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BtoBメーカーのブランド力向上。社内外に変化をもたらす広報PR|株式会社ジェイテクト×側島製罐株式会社

身近な地元企業やメディアから広報PRに関する学びとヒントが得られる「そこで、PRゼミ!」。2024年1月30日には、「“選ばれる”企業への第一歩 愛知・東海の経営は広報PRで変わる」をテーマに名古屋で開催されました。

第一部の「地域企業の魅力の引き出し方|株式会社地球の歩き方×テレビ愛知株式会社」に続き、第二部の講演をレポートします。

登壇は、クオリティの高い自動車部品などの製造を誇る株式会社ジェイテクトから、広報体制を2年で整えた水藤嘉亮さん、明治創業の製缶メーカーを新たな広報PR戦略で魅了する側島製罐株式会社の石川貴也さん。おふたりの「BtoBメーカーの広報体制のつくり方」についてのトークセッションです。

株式会社 ジェイテクト 経営企画部経営企画室 広報グループ

水藤嘉亮(Suitou Yoshitaka)

大学卒業後、新卒で電通テックに入社。愛知万博や住宅展示場、自動車メーカーなどのイベント関連の業務を担当し、その後ウェブサイトやインタラクティブメディア関連の企画などを担当。2012年にジェイテクトに入社。広報業務を7年担当し、約2年の営業企画部門を経て、2021年11月より現職。年間100本のプレスリリース、グループ連携の広報体制で企業ブランドを構築。

側島製罐株式会社 代表取締役

石川貴也(Ishikawa Takaya)

愛知県出身。慶應義塾大学経済学部を卒業後、日本政策金融公庫に入庫、国民生活事業本部にて支店、審査企画部、内閣官房への出向、事業企画部とキャリアを進める。実父が経営する側島製罐に跡取りがいなかったことから、一念発起して2020年4月に転職。創業100年を超えるレガシー企業で広報、デジタル化、プロ人材の採用、理念形成などを通し老舗ベンチャー企業を目指す。2023年4月に代表取締役就任後も側島製罐のプレスリリースはすべて本人が書いている。

ブランドのイメージを変えることを目的にスタート

──BtoBメーカーの中には広報PRをしていなかったり、苦戦したりしているところも多いと思います。まずは、おふたりが広報PRに取り組む理由やきっかけを教えてください。

水藤さん/ジェイテクト(以下、敬称略):会社の名前、事業を広く世の中に知っていただくことが理由のひとつとして挙げられます。

株式会社ジェイテクトは、1921年創業の光洋精工株式会社と豊田工機株式会社が2006年に合併してできた会社です。私は2012年に広報として入社しましたが、当時は広報PR体制ができておらず、中部エリアではある程度認知されているものの、関東や関西エリアではまったく知られていない状態でした。そこをなんとかしたいと、市川海老蔵さんを起用し「歴史ある若い会社」というキャッチコピーのテレビCMを放送。2022年には、光洋精工と豊田工機がそれぞれ継承していた事業ブランドを「JTEKT」ひとつに統一したことで、認知を高めています。

そして今、われわれジェイテクトがどのようなイメージを持たれているかというと、未だ「トヨタ系部品メーカー」なんです。そのため、私たちは「トヨタグループの4番目から6番目ぐらいの会社」のイメージから、変えていくことをミッションとして広報PR活動に取り組んでいます。

石川さん/側島製罐(以下、敬称略):側島製罐が広報PRを始めた目的も、やはり認知度を高めることでした。

当社は缶メーカーですが、職人技や最先端技術を使うわけでもなく、大きな機械で量産するビジネスモデルのため、製品には大差がありません。他社との「価格」のみで比較されることも多く、また、認知度の低さゆえに選ばれないこともあります。「とりあえず使ってくれるところならどこでもいい」と赤字受注したケースもたくさんありました。その結果、2000年辺りから売り上げは落ち始め、およそ20年間で3分の1となり、2019年の決算では大赤字の状態。

「この会社に頼みたい」と選ばれる企業になるための仕組みづくりが必要だと思ったんです。社内ではみんなが一生懸命に仕事をして、とてもいいものをつくっているところを見ていたので、それを世の中に発信していくことが、自分の役割だと思って広報PRを始めました。

メディアと地域、社内も変える広報PRの効果

──広報体制ができてから、または広報PR活動を始めてから、社内外で起きた変化や効果として感じていることはありますか。

水藤/ジェイテクト:メディアとのつながりが強くなり、私たちの情報に目を向けてくれるようになったと思います。例えば、自動運転が注目された時期がありましたが、そのとき一部のメディアが「自動運転はドイツのほうが進んでいる」と言っていたんです。そこで、「そんなことないですよ」という雑談をきっかけに、記者の方を当社のテストコースに案内して自動運転の技術を実際に見ていただきました。その記者の方々の自動運転に対する見方が変わり、正しい情報がいろいろなメディアで取り上げられるようになったんです。

また、日本国内のさまざまな場所に工場があるので、地域の会報誌に載ることがあります。以前は、情報がアップデートされず古い情報のまま載ってしまうこともありましたが、今は、自治体や地域から「まずは相談してみよう」と思っていただけるようになり、正しい情報を届けられています。これも広報として自治体や地域の方々との関係性を築いてきた結果だと思います。

──関係性の構築は大切ですよね。石川さんはいかがでしょうか。

石川/側島製罐:やはりメディアへの露出が増えることで社内外からの反響は大きく変わったと思います。お客さまから「側島製罐で缶をつくってほしい」と嬉しい言葉をいただくこともありますし、テレビを見て当社の求人に応募してくださる方が増えました。

その中でも特に大きな影響は社内の変化です。テレビや新聞から客観的な視点で取り上げられたものを目にすることで、「こんなに格好よく取り上げていただいているのだから、ちゃんとしなくては」と僕自身、強く思うようになりました。それと同時に、会社のみんなも同じように「自分たちも頑張ろう」という思いになったことが、一番嬉しかった変化ですね。

そこで、PRゼミ!第二部レポート01

「広報計画」の見える化

──広報PR活動を通し、社内外にいい影響がたくさんありますね。今まで広報PRをしてこなかったBtoBメーカーが外に情報を出していくためには、社内の理解や協力体制も必要になると思います。具体的に取り組まれたことなどがあればお聞きしたいです。

水藤/ジェイテクト:まず、商品がいつ発売され、いつプレスリリースを出せるのか、プレスリリースか取材のどちらがいいかなどの「広報計画」を見える化しました。合わせて、多数の部署から集まる多くの情報を整理するために、SNSのタイムラインのようにまとめ、管理しています。

また、広報グループのメンバーで、毎朝10時からの30分間、ニュースをチェックする時間を設けて、自社にとってはもちろん、他社、業界全体にとって良いニュースを10件ほどピックアップ、ポータルサイトに載せて社内で読んでもらいやすい環境をつくっています。あとは、取り組んだ広報PR活動に対してどれだけアウトプットが出ているのか、成果の共有は大切にしていますね。

参考:株式会社ジェイテクトの「広報計画」の見える化のポイントは「ひとつのニュースから社内外へ効果を広げる。2年で体制を整えた製造会社の広報PR」からご覧いただけます。

そこで、PRゼミ!第二部レポート02

背伸びしない「等身大」の情報発信に努める

石川/側島製罐:僕が大切にしているのは、背伸びをせずに情報を発信することですね。中小企業、なかでも当社のような下請けをしている会社は、自分たちの仕事に対する価値を感じにくかったり、仕事に対する誇りを見いだしにくい部分があったりすると思います。その中で、メディアに取り上げていただいたものが実際とは異なる背伸びした内容だったら、「うちのことじゃない」「格好つけて書いているだけ」と社員は感じてしまう。そうではなく、社員が「自分たちは世の中でこんなふうに見てもらえている」と自信につながり、喜べるように、ありのままの情報を外に発信していくことを大切にしています。

参考:側島製罐株式会社のプレスリリースのポイントは「年商1/3から再起。缶の新しい価値を展開する、創業116年老舗企業の挑戦」からご覧いただけます。

はじめの一歩は楽しむことと継続

──広報は外への発信というだけでなく、社内エンゲージメントも高めるんですね。BtoBの広報PRを始めるといっても、具体的に何をしたらいいのかわからない方もいらっしゃると思います。おふたりが日頃からやっていることや、ヒントになることがありましたら、ぜひ教えてください。

石川/側島製罐:中小企業のプレスリリースは自由度がとても高いと思うんです。「自分たちは普通だ」「こんなの恥ずかしくて外に出せない」という話が、実は世の中の人にとってはものすごく興味・関心を引くことも少なくありません。

当社が大赤字だったことも、今につながっていることを考えると大切な資産だと思うんです。そういう資産を見つけて、自由な発想で発信し、取り組んでいくと、広報PRがとても楽しくなるのではないでしょうか。

そこで、PRゼミ!第二部 プレスリリース事例
【レガシー業界の事業承継】「日本の缶の文化を未来に繋いでいきたい」創業117年の老舗缶メーカーで36歳の代表取締役が誕生

|側島製罐株式会社「事業継承発表」のプレスリリースのポイント

導入部分で、大切にしている「等身大」の言葉で会社の歴史を綴っています。また、赤字だったことにも触れることで、どう乗り越えてきたかなど会社のストーリーに関心を持つきっかけになり、また今後の展望を加えることで期待を抱かせる内容になっています。(PR TIMES 取材担当者より)

水藤/ジェイテクト:プレスリリースでいうと、自らが配信したものをきっかけに、思わぬメディアに取り上げられたり、想定してた内容と異なる記事になったりすることがたくさんあります。それらがさらに転載され、SNSで引用され、話題になる。無限の可能性がある広報の仕事ならではの醍醐味だと思います。また、1本のプレスリリースからの波及効果があることはもちろんですが、プレスリリースを積み重ねていったものがまとめて取り上げられることもあります。継続することは大切にしていただきたいですね。

あとは、どうしてもBtoBビジネスの場合、広報PR活動をやらなくてもいいんじゃないかという意見をいただくことや、理解・関心を得られないことがあります。そんなときはまず、社内に対しても心を開いてもらうことが大切ではないでしょうか。理解いただけると、とても頼りになる存在になることも多いので、根気強くコミュニケーションを取ってみるといいと思います。

そこで、PRゼミ!第二部レポート03

まとめ:BtoBメーカー2社に学ぶブランドの可能性を広げた広報PR

会社の課題や歩んできた歴史が異なる2社のBtoBメーカーが取り組む広報PRですが、いずれもブランドのイメージを変える、ブランドとしての価値を高める目的で始まっています。

おふたりが広報PRで大切にされているポイントは下記の通りです。

水藤さん/株式会社ジェイテクト

  • 広報計画」の見える化と社内の広報PRにかかわる環境をつくる
  • メディア、自治体・地域に方々との関係性を構築する
  • プレスリリースは1本ずつの発信と合わせて積み重ねを大切にする

石川さん/側島製罐株式会社

  • ありのままを伝える「等身大」の情報発信をする
  • 失敗体験も含め資産となる情報を見つける

これまでの取り組みを通しての効果や実際に行ってきた具体的な内容が共有された愛知PRゼミ第二部のレポートをお届けしました。広報PRに力を入れたいBtoB企業の担当者の方にとって参考となれば幸いです。

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