要です。

── 入社後に広報や情報発信に関する研修を行っているのでしょうか。

インサイダー等の法令遵守以外について、細かなルールや研修などは設定していないですね。

入社してくださる段階で行動指針やミッションに共感している方が入ってくださるので、後は先ほど述べたような後押しする仕組みをつくっているだけです。

また、Feedback is a giftという考えが会社全体にあるので、「徳」という行動指針に沿っているのかを判断し、例えそれが代表へのフィードバックであっても自然な形でフィードバックが飛び交っています。

── では、広報チームでは「全員広報」の文化を浸透させるために何をしているのでしょうか。

言語化と巻き込みですね。自身のセンスのみで仕事しようとすると実現できないこともありますよね。センスを磨くことは難しくても、感度を高めることはできると思っています。例えば、代表の行動を言語化し、落とし込む。結局は、経営陣の行動を真似するところから始まっているかもしれません。

自身たちの仕事を行ったうえで、そこからどう経営陣を巻き込んでいくのか。そこが広報の腕の見せ所です。一例ですが、場をセットしてあげるというのは広報としてできることですよね。

また、企業のフェーズや、サービスに対するリードが欲しいのか、採用候補者にリーチしたいのか、会社の信頼が欲しいのか、という目的がそれぞれあります。経営陣を巻き込むにあたって整理することが重要です。

そして、経営陣のタイプもさまざまです。SNSで活発に発信する人もいれば、ゆっくり語ることが得意な人もいます。私は「経営陣は誰よりも会社のことを考えていて、誰よりもストーリーがある」と信じています。自社はどんなタイプで、どんな方向に進んでいきたいのか、こうした内容を引き出す環境を作ったり、メディアを選ぶのは広報担当者の仕事になってくると思います。

株式会社LayerX石黒卓弥インタビュー03

全員広報の文化を浸透させた、ぶれない広報の考え方

広報は

  • Howでなく、Whyを考え抜いてアクションする
  • 「誰かの参考になる」という想いで、気負わずコミュニケーションを始める

全員広報の文化を浸透させるためには

  • 全員広報の文化を浸透させるため、社員には誰かに伝わる体験を
  • 経営陣を真似ることから始まる。そのためにも、経営陣を巻き込み方が大切


本取材を通じて感じたことは、難しい施策を打っている訳ではなく、ぶれない広報の考え方とそれを推進する広報チームの行動。

広報担当者として、新しい取り組みを検討、決定し、実施まで行った。しかし、予定通り進まなかった経験がある、という人は多いはず。新しい取り組みを検討するスタートラインに立ち戻り、予定通り進めるための対策の基本を考えさせられる内容だったのではないでしょうか。

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