広報PRでは、社内外に向けて届けたい情報を正確に「伝える」ことが大切ですが、時と場合によっては「刺さる」情報発信が求められることもあります。
PR TIMESでは、11月16日に学びとつながりの広報・PR担当者向けコミュニティイベント「PR TIMESカレッジVol.8」を開催。東京をはじめ、大阪・札幌・名古屋・福岡の全5会場でゲストスピーカーとして登壇した鈴木おさむさんは、折しも、来春で放送作家業も脚本業も引退すると宣言したばかりです。
自身のこれまでを振り返りながら「辞める決心をした今こそ伝えられることがある」と切り出して、近況報告から講演はスタート。鈴木おさむさんの講演の様子をレポートします。
放送作家
1972年生まれ。多数の人気番組の企画・構成・演出を手がけるほか、エッセイ・小説や漫画原作、映画・ドラマの脚本の執筆、映画監督、ドラマ演出、ラジオパーソナリティ、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。
伝える「理由」と「タイミング」
ここ4、5年面白く人生を生きてないんじゃないかと思い、「来年2024年3月31日で32年やってきた放送作家業を辞めることにしました。脚本業も辞めます」と宣言した鈴木さん。あえて宣言したのにはもちろん理由があります。
「仕事を辞めたいと思っている人に対し、今の僕ならメッセージを伝えられる」と、発信する「理由」が見つかったことを明かしました。辞めどきについても、持論を展開。今やすっかり浸透した「老害」という言葉を派生させて鈴木さんが名付けた「ソフト老害」なる問題について話します。20代は勢いがある、30代は働き盛り、40代は出世欲と自身の役回りとのバランスを取り始める時期で、前者に傾くと、老害の予備軍ともいうべき「ソフト老害」が始まる危険性を示唆。
鈴木さんも51歳。辞めた後は「ソフト老害」にならないよう自ら律しながら、若手を応援する役回りに就きたいと考えているそうです。
自分自身がワクワクする仕事を
鈴木さんとスターバックス コーヒージャパン株式会社(以下スターバックス)が初めてコラボレーションした絵本『君だってサンタクロースかもしれない』は、偶然にも講演当日(11月16日)からスターバックスの店舗で展開されています。鈴木さん自身もパパであり、こども支援に関心が高いことなどがきっかけだったそうです。
※参考:放送作家・鈴木おさむさんと初のコラボレーション!「Be a Santaドネーションプログラム」に共感し誕生した絵本作品『君だってサンタクロースかもしれない』
コラボレーション絵本を作った際の2つのポイントを挙げています。
自分が読みたい話を自分のフィールドで描く
鈴木さんがものづくりでいつも大切にしている点、それは「自分が読みたい話をつくる」ことと「自分の得意なフィールドに持ち込む」こと。この2点によって「自分がワクワクできる」と鈴木さんは語ります。今回の絵本づくりでどんな話にしようか考える際にもこの2点が生きていて、浮かんだアイデアは「プレゼントを使わずに誰かを喜ばせるお話」。加えて、自らも子育て中の身であることから自分のフィールドである親子の物語にし、さらに親から子ではなく、子どもが親を喜ばせる話が読みたいと思い、このテーマに決定しています。
目の前の人を感動させることに注力
自分視点だけのものづくりなら自己満足に陥りかねません。鈴木さんがもうひとつ大事にしたのが、「目の前の人を喜ばせる」ということ。今回であればこの企画を持ち込んでくれたスターバックスの担当者のお二人でした。読者や一般消費者ではなく、彼らを全力で楽しませることに注力すること。これが鈴木さんのものづくり、「世の中に『刺さる』」企画を生み出すうえで欠かせない姿勢です。
「0から1」を生み出さなくても器を変えればいい
このほかにも会場では、人気アイドルグループをバラエティに起用したテレビ番組や人気漫画の劇場版の制作、脚本の話が語られました。
若かった鈴木さんは、まだ誰も見たことがないことや新しいことをつくりたいといった気持ちが強かったと打ち明けます。しかし、すでに世の中にあるものでも発想を変えるだけで、新しくなる可能性にあふれていると、教えられたそうです。「バラエティ番組は芸人が出て面白いのは当たり前。売れっ子アイドルが冠のバラエティ番組を制作したらどうだろう」。芸人という器をアイドルに変えただけなのに新しい番組として世の中に深く、長く刺さりました。
器を変える。
言葉にすると簡単ですが、行動に移すためには、あってもおかしくないのに誰も気がついていないことに気づく力が求められます。バラエティ番組は昔からあるけれど、当時は誰も売れっ子アイドルを起用する発想がなかった。ほかにも「ペットボトル入りのコーヒー」「ノンアルコール飲料」などを例に挙げて、「なぜ、世の中にないのだろう。あってもおかしくないのに」と思う商品はニーズがあるのでヒットする(刺さる)ことが多いと説明しました。
鈴木おさむ氏へ広報PR担当者から質問
質疑応答の時間では、広報PR担当者が事前に記入していたいくつかの質問に対し、鈴木氏が時間の許す限り回答。ここでは、その一部をご紹介します。
──企業の広報PRで、伝えようとすればするほど、社外の人にとってはつまらないことも。気をつけることや、工夫すべきことは何ですか?
自社の商品やサービスを愛すること、ですね。とことん使って、商品に惚れ抜く。本心じゃないとプレゼンテーションしても伝わらないんですよね。まずは自分が使い込んで、惚れて、愛してください。
──伝えることと、人の心を揺さぶることのバランスについてはどう考えますか?
ワクワクすること(熱量)が大事だと言いましたが、その「熱量」の伝え方が実は難しくて。例えば、言葉遣い。仕事ができる人って、基本いい人なんですよ。いい人だから信者も増える。熱量が高くても礼を尽くしている。お笑い芸人のロバート秋山もその典型。クレージーなネタばかりやってますけど、めちゃくちゃ礼儀正しいんですよ、彼。だからみんな応援したくなる。そういうことですね。
──執筆や情報発信の際に心がけていることは?
身の回りで起きていることに敏感になること。自分の日常に対して感度を高くして過ごす。なぜこうなるんだろう、なぜ起きているんだろうと常に「WHY」を持つようにしています。
──目の前の人を感動させることを重要視するあまり、面白くないことにも取り組むことはありますか?
それはないですね。自分がワクワクしないと目の前の人も感動させられないからです。テクニックだけで感動させようとしても見透かされるんですよ。
──アイデアを出すときのルーティンはありますか?
映画を観ること。僕らの業界において映画って、皆さんにとってのエクセル、ワードみたいに基本的なことなんですよ。駆け出しのころ、約2年間、毎日映画を観ていました。映画をきっかけにお近づきになりたい人と距離を縮めることもできましたし、欠かせないですね。
まとめ:世の中に「刺さる」ために必要なポイント
鈴木さんがご自身の経験を例に挙げて語った具体的な「世の中に『刺さる』」方法。
当日は「鈴木おさむさんの話、胸熱すぎた」「刺さる企画は、自分の欲求、ニーズ、自社の強みが合わさった部分」「辛いことを面白く、なるべく明るく」「日常のなぜ?をアイディアに」「自分がいちばんワクワクする!」など、鈴木さんが何度も伝えた「ワクワク」が刺さった参加者からのSNS投稿であふれていました。
- 企画者本人がワクワクしないものは成功しない、自身がワクワクする仕事を
- 新しい企画は「0から1」に固執しない、器を変える発想の転換を
- 「あったらいいな」を誰より早く見抜く、身の回りに起きていることに敏感に
身の回りでヒットしている商品やサービス、作品は上記3つのポイントを踏まえてつくられていることが多いと実感するのではないでしょうか。
鈴木おさむさんが1000名の広報担当者に贈った『世の中に「刺さる」方法』。振り返ってみてください。
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