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鍵は消費者行動とUGC。企業SNSの影の立役者、ホットリンクのキーパーソンに学ぶSNS活用法

結果を出せる企業のSNS運用法とは──。

広報にとって今や主戦場のひとつといっていいSNSですが、同時に多くの企業がつまずいている場所でもあります。成功に結びつけるためには、適切なゴールを設定し、ユーザーをいかに巻き込んで盛り上げて、結果を導いていくかが重要なポイントです。

今回は、ソーシャルメディアマーケティング支援サービスを提供し、多くの企業のSNSコンサルティングをされている株式会社ホットリンクの室谷良平氏にSNS活用術をご指南いただきました。

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株式会社ホットリンク  マーケティング本部 マーケティング部 部長兼広報担当

室谷 良平(Muroya Ryohei)

函館高専情報工学科卒業後、医療機器メーカーのエンジニアとして4年間実務、その後スタートアップでPRに携わる。前職の人材系のベンチャー企業では、webマーケティングを中心に、広報では、自社サービスのSNSを担当。2019年にソーシャルメディアマーケティング支援会社のホットリンクに入社し、BtoBマーケティングとPRの責任者として従事。企業のソーシャルメディアマーケティングを支援すべく、SNS活用のメソッド開発やコンサルティングにも携わる。
2020年にSNSマーケティングの新しい知識や考え方を伝える本を出版。
1億人のSNSマーケティング バズを生み出す最強メソッド』(エムディエヌコーポレーション刊)

可処分時間が集中するSNSが顧客との接点構築の場

─  さっそくですが、企業がSNSを活用するメリットについて教えてください。

室谷さん(以下、敬称略):いろんなメリットがありますが、接点構築ができることがすごく大事なポイントです。

どんどんメディア環境が変化し、可処分時間を取られる先が変わっていっています。SNSには多くの視線が集まるなか、ビジネス観点ではSNS上に情報がなければ、消費者にとっては商品・企業の存在はないに等しいと思われても仕方がありません。逆にSNSの拡散などにより情報が流通すれば、どんどん認知や消費者の購買意向が高まります

昨今のコロナ禍で、オフラインでの接点構築が難しくなっているので、オンライン上の接点確保という意味合いでも重要性が高まっていますね。

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企業SNS活用の落とし穴とその対策!〜消費者行動に基づいたKPI設定

─  多くの企業がSNS運用でよくつまずく落とし穴はどんなところにあるでしょうか?

室谷:KGIとつながらないKPIを設定してしまうことです。特にフォロワー数やラストクリックは要注意です。まず、本来のKPIの意味は「Key Performance Indicators(重要業績評価指標)」目標達成に向けた過程での達成度を評価するための「中間目標」=プロセスです。
一方、KGIは「Key Goal Indicator(重要目標達成指標)」、「最終目標」=ゴールです。
KPIは、いかにKGIにつなげていくかという指標です。しかし、ゴールであるKGIと、SNSでよく設定されているプロセスであるKPIは多くの場合分断されています。

フォロワーを効率的に増やすために懸賞キャンペーンを実施するというのはよくある例ですが、懸賞目的のフォロワーばかりが増えますよね。懸賞アカウントの中の人も、普通の投稿や情報収集は別のアカウントでやっています。懸賞目的のアカウントは、キャンペーン参加のために使われているので、キャンペーン以外の投稿が増えると結局フォローを外されてしまうんですよね。

とりあえずでフォロワー数をKPIに設定した場合、フォロワー数を達成することが実質の目的となってしまい、本来達成したかったゴールに結びつかなくなります。もちろんフォロワーが多いことも大切ですが、フォロワー数だけを見て、本来の中身や目的を見失ってはいけません。

─ 本来の目的から、目先のSNSの数字を追いかけることに目的がすり替わってしまうと ……

室谷:ラストクリックを指標にする場合も同じことが言えます。

TwitterやInstagramストーリーを投稿する際、その投稿に添付した商品URLをいかにクリックしてもらえるか、どうコンバージョン(収益につながる行動)を増やすかのKPI指標としてラストクリック数を設定することがあります。しかし、コンバージョンを増やしたいから、と商品URLを添付した宣伝投稿ばかりすることで、フォロワーさんが離れてしまう…… というお悩みも少なくありません。

フォロワーさんの行動をたどると、投稿を見てすぐ買いたい(コンバージョン)というのは、なかなか難しいんですよね。衝動買いをしやすい商品であれば別ですが、「SNSで前に見たあそこの新しい服かわいいな」と思ってその場ですぐに買うわけではないんですよね。その翌日に写真を確認して、そのまた後日ぱっと思い出して、「あの写真よかったな、お店に行こう」「ECで買おう」という購買意欲の段階があります。

ラストクリックだけを評価するのは、サッカーでシュートを決めた人だけを評価して、途中のパスをちゃんと評価しないようなものです。

─ では、どんな指標をKPIにおいたら良いんでしょうか?

商品カテゴリにもよりますが「指名検索数」と「UGC数」を意識するといいでしょう。SNSでも、実際の消費者行動やファクトやデータに基づいて、指標を設定していくことがポイントです。SNS活用で有効なKPIを探る過程で、売り上げ(コンバージョン)と相関分析することもありますし、その手前の指名検索数が増えた場合は、SNSの発信を通じて関心を持った人が増えたことを表します。

商品カテゴリーにあわせて、商品が消費者の行動をどう生みだすのかという想像をした上で、ゴール(購入)へのお客様の行動を考えて、そのゴールへ行き着く中間地点をKPIにおく、という発想が大事です。測定しやすい指標が成果を出す指標とは限りません。

例えば、頭髪に対するコンプレックス商品を取り扱うかつらメーカーが商品の認知拡大を目的として、KPIにフォロワーをおいた場合で考えてみましょう。コンプレックス商品を求めている人は、人に知られず使いたいと思っているので、フォロワーを増やそうとしても、なかなか難しいです。そういう商品の指標は、フォロワー数ではなく「SNSのクリック数」や、「指名検索数」が増えたかどうかになります。

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─ 商品カテゴリーやフォロワーの行動によって目標を設定することが大事なんですね。「UGC」の指標はどのように伸ばすんですか?

室谷:以前ホットリンクで担当した、洋菓子メーカーのシャトレーゼさんのTwitter事例をご紹介します。いかに「UGC(※)」を出せるかをKPIに設定し、UGCを生み出す確率が高いフォロワーを増やし、自社の商品に関する良いツイートをRT(リツイート)したり、フォロワーさんが口コミ投稿をしてくれる仕組みを作ることで顧客の獲得につながりました。

※UGC 「User Generated Content」の略。ユーザー投稿コンテンツで、SNS上の口コミなどを指す口コミが発生するように仕掛け、アテンションを生み出し、集客や売上につなげる。
参考:https://www.hottolink.co.jp/column/20190326_101527/

シャトレーゼの商品は数百円で買いやすく、気軽に「これ美味しい!」などの投稿もしやすいです。そのUGCを増幅するような投稿のあり方を考え、公式アカウントからお客様とコミュニケーションを活発にし、良い口コミがあったら RT(リツイート) したり、フォロワーさんが真似しやすい投稿をコツコツやっていきました。

結果的に「シャトレーゼは安くておいしい」とか「このスイーツがおいしかった」といった投稿が溢れていきました。さらに、その投稿を見た他のフォロワーさんから広がり「私も買った」という拡散がチェーンのように広がり、支援開始して約1年でUGC数が11倍にまで広がりました。UGC数増加に比例して指名検索数も伸び、売上高の増加にもつながっています。

ホットリンクの事例

─ 「UGCを増幅するような投稿」とは具体的にどんな投稿ですか?

よく「呼び水になるような投稿」と言われるもので、SNSユーザーが自発的に口コミを発信してくれるような投稿です。

例えば、いかにもスタジオで撮ったような写真ではなく、あえてスマホで個人が撮ったような真似しやすい写真を用いて、その時々の話題性との掛け合わせて投稿します。すると、その投稿を見たフォロワーさんが、同じように自分で写真を撮って、投稿してくれるんですよね。

また、誕生日のお祝いにシャトレーゼのケーキを買った、という投稿を見つけて「#ハッピーバースデーシャトレーゼ」というハッシュタグを付けて引用 RT(リツイート) します。これを続けることで、フォロワーさんのなかで、シャトレーゼのバースデーケーキをTwitterで投稿すると、公式アカウントが拾ってくれるかもしれない、という認識が広がり、自然にお客様からの投稿が出てくる仕組みが生まれます。

一般的なSNS担当者だと、いかにきちんと投稿するかや、自分が作った投稿が「バズる」と嬉しい、といった発想になりがちです。でも、それってお客さまにはどうでもいいことです。担当者や企業が主語にならなくてもいいんです。重要なのは、お客様からの商品についての良い発信や会話・情報などの口コミを生み出していくか、というUGCのきっかけをたくさん作っていくことです。

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─ 個がメディアになれるSNSだからこそ、お客様それぞれからの口コミを生み出すきっかけを作ることが大事ですね。

室谷:美容室専売の商品を取り扱う株式会社ミルボンさんは、フォロワーの行動に基づいたInstagram発信により、商品ブランド力を高め、一般消費者の認知拡大に成功した企業さんです。この時は、Instagram上でのインプレッション数及び保存数を指標に置いた運営がうまくいった例です。

BtoBtoCの企業さんだったことから、以前は日用品ブランドと比べると一般消費者からの認知は高くありませんでした。ミルボンの商品はシャンプーでも、200mlで5000円ほどする価格帯なので、大衆向けに一気に認知が広がる品ではありません。また、ブランドさんからも安っぽい感じではなく、おしゃれで洗練されたイメージを保ちたいという要望がありました。

最近のInstagramの活用事例を参考にするとでは、商品の特徴などを​画像内に盛り込んだミルボンの求める世界観とは対照的な、文字が入った情報量の多い投稿が保存数の多い傾向にあります。

そこで、1回のフィード投稿につき、複数枚の画像投稿を行うようにしました。1枚目の写真は、洗練されたイメージを与えられるようにブランドの世界観を表現するものを配置し、2枚目以降には保存されることを狙いとして雑誌のようにテキストが多めの画像や動画など情報量の多いクリエイティブにし、ブランドの世界観を守りつつ保存数を高めに行けるハイブリッドな投稿をしました。

結果的に保存数が伸びてインプレッション数も伸び、ブランドの世界観を保ったまま一般消費者への認知を広げることに成功しました。コスメや美容情報を発信するまとめアカウントなどで、ミルボン公式アカウントの投稿が参考に紹介されるなど、お客様からの口コミの声も自然にでてくるようになり、8ヶ月でUGCが6倍増となりました。最近ではSNS上で「ミルボンはバズコスメ」として話題になっています。

─ 公式アカウントの発信を参考にした投稿がされた、というのは、先ほどのフォロワーが真似をしやすい投稿と共通しますね。

室谷:また、ソーセージで有名なジョンソンヴィルさんは、ブランドの認知度向上と自分ごと化促進を目的に、TwitterとInstagramを活用して購買意向形成に成功した企業さんです。結果として、1年間でUGCが9倍に伸びました。

訴求軸がひとつだけだと、刺さる人と刺さらない人が出てきます。そこで、お客様が購入するきっかけを増やして「自分ごと化」して捉えてもらえるよう、SNSを通じて購入する理由をたくさん提案していきました。ブランディングの専門用語で「カテゴリー・エントリー・ポイント」と言うのですが、このカテゴリー・エントリー・ポイントを広げていくような発信をもとに設計した事例です。

例えば、バーベキュー、ビールのつまみ、休日のランチで……といったように「●●といえばジョンソンヴィル」となるシーンをいくつも想定し、買っていただくシーンの提案となる投稿をしました。また、ジョンソンヴィルを食べる際のレシピを提供する、などシーンの提案に加え、どのように商品を活用するかを提案する投稿をしたことも功を奏しました。

─ 最後に企業のSNS担当として奮闘する方へアドバイスをするとしたら?

室谷:企業SNSの運用で大事なことは、ただバズったり、フォロワー数など目先の数字が伸びることではありません。「SNSの投稿で影響を受けた消費者が自社の商品を買ってくれる」とか、「フォロワーが企業のことを好きになってくれる」、とか「採用採用に興味を持ってくれる」、などの本来の目的を達成することです。

ホットリンクでは、SNSの理解を深めてもらうためにいろいろな記事の発信やセミナーの開催をしています。その一つとして、SNSを学ぶためのオンラインセミナー「SNSの学び舎」を継続的開催しています。2021年9月には広報担当者のための「SNSの学び舎」を開催し100名以上の申し込みをいただきました。広報担当者向けのセミナーは今後も開催する予定ですので、お気軽にご参加いただければ嬉しいですね。

一緒にSNSを学んで、広報としてパワーアップしていきましょう。

セミナー・イベント|株式会社ホットリンク

─  ありがとうございました!

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今回のPR事例ポイント

  • SNSは消費者の可処分時間が集中する重要な顧客接点の場
  • KPIは目先の数字ではなく、商品のカテゴリーと目的までのお客様の行動に合った指標を設定する
  • 企業SNSが目立つことではなく、お客様が自発的な口コミ発信をする仕組みづくりが鍵

ソーシャルメディアに可処分時間を奪われる今こそ、企業がSNSを活用するチャンスの時です。SNSをやることを目的にするのではなく、企業の壁となる課題解決へつながることを意識し、あせらず目的をしっかり組み立て、手段を吟味することの必要性が学べました。

(撮影:原 哲也、取材はリモートで実施しました)

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この記事のライター

PR TIMES MAGAZINE編集部

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日本最大級のプレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営を通して、広報PR担当者さまからのお問い合わせやご相談の経験を活かし、広報PR担当者さまの気づきや行動につなげられる記事を執筆しています。PR TIMES MAGAZINEの部署メンバーだけでなく、営業本部、カスタマーサポート、パートナー事業部に在籍するメンバーも携わっています。

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