転職や部署異動・担当業務の変更、または業務を外部企業に移管するなどの際には、業務の引き継ぎ資料が必須となります。引き継ぎは、担当者が変わっても滞ることなく業務を進められるよう、さらに後任者の業務状況に配慮しつつ実施する必要があります。
本記事では、広報担当者に役立つ引き継ぎ資料を作成する際に注意したいポイントや具体的な進め方をご紹介します。
社内外への仕事の引き継ぎに求められる3つのこと
仕事の引き継ぎをする際には、どんなことを意識すればよいのでしょうか。広報業務は社内外問わず多岐にわたります。過不足なく引き継ぐために求められる3点についてご紹介します。
1.小さな業務も漏らすことなく引き継ぐ
自身が担当している特定の業務をひとつふたつと引き継ぐのではなく、持っている全部の業務を引き継ぐとなると、漏れが発生することも多くなります。特に、作業ボリュームが多い業務に集中するあまり、小さな業務の引き継ぎ漏れが発生してしまうことがあります。年に数回の作業や自分がひとりでやっていた業務など、一つひとつのボリュームは小さくても、その業務は放置されてしまうことになります。
担当者がいなくなった状態で引き継ぎ漏れが発覚すると、業務の大小にかかわらず大きな工数が発生します。ノウハウも担当者に集約されていることが多いので、小さな業務も洗い出し、漏らさず引き継ぐようにしましょう。
2.理解しやすく後々も見返せる引き継ぎ資料を作成する
業務を引き継ぐ際には、必ず引き継ぎ資料を作成します。口頭で引き継いで相手がメモを取るような形は、抜け漏れの原因になるので避けましょう。また、自分では「簡単な業務だし」と思っても、後任者が同じように感じるとは限りません。初めてその業務を担当する人が、引き継ぎ資料を見ながら業務を遂行できるくらいの濃度の情報を渡すようにしましょう。特に複数部署が関係するような業務の場合は、担当する作業の前後の繋がりや全体像を把握すると業務の意義を理解しやすくなります。引き継ぎ資料に盛り込むとよいでしょう。
3.相手がきちんと理解できるよう余裕を持って行う
引き継ぐ時には後任者のスケジュールを考慮して計画を立てます。後任者の現在の業務に支障が出ないよう、かつ不明点が発生した時に問い合わせができるくらいの余裕を持って行いましょう。引き継ぎが発生するような時は自身も忙しいことが多いですが、自分中心のスケジュールにならないよう注意が必要です。
仕事の引き継ぎは具体的に何をするの?
では、仕事の引き継ぎでは具体的に何を行えばよいのでしょうか。ここでは引き継ぎに必要な3点について見ていきましょう。
1.引き継ぎ対象業務の内容を明確にする
自身が引き継がなければならない業務の内容を漏れなく洗い出します。なんとなく文章化するのではなく、業務のステップや作業手順ごとに細分化すると、関連する事項も明確になってきます。引き継ぎに際して作成する引き継ぎ資料は、業務マニュアルも兼ねています。引き継ぎ資料にもとづいて作業をすれば間違いなく進められる、くらいの精度に仕上げましょう。
2.事務的な内容だけでなく経験で得たノウハウなども伝える
長く業務を担当しているうちに経験を積み、その経験の中で得たノウハウもあるでしょう。引き継ぐ際には、こうしたノウハウも後任者に伝えます。業務の正確性や効率が上がり、滞りのない業務遂行に繋がるでしょう。担当者が変わっても業務遂行に支障がないということは、後任者の努力やスキルもありますが、前任者がきちんと引き継ぎを行えた証しでもあります。
3.後任者が気持ちよく引き継げる環境づくりをする
後任者の通常業務の状況や、引き継いだ業務への理解度などを鑑みながら引き継ぎを行います。一緒に業務を進められる時には、不明点や疑問点を解消する時間を設け、後任者ができるだけスムーズに業務に入れるように心掛けましょう。また、業務に関係している他部署や後任者の上司などに状況を共有し、自身が異動・転職で不在になった後のフォローアップ体制を作っておくことも大切です。
仕事の引き継ぎを行う流れ5ステップ
ここでは、実際に仕事の引き継ぎを行う際の進め方を見ていきましょう。広報担当者の引き継ぎに役立つよう手順を5つに分けてご紹介します。
ステップ1.引き継ぎ対象の業務をリストアップする
まず、引き継ぎ対象の業務をリストアップしてみましょう。週次・月次・年次の観点で自身の業務を洗い出し、抜け漏れがないようにします。リストアップできたら各業務の引き継ぎ先と照合し、引き継ぎ先が適切かどうかを確認します。この時に、現在決まっている引き継ぎ先よりもより適切な後任部署・担当者が出てきた場合は、上司などに相談して判断を仰ぎましょう。
ステップ2.引き継ぎのスケジュールを組む
引き継ぎ対象業務と後任者が決まったら、引き継ぎのスケジュールを組みます。引き継ぎ対象業務のサイクルなどを考え、余裕のあるスケジュールにしましょう。実際に一緒に業務対応しながら引き継ぎたいものについては、後任者にその旨を提案してみます。また、引き継ぎ先の部署・後任者の通常業務のスケジュールを事前確認し、できるだけ影響が少なくなるようにしましょう。
ステップ3.引き継ぎ資料(マニュアル)を作成する
業務内容と手順などをまとめた引き継ぎ資料を作成します。業務別に引き継ぎ資料を検索する可能性も想定して、業務ごとにファイルデータを分けて作成しましょう。
また、さまざまな部署と連携する業務を複数担当している場合は、担当業務の全体像を全業務の引き継ぎ資料に添付しておくことをおすすめします。こうした業務は実は相互に関連性があったり、時に自身がハブ(中心)になっていて、知らず知らずのうちに身に付いたノウハウによって円滑に進んでいたり、というケースもあります。前任者が担当していた時の状況がわかるようになっていると役立つこともありますので、作成して添付しておきましょう。
ステップ4.後任者への説明
作成した資料にもとづいて引き継ぎを実施します。資料を見ながら説明し、過不足があれば引き継ぎ資料の修正を行いましょう。机上での説明で完全に引き継ぐことは難しいため、まずは業務の全体像と流れを把握してもらいます。その場でまたは後日、疑問や不明点等を聞いて再度説明するなどして解消します。必要があれば引き継ぎ資料もアップデートしておきましょう。
ステップ5.実際に業務を行いながら最終確認をする
業務サイクル上、一緒に作業できるものについては実際に行ってみます。漏れがないよう引き継いだつもりでも、実務を行うことで疑問や話に出ていなかった細かい懸念点などが出てくることもあります。1ヵ月サイクルなどの短いタームの業務は一通り一緒に進められると安心です。また、年次業務など長いタームの業務については一緒に作業できるところまでをフォローし、後は資料に落とし込みましょう。
引き継ぎ資料を作成するときの4つのポイント
広報・PR業務の引き継ぎ資料を作成する際には、どのような点を意識すればよいのでしょうか。ここでは作成するにあたって押さえておきたいポイントを4つご紹介します。
ポイント1.初めて業務を担当する人が見ても理解できるように作る
特に社内で引き継ぎする場合は、「同じ会社の業務なのだからわかっているだろう」と考えて、情報が不十分な引き継ぎ資料を作成してしまうことがあります。また、既に業務に慣れている自身の感覚で作成すると、抜け漏れが多くなります。引き継ぎ資料は、「その業務を知らない人が読んでもわかる」ような記載・情報量を心掛けましょう。
ポイント2.引き継ぐ業務を項目化し優先度順に記載する
引き継ぐ業務が複数ある場合は、業務の一覧も作成します。一覧は優先度が高いものから記載しましょう。引き継ぐ際にもなぜ優先度が高いのかをきちんと説明し、後任者にも認識してもらいます。各業務の優先度やその理由がわかることで、自分が既に持っている業務を含め、全体的な進行スケジュールを作成しやすくなります。
ポイント3.関連データや関係部署・人を明記する
業務に必要な電子データなどのありかは、引き継ぎ資料内の説明箇所にリンクを貼る(URLを表記する)などしておきましょう。その際には、今後データの保管場所が変更になること等も鑑み、リンクを記載した日時(20XX年XX月XX日現在など)を併記しておきます。
また、業務に関係する部署や担当者も明記しておきましょう。特に、判断が必要になる基準やその際の決裁者がわかるようにしておきます。
ポイント4.データと紙の両方を用意する
引き継ぎ資料を作成したらプリントアウトし、データと紙の両方を後任者に渡せるようにします。データが消失するなどの、万が一の事態も想定して紙での保管もしておくとよいでしょう。また、引き継ぎを行うときには保管分とは別に後任者の分も出力して渡すと直接覚書などができ、後で見返した時にも思い出しやすいでしょう。
余裕あるスケジュールと漏れのない引き継ぎ資料で、スムーズな引き継ぎを実現しよう
広報・PR業務に限らず十分に準備された引き継ぎは、業務の滞りない進行を実現するためにも重要です。引き継ぎの失敗は業務の遅滞、顧客の信頼の失墜などを招き、しいては会社に損失を与えます。担当者が変わっても業務に何の支障も生じないということは、前任者と後任者の間できちんとした引き継ぎが行われた証しです。引き継いだ後に余計な工数を発生させないためにも、引き継がれる身になって丁寧な引き継ぎを行うよう 心掛けましょう。
引継ぎ資料作成に関するQ&A
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