看板商品の「あぶらとり紙」をはじめ、スキンケアアイテムや化粧雑貨などを中心に開発・販売を手がける株式会社よーじや。京都の老舗として確固たるブランドイメージを持つ同社は今年、60年ぶりとなるロゴ刷新を含むリブランディングを発表。大きな反響を呼びました。
「おみやげの店」から「おなじみの店」へ、「スキンケアブランド」から「ライフスタイルブランド」へ。今回のリブランディングには、どのような思いが込められているのでしょうか。
本記事では、同社代表取締役の國枝昂さんと、広報室室長の出野沙優美さんにインタビュー。広報PRに注力するようになったきっかけや、リブランディングの経緯について、お話を伺いました。
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よーじやグループ 代表取締役
1989年京都市生まれ。大阪大学経済学部を卒業後、公認会計士試験に合格し、EY新日本有限責任監査法人に入社。2019年8月、父の急病を機に家業であるよーじやグループに入社し、5代目代表取締役に就任。「脱・観光依存」を掲げて改革を推進。京都発のライフスタイルブランド「よーじや」をはじめ、飲食事業「十割蕎麦専門店 10 そば」の展開、EC サイトの強化など、多角的な事業展開を進める。2025年3月には「みんなが喜ぶ京都にする」をコーポレートスローガンに、「おみやげの店」から「おなじみの店」を目指しリブランディングを実施した。

よーじやグループ ゼネラルサブマネージャー/広報室 室長
神戸市外国語大学を卒業後、新卒で星野リゾートに入社しホテル運営を学ぶ。2017年に中途採用でよーじやグループに入社し、経理業務を経て、2020年に新設の経営企画室に配属。広報部門の立ち上げを担い、現在は広報室だけでなく、ゼネラルサブマネージャーとして複数部署を管轄。
より広い認知を目指し広報PRを強化
──本日はよろしくお願いします。早速ですが、広報PRの組織や体制について教えていただけますでしょうか。
出野さん(以下、敬称略):よろしくお願いいたします。現在、私を含めて4名が所属していますが、実は広報室の歴史は浅く、私が入社した2017年当時には、広報機能を持つ部署はありませんでした。1990年代にあぶらとり紙ブームがきて以来、ありがたいことに取材をいただける機会が絶えず続いていたんです。そのため、プレスリリース配信をはじめ、当社から積極的にPRをするということができていませんでした。
──定期的に取材が来る中で、広報室を立ち上げて注力しようと思ったのはなぜでしょうか。
國枝さん(以下、敬称略):コロナ禍で経営危機を迎えたことが大きな転機になっていると思います。私は2019年8月に代表取締役としてよーじやに入社しましたが、その当初から「観光需要に依存しない経営」を目標に掲げていました。そんな中、就任半年後に新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、これまで観光客の方を中心にサービスを提供していた当社は、売り上げが大幅に減少。あらためて「脱・観光依存」の必要性を実感したんです。
まずは、観光客の方だけでなく地元の方をはじめ、世間のみなさまに向けて当社の魅力や方針、思いなどを知っていただく。そのために、出野と一緒に広報室を立ち上げ、3、4年かけて広報PRの機能を強化していきました。

「脱・観光依存」を目指した新商品開発と販路拡大
──本格的に「脱・観光依存」を目指されたということですが、そのためにどのような取り組みをされたのでしょうか。
國枝:「新商品開発のスピードを上げること」と「販路拡大」のふたつです。まず、新商品開発については、新商品リリースのスピードを大幅に早めることからスタートしました。当社では毎年、桜の時期と紅葉の時期に限定商品を発売していましたが、目指したのは「京都に来たついでに買うブランド」から「何度も足を運ぶ理由になるブランド」。そのためには、来店のたびに定期的に新しい商品を見つけていただく必要があると思ったのです。現在は、1~2ヵ月に1度は何かしら新商品を発売しています。
また、販路拡大という点では、ここ数年で北海道や大阪にも出店しましたし、年に数回程度だったポップアップも、2024年は10回以上、全国さまざまなエリアで実施できています。福岡など6ヵ月という長期にわたる出店もあるんです。京都に来て購入していただくのではなく、「よーじやがみなさまの近くに出向く」というスタンスで、商品をいつでも購入できる環境を整えることを目指しています。
参考:福岡県・天神地下街にて約6か月にわたる期間限定ショップ「よーじやふらっと」初開催!新商品や季節限定商品を取り揃え、お得なキャンペーンなども実施
出野:私は、2024年3月に新設された「ファンづくり推進部」の業務も担っているのですが、その中で既存顧客以外の方々にファンになっていただけるよう、コラボレーション事業も推進しています。今年4月には、職人手作りのアートキャンディショップ「PAPABUBBLE(パパブブレ)」さんや、発売開始から半世紀以上の長い歴史を持つ「クッピーラムネ」さんとのコラボ商品などを発売しました。若年層に人気の高い企業さまとコラボしたことで、新たな層へアプローチできていると感じられて嬉しいですね。
参考:新たに誕生したよじこがキャンディに!「よーじや×PAPABUBBLE」の初コラボ「よーじやの日(4月28日)」より数量限定で販売
参考:【クッピーラムネ×よーじや】気になる汗やべたつきをふき取る「ひんやりフェイシャルシート」が、限定コラボデザインで登場!
──推し活にぴったりな多色展開のポーチや、お客さまの声から生まれたハンドソープなどの商品も印象的でした。商品開発には國枝さんご自身も携わられているのでしょうか。
國枝:観光客の方だけが喜ぶ商品ではなく、「よーじやのファンのための新しい商品を開発する」という大枠の方向性は伝えていますが、商品開発に関する具体的な指示は、あらゆる業務の中でも私がもっとも関与していない部分だと思います。
私には20代、30代の女性がほしい商品を思いつく自信がないですし、それこそ「推し活」の知識もまったくありません。代表取締役という立場で口を出してしまうと、見えないところで考えを捻じ曲げてしまう可能性もあるので、できるだけ関わらないほうがよいと思っています。もちろん、安心して任せられる従業員がいるからこそ、実現できていることなのですが。

話題となった60年ぶりのロゴ刷新の裏側
──今年3月には、リブランディングの実施と60年ぶりのロゴマーク刷新を発表し、大きな反響を呼びましたよね。リブランディングを決めた経緯について伺ってもよろしいでしょうか。
出野:1990年代のあぶらとり紙ブーム以来、「あぶらとり紙のよーじや」としてみなさまに認知していただけているのはありがたかったのですが、一方で、よーじやは「おみやげの店」というイメージが定着してしまっていたんです。コロナ禍を機に「脱・観光依存」を掲げ、商品ラインナップを変えたり、販路拡大に取り組んでみたりしたものの、一度定着したイメージを払拭するのは容易ではありませんでした。
國枝:よーじやが考えている方向性や、地元の京都にもっと貢献していきたいという思いをしっかりと伝えていくためには、もっと踏み込んだ変化が必要なのではと考え、ロゴマークの見直しを含めたリブランディングを実施することに。それが昨年1月のことです。

参考:「みんなが喜ぶ京都にする」を掲げてリブランディング「おみやげの店」から「おなじみの店」へ
──わずか1年という短い期間で、長い歴史があるものを変えるのは大変なことだったと思います。
出野:そうですね。リブランディングは國枝とゼネラルマネージャー2名と、私の4名が中心となって進めたのですが、とても密度の濃い1年間だったと思います。
國枝:もっとも悩んだのがロゴマークです。以前のロゴマークがコーポレートやブランドなどすべてのロゴマークになっていたので、まずはそこを整理するところから始めました。そして、いざブランドのロゴマークを変えるとなったときには、「手鏡のよじこ」をどこまで残すのかでとても悩みましたね。みなさんに広く認知していただいていたロゴだったので、多少は面影を残したほうがよいのではないか、かといって残しすぎてもイメージが変わらないか、と何度も何度も検討を重ねました。
──従業員のみなさんには、どのタイミングでリブランディングの実施をお伝えしたのでしょうか。
國枝:リブランディングを実施することは、本社のスタッフには早い段階で伝えていました。もともと当社は情報共有のスピードが速く、新しいキャラクターについても、スタッフには2〜3ヵ月前から情報を共有していました。そのため、各部署が「自分たちはリブランディングに向け何をすべきか」を主体的に考えて動いてくれたと思います。企画開発部では、私からのリクエスト前にキャラクターグッズの企画、商品開発を始めてくれていました。広報室だけが経営方針を知って動くのではなく、各部署にしっかりと方向性を伝えられていたからこそ、今回のリブランディングもスムーズに進められたのだと思います。
──リブランディングに関して、社内の理解を得るために工夫されたことなどありますか。
國枝:イントラネットなどを活用して、「情報を発信する場」をつくっていました。大切にしたのは「伝えたかどうか」ではなく「きちんと伝わったかどうか」ということ。まずは、伝わった人に仕事を任せていき、その積み重ねによって少しずつ全体に方向性が浸透していくというプロセスを意識してきました。
トップだからといって、従業員一人ひとりと関わらなくていいわけではありません。むしろ、自分の言葉で「一次情報」として直接伝えることで、理解されやすかったという手応えもありましたね。

「みんなが喜ぶ京都にする」を掲げ、地元貢献できる企業に
──今回新たに、「みんなが喜ぶ京都にする」をコーポレートスローガンとして掲げられました。どのような思いが込められているのでしょうか。
國枝:私たちが「脱・観光依存」を掲げた背景には、売り上げが低迷したことだけでなく、「よーじやが京都にとってどんな存在意義を持つのか」を深く考えさせられたこともきっかけになっています。
120年間、京都で本店を構えてやってきたにもかかわらず、私たちの存在意義は「観光客向けの会社」でしかなく、京都の人にとっては「よーじやがなくなっても誰も困らない」という現実がありました。これからは、京都に関わるすべての人たちのための存在へと変わっていかなければならないと強く感じ、このコーポレートスローガンを掲げています。
──「みんなが喜ぶ京都にする」ために、企業として変わったことはありますか。
國枝:ブランドとしてのよーじやはこれまでのスタイルをある程度保ちつつ、企業としてはさまざまな形で京都に貢献していきたいと思っていて。例えば、私たち自身が直接できない形で京都に貢献してくださっている方々を、よーじやとして応援することも大切だと思っています。単に商品を買っていただくことだけを追い求めるのではなく、京都の人々に応援してもらえたり、誇りに思ってもらえたりするような会社を目指す。これからの私たちの取り組みを通じて、長期的に京都が元気になり、京都に関わる人たちが活性化するようにしたいですね。
──最後に、これから取り組んでいきたいことや、思い描いていることをお聞かせください。
國枝:「よーじやの存在意義を明確に発信し、京都の人たちに応援してもらえる企業になる」という軸をぶらさない、それを体現する施策をひとつでも多く積み重ねていきたいと思います。そのことをしっかりわかっていただけるように一貫性を持って伝え続けていきたいですね。また、よーじやが目指しているのはあくまでも「脱・観光依存」であって、「脱観光」ではありません。「観光VS地元」というように二極化した見方にならないように、「観光客も地元の方も、どちらも両方大切にしている」「両方と向き合っている」という姿勢を、広報PRとしては丁寧に伝えていきたいと思います。
出野:リブランディングを発表し、今とても興味を持っていただいている状態だと思います。会社が考えている方向性や「よーじや」というブランド、コーポレートキャラクターの「よじこ」について、さらに深く知っていただける機会を増やしていきたいと思います。コーポレートスローガンに掲げた「みんなが喜ぶ京都にする」を実現するための取り組みも、これからさらに増えていくと思います。そこに向けた発信力を、いまのうちにしっかりと蓄えていきたいと思います。商品情報に関する発信がメインの現状から、広報PRとしての業務をさらにレベルアップさせて、会社の方向性や思いをしっかり伝えられるようにしていきたいです。

まとめ:企業としての価値を伝える、よーじやの広報PR
リブランディングという大きな挑戦を通じて、より幅広い層に愛されるブランドへの成長を目指す、株式会社よーじや。「おみやげの店」から「おなじみの店」へ。その転換の背景には、「京都にとって必要とされる企業でありたい」という強い思いと、変化を恐れずに挑み続ける企業姿勢がありました。
一貫性のあるメッセージ設計やコラボ企画による話題化、販路拡大によるタッチポイントの拡張など、多面的にブランドの魅力を伝える同社の広報PR活動は、業界を問わずさまざまな企業にとって示唆に富む取り組みといえるでしょう。
老舗ブランドとしての歴史を守りながらも、時代とともにしなやかに進化をとげる同社のこれからに、ますます期待が高まります。
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