女性活躍推進は、いまや一部の先進企業だけの取り組みではなく、企業評価の前提条件として求められるテーマになっています。近年では評価軸の変化とともに、女性活躍の状況が可視化され、なでしこ銘柄のように市場や社会からの評価にも反映されるようになりました。
「取り組みはあるものの、どこまで社外に発信するべきか迷う」「数値を公表することに不安がある」「発信が表層的に受け取られないか懸念がある」。女性活躍推進を“どう伝えるか”に悩む広報PR担当者にとっても、重要なテーマではないでしょうか。
本記事では、女性活躍推進の基本から、企業が直面する実態、広報PRが果たす役割までを整理。制度対応にとどまらず、実務に活かすための視点を解説します。
女性活躍推進とは?基本定義と経営・社会的背景を解説
女性活躍推進は、人事施策にとどまらず、企業評価やブランドイメージにも直結するテーマであり、広報PRにとっては発信設計が問われる領域です。まずは制度上の定義と、その位置づけを整理します。
女性活躍推進の定義・概要
女性活躍推進は、「女性活躍推進法」に基づき、企業が女性の就業状況を把握し、課題を分析したうえで行動計画を策定・公表することを求める取り組みです。
一定規模以上の企業には情報公表が義務付けられており、女性の採用比率や管理職登用状況などを可視化することが求められます。制度の目的は、女性の活躍機会を広げることにより、多様な人材が能力を発揮できる社会を実現すること。「女性活躍推進法」に対応することはあくまでもスタートラインであり、実際の取り組み内容や、その先の社会への発信と合わせて検討しなければなりません。単なる数値目標ではなく、組織の在り方そのものを見直す視点が重要です。
女性活躍推進の目的・経営・社会的背景
女性活躍推進とは、性別にかかわらず、個々の能力や意欲を十分に発揮できる環境を整えることを目的とした取り組み。少子高齢化による労働力不足や、価値観の多様化が進む中、従来の働き方や評価制度では持続的な成長が難しくなっています。
その結果、女性の就業継続や管理職登用、柔軟な働き方の整備が重要視されるようになりました。社会課題への対応であると同時に、企業経営の視点でも不可欠なテーマとなっています。
女性活躍推進法による企業への影響
女性活躍推進法は、企業に対して女性の活躍状況を把握し、課題分析や行動計画の策定・公表を求める法律。一定規模以上の企業では情報公表が義務化されており、対応の有無が企業評価に影響するケースも増えています。
ここで重要になるのが、広報PRの役割です。企業の取り組みを社会に伝えるだけでなく、外部からの評価や反響を社内にフィードバックし、施策改善につなげることも求められます。制度対応にとどまらず、実態を伴った取り組みとして伝え続ける姿勢が、企業価値の向上につながります。
女性活躍推進に取り組む企業のメリット
採用・IR・社内エンゲージメントの3方向に影響を及ぼすテーマです。発信の設計次第で、企業評価を押し上げる要素にも、形骸化のリスクにもなります。
女性活躍推進は、すでに多くの企業が取り組んでいるテーマであり、「やっていない」こと自体が評価リスクになりつつあります。一方で、制度や数値の公表を行っていても、その背景や実態が十分に伝わらなければ、形式的なポーズと受け取られてしまう可能性もあります。
重要なのは、「取り組んでいるかどうか」ではなく、その取り組みをどのように社内外へ伝え、どのステークホルダーにどのような価値として認識してもらうかです。広報PRの視点から見ると、女性活躍推進は発信設計によって成果が左右されるテーマともいえます。
女性活躍推進がもたらす主なメリットは、以下のように整理できます。
■IR・投資家評価への影響
ESG投資の広がりにより、女性管理職比率や育児支援制度の整備状況は評価指標の一部となっています。情報開示の質は、企業の透明性や将来性を測る材料として見られています。
形式的な開示にとどまると評価につながりにくく、逆に開示の一貫性や説明責任が問われる場面もあります。広報PRは、数値の背景や改善プロセスまで整理し、ストーリーとして伝える役割を担います。
■社内エンゲージメントへの影響
女性活躍推進は、女性だけの問題ではなく、働き方や評価制度の見直しにつながるテーマです。取り組みの意図や背景を丁寧に共有することで、従業員の納得感やエンゲージメント向上につながります。
逆に、社内理解が進まないまま社外発信を強めると、温度差が生まれ、メッセージの信頼性が揺らぐ可能性もあります。広報PRは、社内外の温度差を把握しながら、発信の順序や表現を設計する必要があります。
企業における女性活躍推進の現状と課題
女性活躍推進は制度整備が進む一方で、実態とのギャップが指摘されています。女性管理職比率は緩やかに上昇しているものの、依然として低水準にとどまっています。また、近年は外部から女性人材を採用する動きも広がっており、社内育成とのバランスや受け入れ体制の整備も新たな課題となっています。
日本企業の女性活躍推進の現状
女性管理職の割合の平均は前年比0.2ポイント増の11.1%で過去最高も小幅の上昇にとどまった。女性役員割合の平均は13.8%と過去最高も、「役員が全員男性」の企業は依然50%を上回る。
引用:女性登用に対する企業の意識調査(2025年)|株式会社 帝国データバンク[TDB]
帝国データバンクの調査からも、女性管理職・役員の割合はいずれも過去最高を更新しているものの、依然として1割台にとどまっている現状がうかがえます。数値は緩やかに改善しているものの、変化のスピードは決して速いとはいえません。
このように、日本では女性管理職比率の低さや、出産・育児期のキャリア継続が課題とされています。近年は、女性管理職候補を外部採用で補おうとする企業も増加していますが、社内文化や評価制度が追いつかず、定着や活躍につながらないケースも見られます。制度整備や採用強化に加え、組織文化やマネジメントの変革まで踏み込めていない企業が多いのが実情です。
こうした状況下では、広報PRの発信設計にも注意が必要です。数値のみを切り取って発信すると、実態との乖離が生まれ、「形式的な取り組み」と受け取られる可能性があります。現状の正確な位置づけを示したうえで、課題認識や今後の方針をセットで伝える姿勢が求められます。数値は成果の証明であると同時に、説明責任の対象でもあるという意識が重要です。
女性活躍推進における主な課題
課題1.国・社会制度に起因する構造的な課題
日本は、OECD諸国と比較しても、ジェンダーギャップ指数が低い水準にあり、特に「経済参加と機会」の分野で課題が大きいとされています。
参考:世界経済フォーラム「ジェンダー・ギャップ指数」
長時間労働を前提とした働き方や、育児・介護を個人の努力に委ねる制度設計は、女性の就業継続やキャリア形成を阻む要因となっています。制度面での改善は進みつつあるものの、社会全体としての働き方改革や意識変容が追いついていない点が課題です。
課題2.企業内の制度・組織文化に関する課題
企業単位では、制度そのものは整いつつあるものの、運用面で課題が顕在化しているケースも少なくありません。無意識のバイアスやロールモデル不足、管理職層の理解不足により、昇進意欲が育ちにくい状況が生まれています。また、外部採用で女性人材を登用しても、評価制度やマネジメント体制が整っておらず、定着や活躍につながらない例も見られます。制度と現場運用の乖離が大きな課題です。
課題3.女性活躍推進を促進するための広報PRの課題
女性活躍推進は、制度名や数値のみを切り取って発信すると、実態との乖離が生まれやすいテーマです。女性管理職比率や認定取得の事実だけを強調すると、「取り組んでいるポーズ」と受け取られる可能性もあります。
たとえばサイボウズの事例でも、柔軟な働き方やチームでの業務推進など、取り組みの考え方を含めて発信しています。
女性活躍推進の企業事例・広報PRへの活かし方
女性活躍推進は、制度を整えるだけでなく、その取り組みをどう運用し、どう伝えるかによって成果が大きく変わります。ここでは、業種や企業規模の異なる事例をもとに、制度設計や組織づくり、広報PRの工夫がどのように女性活躍推進や企業価値向上につながっているのかを紹介します。自社での実践を考える際のヒントとしてご覧ください。
事例1.育児と仕事の両立を支える制度設計
不動産事業を展開する株式会社グローバル・リンク・マネジメント は、女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定」最高位(3つ星)を取得しました。同社はこの第三者認定を単なる実績として公表するだけでなく、女性管理職へのインタビュー動画を公式YouTubeで発信し、取り組みの実態を可視化しています。
認定という客観的評価に加え、「人」を前面に出すことで制度の温度感を伝え、動画という形式でリアリティを補強している点が特徴です。制度整備そのものだけでなく、発信設計まで一体で考えている好例といえるでしょう。
参考:GLMが女性活躍推進企業として「えるぼし認定」最高位の3つ星を取得
事例2.女性管理職登用を見据えた制度づくり
株式会社橋本組は建設業界という人手不足・男性中心の業種でありながら、「えるぼし認定」最上位を取得した企業です。同社は、業界内での女性比率向上という成果を数値で示すだけでなく、「なぜ取り組んだのか」「業界構造の中でどのような課題があったのか」といった背景もあわせて発信しています。
構造的な業界課題を前提に、自社の立ち位置や変化のプロセスを言語化している点は、単なる実績紹介にとどまらない広報PRの工夫といえるでしょう。
参考:建設業界で女性比率26%を実現。株式会社橋本組が「えるぼし認定」最上位・認定段階3を取得
事例3.広報PRを通じた企業価値の向上
株式会社丸天産業は名古屋市主催の「女性の活躍推進企業認定・表彰制度」で従業員部門最優秀賞を受賞しました。同社はこの第三者評価を単なる受賞実績として扱うのではなく、「なぜ評価されたのか」「どのような変化が起きたのか」をあわせて発信しています。行政制度との連動や地域評価を活用することで、自社の取り組みを客観性のあるストーリーとして提示している点が特徴です。
第三者認定を“実績”で終わらせず、企業姿勢を示す材料として展開している好例といえるでしょう。
参考:名古屋市主催「女性の活躍推進企業認定・表彰制度」において最優秀賞・従業員部門表彰を受賞
事例4.女性の働きがいを高める組織づくり
アパレルブランドを展開する株式会社クロシェでは、顧客や社員の声を商品開発と情報発信の両面に反映し、担当者の葛藤や背景まで言語化することで、共感を生むコミュニケーションを展開しています。女性が企画から発信まで関わる姿勢そのものをブランド価値として発信している点も特徴です。
女性が企画・判断・発信に関わる環境づくりが、企業成長を後押ししています。
参考:【ファルファーレ】神戸本社ビルでのPOP UPとお客さまが楽しめるファンミーティングのようなイベント開催。2025年2月12日から
事例5.女性経営者の視点を生かした制度とブランド戦略
老舗インナーウェアメーカーの株式会社タカギは、女性経営者の視点を生かし、働きやすい環境整備と事業成長を両立しています。社内制度の整備にとどまらず、女性のライフステージに寄り添う商品開発やブランド戦略へと発展させ、女性の社会活躍を応援するブランド「ayame(アヤメ)」を立ち上げました。さらに、月経教育などの社会貢献活動にも取り組んでいます。広報PRでは、代表と担当者が密に連携し、取り組みの背景や想いをストーリーとして発信しています。
女性活躍推進を実行する5つのステップ
女性活躍推進を実効性のある取り組みにするには、制度設計や運用だけでなく、初期段階からの広報PRの関与が重要です。後工程で「発表のみ」を担う形になると、背景や意図の理解が浅くなり、表層的な発信にとどまる恐れがあります。
広報PRは、取り組みの設計段階から関わることで、社内外に一貫性のあるメッセージを構築し、外部からの反響を施策改善へとつなげる役割を担います。ここでは、その前提で進める5つのステップを整理します。

STEP1.現状把握と課題の可視化
まずは自社の女性比率や職種別構成、管理職比率、離職状況などを整理し、課題を可視化します。感覚的な判断ではなく、データに基づいた現状認識が重要です。広報PRはこの段階で、「自社は社外からどのように見られているのか」「業界内で比べた際の位置づけはどうか」などを整理。
会社が抱える課題や背景を正しく理解しておくことで、後の情報発信に一貫性を持たせることができます。数値だけでなく、制度が利用されていない理由や現場の声も把握することで、表面的な発信にとどまらない土台づくりにつながります。
STEP2.行動計画と数値目標の設定
次に、課題解決に向けた行動計画と数値目標を設定します。進捗を確認できる仕組みを用意したうえで、広報PRがどの指標にコミットするのかも明確にし、広報PRとしてのKPIを定めます。
(広報PRにおけるKPI設定例)
- 取り組みの認知拡大に向けた情報発信の頻度(女性活躍関連の発信本数、関連テーマでのメディア掲載数)
- 社外からの反響(採用候補者からの問い合わせ内容の変化)
- 社内の理解・浸透度(社内アンケートでの理解度向上度合)
あわせて、数値が単独で切り取られないよう「単年度か推移か」「比較軸(自社内・業界内)」「未達時の説明方針」までセットで設計しておくと、発信のブレを防げます。
STEP3.制度・働き方の整備
柔軟な働き方や評価制度の見直しなど、具体的な制度整備を進めます。この段階では、広報PRが「なぜこの取り組みを行うのか」という背景を十分に理解しておくことが欠かせません。
また、制度設計に関わった担当者や検討のプロセスを把握しておくことで、発表時に情報の厚みを持たせることができます。問い合わせ対応の窓口や責任者を明確にすることも、信頼性の高い情報発信につながります。
STEP4.管理職・現場への浸透
制度を整えた後は、管理職や現場への浸透が重要です。社内向けの説明やコミュニケーションを通じて、取り組みの目的を共有します。広報PRは、社外への発信だけでなく、外部から寄せられた反響や評価を経営層や関係部署にフィードバックする役割も担います。社外の声を社内に還元することで、施策の改善や追加施策につなげやすくなります。
STEP5.効果検証と改善
最後に、社内への浸透度や社外からの反響を定期的に検証します。浸透が進んでいない場合は、その理由や改善方法を整理し、次の施策に反映させることが必要です。また、社外の反響と本来伝えたい取り組み内容にズレがある場合は、発信方法や切り口に課題がないかを検証します。
女性活躍推進は短期的成果が出にくいテーマです。業界動向や他社事例も踏まえながら見直しを行うことで、女性活躍推進の質を継続的に高めていくことができます。
女性活躍推進の社内外に浸透させ、成功させる広報PRにおける5つのポイント
女性活躍推進は、制度や施策を実行するだけでは成果につながりません。重要なのは、その取り組みが社内外でどのように理解され、受け止められているかです。広報PRは、取り組みの背景や意図を言葉にし、社会との対話を通じて施策を育てていく役割を担います。ここでは、女性活躍推進を一過性で終わらせず、浸透・定着させるために押さえたい広報PRのポイントをまとめます。

ポイント1.トップメッセージを「宣言」で終わらせない
女性活躍推進を進めるうえで、経営トップのメッセージは重要な起点となります。ただし、表層的な宣言で終わってしまうと、現場との乖離が生まれかねません。大切なのは、トップの意思を一貫した言葉で示し続けることです。
実態と合わない理想論を掲げるのではなく、現状の課題や試行錯誤も含めて語ることで、メッセージに説得力が生まれます。広報PRは、トップの言葉が現場の実情とずれていないか、メッセージは継続されているかを確認し、納得感のある形で社内外に届ける役割を担います。
理想論だけを掲げたり、現場の声とズレがでたりしていると、社内外の信頼を損なうリスクがあります。
ポイント2.制度ではなく「人」と「プロセス」で語る
女性活躍推進を「制度の話」だけにしてしまうと、当事者意識が生まれにくくなります。制度がどのように使われ、現場でどんな変化が起きているのかを可視化することが重要です。広報PRでは、制度そのものだけでなく、当事者のエピソードや現場の工夫を丁寧に拾い上げる視点が求められます。
その際、「女性だけの話」に見せない言葉選びもポイントです。働き方の変化や組織の工夫として伝えることで、取り組みを自分ごととして捉えてもらいやすくなります。
ポイント3.数値の裏側まで伝える
女性管理職比率や制度利用率などの数値は、取り組みの進捗を示すうえで欠かせません。一方で、数値だけでは実態が伝わりにくいため、背景やプロセス、当事者の声と組み合わせて発信することが重要です。
成果だけでなく試行錯誤の過程も含めて伝えることで、共感と信頼を積み重ねやすくなります。
ポイント4.社内の温度差を見逃さない
社内に違和感や反発が残ったままでは、女性活躍推進は定着しません。その状態で社外発信を行っても、メッセージにズレが生じ、共感を得にくくなります。広報PRは、社外向けの発信だけでなく、社内の声を拾い上げ、ギャップを可視化する役割も担います。
疑問や不安を無視せず、対話を重ねることで、取り組みの理解が深まります。社内で腹落ちしていない施策は、社外にも浸透しにくいという意識が重要です。
ポイント5.発信を企業姿勢として継続する
プレスリリースやSNS、オウンドメディアを活用した継続的な情報発信は、女性活躍推進を企業の姿勢として定着させるうえで欠かせません。採用やブランドコミュニケーションとも連動させ、一貫したメッセージで伝えることが重要です。
また、発信はゴールではなく、社外からの反響を受け取るための手段でもあります。寄せられた評価や意見をもとに内容をアップデートしていくことで、取り組みはより実態に即したものへと進化していきます。
まとめ:女性活躍推進を「語れる企業」になり、企業価値向上につなげる
女性活躍推進は、イメージ向上のための加点施策ではなく、いまや企業活動の前提として求められる取り組みです。制度整備にとどまらず、現状把握から計画策定、実行、発信までを一貫して進めることで、組織のあり方そのものが見直されていきます。
広報PRには、取り組みを「あるもの」として語り、背景やプロセスを丁寧に伝える役割があります。数字だけでなく、考え方や変化の過程を発信することで、共感と信頼が積み重なり、企業価値の向上につながります。女性活躍推進を特別な施策にせず、持続的な成長を支える土台として取り組んでいきましょう。
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