BtoC企業と比べると認知を図りづらいという悩みを抱えているBtoB企業の広報PR担当者は多いのではないでしょうか。
プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESでは、3月6日に初の大阪開催となるユーザー会を実施。業務用冷凍冷蔵庫をはじめとした機器の製造・販売を行うフクシマガリレイ株式会社の五十嵐夏季さんに登壇いただき、BtoB企業の認知を広める情報発信について伺いました。
フクシマガリレイ株式会社 営業戦略部 販売企画課
茨城県つくば市出身。大学卒業後、WEB関連会社に入社。その後フクシマガリレイ株式会社(旧 福島工業株式会社)に入社。カタログ・広告、展示会などの企画業務の傍ら、キャラクター策定、ブランディング、社名変更などに携わる。現在、営業戦略部 販売企画課課長。
社名変更を節目に広報PRを強化、専任部署を設立
──まず、フクシマガリレイの広報PR体制について教えてください。
現在、広報部という独立した部署はなく、営業戦略部の中の販売企画課が広報業務を担っています。販売企画課に所属しているのは6名。カタログ制作や展示会の準備、オウンドメディア『フクラボ』やFacebook、YouTubeの運用、プレスリリース配信をはじめとするメディアリレーションなど、営業企画と広報PRの業務を複合的に担当しています。
今後はさらに広報PR活動に力を入れて行くため、販売企画課から分かれて広報企画課が新設される予定です。
──どのような経緯で販売企画課が広報を担うようになったのでしょうか。
当社は、2009年から2013年にかけて、大型機械を製造する「髙橋工業株式会社」、断熱パネル事業を手掛ける「FSP株式会社」、コンベアラインを製造する「株式会社省研」の3社がグループ会社として加わりました。その結果、生産から製造流通まで、食のあらゆるシーンに関わることができ、強固なサービスの提供が可能に。一方で、それぞれの会社の認知はあるのにグループとしての魅力の発信がうまくできていないことを課題として感じていました。
社内でも、グループのシナジー効果をより高めていくためには、やはりグループブランドの強化が必要なのではという声が大きくなり、2018年にグループブランドプロジェクトが始動しました。
──2019年にはグループブランドを「ガリレイ」に統一されていますね。
グループとして発信をしていくうえで、旗印があったほうがよいという意見が経営層から上がり、グループブランドを「ガリレイ」に統一しました。社名も福島工業からフクシマガリレイに改称。3つのグループ会社もそれぞれ、タカハシガリレイ株式会社、ガリレイパネルクリエイト株式会社、ショウケンガリレイ株式会社とグループブランドを冠した社名に変更しました。
また、社名変更と同じタイミングで、JR東西線・加島駅前に本社ビルを建設。1階、2階、8階部分には、異業種の方や大学・研究機関、起業家の方にご活用いただけるオープンイノベーション拠点「MILAB(ミラボ)」を開設したことも、世の中に対する情報発信に寄与しています。
社会貢献活動で認知拡大へ
──社会貢献活動にも注力されていると聞きましたが具体的にどのような活動をされていますでしょうか。
キッザニア甲子園オフィシャルスポンサーや、実業団女子テニス部を創設してスポーツ選手のキャリア形成をサポートしたり、子ども食堂へ冷蔵庫を寄贈したり、ビーチクリーン活動を実施したりするなどの社会貢献活動を行っています。
当時、業界紙では取り上げられるものの、それ以外でのメディアにはなかなか取り上げられず、つながりもない状態が続いていたんです。社会貢献活動をはじめた当初も、発信することは想定していませんでしたが、今は製品に関する情報だけでなく、社会貢献活動も発信し、幅広い広報PR活動に活かしています。
──これまで社会貢献活動に取り組む中で、反響の大きかった事例を教えてください。
冷蔵庫の寄贈でしょうか。当社では年間50台の冷蔵庫をさまざまなところへ寄贈していますが、中でも特に反響が大きかったのは、子ども食堂の物流センターを開設した、岐阜県関市にある円通寺への寄贈です。子ども食堂の活動というのは地元メディアも注目していて、このときも新聞社が取材に来てくれました。
また、先ほどお話した本社2階の「MILAB(ミラボ)」にはインキュベーション施設があり、入居しているベンチャー企業が当社のオフィスを使ってメディアの取材を受けたり、セミナーを開催したりとさまざまな活動を行っています。もともとは、設備投資が難しいベンチャー企業に対し、会議室や調理室など当社の既存設備を活用して事業を広めてほしいという思いから提供していましたが、ベンチャー企業は独自のメディア戦略やつながりを持っているケースも多いんです。最近は、そうしたベンチャー企業側の発信を通じて、メディアやお客さまにフクシマガリレイの名前が広く知られる事例も増えています。
情報を届ける工夫・心がけているポイント
フクシマガリレイのプレスリリース作成のポイント
参考:小型ドゥコンディショナー2室独立制御タイプモデルチェンジのお知らせ
必要最低限の情報でシンプルに
当社の製品はネーミングが長い傾向にあるので、タイトルは必要最低限の情報だけを入れてまとめるように心がけています。リード文はもう少し詳しく書ける部分ですが、できるだけシンプルにまとめ、外観デザインが変更したことや省エネ性能が向上したことなど、何が変わったのかを端的に伝えるのがポイントです。
専門的な情報は前半、基本的な情報は後半に
省エネ性能や外観、構造がどのように変化したのか、専門的な機能や特徴などコア業界の方に向けた情報はプレスリリースの前半でまとめます。また、重要な特徴には画像やイラストを活用するとよいでしょう。私たちの部署でカタログを作成しているので、カタログ用の画像をプレスリリースにも利用するんです。そうすることで、そのまま営業資料として活用できるだけでなく、営業とメディアが同じ資料を持ち、違う情報が掲載されてしまうという事態を防ぐことにもつながります。
業界紙だけでなく一般のメディアや生活者に広く情報が届くため、コア業界以外の方が見てもわかるように、製品の特徴やどのようなシーンで使われるかなど、基本的な情報は後半で説明するように心がけています。
フクシマガリレイのイベント出展、受賞発表のプレスリリースのポイントはこちらをご覧ください。
情報発信で心がけている3つのポイント
広報発信は人の魅力を伝える機会
メーカーの情報発信は、製品のことだけを伝えていればよいと思われがちですが、当社のことをより深く理解して魅力を感じてもらうためには、製品の特徴を伝えるだけでは限界があります。
広報PRとしての情報発信は、当社の強みでもある「人の魅力」を伝えられるよい機会。社会貢献活動など、主要事業以外の情報を積極的に発信することも心がけているポイントです。そうした取り組みを続けるうちに、最近は社内からも「実は、こういう活動をする予定があるんだけれど」と情報が集まるようになってきているのを感じます。
社内外の中間的な立場で良さを見つける
情報を発信する際には、あえて「知らない人」の立場で話を聞くようにしています。「社会やお客さまに対してどんなメリットがあるのか」という視点が大切。製品について詳しい人同士の話で深められる会話もありますが、製品や社員のすごさは当事者ではわからないこともあるので、あえて会社を知りすぎずに社内外の中立的な立場で良さを見つけるように意識しています。
積極的な情報発信でタッチポイントを増やす
メディアや生活者に接してもらえる機会が増えるので、プレスリリースの配信頻度は多いほうがよいと思っています。
また、多様な内容を発信することで、タッチポイントを増やすことが可能です。さまざまな切り口からフクシマガリレイを知っていただくことで、何かのときに「そんな会社があったな」と思い出していただけることもあります。それは営業活動の現場でも同じで、自社を想起していただける機会が増えるという意味では、情報発信の際に「最初の一歩と最後のひと押し」を心がけているポイントです。
参加者から五十嵐さんへ質問|社内に思いを伝える活動
──どのようにブランディングプロジェクトを立ち上げて進めていったのか、フローやポイントをお聞きしたいです。
もともと私は、大学時代にブランディングについて勉強した経験があり、入社時からその必要性を社内で提案してきました。もっと当社を知ってほしいけれど、魅力が伝えられていないというもどかしさを感じていたところ、社内でも同じような課題感が内在していることが明らかになり、プロジェクトにつながっていったのだと思います。
2016年まではプロジェクトを社内で進め、私が事務局を担当して会議の頻度や進行を決め、経営会議で進捗を報告。ある程度のロードマップは作ったものの、最初は目標が高すぎてしまうこともありましたが、先輩社員やメンバーと協力して調整していきました。
ブランディングでもっとも大切なのは、社員一人ひとりに「自分ごと化」してもらうことです。これは、いきなりプロジェクトのメンバーが伝えても反応してもらうことは難しく、「ブランディングってとても大切なんですよ」ということを、いろいろな人に10年近くかけて地道に伝え続けました。結局のところ、そういう「思いを伝える活動」が一番大事なのかなと思います。
まとめ:多角的な情報発信で認知を拡大
コア業界以外への認知拡大が難しいとされるBtoBメーカーの広報PR活動。その課題解決に役立つヒントが詰まったセミナーでした。
五十嵐さんが大切にされている情報発信のポイントは以下の通りです。
- 社会貢献活動など、主要事業以外の発信も積極的に行う
- プレスリリースは必要最低限の情報、専門的な情報を前半に、基本的な情報を後半に配置する
- プレスリリースは配信頻度を増やし、多角的な情報発信によってタッチポイントを増やす
- 外の視点を意識し、社内外の中立的な立場で自社の良さを見つける
広報PR活動による認知拡大をめざすBtoBメーカーの広報PR担当者にとって、参考にしていただける事例ではないでしょうか。
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