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社会課題の解決を軸に。スタートアップ企業のひとり広報が取り組んだ広報PR|akippa・BABY JOB・ネクイノ

国内外の新規事業担当者やスタートアップ、クリエイターなどが招待会員と​して集う大阪梅田のイベントスペース「NORIBA10 umeda」。ここでは日々、会員同士がそれぞれの課題や想いを共有するとと​もに、アイデアを発信しています。

プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESは、10月30日に「NORIBA10 umeda」と共催で「スタートアップ向け 社会課題を解決する広報〜スタートアップのコミュニティの作り方〜」と題したセミナーを開催。ファシリテーターに株式会社OKの代表取締役CEO、そしてプレスリリース・エバンジェリストでもある漆畑 慶将さんを迎えて、登壇者のakippa株式会社の森村 優香さん、BABY JOB株式会社の東 ネネさん、株式会社ネクイノの豊倉 麻緒さんに、スタートアップならではの広報PRについてお話いただきました。

本レポートは、当日のお話を元にまとめています。

akippa株式会社 広報

森村 優香(Morimura Yuka)

2013年にakippa株式会社に入社。営業職志望で入社したが、入社初日に広報担当に任命され、現在まで広報として同社で勤務している。広報の「ゼロイチ」を経験し、さまざまな方とのご縁を大切にしながらアキッパサービスのファンづくりに取り組んでいる。

BABY JOB株式会社  営業・マーケティング部

東 ネネ (Azuma Nene)

広告提案の営業を5年経て、2021年4月にBABY JOB株式会社に入社。未経験で広報・マーケティングを担当。すべての人が子育てを楽しいと思える社会を目指して、子育て課題の解決に向け数々の調査を実施している。

株式会社ネクイノ 事業推進本部 PRユニット

豊倉 麻緒(Toyokura Mao)

2014年から約5年、ベンチャー支援に特化したコンサルティング企業でバックオフィス業務を担当し、シード・アーリーステージの企業支援に従事。2019年にネクイノへ入社し、一人目の広報として広報部門を立ち上げ、現在に至る。

akippa株式会社:逆境に配信した調査リリースでメディアが注目

使っていない空きスペースをネット上で簡単に貸し借りできる駐車場予約アプリ「アキッパ」を運営するakippa株式会社は、2009年に創業したスタートアップ企業です。広報PRを担当する森村さんは営業志望として新卒入社しましたが、初日に社長から「広報」に任命され、11年間「アキッパ」の広報PR活動を推進しています。そんな森村さんが広報PR担当としてどんな取り組みをしてきたのか、お話いただきました。

週に3本のプレスリリース配信からスタート

広報になって行ったことは主に4つあります。

一つ目は「PR TIMES」を活用してプレスリリースを毎週3本配信することです。新卒として入社したばかりで、アプローチの方法を知らず、情報を発信し続ければ「常にネタを持っている会社」だと認識してもらえるかもしれないと思い、この目標を設定しました。週に3本配信することは、その後1〜2年は続けていたと思います。また、プレスリリースのネタを探すために社内の方々と交流し、関係性を構築していったのをよく覚えています。それから、プレスリリースの書き方に関する知識はなかったので、まねするのが一番の学習だと考え、ベンチマークしていた他社さんのプレスリリースをひたすらまねして書いてみる、というようなことを実践していました。

二つ目は、メディアの方々に認知してもらうための関係構築です。当時はSNSでメディアの方とつながることはあまりなく、ひたすらお電話をかけてごあいさつをして、了承を得た方には直接会いに行かせていただき、サービスを知ってもらう機会をつくる日々でしたね。

三つ目は、オウンドメディアで会社の様子や社員紹介を発信すること。正直、最初は「誰が読んでるんだろう」と思いながらの運営だったのですが、オウンドメディアの記事を見てテレビ取材を申し込まれたこともあります。社員の写真を含め、情報を詳細に掲載していたため、「どういう画が撮れるかわかって助かった」と言っていただけたんです。

四つ目は媒体研究です。特にテレビの研究に力を入れて、会社内にテレビとDVDレコーダーを買ってもらい、各番組、どういう構成でどんなコーナーがあるのかなど、長時間チェックしていました。

コロナ禍の課題にアプローチしたプレスリリースに反響

これまでにたくさんのプレスリリースを配信してきましたが、反響が大きかったのはコロナ禍に配信した調査リリースです。運営する駐車場シェアサービスの利用者は、コロナ禍により激減。そんな中で広報PRの立場としてできることはないか模索していると、「“三密”が発生する公共交通機関を避けたい」という通勤通学を目的とする利用者が増えていることがわかりました。そこで、そういう方々へ向けたプレスリリースを出してみることに。ランキング形式で通勤通学での利用が多いエリアを発表し、安心できる通勤通学を支援するクーポンの配布を行ったんです。

また、駐車場が不足しないよう、貸し出してくださる方への呼びかけも入れ、少しでも多くの方が安心して移動できるように工夫しました。結果、いろんなメディアに掲載いただき、プレスリリースを通して私たちの想いを知っていただくことにつながった事例です。

参考:【通勤・通学でのakippa利用エリア別調査】全体的に増加傾向、特に東京都心部の需要増加が顕著に。

広報PRは長期戦略と理解を得ることが大切

当社はもともと広報部署がなく、私が初めての広報PR担当者でした。スタートアップの広報はゼロから作り上げることができるのが面白いところ。「こんなことをやったら認知度が上がるのでは?」とか「こうしたらファンが増えるのでは」など、自由に試行錯誤できます。

一方、社内からの期待を一心に受けることもあると思います。私がまだ入社間もないころに、有名なテレビ番組に出られるのではと言われたことがありました。もちろん期待してもらえるのはうれしいことですが、広報PRの仕事はメディアの方一人ひとりと関係構築したり、こまめに情報を発信したりと、地道な作業の積み重ねです。すぐに成果が出ることは少なく、それを理解してもらえるよう、周囲とコミュニケーションしていくのが大切だと思います。

BABY JOB株式会社:プレスリリースで「保育施設からおむつを持ち帰る問題」の解決に貢献

BABY JOB株式会社は2018年に創業し、保育施設に紙おむつとおしりふきを直接届けるサブスク「手ぶら登園」などを展開しているスタートアップです。広報PR活動の中で、おむつの持ち帰りのルールが自治体ごとに異なるという壁に直面し、その問題をプレスリリースの力で解決に導いた実績があります。社会課題を前に東さんがどう奮闘したのか、お話いただきました。

広報PRの第一歩はステークホルダーの理解から

私は広報PRも保育業界も未経験だったので、まずはサービスにかかわるすべてのステークホルダーを知ることから始めました。多様なステークホルダーを知ることで、いろんな角度から広報PR活動ができるようになると考えたからです。特にサービスを利用してくれているお客さまの顔が見えるようになれば、熱意を持ってメディアの方に伝えることができると考え、営業に同行させてもらったり、保護者さんや行政の方など関係者へ取材したりしてみました。また、子育て課題を解決するのであれば行政を知る必要があります。制度の勉強をしながら、どんな方々と協力していけばいいのかを把握するよう努めました。

同時に社内でのコミュニケーションも広げ、カスタマーサクセスや人事などの他部署の定例会に顔を出し、情報を収集して取材のときに、より詳しく説明できるようにしていました。社長と話す時間も大切にしていて、社長ひとりで活動した内容や今興味を持っていることをキャッチアップするなど、常に情報をすり合わせています。

それから、メディア実績の整理にも取り組みました。私が入社したときは広報PR担当者がおらず、どのメディアにいつ、どんなタイトルで取り上げられたのか、誰も把握していない状態でした。これまでの実積は履歴として役立つだけでなく、メディアの時期的な変動も把握することができますし、メディアアプローチなど、戦略を立てるときにも有益なので、広報PRの立ち上げ時や広報PR担当になった初期の段階でやっておくとよいと思いますね。

配信先ごとにタイトルを変えて掲載確率を高める

大きな成果につながった広報PR施策は、子育てにおける課題を顕在化するために発表した調査リリースです。当社は保育施設向けの紙おむつのサブスクを提供していますが、使用済みのおむつを保護者さんが持って帰らないといけない保育施設もあり、それがサービス導入のネックになっていました。このルールは自治体によって異なるため、国から方針を発信してもらえれば解決の糸口となります。

そこで、首都圏と関西圏の361自治体の保育課にお電話し、公立保育施設でおむつを保護者に持ち帰ってもらっているかを調査したところ、ただ慣習的に持ち帰っているところも多くあると判明。この調査結果を使って、おむつを持ち帰らなければいけない自治体の割合が高い都道府県をランキング形式で発表すると、多くのメディアが課題意識を持って取り上げてくださり、社会問題が顕在化したと思います。この調査リリースは計4回発表しましたが、全部で100以上のメディアに取り上げられ、国から方針が発信されることにもつながったという、当社が社会課題解決に向けて取り組んだ事例です。

このプレスリリースを発表する際、特に気をつけたのがタイトルです。県別、市区町村別など発表先ごとにタイトルを変えて、全部で20〜30パターンくらい作りました。

当社のビジョン「すべての人が子育てを楽しいと思える社会」の実現に対して、広報として貢献できるのは大きなやりがいです。また、社内にメディアに取り上げられたことを伝えた際に「うちの会社ってそんなすごいの!」と反響をもらえるのも、楽しみのひとつです。

参考:使用済み紙おむつを保護者に持ち帰らせている公立保育園 大都市圏の半数で常態化

株式会社ネクイノ:医師やメディアから大好評だったファクトブック

医療系スタートアップの株式会社ネクイノは2016年に創業し、オンライン・ピル処方サービスや、商業施設・公共施設を中心に生理用ナプキンの無料提供サービスなどを展開しています。広報PR担当の豊倉さんは入社2年目のときに広報部署の立ち上げに携わり、広報PRを担当してまもなく6年目。未経験のなか、手探りで広報PR施策を行ってきたという豊倉さんに、どのように広報PR活動を拡大していったのか、お話いただきました。

広報資料を作成しメディアへあいさつ回り

広報PR担当として、当社の代表に同行することから始めました。相手によって話す切り口を毎回変えている様子を見て、相手がどの部分にどんな反応をしたのか、どんな点が盛り上がったのかなどをメモし、自分の言葉でステークホルダーに伝えられるように努めました。

その次に行ったのは、広報資料の作成です。「なぜ自社が事業を行うのか」「誰のなんのためにサービスがあるのか」「解決したい課題は何か」などを経営メンバーと話し合い、徹底的に深掘りしていきました。そしてそれが伝わるようストーリーを組み立て、資料を完成させました。

ただ、資料は公的データも引用して作っているため、全量版は膨大な量になっています。メディアに対する活動を行う際には、必要に応じて抜粋して活用しているんです。あと、メディアとつながりがまったくなかったため、自社に関連する記事を毎日チェックし、署名記事の記者さんに電話をして、資料を持って直接ごあいさつに伺うことを繰り返して徐々に関係を構築していきましたね。

正しい情報を提供すべくファクトブックを作成

広報PR担当になって6年目になりますが、一番反響があった広報PR施策はピルのファクトブックの制作です。当時はまだピルに対する誤解や医学的に誤った情報が散見されました。そこで、ピルの正しい情報をまとめたファクトブックを制作することに。医師監修のもと、査読付きの論文や公的機関から発表されたデータを中心に、メディアから広報宛てによくいただく問い合わせなども反映させながら作りました。

当時はピルについての公的データがまとまった資料がなかったこともあり、プレスリリース配信時はメディアに加えて医師からの反響も大きかったですね。日本産婦人科学会でこのファクトブックを配布させていただく機会にもつながりました。その後、メディアからもたくさん取り上げられ、女性の健康課題に関する記事を書く際に、ファクトデータとして使っているという声をいただくこともあります。制作は大変でしたが、広報PR担当者としては意義ある貢献ができたと実感しています。

始めたばかりの事業は、提供する側と一般消費者側の間でギャップがあるので、メディアの方から「オンライン診察って大丈夫なんですか」とか「他社で掲載事例がないのでうちでは取り扱えない」などと言われることもありました。しかし、今では「女性活躍」や「フェムテック」への注目が高まり、メディアから積極的に問い合わせをいただくことが増えています。世の中とのギャップが埋まっていく過程を感じられるのは、広報PR担当者として何よりもやりがいだと感じています。

参考:避妊と生理の悩みについて学べる「ピルファクトブック」フェムテック系ベンチャーがWEBでデジタル版を公開、教育機関への無料配布も

まとめ:自由度の高い広報PRはスタートアップならでは

未経験でありながら、ひとり目の広報PR担当者として奮闘してきたお話からは、スタートアップ広報としての姿勢や具体的な施策まで、多くのヒントを与えてくれたのではないでしょうか。

今回のお話を通しての学びは5点です。

  • メディアに認知してもらうためには、地道に働きかけることが大切
  • 社会課題の解決につながるプレスリリースは、メディアから多くの反響を得られる
  • 配信先に合わせてタイトルを変更すると、記者の目に留まりやすくなる
  • 自由度が高くスピード感のある広報PR施策が行えることが、スタートアップの強み
  • 事業が拡大していくのをリアルタイムで実感できるのはスタートアップ広報だからこそ

スタートアップならではの取り組みがたくさんあります。ぜひ実践してみてください。

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この記事のライター

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『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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