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地域ブランドを高める組織のストーリーテリングとは?つくり方と効果を解説

日々、さまざまな事業に取り組む自治体広報。独自性を見いだし、地域ブランディングを高めていくための重要なカギとなるひとつが、「共感を集めるストーリー」の活用です。

プレスリリース配信サービスを運営するPR TIMESでは、そのような自治体の課題を解決するために、自治体の広報PR担当者向けの「PR TIMES自治体活用セミナー」を開催。

本記事では、「地域ブランドを高めるストーリー発信」というテーマで5月31日に開催したセミナーから、PR TIMES STORYが考えるストーリーの大切さや心に響くストーリーの作り方、実際の活用事例などをご紹介します。

組織のストーリーテリングとは?

PR TIMES STORYが考える、組織のストーリーテリングとは、組織や企業が掲げるビジョンや目標、価値観などを伝えるために、ストーリー(物語)を活用することです。営業やマーケティング、プレゼンテーションなどのビジネスシーンで広く使われている手法で、事業への支援者を増やし企業価値の向上につなげることを目的としています。

その特徴は、「当事者の視点」でストーリーが書かれていること。事業や活動の当事者がその本質について自ら語ることによって、商品のスペックや比較優位性などの情報を並べただけのロジカルな文章よりも、ステークホルダーの印象と記憶に働きかけ、その行動を後押しすることができます。

ストーリーテリングの必要性と効果

自治体広報においてストーリーを意識することが大切といわれるのはなぜなのでしょうか。

ストーリーテリングの手法を自治体広報に取り入れることで、横並びになりがちな行政のさまざまな事業をより深く印象付け、地域ブランドを高めることが可能とされています。

ここからは、ストーリーテリングの必要性とその効果について見ていきましょう。

ブランディングにストーリーが必要な理由

地域ブランディングにおいて、ストーリーを意識するということはとても大切なポイントになります。なぜなら、当事者の視点で書かれたストーリーは、聞き手との間に共感を生むことができるからです。

いくつかの定義があるブランディングですが、ここでは「組織やサービスに対する共感や信頼などを通じて顧客にとっての価値を高めていく、組織のマーケティング戦略」と定義して、話を進めます。

組織が一方的に宣伝するだけではブランディングとして成り立ちません。大切なのは、共感や信頼などを通じて、顧客との強い関係性を築くことで、その手段としてストーリーを取り入れることが有効です。

事業の発案者やイベントの担当者など、当事者の視点で書かれたストーリーを地域ブランディングに活用することによって、地域と聞き手とが共感を通して強く結びつくことができ、地域ブランド向上につなげることができます。

行動者発のストーリーによるPR効果

ストーリーを発信することによって、そのストーリーを読んだ人の心を揺さぶり、記憶されることによって行動変容を促します。

つまり、自治体広報担当者が行動者としてストーリーを発信することで、地域の人々の信頼・共感・記憶を得て、自治体と地域の関係を強く結びつけるというPR効果が考えられます。

「地域ブランドを高めるストーリー発信」PR TIMES STORYの資料より

発信したストーリーに対する地元の好意的な反響が生まれるだけでなく、TwitterなどのSNSによってストーリーが広く拡散され、行動者の発信により、他者の行動も変えたストーリーは、掲載されたページのインプレッション数が増えたり、テレビの取材依頼が入ったりすることで、シティープロモーションにつなげていくことができます。

弱いストーリーとは

聞き手の記憶に残る強いストーリーには賞味期限がありません。実際に、開発者個人の視点で書かれた商品の開発ストーリーが、その企業のストーリーとして何十年も語り継がれているケースもあります。

では、反対に弱いストーリーというのはどのようなものを指すのでしょうか。ポイントは当事者性や客観性が弱く、人間性の開示が少ないということです。

「地域ブランドを高めるストーリー発信」PR TIMES STORYの資料より

人から伝え聞いた内容だけで書いたものや当事者が登場しないもの、社外の人の権威を借りて書いたようなストーリーは当事者性が弱く、説得力に欠けるだけでなく記憶に残りにくいという特徴があります。自分が言いたいことを中心に書いたもの、他者を顧みないようなもの、商品のスペックや比較優位性の宣伝に終始した客観性の弱いストーリー、単純な成功物語や武勇伝なども、ステークホルダーからの共感を得ることは難しいでしょう。

組織のストーリーテリング成功の条件

先述した通り、ストーリーテリングによって組織は社会と共感を通じて強いつながりを持つことができます。では、どのようにすれば組織のストーリーテリングを成功させることができるのでしょうか。成功させるために必要な2つの条件をご紹介します。

条件1.なぜ(Why)+どのように(How)の情報入れる

必要条件の1つ目は、経営の重要局面で語られる「なぜ(Why)」と「どのように(How)」の情報が入っているということです。これは、聞き手の共感と記憶に働く前提条件ともいえる部分になります。

なぜ(Why)
なぜ起業したのか、なぜその製品を作るのか、なぜ資金が必要なのか、なぜその事業を復活させたいのか、など。

どのように(How)
どのようにアイデアを思いついたのか、どのように開発したのか、どのように顧客の問題を解決したのか、どのように失敗を乗り越えたのか、など。

条件2.当事者性、客観性、人間性を入れる

2つ目は、ストーリーに当事者性、客観性、ドラマ性(客観性)があるということです。聞き手の共感や信頼を得るために重要な部分になります。

当事者性(Authenticity)
Authenticityの語源は「書き手」を意味するAuthor。当事者性というのは本物らしさのことで、ストーリーは事業の当事者の視点で書かれていることが大切です。

客観性(Objectibvity)
自分から離れた立場で自分のことを見つめ、他人のための表現をすることを意味します。つまり、顧客の立場になって情報を発信するということです。「Buy me.(サービスを使ってくれ、買ってくれ、参加してくれ)」や「Love me.(好きになってくれ、ファンになってくれ)」という一方的な自己主張ではなく、「I love you.(私はあなたのために働いています、あなたのためになる情報発信をしています)」という態度でストーリーを書くことが大切です。

人間性(Humanity)
ドラマ性のことです。浮き沈みや偶然の要素といったドラマのことを意味します。ストーリーテリングで人間性を表現することは、組織や企業も人間なのだということを聞き手に思い出させるのに効果的です。「自治体広報の人と聞き手」というような発信者と受け手という構造から、「同じ目線で共感し合う関係」になることができます。

ストーリーテリングを実装する3つのステップ

ここからは具体的に、ストーリーテリングを実装するためのステップを解説していきます。

「地域ブランドを高めるストーリー発信」PR TIMES STORYの資料より
「地域ブランドを高めるストーリー発信」PR TIMES STORYの資料より

ステップ1.ストーリーが集約される仕組みをつくる

組織運営というのはストーリーテリングの連続です。例えば、公共サービスの運営や施策の開始、イベント、啓発活動、採用活動などの局面において、それぞれなぜ自分たちがこの事業に着手するのか、なぜこのテーマで啓発活動をするのかというようなストーリーが語られているのではないでしょうか。このように、組織のいたるところに分散しているストーリーを集約する仕組みをつくることが最初の一歩です。

組織内でその情報がどこにあるのかを明確にし、それがなるべく鮮度の高い状態でプロジェクトの責任者や広報担当者といった情報発信者に回るようにしましょう。

ステップ2.ストーリー発信のゴールを設定する

ストーリーが集約される仕組みが出来上がったら、次はストーリー発信のゴールを設定します。そのためには、責任の所在を明確にすること。担当者を決めて、年間の行動目標や成果の目標を立てたうえで、情報発信のゴールを決めましょう。さらには、「やらない」「やっても評価されない」ということを避けるためにも、ストーリー発信が担当者の人事評価項目になっていることが理想的です。これは、ストーリーテリングを継続的に活用していくためにも、とても大切なポイントになります。

ステップ3.企業と社会の強いつながりを持たせる

ストーリーによって企業・組織と社会との強いつながりを持つというところまでステップを踏んでいくと、情報発信の十分条件を満たすことになります。ただし、「社会」といってもステークホルダーとは言えない人々も含まれているため、組織にとってより重要なステークホルダーにストーリーを届けることを意識することが大切です。

ストーリーをステークホルダーに届ける3つのポイント

ストーリーをステークホルダーに届けるためのポイントを3つご紹介します。

ストーリーを発信する際には、組織にとって重要なステークホルダーにストーリーを届けることを意識することが大切です。

ポイント1.公式アカウントから発信する

会社の宣伝や情報を社員が個人のSNSアカウントから発信するケースもありますが、ストーリーを効果的にステークホルダーに届けるためには、公式アカウントから発信することが大切です。個人アカウントと比べて情報の流通性が高まるだけでなく、よりオフィシャル感があるからです。同様の理由で、ブログよりもウェブページのほうが好ましいといえます。

ポイント2.客観的な視点で書く

SNSの公式アカウントからストーリーを発信する際には、他者の視点に立って客観的に語ることも大切なポイントになります。自分たちの言いたいことを中心に書くのではなく、最も大事なステークホルダーを慮り、読み手のためになる情報を開示するというスタンスで書くのがおすすめです。

ポイント3.企業やほかの自治体とも積極的に絡む

ストーリーを発信する際には、地域の企業やほかの自治体など他社・他者と相互に絡むことが効果的です。

メディアプラットホームでできることは、あくまでもシステムとしての機械的な情報の拡散や情送信のみで、メディアへの転載やメディアリストへのメール送信などは広報の成功の「必要条件」にすぎません。第三者が影響力を行使してストーリーを伝えることが成功の「十分条件」です。

SNSでは、告知のような一方通行の情報発信をするのではなく、ほかの自治体や団体が発信した情報を積極的にリツイートするなどして、双方向の発信を大切にしていきましょう。

ストーリーテリングの参考事例3選

ストーリーテリングを取り入れたPR TIMES STORYの配信事例を3つご紹介します。

事例1.佐賀県

2024年に開催される「国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会(SAGA2024)」。その開催地である佐賀県が、「前例のない新しい大会」にするため、新たに挑んだ一大プロジェクト『リアルアスリート・ピクトプロジェクト』の舞台裏を描いたストーリーです。

『リアルアスリート・ピクトプロジェクト』は、佐賀県内外で活躍する実在のアスリートをモデルに、SAGA2024大会ピクトグラムをシンボルとして制作するというもの。PR TIMES STORYでは、プロジェクトリーダーとピクトグラムを手掛けたデザイナーが登場。当事者だからこそ語ることができる、前例のない取り組みに対する苦労や製作秘話、プロジェクトを通して再発見したスポーツの魅力と可能性について書かれています。

完成したピクトグラムの写真も盛り込むことで、SAGA2024に対する期待感を刺激するストーリーに仕上がりました。

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事例2.The 絶景花火実行委員会

富士山の絶景を背景に、日本を代表する花火師4人の共演が話題となった、「The絶景花火@Mt.FUJI」。その第2回開催を前に、実行委員の主要メンバーと花火師、数々の花火大会を立ち上げた経験を持つ花火鑑定士の3人が、当該大会への熱い思いを語るストーリーです。

どのような経緯で、プロジェクトが立ち上がったのか、世界遺産・富士山の1合目という特別な場所で、そして100年以上の歴史を持つ日本を代表する花火師4人の共演という、一見不可能にも思えるプロジェクトが実現したのはなぜか、大会開催までの様子が、当事者によって生き生きと語られています。

イベントそのものの魅力だけでなく、イベント企画の楽しさも伝わり、地域の魅力を発信したいと考えている他自治体や街づくりに取り組む方にも響くストーリーとなっています。

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事例3.東京都品川区

2022年10月10日、京浜運河沿いの清掃作業所跡を利用して、品川区がオープンした「アイルしながわ」。

京浜運河沿いの清掃作業所跡に誕生した「アイルしながわ」。スポーツ選手やアーティストなどに活動の場を提供し、文化・スポーツを起点とした街の賑わいを創出していくことを目標に掲げ、2022年10月に品川区がオープンしました。そのプロジェクト立ち上げから実現までを描いたストーリーです。

施設の管理運営を受託する団体の理事長や品川区で東京2020大会の準備に携わった同区の担当者、実際に施設を利用しているパラリンピック選手が登場し、アイルしながわ誕生の経緯や特に力を入れた「パラスポーツ支援」に対する思いを語っています。

実際にアイルしながわを舞台に、パラスポーツと地域との交流を目にした喜びや、プロジェクトを成功させた達成感なども伝わり、ストーリーを地域ブランディングにうまく活用した事例だといえるでしょう。

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地域ブランドを高めるストーリー発信の心得

地域ブランドを高めるためのストーリー発信の大切さと、その導入方法の理解を深められたのではないでしょうか。

セミナーのポイントは以下の通りです。

  • 当事者視点で書かれたストーリーを地域ブランディングに取り入れることで、共感を得られ、聞き手と強くつながることができる
  • ストーリーテリングを成功させるためには「なぜ(Why)+どのように(How)」の情報を入れる
  • 読み手の共感や記憶に働くストーリーには、当事者性、客観性、人間性がある
  • ストーリーの拡散には公式アカウントからの発信が効果的。ほかの自治体や企業の情報も積極的にリツイートしていく

ブランディングの基礎や、自治体広報の役割・広報戦略についての記事もぜひ参考にしてみてくださいね。

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