働き方が多様化することで注目を集めているワーケーション。並列で語られる傾向にあるブレジャーとの違い、従業員と企業、自治体にとってのメリット・デメリットに言及したうえで、満足度を上げるワーケーションの条件、ワーケーションをPR手法に生かす方法を実例とともにご紹介します。
ワーケーションとは?
WORKとVACATIONを合わせた造語であるワーケーション(WORKATION or WORCATION)は、オフィス環境から離れた観光地などで、仕事と休暇をバランスよく取り入れながら楽しんで働くスタイルを指します。心身ともにリフレッシュするため、リモートワークが中心になった今注目を集めています。
ワーケーションを分類すると、自身のスキルを生かして地域課題解決の一助となる「地域課題解決型」、合宿や研修でオフサイトで活動をする「合宿型」、レンタルオフィスや郊外の支店など、自社リソースを利用して働く場所が選択できる「サテライトオフィス型」といったパターンがあります。あるいは、企業が環境整備をしてくれる場合と、自己研鑽を目的として、主に実費で行う場合の2つに大別できるといえます。
ブレジャーとは?
主に企業の出張先で滞在を延長して余暇を楽しむスタイルを指します。ワーケーションが、1日の中で仕事と休暇を切り分けて過ごすのに対し、ブレジャーは、仕事の日と休暇の日をはっきりと分けるのが大きな違いになります。企業の福利厚生や人事制度によって内容が異なりますが、往復の交通費は会社負担、延長した滞在費を実費負担で休暇として楽しめる制度です。
ワーケーションの普及率
生産性向上やリフレッシュ、社員のエンゲージメント向上と多くのメリットがあるワーケーションですが、セキュリティや従業員の管理方法が見いだせずになかなか企業での導入が進まない現状があります。一般社団法人日本ワーケーション協会特別顧問の箕浦龍一氏によると、そもそも従業員の仕事ぶりを管理するのはどのような環境でも難しいといいます。
大切なのは、「ワーク」の意味を再定義すること。「ワーク」を、自分自身や所属組織による「価値創造活動」と捉えると、各自の課題解決に向けたディスカッションや人脈形成・営業活動につなげるような活動も「価値創造活動」になるため、ワーケーションが実態に則した理解に近づき、企業も個人も視野を広く持ってワーケーションを導入できるようになると説いています。
参照:ワーケーションまちづくり・ラボ/ワークスタイルシフトから考える、新しい「ワーケーション像」より
ワーケーションを実施するメリット
従業員、企業、自治体や地域でワーケーションを実施するメリットについて、それぞれの立場で解説していきます。
従業員におけるメリット
普段とは異なる場所で生産活動を行うワーケーションは、体験を通じてリフレッシュでき、メリハリがつくため仕事の集中力が上がります。また、普段の業務も場所が変わるだけで五感が刺激され、アイデアの創出にもつながるでしょう。
企業におけるメリット
ワーケーションを人事制度や福利厚生で導入している企業は、従業員にとって魅力的な企業といえます。採用に有利になるだけでなく、働く場所が選べ、個人のペースで働けることは、従業員満足度の向上、従業員のメンタル面の安定による生産性の向上、帰属意識の高まりなどが期待できます。
受け入れる自治体・地域におけるメリット
ワーケーションを積極的に受け入れるために交流を促す場所や仕事環境を用意し、企業誘致に力をいれることで、関係人口創出、協働事業の発生、地域課題解決、地域の方々の新しい居場所の創出といったさまざまなメリットが生まれます。人口を増やしたい自治体にとっては、ワーケーションを通じて地域の魅力を知ってもらい、二拠点生活の拠点にしてもらう、移住してもらうといった長期的な関係構築が可能です。
ワーケーションのデメリット
メリットが多いワーケーションですが、留意すべき点も確認して導入を検討しましょう。
従業員におけるデメリット
機密情報を扱う方は、オフィスから移動ができずワーケーションが体験できないケースが散見されます。また、よく聞く声に「遊びにいくなら仕事はしたくない」「集中できないのではないか」といった声があります。そういった方こそ、ワーケーションに理解があり、設備を整えているイベントや自治体、施設の利用をおすすめします。
企業におけるデメリット
企業でワーケーションを企画運営する場合は対応コストがかかり、ワーケーションを制度として導入する際は投資対効果の計算が困難なため、コーポレート部門の負担増加が予想できます。従業員の方々に選択肢を与えたうえで結果がどう変わるのか、長期的な視点で導入を検討することが理想です。
受け入れる自治体・地域におけるデメリット
仕事環境を整えるうえで不動産、通信設備とハード整備を完璧に準備をすると、利用者が少ない場合、維持費がかかるため不良債権になるケースが多くあります。また、行政経由で格安のワーケーションプランの準備を強いられた場合、宿泊業者にとってワーケーション自体の印象が悪くなります。地域の人に無理を強いないよう、基本資源を無理のない範囲で利用するといった工夫が必要です。
ワーケーションが行われる施設や場所の例
代表的な施設や場所は、コワーキングスペース、電源完備のカフェなど、仕事をする環境が整備されている場所です。行政によっては通信設備が整った公園や公共施設を用意している場合もあります。リゾート施設、宿泊施設がワーケーションプランを用意して、集中して働き、休憩時間でレジャーを楽しめる工夫を凝らしているケースも目立ちます。
ワーケーションの満足度を上げるための5つのポイント
参加者が満足するワーケーションは、仕事が捗る環境に加えて、Vacationの付加価値が楽しめるコンテンツがあるものです。そのために必要な5つのポイントを具体的に紹介します。
ポイント1.インフラの整ったところを選ぶ
仕事がはかどる環境として最低限必要なのが、電源、Wi-fiです。オンライン会議が必要な方は音への配慮、セキュリティの観点から個別ブースや周りに人がいない宿など場所選びが重要になります。作業によってはモニター、椅子とテーブルの高さ、空気、温度、光、と最適な施設探しが必要です。企業研修を兼ねる場合はホワイトボードやマイクの有無といった設備準備も大切です。
ポイント2.交流する
ワーケーションの醍醐味は、交流による刺激と学びを仕事やアイデアに生かすことです。社員同士の交流はもちろん、個人研鑽を目的としたワーケーションは地元の人との交流、行政との交流、参加者との交流が積極的に行われるコンテンツ、場所を選択しましょう。行政のワーケーション事例を調べ、イベントを探すか、もしくは企画をしてみましょう。
ポイント3.体を動かす
ワーケーションでまず思い浮かぶのは、ワーケーションプランを打ち出すホテルや旅館かもしれません。個人や企業で企画してワーケーションプランを検討する際は、そうしたプランを選ぶのもいいですが、海や山など自然資源、サイクリングをはじめとする体を動かすアクティビティがある場所やイベントに参加することも選択肢になります。リフレッシュし、オリジナルの体験ができると仕事もよりはかどります。
ポイント4.あらかじめ情報を集める
仕事に集中するために、滞在する土地の情報や移動手段を把握している状態が理想です。旅行代理店を通じたプランに参加する場合は問題ないですが、プランを考える必要がある方はインターネットやSNSの情報に加えて、観光局の情報や地元飲食店・宿泊施設からの情報を集めましょう。
ポイント5.業務量と業務の種類を調整する
ワーケーションは余裕が大切になります。ワークの意味を価値創造と捉えるならば、通常業務が詰まっているタイミングよりも、新しい情報を入手したいといった余裕があるタイミングがおすすめです。プログラムを詰めすぎず、情報の交換、新たな学びや仕事につながる出会いを楽しみましょう。
ワーケーションを実施する際に広報PRが行いたい3つのこと
ワーケーションを企業で取り入れて広報PRを行う際にできる施策を3つ紹介します。どれも事例、取り組みの様子をオウンドメディアやSNSを通じて発信することが効果的です。
1.人事制度に取り入れる
ワーケーションを福利厚生や人事制度に取り入れていることは、求職者にとって魅力のひとつになります。自由な働き方を推奨している企業文化が伝わります。
2.地方自治体と連携する
関係人口や移住者を増やすためにワーケーションの受け入れに力を入れている地方自治体は多く存在します。ワーケーション実施の際は行政との連携でワーケーションプログラムを実施するなど自治体を巻き込むことで、企業として地方自治体との連携姿勢をPRできます。
3.環境保全・地域活動とからめたCSR活動を行う
健康経営・SDGsの推進としてワーケーションでワークショップを開催、参加する様子をPRできます。ビーチクリーンやボランティアといった社会的意義があり学ぶきっかけになるコンテンツの体験は従業員の学びになるだけではなく、企業価値を高める契機となりえます。
ワーケーションの導入・広報PR事例4選
ワーケーションを導入している企業の事例から、自社で取り組めるヒントを探ってみましょう。
1.イベント開催
長野県、信州千曲市観光局、株式会社ふろしきやが提供する「千曲市ワーケーションウェルカムデイズ」というワーケーション体験会で、ウンログ株式会社がコラボ企画として「腸活プログラム」を実施しました。千曲市の物産が腸に優しいため、物産を活用したお弁当、お土産セットの開発を監修し、地元企業やワーケーション参加者との協働イベントを実施、PRしました。
参考:ウンログ株式会社と株式会社ふろしきやの「腸活ワーケーション」
2.サテライトオフィスの有効活用
2015年に総務省の地域実証事業に参画し、南紀白浜にサテライトオフィスを開設したのが株式会社セールスフォース・ドットコムです。2000年以降、白浜町はICT企業の誘致を積極的に進めており、民間企業の保養所を町が買い上げて企業誘致のための白浜町ITビジネスオフィスとしているほどです。自由な働き方の推進、社員の生産性向上に寄与するうえ、地域に貢献する取り組みとして注目を集めました。
参考:セールスフォース・ドットコム、地方自治体と共同でテレワークの啓蒙とデジタル変革を支援
3.福利厚生、人事制度に取り入れる
ワーケーション制度を人事制度、福利厚生に取り入れて実績をPRする方法があります。JTBグループは、2022年3月14日、経済産業省および日本健康会議が選ぶ「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)~ホワイト500~」の認定をプレスリリースで配信、社員が自由な場所で働けるよう、「テレワーク勤務」や「ワーケーション勤務」など、制度の拡充を行い発信をしています。
参考:4年連続「健康経営優良法人2022 ~ホワイト500~」に認定 JTBグループの健康経営について
4.行政との連携
企業のサービスがワーケーションのコンテンツになる可能性がある場合、行政との提携やイベント開催が可能です。キャンプ女子株式会社は長崎県五島市と連携したイベントの開催と、キャンプイベントの開催を発表しました。
参考:キャンプ女子株式会社、長崎県五島市にて初のキャンプイベント「GOTO CAMP 2022 SPRING FESTA」を2022年3月12日(土)魚津ヶ崎公園キャンプ場にて開催。
従業員も地域も企業も喜びPRにもつながる、効果的なワーケーションを実践してみよう
ワーケーションは従業員管理、集中力の担保など導入に対して後ろ向きな意見が多く、企業の導入事例や普及率が低く留まっています。しかし、働き方の捉え方を「価値創造」とすると、企業も個人もさまざまな体験をすることは、生産活動、地方への貢献や従業員の帰属意識と無関係ではありません。
行政との連携、環境課題につながるイベントの企画や人事制度としての導入は企業PRになります。働く環境や方法を追求するうえでワーケーションの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
ワーケーションに関するQ&A
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