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企業がナラティブアプローチを行うメリットと3つのポイント!事例3選

最近話題のナラティブアプローチ。海外ではすでにさまざまな企業が取り入れ成功している事例も見かけます。しかし、自社でナラティブアプローチを行うとすると何をしたらいいのかわからない、どうやればいいかわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、企業がナラティブアプローチを行うメリットやポイントをはじめ、ナラティブアプローチを行うために必要な5つのステップについてまとめました。さらに、日本企業の成功事例や取り組みもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

ナラティブアプローチを行う3つの効果・メリット

企業がナラティブアプローチを行うと、どのような効果・メリットがあるのでしょうか。3つのメリットをまとめました。

メリット1.企業の存在価値を高める

ナラティブアプローチによって、社会的に自社の存在価値を高めることができます。企業におけるナラティブアプローチの目的のひとつは、これまで届けられていなかった企業がもつ物語を届け、新しい価値を感じてもらうことです。

これまで広報PR活動やブランディングでは、既存の市場や価値範囲の中で自社のプレゼンスアップを行うことが求められてきました。ナラティブアプローチは、新たな価値範囲をつくり出し、社会の中で独占的に自社の価値を発揮することができるのです。

メリット2.ステークホルダーのエンゲージメントを高める

ナラティブアプローチでは、ステークホルダーの自社に対するエンゲージメントを高められます。物語を当事者が語り、届ける相手によって変化させていくナラティブアプローチでは、受ける生活者によって企業との体験を共有することができ、継続的に物語を共創できる仕組みとそのきっかけづくりになるのです。

ナラティブアプローチによってつくられるエンゲージメントは、いわゆる好意度と呼ばれるものとは異なり、「企業に共感できる」「企業のことが好き」と客観的ではなく、一緒につくり上げる主体性を持った仲間としてステークホルダーを巻き込むことが期待できます。

メリット3.新たなステークホルダーとつながりができる

ナラティブアプローチは、新たなステークホルダーとのつながりにも貢献します。ナラティブによって新しい価値範囲ができることで、受け手によって企業のとらえ方や感じる価値が変わるためです。

シナジーのある企業や業界もその範囲が広がったり、まったく異なる領域と関連づけられたりするなどの変容が生まれます。ナラティブアプローチによってつくられた新しい認識によって関連性や競合性が変化し、思ってもみなかったステークホルダーとつながりができるでしょう

ナラティブアプローチを行う5ステップ

企業がナラティブアプローチを行うためには、どのような段階を踏んで施策を実施すればよいのでしょうか。ナラティブアプローチを企画し、実施するために行うべき5つのステップをまとめました。

STEP1.企業の存在意義(パーパス)を決める

まず必ず行わなくてはならないのが、企業の存在意義(パーパス)を言語化することです。存在意義は、ナラティブによって共体験をつくり出すスタート地点になります。このスタート地点が、企業がやること・やらないことを定義し、その企業らしさを生み出します。

存在意義は、企業が存在しなければならない理由です。ミッションやビジョンとは異なります。ミッションやビジョンは、企業が「世界をどうしていきたいのか」を表現しています。それに対して、存在意義は「この企業はなぜ存在するのか」「なぜ存在しなくてはならないのか」を表現するものです。

存在意義は、ゼロからつくるものではありません。すでにどの企業にもあるものです。創業者の想い、企業活動や経営の根底にある思想など、その企業の活動や判断の軸となっているものが存在意義です。言語化した存在意義がナラティブアプローチのスタート地点になります。

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STEP2.ナラティブアプローチの目的を決める

企業がナラティブアプローチを行う目的を決めましょう。STEP1で定めた企業の存在意義(パーパス)を強化するためには、既存の社会的認識を変化させ、多くの人の行動変容を起こさなくてはなりません。

ナラティブアプローチを通じての目的、どのようなゴールを目指すのか、などを明確にしましょう

STEP3.誰とどのような体験をつくるのかを決める

ナラティブアプローチでは、誰がどのように物語を語るのかが重視されます。同じ事象でもどう語るかは語り手によって異なり、完結しない場合もあります。

それを伝える相手は誰なのか、どのような体験をデザインするか、がナラティブアプローチでもっとも重要なポイントのひとつです。企業として、誰と一緒に、どんな体験を共有するのかを決めましょう。

STEP4.具体的な施策を決める

企業の存在意義、ナラティブアプローチを行う目的、誰とどんな体験を共有するのか、これらが決まったら具体的なアプローチ施策を考えていきます。アプローチの方法に決まりはありません。自社のリソースやつくり出したい体験にマッチする手段を選択して実施しましょう。

施策を検討するうえで検討してほしいのが、自社以外の人々に参加の余地があるのかどうか、という点です。生活者やステークホルダーが企業と体験を共にできる施策かどうかは、参加する余地があるかどうかに直結します。施策を考えるときには意識するようにしてみてください。

STEP5.効果測定を行いPDCAを回す

施策を実施したあとは、必ず効果測定を行いPDCAを回します。ナラティブは終わりのない継続していく物語です。そのため、施策も1回で終わりではなく、継続してさまざまな施策を実施する必要があります

既存の認識を変えるのは簡単なことではありません。継続してナラティブアプローチを行うために、施策の結果は必ず振り返りをしましょう。

ナラティブアプローチを成功させる3つのポイント

企業がナラティブアプローチを成功させるためには、どんなことに気をつければよいのでしょうか。意識しておきたいポイントを3つご紹介します。

ナラティブ イメージ

ポイント1.継続的に行う

ナラティブアプローチは、継続的に行っていくことが大切です。ナラティブは物語を当事者が語り紡いでいくこと。変化することも良しとし、継続していくことが必要です。

ポイント2.生活者が参加する余地をつくる

ナラティブアプローチには、生活者やステークホルダーも参加して体験を共有することができる余地が大切です。

参加の仕方はどんな形でも構いませんが、企業の存在意義に立ち返って齟齬がないか、自社がやるべきことなのかを確認し、生活者が参加できる部分をつくりましょう

ポイント3.具体的な未来を描く

結論が出ないことを含め、変化することは問題ありませんが、企業が行うナラティブアプローチとしては、予想しなかった方向へ進まないよう具体的な未来を描きましょう。

そのために、道筋をつくることが成功のポイントです。

しかし、具体的な未来を描き、ナラティブの道筋をつくったとしても、さまざまな社会環境の変化によって社会の認識が思わぬ方向に進んでいくことは十分にあり得ます。そのときは、描いた未来に固執するのではなく、臨機応変にアプローチを変えていくことも必要です。

ナラティブアプローチの事例

ナラティブアプローチを実施している企業では、どのような施策を行っているのでしょうか。具体的な事例を3つご紹介します。

事例1.ユニ・チャーム株式会社

生理用品ブランド「ソフィ」を展開するユニ・チャーム株式会社は、2019年から生理について気兼ねなく話せる社会を目指した「#NoBagForMe」プロジェクトを推進しています。生理がタブー視されており相談や議論がしづらいことが、日本の女性の生きづらさにつながっているのではないかという問題提起のもと、現状の人々の生理への無関心や理解不足を解決することを目指すプロジェクトです。広報活動や宣伝活動以上に、SDGsの「ジェンダー平等を実現しよう」を達成するための、企業活動として行われている点もナラティブアプローチとして注目したいポイントです。

初年度の2019年には「#NoBagForMe(紙袋いりません)」に基づき、生理用品を購入したときに包装用紙袋を断るきっかけとなるパッケージのリデザインプロジェクトを実施しました。その後も、男性企業家や医師との取り組みを通じた「みんなの生理研修」の提供などを行っています。当事者である女性だけでなく、医師などのサポーターや社会全体を巻き込んだ事例です。

事例2.株式会社COTEN

世界史データベースの構築を行う株式会社COTENでは、個人・法人向けにサポーター制度「COTEN CREW」を設けています。「COTEN CREW」とは、世界史データベースをつくる仲間として、資金を提供する人々のこと。一緒に世界史データベースをつくるという体験を通じて、「COTEN CREW」のナラティブをつくり出そうとしています。

COTENは、人類に「メタ認知を高めるきっかけを提供する」ミッションを、世界史データベース構築によって実現しようとしています。しかし、世界史データベース構築には、歴史情報を整理する膨大なリソースが必要です。データベース構築を進めている期間は、ビジョン・ミッションに沿った形でのマネタイズができずに事業としては成り立っていない状態。その期間のリソースを補い、たくさんの人たちと一緒に世界史データベースをつくり出すための仕組みが「COTEN CREW」です。

代表取締役の深井龍之介氏は、この仕組みを通じて「お金の使い方の概念を変えたい」と語っています。これまでの世界では、自分の欲求のためやリターンのためにお金を支払うことが当然という認識であり、人々はそのように行動してきました。「COTEN CREW」では、自分への直接的な見返りではなく社会への還元を目的としてお金を支払う、という新たな認識の形成と行動変容を目指しているのです。

この取り組みについては、株式会社COTENからプレスリリースも発表されています。詳しくは、プレスリリースもチェックしてみてください。

参考:COTENの事業を支援する「法人COTEN CREW」の募集を正式にスタート

事例3.味の素冷凍食品株式会社

味の素冷凍食品株式会社では、冷凍餃子は「手抜き」であるという社会的なネガティブ認識を、「手間抜き」することで有意義な時間を生み出すソリューションとしてポジティブに変容させています。

現在公開されている「美味しい冷凍餃子の作り方〜大きな台所編〜」という75秒の動画では、冷凍餃子が工場で作られる144の工程を紹介しており、「最後の仕上げはあなたのフライパンで。」というメッセージで締めくくられています。餃子が食卓に並ぶまでの多くの手間を味の素と生活者がシェアしている、一緒に作っているという体験をつくり出しているのです。

この取り組みについては、味の素株式会社からプレスリリースも発表されています。詳しくは、プレスリリースもチェックしてみてください。

参考:【冷凍食品は「手抜き」ではなく、「手“間”抜き」】冷凍餃子に込める味の素冷凍食品の想いを映像化したWeb動画『おいしい冷凍餃子の作り方〜大きな台所篇〜』を公開|味の素冷凍食品株式会社のプレスリリース

ナラティブは社会全体でつくり出すもの

企業がナラティブアプローチを行うメリットやポイントについてお話ししてきました。実際にナラティブアプローチの施策を行う前に、自社の存在意義や目的を明確にするといった事前準備が重要です。また、生活者や社会全体と共有できる体験の仕組みになっているかどうかも忘れないようにしたい点です。

ナラティブとは何か、をもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もチェック!

(PR TIMES MAGAZINE編集部 編集)

ナラティブアプローチに関するQ&A

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この記事のライター

長瀬 みなみ

長瀬 みなみ

ITベンチャーにて広報PRを担当したのち、ヘルスケアベンチャーにて広報PR部門の立ち上げ、ブランド責任者として取締役就任。YouTubeチャンネル運営など、さまざまなメディアを活用した分ランディングや広報活動を行う。独立後は、広報PR・ブランディング・コミュニティ運営など幅広く活動している。これまでの経験から広報・ブランディングに関する戦略立案からプレスリリース執筆まで幅広くカバーしたコンテンツを作っています。

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