本稿は、宮地正惠氏による寄稿です。
この10年でスタートアップ各社の広報PR活動は格段に活発化している中、株式会社カミナシの広報PRを担う宮地正惠氏には、スタートアップにおける広報PRについて執筆していただきました。
本記事では、「スタートアップ企業の広報PR担当者必見!フェーズごとに取り組みたい情報発信・プレスリリースを解説」に続き、BtoB企業に向けた導入事例の発信について執筆していただいています。
はじめに:BtoB企業における「導入事例」
BtoB製品やサービスの広報PRを担当している人のなかには、情報開発や発信ネタの創出に頭を悩ませたことがあるのではないでしょうか。「BtoCのサービスに比べて、新製品やキャンペーンなどのトピックが頻繁に発生しない」「製品の細かな機能改善やアップデートだとニュースになりづらい」など、悩みは尽きません。
そのようななかで、製品やサービスを導入いただいた企業の事例を発信する「導入事例」は重要な発信素材のひとつとなります。一方で、すでに導入事例に取り組んでいる人からは「なかなかお客さまにご協力いただけない」という声や「導入事例を発表するだけで終わってしまう」という声もよく聞きます。
今回は、導入事例をどのように広報PRとして発信していくかについてご紹介します。広報PR活動には正解がありませんし、ここで紹介していることがすべてでもありません。また、企業によっても組織体制や営業スタイルの違いなどもあるため、あくまで一例として参考にしていただければ幸いです。
BtoB企業が導入事例をプレスリリースにして発表するメリット
各社のサービスサイトには、そのサービスを導入した企業の「導入事例」が掲載されています。
そこには「なぜそのサービスを選定したのか」「導入してどのような成果があったか」などが紹介されており、検討しているお客さまが参考になる情報が公開されています。
これらの導入事例を広報PRとして活用しない手はありません。サービスサイトなどのオウンドメディアに掲載している導入事例を公開する際に、会社としての公式発表(=プレスリリースとして発表)も同時に行うことで広く情報を届けることができます。内容によってはそのままメディアに取り上げられ、ニュースになることもあります。
また、発信元は自社であっても、導入事例には実際に利用されている「お客さま(=第三者)の声」が入っていることから、発信することで自社の信頼性を高めることが期待できます。
BtoB企業が導入事例を配信する際のポイント
導入事例を発表するメリットを読み、「じゃあ、すべての導入事例をプレスリリースとして発表しよう!」と思われた方もいらっしゃることでしょう。しかし、プレスリリースとして発表する前に、PR TIMESが定めているサービスや商品の導入事例の公開に関する掲載基準があるので、まずはそちらを確認しましょう。
PR TIMESのコンテンツ掲載基準:サービスや商品の導入事例の公開に関する内容
導入事例には、内容によって大きく2つに分けられます。
①導入決定(〇〇社に導入されました)
②導入成果(〇〇社に導入され△△の成果が出ています)
「①導入決定」は、導入されたこと自体がニュースになる場合です。また、「②導入成果」は、導入直後ではなく活用が進んで成果が見えた段階で発表するものです。
プレスリリースとして発表する際に、ニュースバリューを持たせるために気をつけるポイントがあります。簡単にいうと、「どこがすごいポイントか?」が言えるかどうかです。
たとえば「①導入決定」の場合、単に「導入された」という内容で配信できるのは、導入先が行政や官公庁などの公的な機関や誰もが知る著名企業など、導入されただけで社会にインパクトが与えられるところです。
では、それ以外で導入事例での「すごいポイント」はどういうところにあるのでしょうか。一例を記載します。
- その業界での導入発表は初(新規性)
- 珍しい使われ方などギャップがある(意外性)
- 際立った成果があった(優位性)
- 時流に合った使われ方をしている(季節性)
「新規性」や「意外性」などのメディアフックについては、こちらの『PR TIMES MAGAZINE』の記事で解説されていますのでぜひ読んでみてください。
また、導入事例のプレスリリースの作り方自体がわからないという方は、こちらのページを参考にしてみてください。
このページにも記載されていますが、特に導入事例をメディアに提案するにあたっては、どのような成果があったのかを「定量的に」「Before/After」が伝えられることがポイントとなります。
参考にしたいBtoB企業の導入事例プレスリリース
ここからは、参考になるBtoB企業の導入事例のプレスリリース例を「導入決定」「導入成果」と2つに分けてご紹介します。
すべてに共通しているのは、定量的な情報がタイトルから入っていることです。どのくらいの規模に導入されたのか、どのような成果が得られたのかが伝わるようになっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
<導入>
事例1.株式会社ラフール
参考:しずおかフィナンシャルグループ、全役職員6,500名を対象に組織改善ツール「ラフールサーベイ」を採用
事例2.Sansan株式会社
参考:バンダイナムコホールディングスが営業DXサービス「Sansan」をグループ43社に導入
<導入成果>
事例1.株式会社スタディスト
事例2.株式会社カミナシ
参考:酒造メーカーの日本盛が『カミナシ』導入により、年間223時間の業務時間を削減
BtoB企業の導入事例プレスリリースにおいてよくある質問
過去に自分も悩んだポイントだったり、他社の広報PR担当者の皆さんによく質問されるもの、PR TIMESによく寄せられる質問も教えていただきまとめました。
導入された時点で発表しなくてもよいのか?
「導入された時点で発表しなくてはいけない」というルールはありません。
導入された時点でニュースになると判断した場合は、導入発表を行いましょう。サービスや製品によっては導入から1年以上かけてようやく成果が見えてくる性質のものもあります。その場合は、「導入成果」として発表しましょう。
お客さまに導入事例の協力を得ることができない
導入事例はお客さまのご協力あってこそです。お客さまからの理解や協力が得られない限り、発表することもできません。
さらに、お客さまとコンタクトをとっている営業担当者やサポート部門との連携が必須になります。たとえば商談や契約時に、営業担当者から広報PR活動への協力を得られるような交渉をしてもらったり、サポート部門がお客さまとの関係を構築して協力を得られやすい状況にしてもらうなど、他部門の協力は不可欠です。まずはそれらの部門と連携することをおすすめします。
メディアアプローチはどの媒体にどのタイミングで実施すべきか?
企業によってもスタンスが違うため、一概に正解はありません。
アプローチ先はその導入事例が特定の業界や地域に関わるものであれば、その業界の専門媒体や地方メディアになります。また、アプローチするタイミングは媒体の特性に合わせて行います。たとえば、速報性を求めるメディアであれば発表前後に行ったり、専門的な深掘りする記事が多い業界紙などの専門媒体の場合は、発表後しばらく経ってもアプローチすることも十分あり得ます。
発表後の導入事例を広報活動でどう活用したらよいかわからない
プレスキットなどの紹介資料に事例をピックアップしてまとめる、記者からの要請に合わせて取材先として提案できるように導入事例をリスト化するなど、広報PR活動での活用方法はたくさんあります。
何より広報PR担当者自身が導入事例(お客さま)のことを熟知していると、記者との対話中にすぐに提案できることもあるため、なるべく導入事例は背景情報なども把握するように努めましょう。
まとめ:導入事例はBtoB広報にとって貴重な発信素材
導入事例はBtoB広報にとって貴重な発信素材のひとつです。導入事例そのものがまだ制作されていなかったり、サービスサイトだけに掲載している状態であれば、ぜひ広報PR活動にも活用できるように他部門との連携を図ったり、自らお客さまに交渉したりするなど、まずはアクションを起こしてみましょう。
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