2021年3月9日、PR担当者向けのセミナー「PR TIMESトークセッション~プレスリリースのかたちを再考する~」が開催されました。本イベントでは、「プレスリリースの書き方や配信タイミング」「成功した事例」「広報体制」について、3名のスピーカーにざっくばらんにお話しいただきました。イベント後半には、「プレスリリースや広報活動でのここ数年の変化」や「プレスリリースそのものに期待されること」についてディスカッションが行われました。広報PRの担当者の役に立つノウハウ含め、質疑応答の模様をお届けします。
講演者
モデレーター
PRTIMES CR本部長 小暮桃子
スピーカー
BuzzFeed Japan 編集長 小林 明子
株式会社マクアケ執行役員/戦略広報本部長 矢内 加奈子
株式会社プレシャスパートナーズ執行役員CMO兼経営戦略 室長 北野 由佳理
広報活動で大事なことは、独りよがりの宣伝にならないこと
小暮:それでは、みなさんよろしくお願いいたします。早速質問に入っていきたいと思います。ひとつめの質問ですが、「プレスリリース作成のポイント」についてです。みなさんの会社では、プレスリリースの形式など決まっていますか?
北野:弊社(プレシャスパートナーズ社)のプレスリリースの雛形は、ある程度決まっています。プレスリリースは、調査リリースや新サービスのリリースなどによって形式が変わってくるので、それに応じて運用しています。
矢内:弊社(マクアケ社)も同じく、リリースごとに形式を変えて運用してます。
小暮:絶対に形式を変えない部分と、内容に合わせて変える部分などの線引きや基準などはありますか?
矢内:枕詞やリード文、会社概要などの細かいルールはある程度設定しています。細かすぎるルールを設けてしまうと、広報担当者やサービス独自の色がなくなってしまうので要注意です。
小暮:小林さん、実際にプレスリリースを受け取る側からしたらどうでしょう?
小林:そうですね。プレスリリースは、多くて1日に50〜100件送られてくるので、正直全部はみれないんですよね……。形式うんぬんよりも、タイトルが惹かれるものは必ず開封してます。記事を執筆するときも、どういった文脈で社会に届けるかをメインに考えているので、タイトルやビジュアル、背景事情をじっくりと読むことが多いです。文脈のヒントを得てから、全体を見るようにしていますね。
矢内:社会背景などは大事ですよね。弊社のプレスリリースも、背景や社会との接点は意識して書くようにしてます。プレスリリースは、独りよがりの宣伝にならないようにすることが重要です。社会やメディアに届けることを常に意識して書いています。
小暮:ありがとうございます!次に、プレスリリース配信のタイミングについて聞いてきたいと思います。プレスリリース配信のタイミングはいつがベストでしょうか。
北野:自社にとってニュースだったとしても、世の中にとってはニュースではないこともたくさんあります。配信のタイミングですが、世の中にとってニュースなのかを判断して、決めるようにしてますね。配信時間については、なるべく午前中に配信するようにしていて、ニュースバリューがそこまで高くないプレスリリースに関しては、夕方に配信することもあります。
矢内:弊社も午前中が多いですね。配信タイミングに関しては、北野さんと同様、社会のニュースに合わせて配信してます。スピードが重視される場合は、その波に乗れるように、話題が旬なときに出す。どうしても遅れてしまったときは、プラスアルファの要素を足して、配信するようにしています。
小暮:社会のニュースに合わせて配信することが大事なんですね。受信する側としては何時頃が見やすいや、書きやすいとかはありますか?
小林:メディアの種類にもよりますが、弊社の場合、特にネットメディアだと朝の通勤帯・ランチタイム・夕方通勤帯・みなさんがまったりする夜の時間といった、4つの時間帯に集中的に記事を出します。私の場合、社内コミュニケーションがスラックなので、メールを開く機会があまりないんです……。メールをチェックするタイミングは朝の時間帯が一番多く、そのときによさそうな情報があったら、朝のタイミングでメンバーに共有や転送をしています。
自然と情報があがってくる仕組みづくり、社内連携のポイント
小暮:それでは次に、質問の多かった「広報体制」や「社内連携」について教えて下さい。
矢内:マクアケ社は「コーポレート広報」と「プロジェクト広報」をPRする2チーム、計6名体制です。プロジェクト広報チームは幅広く、地方メディアの繋がりもあるので、守備範囲はかなり広いですね。コーポレート広報は会社としての発信が多いので、リレーションが築けているメディアの方々と関わることが多いです。プロジェクト広報についてですが、毎月600件以上のプロジェクトがあるので、絶賛メンバー募集中です。(笑)
北野:弊社は、3名体制です。私と、インターン生2名に広報業務をお手伝いしてもらっています。ちなみにインターン生には、メディアプロモートまで担当してもらっています。
小暮:社内連携はどの広報担当者も課題に感じてるそうですが、社内のネタの情報収集はどのようにしていますか?
北野:広報はじめたときは、「情報ください……」ってずっと思っていました。(笑)
広報業務は信頼関係がとても大事になるので、部署のキーマンとなる社員と積極的に関係構築するようにしていきました。ランチに行ったり、社内チャットを頻繁にしたり。また、全体発信で「このような情報ないですか」など、逐一声掛けしてますね。今では、「こういう情報ありますけど、どうですか」と、社員からの声がけも多くなっているので非常に助かってます。個別連絡はかなりポイントですね!
矢内:弊社は、定例ミーティングで情報があがってくる仕組みづくりをしています。毎月それぞれ担当部署を決め、定例会議を行うようにしていて、情報収集の場を設けています。定例ミーティングの内容についてですが、新しい情報があるかはもちろんのこと、情報のアップデートの確認がメインですね。キュレーターのプロジェクト担当には、「なんで」をたくさん聞くようにしていて、どのプロジェクトがおもしろかったかや、伸びた理由を意識して聞くようにしています。
小暮:情報が自然とあがってくる仕組みづくりは確かに重要ですね。続いて、「良い事例」について聞いていきたいと思います。小林さんは、これまで受け取ったプレスリリースの中で、感動したものなどありますか?
小林:「メディアいらないんじゃない?!」と思うほどのプレスリリースは多々見かけます。(笑)最近は、企業のSNSアカウントのフォロワー数も多くて、毎回コンテンツがバズっている企業さんも多くなってきているように感じています。SNSだけでなく、企業が運用しているオウンドメディアには素敵なコンテンツが揃っていて、その延長線上でうまれるプレスリリースにもきれいに情報が埋め込まれていて、メディアがなにかすることがあるのか……なんて考えることもよくありますね。(笑)正直、バズってるものには乗っからせてもらいたいくらい!
小暮:確かに、昨今はSNSやオウンドメディアに力を入れている企業さんも多くなってきてますもんね!広報担当のお二人に伺いたいのですが、自社の事例で想像以上に反響があった企画やプレスリリースはありますか?
北野:直近では、調査リリースですね。テイクアウトに関する調査リリースを7月くらいに配信して、10月にテレビに取り上げてもらいました。この調査リリースは、時期関わらず取り上げてもらっています。他の調査リリースに関しても、配信して1〜2年経過していますが、今も取り上げてもらっていますし、長く使ってもらえることはすごく嬉しいです!
矢内:弊社は百貨店と組んで、オンライン催事の取り組みをしたことですかね。新型コロナウイルス感染拡大の影響で催事が中止になったり、縮小したりしましたよね。この取り組みは、大丸東京さんにも取材が入ったりしたのでよかったです。また、取れる画はプレスリリースとセットでメディアさんに伝えるようにしています。
プレスリリースには、必要以上の情報を盛り込まない
小暮:世の中にはたくさんの情報が溢れていて、たくさんの広報担当者の方と関わることが多い小林さんですが、実際どのようなことを情報収集していますか?
小林:メディア目線になってしまいますが、正直メディア側も甘やかされているなと感じています。広報担当者の方には、業界トレンドを教えてもらうことが多いです。
記者も全てを理解しているわけではないので、業界に詳しい方に教えてもらえることはすごくありがたいですし、もっとその業界や会社について知りたくなる。これからも広報担当者の方には、助けてほしいです。(笑)
小暮:会社のことだけでなく、業界について知っておくことは大切なポイントですよね。プレスリリースの話に戻ってしまいますが、プレスリリースにインパクトは必要でしょうか?実際、目にとまるプレスリリースは、どんなものか教えて下さい。
小林:調査リリースに関しては、タイトルや見出しにも数字が入っているといいと思います。ニッチな調査や新しいデータなど、公的機関には無いデータはメディア側もよく使用させてもらっています。個人的にも数字が含まれるプレスリリースは、よく見ていますね。一方で、数字が恣意的なケースがたまにあるのでそこは要注意です。例えば、ひとり何回でも答えられてしまう調査など。そこについては、メディアも見極めなければいけないので、記事化の有無は慎重に判断しています。
北野:弊社のプレスリリースは、プレスリリースの頭に最も伝えたいことをもってくることを意識してます。とはいえ、掲載されたいからといって必要以上に情報を盛り込みすぎてしまうと過剰なプレスリリースになってしまうので要注意。自社として、本質にずれがないようにしてます。
広報はプレスリリースを配信するだけでなく、時流や時代を作るもの
小暮:ここ数年で、”いいプレスリリース”に変化はありましたか?
小林:むずかしい質問ですね……。プレスリリース単体で、コンテンツとして消費者に届けられるようなものはすごくいいものだと思います。企業が消費者とダイレクトにコミュニケーションがとれることは、最近の傾向でも多いですね。プレスリリースひとつで企業のファンになってもらったり、採用活動につながったりもする。直接届けることは、伝えたいメッセージをまげられずに届けられるので、素敵だなって思います。
矢内:私は、本質に近づいていると感じてます。今の時代、新型コロナウイルス感染拡大の影響も関係していますが、消費者の関心が社会課題に向いていますよね。そのため、自社の宣伝よりも、社会課題の解決提案が盛り込まれたプレスリリースの方が、よく目に止まるようになりました。なぜ自社がやるのかの理由の正当性がみられますし、そのほうがニュースでも取り上げられてるので。
小暮:それでは、最後に質問に移ります。今後、プレスリリースや広報活動そのものに期待される役割とはなんでしょうか。
小林:「主体性」ですかね。プレスリリースの書き方などテクニカルな話もありましたが、みんな社会をこうしたいという思いがあって、プレスリリースを作成しているので、生きた文章だなって毎回思わされます。プレスリリースは世の中に訴えかけられるひとつの手段です。そこになにか、心のある主張があると、メディア側としても嬉しいですね。
矢内:上司の言葉を借りてしまいますが、「広報として時流に乗るのでは遅い、広報は時流や時代を作る役割」です。自社でしか取れないデータなどがあれば、それをうまく企画に落とし込み、時代をつくれるプレスリリースや企画を作れるようになると、メディアさんの良いパートナーになれると思ってます。その意識はずっと持っていたいですね。
北野:プレスリリースも広報活動も、世の中のコミュニケーションのひとつの手段です。自分たちがなぜこれをやってるのかが伝えられる重要なものです。プレスリリースを通じて、ただ情報を流すだけでなく、社会に伝えたいことを情報発信することが求められてくると思います。
まとめ
本イベントでは、「プレスリリースの書き方や配信タイミング」「成功した事例」から、「プレスリリースや広報活動でのここ数年の変化」や「プレスリリースそのものに期待されること」について語られました。
- 広報担当者は、会社のことだけでなく業界のことを把握することが大切である
- 情報収集に困らないようにするための自然と情報があがってくる仕組みづくり
- 広報担当者はプレスリリースを作成するだけでなく、時代やトレンドを作り出し、メディアと良好な関係を築く役割でもある
広報活動には正解がないので、どうしても難しい部分が出てきてしまいます。プレスリリースや広報活動には様々な形がありますが、それがどんなふうにしたら社会とメディアとのいい接点が作れるのか、今回のイベントを通して参考にしていただけると幸いです。
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